h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2007.03.05

Transcatheter arterial embolization (TAE) for slenic injury: with special emphasis on rebleeding *

目的:脾損傷に対するTAE施行例において治療効果,合併症などを検討する.
対象と方法:対象は脾損傷のTAE目的で当院にて血管造影が行われた30例.各々の症例において損傷度,血管造影所見,塞栓部位,塞栓物質,TAE後経過を検討した.また TAE後に脾臓実質への側副血行路となりうる血管の有無を評価した.
結果:30例中26例にTAEを施行した.そのうちゼラチンスポンジのみで塞栓したものが19例,金属コイルと併用したものが7例,マイクロカテーテルを用いて区域枝あるいは亜区域枝TAEを行ったものが19例である.再出血は区域枝TAEが行われた2例に認められ,側副血行路形成が原因として示唆された.血管造影では左胃大網動脈,短胃動脈,膵尾動脈などが側副血行路となる可能性が示唆された.
結語:TAE後に再出血がみられた場合には,たとえ超選択的TAEが良好に行われていても側副血行路による血流再開を考慮する必要があると思われた.(平成19年3月19日受理)

2007.02.10

An adult case of intralobar pulmonary sequestration *

 症例は27歳女性.13歳時より胸部異常陰影を指摘されるが無症状であったため経過観察していた.2001年11月咽頭痛,膿性痰,39℃台の発熱を認め9日間発熱が持続し,近医で肺化膿症と診断され,肺分画症が強く疑われたため精査目的で入院となった.胸部CT・大動脈造影・肺動脈造影を施行し肺葉内肺分画症(肺底動脈起始異常症)と診断し,左後側方切開による左下葉切除術を施行した.左下葉には1/3を占める膿瘍が存在し,下行大動脈から肺内に流入する異常動脈と奇静脈を介して左房へ還流する血管を認めた.肺葉内肺分画症に感染をきたし肺化膿症に至ったものと考えられた.肺葉内肺分画症の手術適応について若干の考察を加えて報告する.(平成18年10月17日受理)

2007.02.09

A case control study og CIN1 – Investigation of the high-risk HPV detection status and outcome of cytodiagnosis – *

 子宮頸がんは,女性特有の悪性腫瘍のなかで3番目に多い死因となっている.Cervical Intraepithelial Neoplasia(CIN)は子宮頸がんの前がん病変とされており,その組織学的診断からCIN Grade1(CIN1),Grade2(CIN2),Grade3(CIN3)に分類され,それぞれ軽度異形成,中等度異形成,高度異形成および上皮内癌に対応している.CINの標準的な取り扱いとして,CIN1では経過観察,より高度なCIN3では病巣切除を目的とした外科的治療(円錐切除,子宮摘出等)が推奨されている.なかでもCIN1は,一時的な高リスクタイプのHPV(HR-HPV)感染による細胞変化とされその多くは自然治癒すると考えられているが,再燃するケースも少なくない.
 1995年4月から2005年3月までの間,組織学的にCIN1と診断された243例の2663受診,1631回のHPV検査を対象として,細胞診正常化と高リスク型ヒトパピローマウイルス感染(HR-HPV)の検出状況との関連について解析することを目的とした単一施設での症例追跡研究である.
 【目的】日本女性におけるCIN1の自然史がHPV感染の有無,またはHPV-DNAタイプの検出状況によって異なるかどうか評価すること.【方法】1995年4月から2005年3月の間にCIN1と診断された243例の患者の追跡研究である.登録条件は,過去にCINに対する治療歴を有しない75歳以下の症例とし,組織診でCIN1であっても細胞診でⅢbを指摘された症例や「細胞診正常化(2度以上続けて細胞診の異常を指摘しない場合)」を認めることなく追跡期間が12ヶ月未満であったものは除外した.観察間隔は3ヵ月ごととし,細胞診およびコルポスコープ検査を毎回実施.HPV検査(E6-E7,PCR法)については,「HPV陰性化(2度以上続けてHPVを検出しない場合)」とされるまでは毎回実施した.経過中の組織診については,細胞診またはコルポスコープ検査で悪化が疑われない限り実施していない.統計解析とし「細胞診正常化」「HPV陰性化」について,カプラン・マイアー法を用い,Log-rank検定を行った.有意水準は5%未満とした.【結果】追跡期間の中央値は,33.2ヵ月(6-128で変動する)であった.243例の患者のうち,143例で HPVが検出された(HPV陽性群).143例の患者のうち,109例では同じ型の検出された HPVの持続感染を認めた.109例において最も多く検出されたHPV-DNA型は52型で(n=41,Persistentグループの37.6%),16型(n=30,27.5%),58型(n=30,27.5%)がこれに続いた.「HPV陰性群」における累積細胞診正常化率は24ヵ月後85.2%,36ヵ月後98.4%であった.これと比較し「HPV陽性群」における累積細胞診正常化率は有意に遅延した(65.1%と74.6%,それぞれ.)が,同一タイプの持続感染の有無で検討したところ,「非持続感染例」と「HPV陰性群」との間に有意差は認められなかった.【結論】本研究で高頻度に検出された16型,52型,58型は,持続感染例に多く認められた.感染状況からの解析で,CIN1における「非持続感染例」は「HPV陰性群」と同様に経過観察のみとして取り扱ってもよいとする結果を得た.今後,同一タイプの持続感染もつCIN1患者における外科的処置の役割が明らかにされなければならない.(平成18年10月25日受理)

2007.02.08

Roles of reactive oxygen species and nitric oxide in compensatory renal and glomerular hypertrophy after uninephrectomy *

 ネフロン数減少に伴う糸球体・腎肥大は糸球体硬化の前駆状態として認識されている。活性酸素種(ROS)は細胞内シグナル伝達の一部を担い正常細胞機能の遂行に重要な役割を果たすと同時に障害因子として働くという両義的役割を担っている。一方,一酸化窒素(NO)は内皮依存性の血管拡張反応のメディエーターである。ネフロン数減少後の代償性糸球体・腎肥大におけるROS,NOの動的変化の意義とそのメカニズムについて検討を行った。Wistarラットに片腎摘(NX)モデルを作成し,一群にSOD mimeticであるTempolを投与した。ROS,NO産生変化を共焦点レ-ザ-顕微鏡を用い可視化検出した。NX後12時間,2,7,28日目に腎組織におけるROS,NOの変化とそれに伴う組織変化を解析した。腎摘後,腎重量/体重比は7日後より,糸球体体積比は12時間後より増加傾向を示し7日目では有意に増加した。NX群糸球体では7日目をピ-クとするROS産生増加が認められた。ROS産生増加及び糸球体・腎肥大はTempolで抑制された。糸球体ではAkt,ERKの経時的な活性化を認めた。これらの変化はTempolの投与にて抑制された。一方NX糸球体でのNO産生は12時間で最大となりその後基底値に復した。以上の結果から,早期の糸球体肥大(血管拡張反応)には一過性のNO増加が関与し,ネフロン数減少後期の糸球体・腎肥大にはROSの関与が示唆された。
(平成18年10月19日受理)

2007.02.07

Identification and analysis of FANCD2-interacting factors *

 Fanconi貧血(以下FA)は,進行性骨髄不全,好発癌を特徴とする遺伝性疾患である.細胞レベルでは,染色体不安定性,シスプラチンやマイトマイシンCのようなDNA架橋型抗癌剤に対する高感受性を特徴とし,現在までに11種類の原因遺伝子(FANCA,B,C,D1,D2,E,F,G,J,L,M)が同定されている.このうち8種類(FANCA,B,C,E,F,G,L,M)は,核内においてFAコア複合体を形成していると考えられている.FA蛋白質は共通の遺伝経路上に存在し(FA pathway),DNA損傷修復への関与が示唆されている.中でもFANCD2はその中心的役割を担っているが,詳細な作用機構は不明である.今回,FANCD2と相互作用する分子の検索に,FANCD2をbaitとしたYeast Two-hybrid法を用い,候補分子を33種類同定した.このうち,論文検索と,強制発現系における細胞内局在と免疫沈降解析により,BCCIPとDEADC1が実際に相互作用する可能性が高いと考えられた.これらの分子の機能を明らかにするべく,ニワトリDT40細胞を用いて両者の破壊を試みたが,いずれも致死遺伝子と思われ,欠損細胞の樹立にはいたらなかった.今後,siRNAなどの手法により機能解析が必要であると考える.(平成18年10月17日受理)

2007.02.06

Tumor responses, adverse events and predictive factors for response in advanced breast cancer patients treated with combined chemotherapy with docetaxel and doxifluridine *

目的:ドセタキセル(Doc)はチミジン・フォスフォリラーゼ(TP)の誘導により,ドキシフルリジン(5’DFUR)の効果を増強し,両薬剤の併用は,乳癌移植モデルにおいて相乗的な抗腫瘍効果を示すことが報告されている.我々は,進行乳癌を対象に,隔週Docと5’DFUR連日経口投与による併用療法の臨床試験を行っている.今回,当教室で本併用療法を受けた症例を対象に治療効果,有害事象さらに効果予測因子を検討した.
患者と方法:当教室において本併用療法を受けた進行乳癌患者25例を対象とした.これらの症例のうち,原発腫瘍の免疫組織化学的検討が可能であり,治療効果が判明している17例において,BRCA1,TP発現量と治療効果との相関をみた.
結果:1)臨床的検討;本併用療法の奏効率は68.1%(15/22,3例は治療効果の判定不能)であった.グレード3または4の有害事象は20%(5/25)に認められた.2)効果予測因子の検討;BRCA1とTPのどちらか一つが陽性の症例の奏効率は92.3%(12/13),ともに陰性の症例の奏効率は0%(0/4)であった(P=0.003).多変量解析において,BRCA1陽性,TP陽性は,それぞれ奏効を予測する独立因子であった.
結論:本併用療法は,進行乳癌患者に対し,安全に投与が可能であり,強い抗腫瘍効果を示した.本併用療法の効果予測因子として,原発腫瘍のBRCA1とTP発現状況が有用なことが示唆された.(平成18年10月17日受理)

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