h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2007.01.02

Molecular mechanism of db gene-induced diabetes mellitus – effect of db gene load on pancreatic β cell specific gene expression – *

 レプチン受容体異常という遺伝的背景を持つdb遺伝子ホモ接合体(db/db)マウスは,摂食過剰が高度の肥満と代謝異常を示し,膵β細胞機能不全に陥り糖尿病を発症するため肥満2型糖尿病モデルマウスとして汎用されている.db遺伝子ヘテロ接合体(db/+)マウスでは糖尿病は発症しない.肥満糖尿病発症に関連するdb遺伝子が膵β細胞機能に及ぼす分子機構を明らかにするため,db/db,db/+,+/+マウスにおける膵β細胞関連遺伝子の発現様式を特異的に解析し,比較検討した.8・12週齢の雄のdb/db,db/+,+/+マウスを用いて,体重,空腹時血糖およびインスリン値を測定した.また,Laser Capture Microdissection(LCM)法にてマウスの膵ラ氏島コア領域を採取し,内分泌,増殖,アポトーシス等における主要遺伝子の発現プロフィールをSybr Greenを用いたReal time RT-PCRにより比較解析した.+/+マウスを正常コントロールとした.8・12週齢のdb/dbにおいて体重・空腹時血糖・インスリン値は他群より有意に高かった.12週齢の膵インスリン含量はdb/dbマウスで有意に減少しており,db/+マウスでは他群と比較して有意な増加を認めた(5.1±3.3,58.0±31.7,24.4±15.4ng/islet,respectively,p<0.05).LCMとReal time RT-PCR法で得られたインスリン遺伝子発現をみると,8週齢のdb/+で,insulinⅡ遺伝子のより顕著な発現を認めたが(db/+:9.57±3.96,db/db:1.72±0.96,p<0.05),12週齢ではdb/dbにおいてもdb/+と同等に増加していた(db/+:7.86±3.56,db/db:6.97±3.78).8週齢のdb/dbにおいて,増殖促進関連遺伝子であるcyclin EとERK1およびアポトーシス促進関連遺伝子であるCADの発現増加を認めるものの,12週齢では増殖促進関連遺伝子の発現は低下し,アポトーシス促進関連遺伝子の発現はさらに増加していた.一方,アポトーシス抑制に働くbcl-2遺伝子の発現は,他群と比較してdb/+で有意に増加していた.本研究結果より,db/dbマウスの糖尿病発症には膵β細胞アポトーシスの亢進と増殖抑制によるβ細胞量の減少が関与することが強く示唆された.またdb遺伝子ヘテロ接合体(db/+)マウスにおいてはアポトーシス抑制機構が働くこと,インスリン遺伝子高発現といった糖尿病発症を抑制する代償性機構が存在することが明らかになった.db/dbマウスにおける代償性機構の消失の分子メカニズムの解明はヒト2型糖尿病における膵β細胞機能不全の機構解明に結びつくものと考えられる.
(平成18年8月30日受理)

2006.04.07

A case report of sudden deafness in a child *

 突発性難聴は,外来診療ではよく遭遇する珍しくない疾患だが,小児においては現在でもまれな疾患である.それゆえ,小児の突発性難聴の病態,臨床像,治療,聴力予後に関しては,いまだ詳細に検討されているとは言い難い.初期治療は成人と同様,ステロイドを用いるのが一般的である.今回我々が経験した症例は,7歳の小学校1年生の女児に発症した突発性難聴で,ステロイド治療に効果が見られなかった.両親の強い希望にて,当科では小児に対しては初めてとなる.バトロキソビンを追加治療として用いて,聴力の回復を得た.バトロキソビンによる追加療法は,小児に対しても有効と思われた.
(平成18年8月26日受理)

2006.04.06

A case of video-assisted thoracoscopic surgery for patent ductus arteriosus *

 症例は10歳女児,心房中隔欠損症(ASD)根治術後,経過観察中に動脈管開存症
(PDA)認めた.経過観察するもPDA flowの消失が認められなかったため手術目的で当科に入院となった.精査後,small PDAと判断し胸腔鏡下にPDA閉鎖術を施行した.手術は右側臥位で左胸腔に5カ所のポートを作成し,11mmのクリップ2本で動脈管をクリッピングした.術直後の経皮的心臓超音波検査ではPDA flowは消失しており,その後反回神経麻痺も認められなかった.胸腔鏡下での動脈管閉鎖術は適応に制限はあるが,確実で,侵襲が少ない治療法であった.(平成18年6月13日受理)

2006.04.03

New asymptomatic ischemic lesions on diffusion-weighted imaging after cerebral angiography *

 脳血管造影(Cerebral angiography:CAG)における神経学的合併症の頻度は低いと報告されている.しかしながら,CAG後の頭部MRI拡散強調画像(diffusion-weighted imaging:DWI)にて新虚血巣を経験することがある.本研究の意義は,CAG後の症候性または無症候性のDWI新虚血巣の出現頻度を調べ,その関連因子を明らかにすることである.対象は,急性期脳梗塞および一過性脳虚血発作患者で,CAGの前後48時間以内に2回DWIを施行し得た連続56例.年齢,性別,脳卒中の既往,虚血性心疾患の既往,血管系危険因子(高血圧,糖尿病,高脂血症,心房細動,喫煙),入院時NIHSS score,脳梗塞の病型分類(small vessel occlusion,non-small vessel occlusion),抗血小板薬の服用,ワルファリンの服用,カテーテルのアプローチ方法(上腕動脈もしくは大腿動脈),造影剤の量,カテーテル操作時間,透視時間について前向きに検討した.CAG後の DWI新虚血巣の有無で陽性群と陰性群の2群に分けた.CAG後に新たな神経学的合併症は認めなかった.CAG後に無症候性のDWI新虚血巣は24例(42.9%)に認めた.年齢(陽性群平均69.8±11.3歳vs.陰性群61.9±11.3歳,p=0.043),女性(54%vs.28%,p=0.048),non-small vessel occlusion(100%vs.66%,p=0.009),大腿動脈アプローチ(63%vs.13%,p<0.001),カテーテル操作時間(63.1±21.6分vs.43.7±14.2分,p<0.001),透視時間(26.5±13.0分vs.14.9±5.9分,p<0.001)は2群間で有意差を認めた.陽性群と陰性群を区別する至適透視時間を,感度・特異度曲線を用いて解析したところ,17分であった(感度66.6%,特異度68.8%).多変量解析を行うと,17分を越える透視時間がCAG後のDWI新虚血巣における独立した危険因子であった(オッズ比9.355,95%信頼区間1.800-48.626,p=0.0078).脳虚血の出現を減少させるために,短時間で検査を行うよう注意を払わなければならない.(平成18年7月20日受理)

2006.04.02

Myogenic activity of the dominant-negative form of type II receptor for myostatin during skeletal muscle development *

 骨格筋形成の過程で一過性に発現するマイオスタチン(myostatin;MSTN)は筋芽細胞の増殖と分化を負に調節し,その機能欠失変異によって過剰な筋肉が形成される.MSTNは成熟後,膜受容体であるII型アクチビン受容体(ActRII)に結合して細胞内へシグナルを伝え,筋芽細胞の分化を調節している.2つあるActRIIのうちA型は皮筋節や筋肉塊の周囲で発現し,MSTNの発現部位と時間的,空間的に重なっているのに対し,B型は主に神経管で発現している.欠損型のII型受容体を過剰に発現すればMSTN作用の最初の段階でシグナルを遮断でき,欠損型受容体は競合的に働く制御因子として作用する.この作用をマウス筋芽細胞C2C12およびニワトリ胚の間充織細胞の初代培養系で検定した結果,予想通りの効果が得られ,特に速筋型の筋線維に対して有効であった.A,Bの2つあるActRIIのうち,筋肉で特異的に発現しているA型の優性欠損型は筋肉特異的な遮断に有効であると考えられる.(平成18年6月13日受理)

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