h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2000.03.05

A patient with carcinomatous peritonitis 21 years after surgery for breast cancer *

 乳癌術後21年目に癌性腹膜炎を発症した1例を経験した.症例は55歳,21年前に両側乳癌で根治術を受けた.今回,腹部膨満感で受診.諸検査の結果,癌性腹膜炎と診断されたが,大網の肥厚以外に腹腔内臓器には異常を認めなかった.血清腫瘍マーカーBCA 225およびCA 15-3 の上昇が認められ,乳癌の再発・転移が疑われた.試験開腹により肥厚した大網の1部を採取,免疫組織学的にER(十)およびBRST-2 (十)で乳癌の転移が最も考えられた.ドセタキセル点滴静注,カルボプラチン腹腔内投与および2クール目からは酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の内服を併用した.1クール施行後CT上異常陰影を認めず,2クール終了後には腫瘍マーカーも正常化した.3クール施行後に試験的再開腹を行ったが,肉眼的腹腔内播種を認めず,大網切除術を施行した.その後化学療法を4クール追加した.諸検査により,再発や転移の無い事を確認し,退院した.現在外来でMPAの継続にて経過観察中である.           (平成12年7月19日受理)

2000.03.04

Analysis of apoptotic cell death following irradiation in SCC malignant cell lines derived from the head and neck *

目的:臨床的に問題となる放射線治療後の抵抗性獲得の基礎的検討として,放射線照射後の2種類の頭頸部由来扁平上皮癌細胞株のアポトーシスについて検討した.材料と方法:口腔底由来のKB株と喉頭由来のHEp-2株に放射線照射を行い,その放射線感受性を軟寒天コロニー法で検討した.次にアポトーシスの出現をTUNEL法で検出した.さらに膜表面Fas分子(mFas)の発現をフロ-サイトメトリーにて検討し,MP-RT-PCR法によりmRNAレベルでアポトーシス関連遺伝子の発現を比較検討した.結果:放射線感受性はHEp-2株に比べKB株の方が良好であった.照射後のアポトーシスはKB株では線量依存性に,HEp-2株では時間依存性に出現を認めたが,KB株の方が早期より出現していた. mFasば両株とも通常の維持培養下で陽性であったが,照射後には時間依存性の増強が認められた.アポトーシス関連遺伝子はFlice,TNFR-1,Baxの発現がKB株で亢進していた.また,KB株でdecoy receptor(DcR 3 )遺伝子の発現も認められた.結論:放射線はp53の発現亢進によって癌細胞にアポトーシスを誘導すると考えられるが,Fas関連アポトーシスと膜表面Fasの発現量の増加も放射線誘発アポトーシスに重要な働きをしていると考えた.                   (平成12年8月10日受理)

2000.03.03

Investigation of DNA sequences on glycoproteins in VZV Oka vaccine and parental Oka strains *

 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)Oka株(ワクチン株)は野生株であるOka親(P-0ka)株を経代培養し作成した弱毒株であり,ヒトで水痘の臨床症状を呈することなくVZVに対する免疫原性を有する.このウイルスの弱毒化機序を分子生物学的に調べるため,我々はVZV糖蛋白であるgE,gB,gHI,gI,gC,gL,のOka株とP-Oka株の塩基配列をそれぞれ比較した.Oka株とP-Oka,株のgE,gB,gH,gI,gL.の塩基配列は両者で完全に一致し,gC内に存在する繰り返し配列の数はOka株で1.76回(74bp),P-Oka株で0.76回(32bp)であった.0ka株のgCの停止コドンに相当する部分で点変異が認められたが,Oka株,P-Oka株共に停止コドンのままで変化なかった.Oka株はgE,gB,gH,gl,gLに対してP-Oka株と同様の免疫を誘導されると考えられた.Oka抹はP-Oka株とVZVのgC内にある繰り返し配列でアミノ酸配列上違いがあるため,皮膚病原性との関連が疑われた.                    (平成12年8月5日受理)

2000.03.02

Knowledge of smoking in freshmen at a medical school *

 川崎医科大学の平成12年度(2000年)の新入生103人における喫煙に関する知識について調査した.まず,新入生オリエンテーションの際に,「喫煙か健康か」と題する講話の前後で同じ5問からなる小テストを実施した.第1回目テスト後,スライドとCD-ROMを使用した講話を30分ほど行い,ついで第2回目のテストを実施した.オリエンテーション終了後には喫煙の害について書かれたプリントを配付した.さらに,オリエンテーションから1ヵ月経って行われた医学概論の講義の際に,再度同じ小テストを実施した.小テストの問題は,平成12年の第94回医師国家試験に出題された問題を利用した.計3回のテスト成績を比較してみると,新入生オリエンテーションにおいて喫煙と健康に関する講話を行うことは有意義であるといえる.今後の課題としては,新入生が自ら学んで自己を高める習慣をつけることであろう.                (平成12年7月19日受理)

2000.03.01

Smoking status of students at a medical school, 1998-1999 *

 平成10年度(1998年)と平成11年度(1999年)の2年間に,川崎医科大学の第5学年医学生における喫煙状況に関する調査を実施した.調査方法としては,呼吸器内科に臨床実習のため回って来た際に,各班ごとに一人ひとりの喫煙習慣などについて聞き取りを行った.1998年,1999年の喫煙率は,それぞれ男.子学生で55,71%,49,3%,女子学生では29、2%,13.9%であった.いずれの年度においても,留年したことのある学生の喫煙率(1998年:男子80.0%,女子50.0%;1989年:男子89.5%,女子25.0%)は.ストレートに進級してきた学生(1998年:男子46.0%,女子27,3%;1999年:男子33.3%,女子10,7%)の喫煙率よりも高かった.喫煙している学生の過半数は未成年の時からタバコを吸い始めており,しかも男子ではほとんどが大学入学前から喫煙していた.現在吸っているタバコの種類をみると,外国タバコが男子の1/3,女子の1/2を占めており,男子の約7割,女子は全員が低タール・低ニコチン製品を吸っていた.喫煙動機は「好奇心」,「友人・先輩の勧め」,「何となく」が多かった.一方,非喫煙者がタバコを吸わない理由は,男女とも「煙・臭いが嫌い」が最も多く,「興味がない」がそれに次いでいた.その他の理由として「健康に悪い」,「家族が吸わない」などが挙げられた. 今後は当大学の入試に際して喫煙状況をチェックできるようにするとともに,入学後にも学生がタバコを吸わないための知識・態度・技能が得られるようなアンチスモーキング教育を行っていく必要があろう.                (平成12年6月5日受理)

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