h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2000.04.04

Accidental exposures to hapatitis virus among hospital employees in Kawasaki Medical School Hospital *

 1996年4月から1999年3月までの3年間における針刺し事故の実態を検討した.3年間の血液汚染事故総数は291件でそのうち針刺し事故は240件(82.5%)であった.そのうち原因が明らかなものでHBVによるものは33件, HCVによるものは98件認められた.この3年間においてはこれらの針事故による肝炎の発症はみられなかった.                              (平成12年10月12日受理)

2000.04.03

Expression of transforming growth factor (TGF) – β during healing of indomethacin-induced small intestinal ulcers in rats *

背景:小腸粘膜傷害における transforming growth factor (TGF)-βの発現は未だ明らかにされていない.そこで,インドメタシン誘発ラット小腸潰瘍モデルにおけるTGF-β発現と本小腸潰瘍モデルに対するレシチンの効果を検討した.方法:1)雄性Wistar系ラットにインドメタシンの経肛門的投与で小腸潰瘍を誘発し.経時的に小腸を摘出した.病変部のパラフィン切片を作成し,酵素抗体法を用いてTGF-βを免疫染色した.腸間膜付着側および対側のTGF-β陽性細胞数をインドメタシン投与群と非投与群で経時的に比較した.2)インドメタシン投与直後より, 2.5%エタノールに溶解したレシチン投与群(lecithin群),2.5%エタノール投与群(vehicle群)および無治療群に分け,小腸に対する開放性潰瘍の長さ(UIL),幅(UIW)と潰瘍中心部の腸壁の厚さ(WT),およびTGF-β陽性細胞数を比較検討した.結果:1)TGF-β陽性細胞は,粘膜固有層および粘膜下層内に認められ,インドメタシン投与3時間後から24時間後にかけては,腸問膜付着側および付着対側でともに陽性細胞数が増加した.3日後と7日後には腸間膜付着対側で,21日後には腸間膜付着側でTGF-β陽性細胞数が非投与群よりも有意に多かった.2)14日後の腸間膜付着対側のTGF-β腸性細胞数はlecithin群とvehicle群で無治療群よりも有意に多かった.また,同時期において,lecithin群は無治療群よりもUIWとWTが有意に低値を示し(p<005),UIL.も低値をとる傾向を認めた(P=0.09).結論:TGF-β群は小腸粘膜傷害の初期からその発現が増加すると考えられた.一方,レシチンは小腸潰瘍の治療を促進し,治癒過程におけるTGF-βの発現とは無関係に腸管壁の肥厚を軽減させる可能性が示唆された.             (平成12年10月12日受理)

2000.04.02

Scanning electron microscopic observation on olfactory epithelium of the mouse embryos *

 マウス胎子の嗅上皮の発達を明らかにするために,胎生12日から生後2日のマウス嗅部を用いて,特に嗅小胞の形態と分布に着目し,鼻中隔側,天蓋部および外側の嗅上皮を走査電顕で観察した.嗅上皮の発達はStage ⅠからStage Vの5段階に区別できる。StageⅠは嗅小胞が全くみられない状態.Stage Ⅱは大小不同の少数の嗅小胞が孤立性に分布し,短い嗅線毛がみられる.Stage Ⅲは3個から4伝の嗅小胞がグループ化して出現する時期.Stage IVでは嗅小胞が少なくなり,再び孤立化し嗅線毛も長くなる.Stage Vは孤立化した嗅小砲から複数本の嗅線毛が長く伸びる.胎生期の外側嗅上皮では胎生12日でStage Ⅰとなり,胎生16日がStage Ivに対応する.鼻中隔側の嗅上皮では胎生12日がStage Ⅱに対応し,胎生16日でStage Vとなる.すなわち,鼻中隔側嗅上皮の方が外側嗅上皮に比べて胎齢でおよそI F1早く発達する.賠生14日の嗅上皮では,嗅小胞の数は昴中隔側に比べ外側壁に1.5から2倍と有意に多い(P<0,01).さらに天蓋部嗅上皮は鼻中隔側嗅上皮よりも0,5から1日早く発達する.嗅上皮の発達は鼻腔上部の区域で均一に進行するのではなく,部位差がみられる.すなわち天蓋域が’最も早く,外側域が最も遅いことが明らかとなった.嗅上皮の発生における嗅小抱数の変化ならびに嗅小胞の分布様式の変化は,嗅上皮中に発生するアポトーシスが関与する可能性が示唆された.(平成12年10月3日受理)

2000.04.01

Association between overexpression of heat shock protein (HSP27) and anticancer agents with different cytotoxic mechanisms in BG-1 ovarian cancer cells and HeLa cervical cancer cells *

[目的]抗癌化学療法時における効果機序の解明のためにG2/M blockを起こす各種抗癌剤について細胞増殖抑制効果および細胞周期に及ぼす影響とHSP27発現との関連について検討した.[方法]卵巣癌由来のBG-1及び子宮癌由来のHeLa細胞に5種類の抗癌剤etoposide(topoisomerase Ⅱ inhibitor),colcemidおよびvincristine(tubulin polymerization inhibitor),paclitaxel(tubulin depolymerization inhibitor),ET-18-OCH3,(membrane-associated anticancer)を接触させ細胞増殖抑制効果をみた.細胞周期はPropidium Iodide(PI)による蛍光染色後,flow cytometer(FCM)により得られたDNAヒストグラムの各周期の割合をMod Fit により解析した.HSP27発現量は間接蛍光抗体法にて染色し,FCMで得られたFluorescein isothiocyanate(FITC)ヒストグラムのmedian channel numberを求め,抗癌剤接触群と無処理群との相対値で表した.[結果]二つの細胞とも抗癌剤の用量依存性に細胞増殖抑制効果, G2/M phaseの増加が認められた.そのうちetoposide,colcemid., vincristineではいずれの細胞においてもHSP27発現が増加しており,G2/M phaseとの問にも相関が認められた.しかしpaclitaxelではいずれの細胞においてもHSP27発現は全く増加しなかった.またET-18-OCH3によってBG-1細胞では,HSP27発現が認められたが,HeLa細胞ではHSP27は増加しなかった.[結論]Etoposide,colcemid vincristineはHSP27発現を促進し,PaclitaxelはHSP27発現を抑制する.ET-18-OCH3によるHSP27の誘導は細胞の種類によって異なっていた     (平成12年9月14日受理)

2000.03.07

A case of splenic hamartoma *

 今回我々は比較的稀である脾過誤腫の症例を経験したので報告する.症例は57歳男性,定期検診の腹部超音波検査で脾腫瘤を発見され,当院へ入院となった.特に症状はなく,入院時検査所見も正常範囲内であった.腫瘤は超音波検査では中心部は高エコー像で周囲が低エコー憮を呈した,CTでは低吸収域像,造影CTでは強く濃染された.MRIではTI強調画像にて低信号を,T2強調画像にて高信号を示した.Gd-DTPA投与後のDynamicMRIでは早期相で高信号,後期相で等信号であった.血菅造影では均一な腫瘍濃染像を呈した.画像所見より脾過誤腫を疑い脾摘出術を施行した.病理組織学的検索により赤脾髄型の脾過誤腫と診断された.術後,経過良好であった.脾過誤腫は画像診断においても特徴的な所見に乏しく,他の脾腫瘍との鑑別が問題となる.現状では診断と治療を兼ねて脾摘出術を行うのがよいと考えられた.              (平成12年9月14日受理)

2000.03.06

A case of bilateral giant bullae treated by one-stage bilateral resection throurgh median sternotomy *

 両側巨大気腫性肺嚢胞に対し胸骨正中切開にて1期的切除を行ない,良好な結果を得たので報告する. 症例は51歳,男性.労作時呼吸困難を主訴に当院へ紹介入院となった.胸部CTおよび肺血流シンチグラムにて両側肺尖部,および左下葉に1側胸腔の1/3以上を占める巨大な嚢胞を認めたが嚢胞切除により圧迫されていた正常肺が再膨張できる可能性を認めたため,外科治療の適応と判断した. 嚢胞は主に縦隔側に存在し,正常肺との境界がやや不明瞭で,しかも肺深部にも嚢胞を認め,さらに強い胸膜癒着が予想されたため,胸骨正中切開にてアプローチし,両側一期的切除を試みた.術後若干呼吸管理に,難渋したが,大きなトラブルもなく,第32病日に退院した,術後,2ヶ月めの胸部CT,肺血流シンチグラム,呼吸機能検査ではいずれも改善傾向が認められた.このように縦隔側に存在し,高度の癒着が予想されるような両側巨大気腫性肺嚢胞では胸骨正中切開にて1期的切除を行なうのが望ましいと考える.                               (平成12年8月5日受理)

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