h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2001.01.03

The ability of adherence and penetration to A549 cells in clinically isolated Streptococcus Pneumoniae *

 Streptococcus pneumoniae(S.pneumoniae)は市中肺炎,急性中耳炎,髄膜炎,敗血症の最も代表的な原因菌であり, 1980年代以降ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistantS. pneumoniae, PRSP)の分離率は世界的に増加している.しかしながら感受性株と耐性株の病原性にどのような違いがあるかについては良く知られていない.そこで今回,感受性の異なる臨床分離血液由来S. pneumoniae 4株のヒト肺胞2型上皮細胞癌由来であるA549細胞への付着,侵入能について検討した.付着菌数はいずれの菌株でも接触時間,接種菌量に依存して増加した.侵入能は検討4株中2株に認め,接種菌量による差は認めなかった.今回検討した4株では,薬剤感受性の違いによる付着・侵入能の差は認めなかった.また侵入能を有していた2株の血清型は3型と6型で,臨床上血液から分離頻度の高い血清型であった.

2001.01.02

Bone mass measurement of cortical bone of the tibia using quantitative ultrasound: Clinical application *

 定量的超音波法(QUS)は,骨量測定法の中で,操作が簡便で被曝がなく,しかも骨密度(BMD)のみならず,骨質も同時に評価できる特異的な方法である.大部分のQUS装置では,踵骨が測定部位とされるのに対し,近年開発されたQUS装置Sound Scan2000では,脛骨皮質骨の超音波伝播速度(SOS)が測定される.基礎的検討からその基本性能は良好であることが示されているが,臨床応用についての報告は少ない.そこで,日本人女性を対象として, Sound Scan 2000の臨床的有用性を検討した. 女性例における脛骨皮質骨SOSの若年成人の平均(YAM, 25~44歳)は, 3939±84(平均±SD) m/secであった.また, WHOにより提案された骨粗鬆症の診断基準のcut-ofr値であるYAM -2.5 SDに相当するSOSは3729 m/sec と算出された.橈骨または腰椎のBMD測定による骨粗鬆症の判定を, gold standard とした場合, SOS測定は橈骨の骨粗鬆症の感度と陽性予測率が良好であることが示された. SOSの2年間の変化量および変化率は,閉経前24例が7.2±65 9m/secと0.17±1.68%,閉経後21例が-48.9±90.0m/secと-1.29±2.32%であった.閉経後の減少量と減少率はともに有意(p<0.05)に閉経前より大きいことが認められた. 今回の臨床的検討から,脛骨皮質骨のSOS測定は,骨粗鬆症(特に橈骨における骨量減少)のスクリーニング検査として有用であることが示唆された.(平成12年10月16日受理)

2001.01.01

 

2000.04.07

Bone mass measurement of cortical bone of the tibia with quantitative ultrasound: Correlation with peripheral quantitative CT in clinical and cadaveric subjects *

 定量的超音波法(QUS)は被曝を伴わず簡便に超音波の伝播速度(SOS)から骨量を評価できる方法として知られている. Sound Scan 2000 (Omron Myriad, イスラエル)は他のQUS装置が海綿骨主体の踵骨を測定部位とするのに対し,脛骨皮質骨を測定部位とするユニークなQUS装置である.しかし,その測定の正確度については,十分解明されていない.そこで,脛骨皮質骨の骨密度(BMD)測定が可能で既に測定の正確度が確立している末梢骨CT法(pQCT) (Densiscan-1000, Scanco Medical AG, スイス)を併せて使用し, Sound Scan 2000による骨量測定の意義を検討した. 屍体計測での検討には解剖用屍体下肢(N=10)を用いてSound Scan 2000による脛骨中央部(5 cm)長皮質骨のSOSと, pQCTにより得られた脛骨遠位骨幹端部(遠位端から19~33.5 mm),遠位骨幹部(遠位端から62~70.5 mm)と骨幹中央部について骨量に関するパラメータとの相関を検討した. SOSは,骨幹中央部皮質骨のBMD,体積や厚さと良好な相関を示すことが認められた. 生体計測での検討には健常女性46名を用いてSound Scan 2000による脛骨骨幹中央部皮質骨のSOSと,pQCTにより得られた右脛骨遠位骨幹端部と遠位骨幹部について骨量に関するパラメータとの相関を検討した. SOSは, (1)遠位骨幹端部よりも遠位骨幹部の皮質骨BMDとの相関が良好であること,(2)皮質骨の骨面積や厚さと良好な相関を示すことが認められた. 今回の検討の結果,脛骨皮質骨のSOSは皮質骨のBMDや厚さを反映することが示された.                             (平成12年10月20日受理)

2000.04.06

A new operative technique for benign biliary stricture – Reconstruction of the common bile duct using free vascularized appendix to preserve function of the papilla of vater – *

 良性胆管狭窄の手術として,一般的には,胆管空腸Roux-Y吻合術がこれまで広く行われてきたが,十二指腸乳頭括約筋の機能の消失による逆行性の胆管炎と再狭窄,さらには胃酸分泌の亢進による消化性潰瘍の発生が問題とされている.そこで,これらの問題点を解決すべく十二指腸乳頭機能を温存した胆道再建の新しい術式を考案した.体重10~15 kgの成犬を使用し,虫垂を動静脈柄を付けて基部で切離し遊離血管柄付虫垂を作成した後,総胆管を中央部で約lcm切除した.切離した虫垂を肝側胆管と十二指腸側胆管の間でそれぞれ端々吻合を行い間置し,さらに虫垂動静脈を左胃動静脈分枝と端々吻合した.長期生存した5頭を犠牲解剖したところ,3頭は移植虫垂は確認できず,移植部位胆管は胆嚢と瘻孔形成を来していた.しかし2頭は移植虫垂が確認され,造影では,胆嚢との瘻孔形成はなく,吻合部狭窄や残存させた胆嚢の変化も乏しくかつ,肝内胆管の拡張も見られず,十二指腸乳頭からの造影剤の流出も良好であった.生化学的検査では,胆道系酵素の上昇が見られたが,総ビリルビン値は正常範囲内であった.病理学的には,有茎虫垂粘膜上皮に萎縮傾向はなく,胆管粘膜との移行も良好で,肝と膵,ならびに胆嚢上皮と胆管上皮に炎症所見は見られなかった.さらに,消化性潰瘍も認められなかった. また胆管空腸Roux-Y吻合術をコントロール群として作成し5匹が長期生存を示した.血液生化学検査では虫垂間置群と有意差を認めなかった.造影では,胆管空腸吻合部に狭窄はなかった.病理学的には,胆管上皮に炎症細胞の浸潤が見られ,さらに肝臓は上行性胆管炎像を示し,一部に微小肝膿瘍像を認めた.なお消化性潰瘍は認められなかった. 十二指腸乳頭括約筋を温存する胆道再建術としての血管柄付虫垂間置術は,代用胆管としての機能を果たすものと考えられ,管腔器官の再建術として新しい可能性を示すものと考えられた.                          (平成12年10月18日受理)

2000.04.05

Evaluation of cervical muscle strength in healthy adults using a newly devised cervical myodynamometer *

 整形外科領域において,頚の筋力測定は,徒手筋力テストによる6段階評価で行われることがほとんどであり,計測機器を用いた客観的評価は一般的に行われていない.しかし頚筋力の評価は頚椎疾患手術後の治療判定や回復程度を知る一助となり得,また頚椎疾患予防の手がかりとなる可能性もあり,正確に測定することは意義あることと考える.そこで私は,まず,頚筋力測定装置を開発し,更に,それを用いて健常者における頚筋力を測定した.この装置は,ひずみゲージによる徒手筋力測定器GT-10(OG技研)を応用した装置で,座位で頚前後屈中間位に頭部を固定し,測定器を前額部及び後頭部に設置し,頚前屈及び後屈の等尺性筋力を測定する装置である. 対象は男性120人(年齢18~29歳,平均23.1±2.3歳),女性127人(年齢18~27歳,平均21.7±1.7歳)の計247人の健康成人とした.頚筋力測定は座位で行った.被検者を背もたれのある椅子に安全ベルトで固定し,頚は基本肢位のまま徒手筋力測定器(GT-10)2器で頭部を前後から固定した後,力一杯前屈あるいは後屈し,表示された最大値をそれぞれの頚筋力として採用した. 頚前屈筋力の平均値は,男女ぞれぞれ,平均151.0±40.2 N, 64.7±16.7Nで,頚後屈筋力の平均値は,同じく246.1±46.1 N, 129.4±27.5 Nであった.頚筋力測定器は測定前と測定中の2度キャリブレーションを行い,測定精度は196.0 N未満では±4.9 N.196.0N以上ではその数値の±3%であった.又,男性85人,女性53人に対して,1週間後に同様の測定を行い再現性を確認し,この測定器および測定方法は有用であると考えられた.測定と同時に身長,体重,握力,背筋力,頚周囲径,スポーツ歴についても測定,調査し,頚筋力との関係を分析した.女性ではいずれにおいても有意な相関は認められなかったが,男性では,頚筋力と体重,頚周囲径において弱い相関関係が認められた.また,スポーツ歴の有無と頚筋力との関係では,一元配置分散分析の結果,男女とも,頚後屈筋力においてスポーツ歴の有無で有意差が認められた.        (平成12年10月16日)

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