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Online edition:ISSN 2758-089X

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2000.02.07

A case of spontaneous esophageal rupture in an elderly female induced by swallowing *

 今回われわれは嚥下仮に高齢女性に発症した特発性食道破裂症例を経験した,症例は65歳女性.食後飲水中突然胸背部痞が出現した.近医受診し.心筋梗塞を疑われ,他院に紹介入院となった.胸部CT検査,冠動脈造影,大動脈造影検査を施行したが,診断は得られなかった.翌日の胸部X線写真で右気胸及び胸水が出現し.胸腔ドレナージが行われた,胸水の性状から食道破裂が昼われ,ガストログラフィン造影で食道破裂と診断が確定した.当腟に救急搬送され,発症から26時間後に手術を開始した,胸部下部食道右壁に縦走する2,5cmの穿孔鄙を認めた.食道穿孔S縫合鬩擺と胸腔ドレナージ,開腹による冐癨遠眼衙を施行した.術後経過は順跼で術後40日目に退院となった.嚥下を誘因とし,右側に穿孔した高齢女性の特発哇食道破裂は稀な症例と考え,報告した.                               (平成12年5月25日受理)

2000.02.06

A case of giant epiphrenic esophageal diverticulum *

 早期直腸癌検査中に発見され,直腸前方切除と同時に経腹経食道裂孔的に切除手術を施行した巨大横隔膜上食道憩室の一例を経験した.症例は58歳,女性.15年前,他院の上部消化管透視検査で,大きさは不明であるが,食道憩室を指摘された.治療の必要はないといわれ,放置していた.その後,時々食物停滞感を自覚していた.直腸癌及び下行結腸癌治療目的に入院し,精査中に巨大横隔膜上食道憩室と診断された.自覚症状があったため,手術適応と考え,低位前方切除術施行時に食道憩室切除手術を施行した.憩室内粘膜面には0.4 cm 大の潰瘍病変があり,びらんが多発していた.術後は食物停滞感等の症状は消失した.                            (平成12年5月25日受理)

2000.02.05

Evaluation of transcervical resection (TCR) of uterine cavity masses *

 1998年1月より1999年12月までに当科で行った子宮鏡下手術症例について臨床的に検討した.症例数は37例であり,そのうちわけは子宮内膜ポリープ22例,粘膜下筋腫15例であった.術前の画像診断による腫瘤径は子宮内膜ポリープが平均1.6 cm, 粘膜下筋腫が平均2.9 cm であり,手術時間は子宮内膜ポリープで平均18分,粘膜下筋腫で平均96分であった.術中および術後の合併症は認められず,術後在院日数は1日(中央値)と短期間であった.疼痛がほとんど認められず早期に社会復帰が可能であること,手術痕を残さず美容的であることなどを考慮すれば,子宮内の腫瘤性病変に対する子宮鏡下手術は有用な手術方法であると考えられた.                    (平成12年5月20日受理)

2000.02.04

Endoscopic excision of subcutaneous tumors in forehead region *

 顔面は各種皮膚良性腫瘍の好発部位であり,前額部にも表皮嚢腫,皮様嚢腫,脂肪腫や骨腫などが好発する.これらの腫瘍の切除にあたっては一般的に腫瘍直上に皮膚切開をおくことが多いが,腫瘍が深在性である場合には以下のような問題が生じる場合がある.すなわち①長い切開線が必要となること,②顔面神経側頭枝や眼窩上神経,滑車上神経などの腫瘍より浅層を走行する神経を損傷する危険があること,③筋鈎での創縁の圧迫により醜状瘢痕を残す危険があることなどである. 一方,内視鏡下手術は内視鏡本体や周辺付属機器の飛躍的な進歩に伴い,さまざまな外科領域でminimal invasive surgeryとして応用されている.形成外科領域においても顔面骨骨切り術や骨固定術,良性腫瘍摘出術,除皺術などの整容的手術,漏斗胸手術,筋弁や大網弁採取術などで内視鏡が応用され,その有用性が報告されている.今回,私達は2例の前額部深在性皮下良性腫瘍症例に対して内視鏡下摘出術を行い,良好な結果を得た. 前額部皮下腫瘍に対する内視鏡下摘出術の利点としては以下のものを挙げることができる.①皮膚切開創をより短く,より目立たない部位におくことができる.②手術手技が比較的容易である.③直視下に手術操作を行うため,神経や血管の損傷を避けることができる.④術後疼痛が軽微である.⑤早期離床および退院が可能である.一方,欠点としては手術時間が若干延長する点が挙げられるが,手術手技の向上やレトラクターなどの手術器械の改良,開発により今後克服される可能性がある.      (平成12年5月20日受理)

2000.02.03

Clinical evaluation of a combined immunosuppressive therapy of antithymocyte globulin and cyclosporin A for patients with aplastic anemia *

 【目的】中等症,重症再生不良性貧血症例に対する抗胸腺細胞グロブリン(ATG)及びシクロスポリン(CyA)併用免疫抑制療法の効果を臨床的に検討した.【方法】再生不良性貧血症例6例(重症4例,中等症2例)に対して, ATG (Lymphoglobuline : 15 mg/Kg5日間投与)及びCyA (SandimmunR : 5 mg/Kg/日3ヶ月間投与)の併用投与を行った.【結果】中等症1症例(NR)を除いて,5症例にgood response (GR)が9ヶ月後の判定で得られた.この5症例はいずれも診断後3ヶ月以内であった.無効例では診断後77ヶ月であった.副作用は6例中4例に認められたが,methylprednisolone投与でコントロール可能であった.【結論】ATG ・ CyA 併用療法は診断後3ヶ月未満の中等症以上の症例に対して有効である.しかし,投与中の副作用は高頻度であり,遅発性合併症の問題もあるため慎重な注意と経過観察が必要と思われた.         (平成12年4月11日受理)

2000.02.02

Diagnosis and medical management of inflammatory bowel disease *

 クローン病と潰瘍性大腸炎はいずれも若年者に好発する難治性の腸の慢性炎症性疾患であるが,その病因・病態には違いが認められ,それぞれに特異的な診断と治療が存在する. クローン病では, 1995年に本邦での診断基準が大きく改訂され,アフタ様病変のみからなる特殊型も確診可能となった.クローン病患者の胃噴門部には,竹の節状外観という特異的な所見を認めることが多く,一見正常に見える胃・十二指腸粘膜では高頻度にCD68陽性細胞が集簇している.また,抗Saccharomyces cerevisiae抗体の陽性率が高い.治療では,栄養療法が初期治療としても維持療法としても有効であるが, 5ASA製剤,抗TNFα抗体, CD4抑制療法, ICAM-1アンチセンス療法など新たな治療法も注目されている.また,狭窄した腸管を切除せずに内視鏡下でバルーンを用いて拡張する方法は今後普及していく治療法である. 潰瘍性大腸炎では,虫垂開口部病変の存在や拡大内視鏡を用いた重症度の評価が新たな診断法として注目されており,血清学では抗好中球細胞質抗体(核周囲型)の診断意義が認められつつある.治療では, antedrug conceptに基づく肝代謝性ステロイドや白血球除去療法,シクロスポリン静注療法,二コチン療法,ヘパリン療法,抗生物質療法など種々の試みがなされている. クローン病とも潰瘍性大腸炎とも診断できないようなindeterminate colitisが存在するのは確かであるが,診断力不足によるindeterminate colitisを可能な限り避け正確な治療方針がたてられるように,炎症性腸疾患の診断と内科的治療に関する最新の知見を解説する.

2000.02.01

Human cases of infection with Paragonimus miyazaki (Trematoda: Troglotrematidae) in Japan – A bibliographical review – *

 本邦において1974~1999年の間に報告された宮崎肺吸虫ヒト寄生に関する報文を通覧して症例の一覧表を作成し,疫学的に検討した.その結果, 1999年までの確実な症例は153例(男性122,女性18,性別不明13),および詳細不明症例が25例あった.患者は本邦各地で発生しているが,特に関東地方に多くみられ,東京都が42例(27.5%),神奈川県が35例(22.9%),山梨県が18例(11.8%)の順に多かった.患者の年齢は6~77歳であったが,20~40歳代が85.5%を占めて最も多く,性別では男性が87.0%で圧倒的に多かった.患者の特徴的症状は,本種幼虫保有のサワガニまたはイノシシ肉生食後1ヵ月~2年の間に発現していた.患者における虫体の寄生部位は主として胸腔内であったが,少数例において頭蓋内・皮下組織・前眼房内への異所寄生が認められた.患者の主訴は胸部痛(33.3%)・咳嗽(30.5%)・発熱(10.6%)の順に多かった.患者の臨床症状は胸水貯留(73.2%)・自然気胸(26.8%)・肺異常陰影(22.8%)の順に多く,大多数の患者では末梢血中の好酸球増加が認められた.治療にはビチオノールまたはプラジカンテルの投与が有効で,患者に発現した臨床症状は治療薬服用後1年以内に消失し,血中の好酸球数は速かに正常値に戻っていた.                       (平成12年3月24日受理)

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