h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1999.02.02

Clinical analysis of 58 cases of drug-induced liver injury between 1977 and 1998 *

 当教室で入院治療を行った薬剤性肝障害58例を1977年から1988年の25例と1989年から1998年の33例とに分け,比較検討した.起因薬剤は鎮痛解熱剤,抗生物質,循環器用剤の順に多く,鎮痛解熱剤が最近増加していた.また比較的安全とされている和漢薬やビタミン剤,健康食品でも肝障害がみられた.薬剤によるリンパ球幼若化試験(LST)の陽性率や好酸球増多の出現頻度は最近は低下傾向であった.また総ビリルビン値やアルカリフォスファターゼ値については,最近の症例において低下しており,病型分類では胆汁うっ滞型症例が減少し肝細胞障害型が増加していた.治療に関しては起因薬剤の中止が最も重要であるが,肝庇護剤やコルチコステロイドの投与も行われた.入院期間については胆汁うっ滞型が有意に長期入院が必要であった.重症型薬剤性肝障害は7症例あり,このうち4例では複数の薬剤によるLSTが陽性で,劇症型も2例(うち1例死亡)みられた.最近の当科で経験した薬剤性肝障害症例はアレルギーを示唆する検査所見が乏しくなっており,本邦の判定基準による確診例が減少傾向であった.       (平成11年5月26日受理)

1999.02.01

Mechanisms for inhibitory action of ethanol on contraction of rat bladder smooth muscle – Analysis using rat bladder smooth muscle cells in primary culture – *

 Ethanolが膀胱平滑筋を弛緩させる可能性が示唆されていることから,本研究ではラット膀胱平滑筋条および初代培養ラット膀胱平滑筋細胞を用い, ethanolのKCI誘発性[45Ca2+]流入に及ぼす影響を検討することにより, cthanolの膀胱平滑筋収縮抑制作用の発現機序について検討を行った. KCIは濃度依存性に膀胱平滑筋条を収縮させ,この収縮はethanolおよびverapamilにより有意に阻害された.これらの両薬物の同時存在下における膀胱平滑筋収縮の阻害の程度は,これらの薬物の単独存在下でみられた収縮阻害の程度と同一であった. KCIは膀胱底部より調製した平滑筋細胞への[45Ca2+]流入を濃度依存性およびincubation時間依存性に増加させた. KC1 (50 mM)誘発性[45Ca2+]流入は細胞膜脱分極阻害薬であるtetrodotoxin,および細胞膜安定化薬であるdibucaineとprocainamide,および電位依存性L型Ca2+チャネル阻害薬であるverapam旧こより濃度依存性に抑制された.また, 10 mM verapamilはこの[45Ca2+]流入を完全に消失させた. ethanolはKCI誘発性[45Ca2+]流入を濃度依存性に抑制し,電位依存性L型Ca2+チャネル活性化薬であるBay k-8644により誘発される[45Ca2+]流入も完全に抑制した. cthanolによるKCI誘発性[45Ca2+]流入抑制は,膀胱頂部および底部より調製した平滑筋細胞のいずれにおいても認められ,流入抑制作用の程度に差違は認められなかった.以上の実験成績から, ethanolによるKCI誘発性膀胱平滑筋収縮の抑制は, ethanolが平滑筋細胞膜の脱分極により誘発される電位依存性L型Ca2+チャネル活性化を介した細胞内へのCa2+流入を抑制することにより発現されることが明らかとなった.            (平成11年5月24日受理)

1999.01.07

Multiple vertebral osteomyelitis with meningitis caused by group B streptococci -A case report – *

 骨髄炎は頻度の少ない感染症とは言えないが,B群連鎖球菌による成人例の本邦における報告は見受けられないので報告する. 症例は56歳男性.発熱と頸・腰部痛を主訴に当科へ紹介転院となった.血液培養,髄液検査,頸腰部MRI等の検査でB群連鎖球菌による,敗血症と髄膜炎を伴う多発性脊椎炎と診断され, Ampicillin (ABPC)の10週間の点滴治療にて改善した.この症例ではアルコール依存症と耐糖能障害が発症に関与していたと考えられた. 本例は,外傷や末梢血管病変によらない成人のB群連鎖球菌による多発性骨髄炎の本邦初報告例と考えられる.                  (平成11年2月13日受理)

1999.01.06

A basic study of super-selective transcatheter arterial chemotherapy and chemoembolization (1) -Establishment of an animal model for super-selective transcatheter arterial chemotherapy and preparation for appropriate suspension of microembolization – *

 目的:超選択的動注化学療法(super-selective transcatheter arterial chemotherapy :STAC)と超選択的化学微小塞栓療法(super-selective transcatheter arterial chemomicroembolization : STACME)による抗腫瘍効果の基礎的検討を行うために,動物実験モデルの確立と微小塞栓物質の調製を行った. 材料と方法:体重4kgの雄性日本白色家兎12羽をもちい, VX 2腫瘍細胞浮遊液の移植数により,以下の4群すなわち3×10^4個/0.03 ml, 5×10^4個/0.05 ml, 1×10^5個/0.1 ml,1×10^11個/ 0.1 mlに分け耳介2/3先端部にそれぞれ移植し14日後の腫瘍成長を比較した. 微小塞栓物質として,イミペネム・シラスタチン(imipenem-cilasta tin sodium : IPM/CS)懸濁液を採用した. IPM/CS 0.5gにイオギザグレード10 ml および20 ml を加えて懸濁液を作製し,顕鏡により微小塞栓物質の粒子径と粒子数を比較検討した.この懸濁液を移植腫瘍の耳介動脈に投与し,投与直後,腫瘍を摘出しH-E染色切片を組織学的に検討した. 結果:移植腫瘍は,5×10^4個/0.05 ml 細胞浮遊液を移植した場合に最も安定した腫瘍成長を認めた. 微小塞栓物質は, IPM/CS 0.5gをイオギザグレード10 ml にて懸濁したものが粒子数,粒子径ともに塞栓物質としての性状に優れていた.また同懸濁液投与による組織所見では,60μm以下の血管に塞栓が確認された・ 結論:本実験で作製された動物実験モデルは, STACの基礎実験に有用であり,本実験結果から得られたIPM/CS懸濁液は, STACMEの基礎的検討を行う際に適切な微小血管塞栓効果が得られることが確認された.             (平成11年5月13日受理)

1999.01.05

Defining the functional domains of Ku p70 subunit using deletion mutant proteins *

 Ku抗原はリウマチ性自己免疫疾患の患者血清が認識する自己抗原のひとつとして見いだされ,その後このKu抗原はp70サブユニットとp86サブユニットからなるヘテロタイマーとして核内に存在し,二本鎖DNAに生じた損傷を修復したり遺伝子再構成に必須な機能を果たしている核蛋白であることが明らかにされてきた.このKu抗原がヘテロタイマーを形成したりDNAに結合したり核に移行したりする役割を持った領域はp70サブユニットのaa 216-241 とaa 584-609, aa 483-609 の部位にあると推察されている.そこで. P 70サブユニットの欠失変異体を作成してゲルシフトアッセイ法や免疫共沈降法,免疫蛍光抗体法を使ってKu抗原の分子形成に必須な領域と機能発現に必須な領域を明らかにすることを目的として実験を行った. p 70サブユニットについて既に推察されていた3つの領域(aa 216-241 とaa 584-609, aa 483-609)のいずれを欠失しても変異型p70サブユニットはp86サブユニットと変異型ヘテロタイマーをつくり, DNA断片(77 bp)にも結合した.これに対し,これら3つとは異なる新たな領域(aa 392-466)を欠失させると変異型ヘテロタイマーもつくれないし, DNA断片へも結合できなくなった.次に,全長のp70サブユニットに存在する核局在化シグナルの部位を決めるためにSf9細胞内でp70サブユニットを発現させその局在性を調べたところ, aa 483-609 を欠失させた場合には変異型p70サブユニットは核に移行しなかったが, aa 584-609 を欠失させた場合には核が著しく変形したものの変異型p70サブユニットは核に移行した.これらの結果からKu抗原の分子形成とDNA結合能に必要なp70サブユニットの領域はaa 392-466 の部位であり, p 70サブユニットが核に移行するのに必要なシグナルはaa 483-583 にあることが分かった.さらに今回見出したこれら2つの領域(aa 392-466, aa 483-583)は夕ンパク質データベース中に相同なアミノ酸配列を持たないことから,Ku抗原は今までに報告されていない全く独自の配列を使ってヘテロタイマーを形成しDNAへ結合したり,独自の核移行シグナルを使って核へ移行している可能性が示された.(平成11年4月13日受理)

1999.01.04

Bone mineral density measurements using peripheral quantitative computed tomography (pQCT) – An evaluation of its clinical utility – *

 骨粗鬆症の診断には,正確な骨密度(BMD)の測定が必須である.末梢骨CT法(pQCT)は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)とは異なり,体積当たりのBMDが得られること,海綿骨と皮質骨のBMDを分離して測定できること,被曝線量が少ないことや,測定精度が良好なことなど優れた基本性能のため,骨塩定量法として注目されている.本研究では,pQCTによる骨塩定量法の意義を検討した. pQCT装置にはDensiscan-1000(ScancoMedical AG)を使用し,橈骨BMD (超遠位部の海綿骨BMD (rD50),超遠位部の海綿骨と皮質骨を併せたBMD (rDlOO)と骨幹部BMD (rP1 00))および脛骨BMD (超遠位部の海綿骨BMD (tD50),超遠位部の海綿骨と皮質骨を併せたBMD (tD100))を測定した. 男女共に, pQCTにより測定された若年群(22~44歳,男性107例,女性78例)の橈骨および脛骨BND)は,高齢群(60歳以上,男性17例,女性26例)よりも有意に高値であり,両群問の骨量減少は橈骨,脛骨ともにD50が他部位よりも減少率が大であった.性盖については,高齢群では男性がいずれの部位のBMDにおいても女性より有意に高値であった.pQCTで測定された橈骨BMDはDXAで測定された腰椎,橈骨および大腿骨頚部のBMDと有意(すべてP <0.001)の正相関を示し,腰椎BMDとはrD 50の相関(r=0.688)が最も良好であった.原発性骨粗鬆症の診断基準で定められた骨粗鬆症の診断一致度をDXAとpQCTで比較したところ, kappa score は0.31~0.59であった.椎体骨折の有無の識別能についてはrD50, rD100, rP100測定のROC下面積はほぼ同等であった. 今回のPQCTによる橈骨および脛骨BMDのin vivoの測定の結果,加齢に伴うBMDの減少を知るにはD50の測定が適していた.また, D50はDXAによる腰椎BMDと相関が良好であり,全身的な海綿骨のBMDを反映する可能性が示された.腰椎DXAと橈骨pQCTによる骨粗鬆症の診断一致度は,中等度の一致率を呈しており,臨床的有用性が期待された.いずれにしてもpQCTによる骨塩定量は海綿骨BMDと皮質骨BMDについての情報を与えてくれるユニークな方法であることが示された.  (平成11年4月8日受理)

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