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Online edition:ISSN 2758-089X

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1999.01.03

Smoking interventions for hospitalized patients *

 川崎医科大学附属病院に入院中の117人の患者に,喫煙と健康に関するアンケート調査を実施した.89人(男60人,女29人)から回答が得られ,回収率は76.1%であった.89人のうち喫煙者は17人(男15人,女2人)で,男女の喫煙率はそれぞれ25.0%, 6.9%であった.これら喫煙患者17人に対して喫煙習慣への介入を行い,7人が禁煙に成功した.しかし,退院6ヵ月後にも禁煙を継続しているのを確認できたのは4人(23.5%)であった.入院しているにもかかわらずタバコを吸っている患者は,禁煙を病気の治療のための最優先事項と思っていない.入院中の喫煙患者には,禁煙指導と一緒にライフスタイルの是正など適切な生活指導を実施しなければならない.禁煙できても退院後のフォローアップ体制を整える必要がある.                   (平成11年3月27日受理)

1999.01.02

Prognostic factors in small cell carcinomas and large cell neuroendocrine carcinomas – Especially in reference o E-cadherin and α-catenin expression *

 肺小細癌(SMCC)および大細胞性神経内分泌癌(LCNEC)は神経内分泌由来の癌であると考える傾向がある.今回我々はSMCC, LCNEC 41例において,E-カドヘリン,α,-カテニンの発現性を調べるとともに,予後との相関について分析した.E-カドヘリンおよびα-カテニンはLCNECではそれぞれ83%, 67%に,小細胞癌では40%, 29%に発現がみられた.特にSMCCでは大型細胞を混じる部分で,発現が顕著であった.生存分析からは,双方発現群は非発現群,片方発現群に比して,予後良好で(P <0.05), LCNEC(67%), SMCC (Mixed small and large cell type, 50%)では両接着分子の発現を認めた.この事実はSMCCで大細胞癌成分を含んでいるものは,小細胞癌成分のみからなるものとは本質的に異なり,前者はLCNECに生物学的に類似しているのではないかと推測された.                              (平成11年3月9日受理)

1999.01.01

Expression of matrix metalloproteinases (MMPs) during hamster pancreatic duct carcinogenesis and detection of serum MMPs in tumor-bearing hamsters *

 ヒト膵管癌の実験系であるハムスター膵発癌系において,細胞外基質分解酵素であるmatrix metalloproteinases (MMPs)の膵癌発生および,進展過程に対する役割を明らかにするとともに,血清中のMMPsの測定による膵癌血清診断の可能性を検索することを目的とした.材料としてニトロサミンにより誘発された原発性膵癌(primary pancreaticcancer,PC),ハムスター膵管癌皮下継代移植株(transplantable hamster pancreatic ductcarcinoma,HPDt)およびHPDtより培養樹立したハムスター膵管癌培養株(hamsterpancreatic duct carcinoma cell line, HPDc)を用い, MMP-2, -9, TIMP-1, -2,膜型MMP (MT1 -MMP)のmRNA発現をノーザン解析にて, MMP-2蛋白の発現を免疫組織化学染色にて,更に,その酵素活性をゼラチンザイモグラフィーにより解析した.またHPDtをハムスター背部皮下に移植し,腫瘍の増大にともなう血清中のMMPs発現をゼラチンザイモグラフィー解析により検討した.ハムスター正常膵臓(normal pancreas,NP)と比較してPCおよびHPDtではMMP-2, -9, TIMP-2, MT1 -MMP のmRNAの過剰発現がみられた.HPDcではいずれも有意な発現上昇はみられなかった.抗MMP-2抗体による免疫組織化学染色では,膵管上皮の過形成,異型過形成,膵管内癌,浸潤癌と病変が進展するにつれMMP-2蛋白発現が強くなる傾向がみられた.さらに,活性型MMP-2の発現はPC,HPDtで上昇しており,またMMP-2活性化率とMT1-MMPのmRNA発現量が正の相関を示した.血清中のMMPs発現量は腫瘍の増大と相関していた.以上の結果よりハムスター膵癌の発生および進展にMMP-2の発現活性化が重要であること, MMPsをマーカーとした膵癌の腫瘍血清診断の可能性が示唆された.                               (平成11年2月23日受理)

1998.04.07

Intermittent callosal apraxia due to the left dominat internal carotid artery stenosis: a case report *

 患者は69歳女性,右利き.右上肢の動かしにくさに引き続き,しゃべりにくさも出現したため川崎医科大学神経内科外来を受診した.外来受診時,日常生活動作には支障はみられなかったが,言語命令に対し左手の運動が困難な所見があり脳梁性失行が疑われた.入院時一般身体所見で両側,特に左側優位に内頚動脈の雑音を聴取した. 頭部MRIでは多発性脳梗塞の像を認めたが,脳梁には異常は認めなかった. SPECTで左半球優位の血流低下がみられた.脳波では左半球の全般性徐波化がみられた。MR-angiography (MRA)とDigital subtraction angiography (DSA)では左優位の両側内頚動脈の狭窄がみられた.症状に変動が見られることより脳血流不全が関与しているものと判断し,左内頚動脈内膜剥離術を施行した.術後症状は軽快した.脳梁性失行の原因として従来脳梁梗塞,腫瘍,脳梁の動静脈奇形,外傷, Marchiafava-Bignami病などが報告されている.本例の間欠的脳梁失行症状出現には,ゲルストマン症候群や失書などを伴わないことより,推測の域をでないが,脳梁あるいはその連絡経路の機能不全が考えられ,その原因として左側優位の一過性脳循環不全が考えられた.     (平成10年11月19日受理)

1998.04.06

Genotypic and phenotypic analyses of proten 4.2 anomalies *

 赤血球膜蛋白protein 4.2 (P4.2)異常症は,先天性溶血性貧血の原因となり得る事.そして,このP 4.2異常症は日本人に多いという特徴が知られている.そこで, P4.2分子異常症を集積,分類し,その遺伝子解析を通じて得られる特徴を検索することとした.本研究では,先天性溶血性貧血80家系. 179例を電気泳動法を用いて膜蛋白定量を行い.このうち臨床的に優性遺伝が確定されなかった球状赤血球症(non-autosomal dominanthereditary spherocytosis(non-AD HS)),表現型がHSとは異なるP4.2完全欠損症,P4.2 doublet 等のP4.2異常症を,電気泳動所見上4型に分類した.このうち25症例についてP4.2及びその結合蛋白であるband 3 の遺伝子解析を行い, P 4.2異常症の病因遺伝子の同定を試みた.その結果,まずP4.2の質的異常症に関しては,異常蛋白を発現するtypeのP 4.2 doublet Nagano 症例(72/74 kD)においてP4.2遺伝子のR 488 H が同定され,その病因となることが示唆された.次に, P4.2の量的異常に関しては,中等度~高度P4.2欠損症では, band 3 遺伝子に病因を有する(実例:Band 3 Fukuoka : G 130 R)事が多く,またP4.2の完全欠損症では, P4.2遺伝子の点変異,すなわちNippon type(A142 T)がその実例であることが判明した.軽度P 4.2欠損症では,その病因をP4.2又はband 3遺伝子に持たず,他の膜蛋白分子異常によってP4.2が二次的に欠損したものと推定された.                           (平成10月27日受理)

1998.04.05

Teaching basic physical examination – needs, objectives, strategies, and assessment –

  今日までの日本における臨床教育は極めて不十分で,卒前・卒後臨床教育で臨床医が獲得している臨床能力は片寄っていて,幅広さに欠けている.一言で言えば,基本的臨床能力が身に付いていない.身体診察に関する能力も不十分にしか獲得されていない基本的臨床能力の一つである. 本研究は,臨床入門段階(臨床実習に入る前)の医学生に「身体診察法の教育」を行う場合,これを効率的かつ効果的に行うためにはどのようにすればよいか,ということについて検討した教育学的研究である. 1989年から9年間川崎医科大学の3年生または4年生(1994年までは4年生, 1995年からは3年生)を対象に,文献検討をしながら,教育の現場で検討を重ねた結果である. 臨床入門段階の医学生に効率的かつ効果的に「身体診察法の教育」を行うためには,以下の諸点が重要である.1.「身体診察法の教育」の重要性について認識していること2.教える項目をEssential minimum に絞ること3.教え方を統一すること4.小グループで実習をすること5.客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination : OSCE)で実技評価をすること                          (平成10年10月26日受理)

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