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Online edition:ISSN 2758-089X

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1998.04.04

Clinical study of bipolar arthroplasty *

 Bipolar型人工骨頭置換術の変形性股関節症に対する適応は現在,否定的な意見が多い.さらに,外骨頭の摺動角が通常の人工股関節全置換よりも小さく大腿側インプラントの頚部に衝突が発生しやすく,著明なポリエチレンの摩耗が生じることが問題となっている.しかし,我々は外骨頭の生体親和性が優れている点に着目してセラミック外骨頭を便用してきた.この人工骨頭置換術で良好な成績が得られているので報告する.5年以上経過観察し得た19関節(変形性股関節症14関節,大腿骨頭壊死症5関節)を対象とした.術前JOAスコアーは平均44.4点が最終追跡時平均84.7点に有意に改善した.80点以上の良好群が73.7%を占めていた.成績不良や移動,緩み等を理由に再置換術を施行されたものはなかった.術後のX線像では14関節(73.7%)に外骨頭の移動がみられた.最終調査時,上方移動量は平均4.1 mm, 水平移動量は平均2.5mmであった.8関節で5mm以上の水平あるいは垂直方向の移動を認めた.人工骨頭周囲の放射線透過性変化は臼蓋側は1関節のみにみられた.大腿側の放射線透過性変化は6関節(31.6%)にみられた.感染,脱臼,人工骨頭の破損などはみらなかった.我々が使用したアルミナ・セラミック製骨頭は外骨頭外縁にポリエチレンのはみだしがなくこの点が有利に作用した.我々は外骨頭を脱臼位ではなく原臼位に設置すること,可及的広範囲に骨性被覆が得ること,寛骨臼内壁を5mm以上残すことを原則とし,気動式臼蓋リーマーを用いて臼蓋を掘削した.臼蓋形成不全が強い症例では骨移植等の臼蓋形成術が必要であるが,スクリューによる固定の際,外骨頭と直接接触する危険性を考慮し,移植骨を臼蓋の外にまたがるL状に採型し,スクリュー固定を行うよう工夫している. Bipolar型に随伴する問題のうち骨溶解と,ポリエチレン摩耗粉の発生はいずれも外骨頭と頚部の衝突によって引き起こされると考えられるが,我々のシステムはこれらの問題の発生を減少できたと考える.(平成10年10月26日受理.)

1998.04.03

basic studies on selective intra-arterial injection of Cisplatin (CDDP) – comparativce studies of tissue concentrations of platinum in tumors and other organs – *

 頭頸部癌および子宮癌に対し,シスプラチン(CDDP)の超選択的動注法は腫瘍縮小効果が著明であるとの臨床報告を散見するが,その至適投与量および投与速度に関する検討は少ない.今回,家兎の右下腿にVX2腫瘍を移植し,腫瘍に対するCDDPの選択的動注法(以下動注法)と静注法における血漿中白金動態と腫瘍および他の正常組織内白金濃度を測定し,比較検討した. 3 kg雌家兎を56羽使用し,動注法では右伏在動脈にカテーテルを留置し,大腿動脈よりCDDP 0.83 mg/kg と1.67 mg/kg を15分間あるいは30分間で注入した.血中濃度は,血漿中の総白金と限外濾過された遊離白金を投与後0, 5, 10, 15,30, 60分に測定し,腫瘍およびその周囲筋,肺,肝臓,腎臓,子宮,舌の組織内濃度は投与直後と投与60分後で測定した.組織内白金濃度は,腎臓で最も高値を示し,舌と肺の白金濃度は静脈投与で有意に高値であった.腫瘍内白金のAUC (area under the curve)は動注法で静注の約1.4倍であった.腫瘍内白金濃度を高値に保ちつつ,腎臓内白金濃度を低値とする投与法は, CDDP 0. 83 mg/kg を15分間で動注する方法であるとの結論を得た.                                (平成10年10月24日受理)

1998.04.02

Changes in valvular heart diseases – analysis in 24 years by hospitalized patients at Division of Cardiology – *

 過去24年間に川崎医大附属病院循環器内科に入院した弁膜疾患患者の種類ならびに病因さらに解剖学的異常にどのような変遷がみられているかについて調査した. その結果,この24年間でも,弁膜疾患全体の占める頻度は漸減し,とくに弁膜疾患の原因が「リウマチ性」から「非リウマチ性」,とりわけ変性や虚血へと変遷していることが示唆された. このことは他の疾病の場合と同様に,弁膜疾患の病因にも本邦における急速なライフスタイルの変化が関連しているものと思われた.          (平成10年12月8日受理)

1998.04.01

MRI diagnosis for prostate cancer *

 近年,生活様式の欧米化と高齢化社会の到来により,本邦でも前立腺癌の増加が認められている.前立腺癌の局在診断には,経直腸超音波法とともに,優れたコントラスト分解能を有するmagnetic resonance imaging (MRI)が臨床に使用され,有用性は確立されつつある. MRIは,前立腺癌の診断において腫瘍の検出と,病期決定に用いられる. MRIによる前立腺癌の読影には。T2強調横断像が専ら用いられている.正常前立腺の画像を熟知した上,腫瘍の局在,被膜や精嚢腺の浸潤を評価することが大切である.今後, MRIの最新技術の応用が必ず実用化されるであろう. 本稿では川崎医科大学附属病院における前立腺癌MRIの現況を概説する.                               (平成10年10月30日受理)

1998.03.06

radiotherapy for bone metastases of malignant pheochromocytoma *

 褐色細胞腫(Pheochromocytoma)はクロム親和性細胞を有する交感神経系組織(主として副腎髄質)より発生する腫瘍であり,転移を有する悪性例は約10%程度存在する. 今回我々は左副腎原発褐色細胞腫の術後14年目に骨転移及びリンパ節転移で再発し放射線治療(外照射)を行った1例を経験した. 症例は68歳の男性. 1996年12月より腰痛,歩行障害を自覚し泌尿器科を受診,精査の結果上記疾患による骨転移(第1腰椎,仙骨,腸骨,坐骨),腹部傍大動脈リンパ節転移と診断され,紹介により当科で放射線治療(外照射)を行った.1997年4月から6月にかけて(1)腰椎,腹部傍大動脈リンパ節,(2)仙骨,腸骨, (3)坐骨にそれぞれ計(1)59.4 Gy,(2)60 Gy, (3)59.4Gyを照射した.治療により腰痛や歩行困難などの自覚症状は軽減し,血中カテコールアミン(N-Adr)値の減少やCT画像上腹部傍大動脈リンパ節の縮小(約32%減少)が認められた.                   (平成10年9月3日受理)

1998.03.05

Anatomical considerations of the wall and cavity of the cavernous sinus *

<目的> 海綿静脈洞がその名の通り静脈洞であるのか,或いは静脈叢であるかは長い間議論されて来た.また,海綿静脈洞部病変に対して直達手術を行う機会が増えているが,海綿静脈洞の外側壁の構造については脳神経の走行部位や静脈腔との関係など不明な点も残されている.中でも,外側壁のouter layer である固有硬膜を剥離した後に存在する膜様の構造物,いわゆるinner membranous layer は最近特に注目を集めている.これらの問題を解剖用遺体を用いて検討した.<材料と方法> embalming techniqueにて保存された解剖用遺体38体より一塊として摘出した海綿静脈洞とその周辺組織を手術用顕微鏡を用いて解剖し,観察した.更に組織学的検討も加えた.<結果> 海綿静脈洞の内腔(静脈腔)の発達度には個体差が著しく認められ,海綿静脈洞全体に対する静脈腔の占める割合が2/3以上のwell developed type , 1/3~2/3のmoderately developed type, 1/3未満のpoorly developed type の3型に分類した.その割合はそれぞれ66%, 21%, 13%であった. well developed typeが海綿静脈洞として一般的にイメージされているもので,静脈腔が広く存在し,間に梁柱を認める型である.それに対し,poorly developed type は散在する静脈の間を疎性結合織が埋め,その中を脳神経が走行し,脂肪も散在し,まさに静脈叢の様相を呈していた.海綿静脈洞の外側壁は冠状断の組織標本で観察すると,密性結合織と疎性結合織の二層構造よりなり,この二層の間に他の構造物は存在しなかった.静脈腔が広く発達した例では,疎性結合織は一層の膜のように見えるが,深部へも連続している構造物であった.<結論> 海綿静脈洞の本質は,静脈腔の発達程度のバリエーションやpoorly developedtypeの様相を考慮すると,静脈叢と理解する方が妥当と思われる.外側壁の固有硬謨を剥離して認められる膜様物は,その外観,性状および組織標本による観察結果より,固有硬膜の内側には特別な膜があるわけではなく,静脈や脳神経等を包む疎性結合織が膜様に見えているだけであると考えられた.              (平成10年10月5日受理)

1998.03.04

Mechanisms for peroxynitrite-induced Ca2+ influx into mouse cerebral cortical neurons *

 Peroxynitriteが抑制性神経伝達物質であるγ-aminobutyric acid (GABA)をCa2+依存性に放出させること,またCa2+依存性神経伝達物質放出が細胞内へのCa2+流入により誘発されることが知られていることから,本研究では初代培養マウス大脳皮質神経細胞への[45Ca2+]流入を測定することにより,peroxynitriteにより誘発される神経細胞へのCa2+流入機序について検討を行った. Peroxynitriteは濃度およびincubation時間に依存した[45Ca2+]流入の増加をもたらした.この流入増加はcyclic GMP 生成の有無にかかわらず認められたことから,cGMP非依存性であることが判明した.神経細胞膜の脱分極阻害薬であるtetrodotoxin,膜安定化剤であるdibucaineおよびlidocaineは,いずれも用量依存性にperoxynitrite誘発性[45Ca2+]流入を阻害した.Peroxynitrite誘発性[45Ca2+]流入はP/Q型およびL型電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)阻害薬であるω-agatoxin IV A (ω-ATX)およびnifedipineにより有意に抑制され,これら両阻害薬の同時存在下では完全に消失したが,N型VDCC阻害薬であるω-conotoxin GVIA (ω-CTX)は影響を及ぼさなかった.一方,30 mM KCI 誘発性[45Ca2+]流入はperoxynitriteにより有意に抑制され,その抑制の程度はω-CTXによる抑制の程度と同程度であった.さらに,KCIおよびperoxynitriteの同時存在下で認められる[45Ca2+]流入は, nifedipineとω-ATXの同時添加で消失し, ω-CTXは何らの影響も与えなかった.以上の結果から,peroxynitrite誘発性[45Ca2+]流入は, peroxynitriteによる神経細胞膜の脱分極を介したP/Q型およびL型VDCCsの活性化に起因しており,N型VDCCはperoxynitriteにより抑制されることが明らかとなった.                              (平成10年9月30日受理)

1998.03.03

Development of the renal corpuscle and occurrence of apoptosis in the newborn mouse kidney – an ultrastructural study – *

 マウス新生子腎臓を電子顕微鏡で観察し,腎小体の形成過程で出現する細胞死とアポトーシスの関連,さらに細胞死の局在と由来を明らかにした.新生マウス腎臓皮質には造腎帽子から完成腎小体まで種々の発達段階の腎小胞が層状に配列する.腎胞内で腎小体を構成する細胞のうち死に至る細胞は,ボーマン嚢腔が明瞭となるS宇型腎胞から未熟腎小体に出現する.S字型腎胞において細胞死はボーマン嚢細胞群にみられ,足細胞とボーマン嚢外壁細胞のいずれの層にも死細胞の取り込みに由来する大型二次ライソゾームが認められる.死細胞は核染色質が核膜にそって高度に凝集後,小型化,断片化されて隣接する細胞に貪食される.この死細胞は超微形態レベルでアポトーシスと判定され,足細胞とボウマン嚢外壁細胞との境界部,すなわちボウマン嚢上皮細胞移行部で多く認められた.未熟腎小体では死細胞がボーマン嚢腔にも少数出現しており,死細胞は明調大型の液胞や脂肪滴を含有し,超微形態的特徴からボウマン嚢外壁細胞由来と考えられる.プログラム細胞死は腎小体の形成と関連し,ボーマン嚢細胞群の分化・成熟ならびにボウマン嚢腔の発達と関連して出現する.                     (平成10年9月22日受理)

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