h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1994.02.02

A Study of the Presence of Ground Glass Nuclei in Papillary Carcinoma ―The Effect of Various Fixatives on Paraffin-Embedded Sections― *

甲状腺乳頭癌に高頻度に出現するground glass nuclei (GGN)に関してその細胞核の形態学的特徴を解析し,ホルマリン固定の期間および固定液の差による出現頻度を検討し,さらに,他の結節性病変と比較することによりGGNの乳頭癌における特異性を研究した.1 ) GGNの評価にあたっては,光学顕微鏡を用いた著者の視覚的判定と画像解析装置IBASを用いて数量化した成績はよく一致し,視覚的評価が客観性を有するものであることが示唆された.2)乳頭癌20例において腫瘍組織中にclear nucleus (CN)が認められたものは11例(55%)であり, pseudoclear nucleus (PN)は100%に認められた.また,各疾患について細胞1,000個中のCNおよびPNの出現頻度をみると,乳頭癌では平均0.51%であった.一方,濾胞癌,濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫においてはCNが出現したものは1例も認められなかった.また,PNの出現頻度は乳頭癌で平均18.3%,濾胞癌で平均1.5%,濾胞腺腫で平均2.8%,腺腫様甲状腺腫で平均1.8%であった.乳頭癌におけるPNの出現頻度は他の疾患群のそれと比して有意に高値であった(p<0.001).これらの成績より,CNとPNの両者を併せてGGNと規定した方が実際的であると思われた.3 ) 20%ホルマリン液中に5年間保存されていた乳頭癌組織中のGGNの出現頻度は,同固定液中で24~48時間固定後の組織のそれに比べ有意に高値であった(p<O.Ol).4 ) 固定液の種類によるGGNの出現頻度の差を観察すると,乳頭癌ではホルマリン液の濃度が高くなるほど高頻度にみられ,複合固定液での出現頻度は20%ホルマリン液のそれに比して高値であった.また,非乳頭癌でも同様の成績であった.(平成6年2月25日採用)

1994.02.01

Effects of Chloride Removal on the Endocochlear DC Potential in Guinea Pigs *

Endocochlear DC potential (EP)およびCochlear microphonics (CM)の形成における陰イオンの影響を検討するために,外リンパ腔をCI- free solution で潅流した.NaClのCIがmethanesulfonateによって置換されたCI- free solution を灌流するとき,EPは75.0±3.56 mVから55.0±5.63 mVまで低下した.同時に測定したCMもEPと同様の低下を示した. CI- free solutionによってEP, CMが低下した後,標準人工外リンパ液にて再灌流を行ったが, EP, CMの回復は認められず, CI- free solutionによる作用は非可逆性と考えられた.本実験におけるEP, CMの低下は,外リンパ液中のCI-を減少させることによって血管条辺縁細胞のbasolateral membrane に存在するであろうと考えられるNa-K-2Cl協同輸送が減少し,辺縁細胞の細胞内Na+濃度が低下した結果, EPを維持しているNa+-K+ポンプの活性が低下したものと判断された.(平成6年2月14日採用)

1994.01.10

A Case of Adventitial Cystic Disease of the Popliteal Artery ―A Histological and Immunohistochemical Study― *

膝窩動脈外膜嚢胞の1例を報告した.症例は53歳男性で間歇性跛行を主訴に来院した.左下肢の大腿動脈造影にて,膝窩動脈に狭窄が認められたため膝窩動脈血行再建術が施行された.切除された膝窩動脈の外膜には粘稠な液を入れた多房性嚢胞が存在していた.組織学的には嚢胞壁は結合織で構成され,内面には所々に扁平な細胞が存在していた.これらの扁平細胞は免疫学的にビメンチンに陽性で,第8因子関連抗原, QB-10,ケラチンに陰性であった.また,これらの細胞周囲にはラミニン陽性物質はみられなかった.我々は病因論的にガングリオン類似した外膜の粘液変性と考えた.  (平成5年11月10日採用)

1994.01.09

A Case Report of a Mediastinal Parathyroid Cyst *

縦隔内副甲状腺嚢腫は非常に希な疾患で文献上27例が報告されているにすぎない.今回我々は1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は62歳女性で,咳嗽と喀痰のため撮影した胸部X線検査にて縦隔内異常陰影を指摘され,当科で精査を行った.甲状腺左葉下極付近より始まり上縦隔へ達する嚢腫性病変を認め,甲状腺嚢腫を疑ってcervical approach にて嚢腫摘出術を施行した.術後組織診断は副甲状腺嚢腫であった.これまで報告されている27例に本症例を加えて検討したところ,副甲状腺機能亢進症状を伴う10例では男性が8例で,伴わない18例では女性が13例で,機能亢進症状と性別に因果関係が認められた(p<0.01, χ2検定).縦隔内嚢腫性病変の鑑別では副甲状腺嚢腫も念頭におく必要がある.副甲状腺機能亢進症状を伴わない症例での術前診断は困難であるが,穿刺液中の副甲状腺ホルモンの測定により可能となる.                         (平成6年1月17日採用)

1994.01.08

A Case Report of Adult Varicella Pneumonia with Severe Respiratory Distress *

今回,我々は基礎疾患のない30歳男性に発症し,重症呼吸不全に陥った,原発性水痘肺炎の一例を経験した.胸部X線上,両肺にびまん性に大小さまざまな結節影を認め,著明な低酸素血症を呈したため,機械的人工呼吸管理を開始した.さらに, acyclovir, y-globulin, methylprednisolone大量療法,抗生物質投与により改善した.原発性水痘肺炎重症例は比較的稀であり,さらに気管病変を観察し得たので併せて報告する.                                (平成5年11月18日採用)

1994.01.07

A Case Report of Pyothorax Caused by Streptococcus Milleri for Which Serum Antibody Showed a High Titer *

症例は70歳,男性.3 8℃ 台の発熱および右胸部痛が出現し,平成5年2月12日に当科に入院した.胸部X線写真で右側に胸水貯留を認め,採取した胸水の性状は浸出性で白血球数34900/μ1,好中球79%の所見から膿胸と診断した.胸水培養では嫌気性菌は分離されなかったが, Streptococcus milleri (S.milleri)が検出された。その後S. milleri に対する血清抗体価の測定を琉球大学第一内科に依頼し,“S.。xilleri group” のうちS.anginosusの抗体価が×512と上昇していることが判明した.Smitilleriは口腔内常在菌であるViridans streptococciの1グループに属しS.anginosus, S. constellatusおよびS.intermediusの3菌種の総称で,特に化膿性疾患の原因菌になり得るとして最近注目されるようになった. S. milleriが多菌量分離される感染症では,血清抗体菌が有意に上昇しているといわれており,自験例ではS.angiosusに対して高値を呈したことから,同菌を原因菌と考えた.膿胸,肺化膿症では胸水および喀痰の細菌学的検査で菌が検出される頻度は高くはなく,原因菌が不明の際にはS.milleriを考慮して血清抗体価の測定が診断に有用であると考えられた.            (平成6年2月5日採用)

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