h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1994.02.07

Trabeculectomy with 5-fluorouracil *

難治緑内障13例14眼に対しtrabeculectomyの術後5-fluorouracil (5-FU)の結膜下注射を行い,その手術成績を5-FUを併用しない場合の手術成績と比較して検討した.経過観察期間中に5-FU投与群14眼中10眼(71%), 5-FU非投与群19眼中10眼(53%),が術後21mmHg以下の眼圧にコントロールされた.術後合併症は脈絡膜剥離,角膜びらん,浅前房,結膜創離開がみられ,前二者は5-FU投与群に多かったが重篤なものはなかった.角膜びらんの発生は5-FU注入時に30G針を使用することにより減少した.5-FUの併用は難治緑内障患者,特に50歳未満の若年患者および濾過手術再手術例に有意に有効であった.                        (平成6年3月2日採用)

1994.02.06

Changes in Symptoms and Subtype Diagnosis of the First Stage of Schizophrenia *

昭和48年から昭和50年と,昭和63年のそれぞれに川崎医科大学精神科外来を受診した初発の精神分裂病患者各50例について,初期病像及び類型を調査した.両群に差はなかったが,精神分裂病が規定された20世紀初めと比較すると,緊張病型の減少,妄想型の増加が認められた.初期病像はその内容や主題に変化はあるが,精神分裂病そのものの本質に変化はないものと考えられた.                  (平成6年2月28日採用)

1994.02.05

Brain Tolerance against Hypoxia and Ischemia in Young Animals and its Reasons *

乳幼児の脳は低酸素や虚血に対し抵抗性を有すると言われるが,その原因は明らかではない.そこで幼若動物を用い,低酸素および虚血に対する脳の抵抗性とその要因について検討した.方法:マウスを用い低酸素における生存時間,断頭による下顎呼吸の持続時間(gasping movement time : GMT)の測定を行った.また砂ネズミを用い遅発性神経細胞壊死(delayed neuronal death : DND)による海馬CAl細胞の残存率を検討した.更に低酸素下の乳酸,ピルビン酸, LDH, superoxide dismutase (SOD)の測定, GMT,DNDに対する低体温の影響を検討した.結果:1)幼若なほど低酸素や虚血に抵抗性を示した.2)幼若マウスの低酸素負荷,完全脳虚血において抵抗性の消失する時期は,各々3,5週齢で,砂ネズミの一過性脳虚血によるDNDに関しては,6週齡であった.3)低酸素下の乳酸,ピルビン酸, LDHの代謝, SODの反応が成熟,幼若マウスでは,異なっていた.4)低体温によりGMTは,成熟,幼若マウスとも延長した. 5) DNDモデルにおいて低体温により海馬CAl細胞は保護されたが,幼若砂ネズミに特異的ではなかった.考察:幼若動物は,低酸素や虚血に対し抵抗性を有し,要因として低酸素下の脳代謝, SODの反応の違いが関与していると考えられた.低体温は,脳保護効果を示すが,幼若動物に特異的ではなかった.                     (平成6年2月28日採用)

1994.02.04

Effects of Chemo-Endocrine Therapy on DMBA-induced Rat Mammary Carcinomas : Combined Effects of Leuprolide Acetate and 5′-Deoxy-5-Fluorouridine *

DMBA誘発ラット乳癌に対し,抗エストロゲン剤であるtamoxifen (TAM), LH-RHアゴニストであるleuprolide acetate(TAP),化学療法剤である5 ‘-deoxy-5-fluorouridine(5′-DFUR)を用い,化学療法と内分泌療法の併用効果について検討した.腫瘍増殖抑制率は, TAPと5′-DFURの併用投与群が73.7%と最も高く,ついでTAP単独投与群の65.7%, TAMと5′-DFURの併用投与群58.0%, TAM単独投与群52.4%,5′-DFUR単独投与群30.0%であった. TAP単独投与群には,初期の治療効果が認められない症例があったにも拘わらず, TAPと5′-DFUR併用投与群では,治療直後より抑制効果がみられ,全例の腫瘍が治療前より縮小し,併用の効果が認められた.Estrogen receptor (ER)とprogesteron receptor (PgR)の治療後の値は,それぞれTAM単独投与群, TAP単独投与群, TAMと5′- DFUR併用投与群, TAPと5’-DFUR併用投与群において,治療前と比して有意に低値を示した(p<0.05).Mitotic indexは治療前と比し, TAM単独投与群, TAP単独投与群, TAMと5’-DFURの併用投与群, TAPと5′-DFURの併用投与群において,治療後は有意に低値を示した(p<0.05).各治療群とも抗腫瘍効果の高いものに細胞の組織学的変化が多く認められた. TAM単独投与群は空胞変性, 5′-DFUR単独投与群は巣状壊死, TAP単独投与群は扁平上皮化生とそれぞれの治療群に特徴的な変化がみられた.TAPと5 ‘-DFURの併用群の扁平上皮化生の出現頻度はTAP単独群より高く,広範囲に出現する傾向がみられた.本研究の結果から閉経前ER陽性乳癌に対しTAPと5’-DFURを併用した化学・内分泌療法が有用であることが示唆された.(平成6年2月26日採用)

1994.02.03

Polyclonal Activation of Human Lymphocytes by Asbestos is Dependent on MHC Class II *

近年,環境汚染物質であるアスベスト線維の曝露により各種臓器癌や自己免疫疾患の発生率の増加が指摘され,当科においても,末梢血分離単核細胞にクリソタイル繊維の添加することにより, CD4+ CD45RA+細胞(Suppressor-inducer cell)の活性化が引き起こされることを報告してきた.今回の実験では,クリソタイル繊維以外のアスベスト線維においても同様にCD4+ CD45RA+細胞の活性化と細胞内カルシウム,及びIL-2の増加を引き起こすことを証明した.またこれらの変化はMHC Class II陽性細胞を破壊することにより認めなくなった.以上よりアスベスト線維によるリンパ球活性化にはMHC Class II陽性細胞が必要であり,またリンパ球活性化は珪酸を含む各種アスベスト線維および珪酸単独によってもひきおこされることから,珪酸化合物特有の現象と考えられた.また,ポリクローナルなT cellの活性化とMHC依存性から,これら珪酸化合物によるリンパ球活性化がスーパー抗原としての作用による可能性も考えられた.  (平成6年2月25日採用)

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