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Online edition:ISSN 2758-089X

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1985.01.01

Three Dimensional Analysis of Arteriog-raphs of the Lower Limb of Primates : Saphenous artery

霊長類6科12属の下肢の動脈造影を行い,立体的解析により足部を供給する伏在動脈の走行について系統発生学的観点より霊長類の分類と比較検討した.霊長類の下腿の動脈系に伏在動脈と膝窩動脈の発達の間に相関関係が認められ,伏在動脈の存在により,膝窩動脈に由来する前脛骨動脈,後脛骨動脈はそれぞれ発達が悪く伏在動脈は足背,足底,または両者を供給する.この伏在動脈の形態を5種のタイプに分類し比較した.Type 1 : 伏在動脈は大腿動脈より分枝し,主に足底部に分布する.(ポト,スローロリス,スレンダーロリス,オオギャラゴ)Type 2: 伏在動脈は足背,足底両者に分布し伏在動脈はさらに2枝に分枝する.(コモンマーモセット,ゲルディモンキー,ドグエラヒヒ,ウーリーモンキー,バーバリーエイプ)Type 3: 伏在動脈は足背部のみに分布し,2枝に分枝する.(ニホンザル)Type 4: 伏在動脈は足背部のみに分布し,分枝せず第一中足骨間へ続く.(チンパンジー)Type 5: 伏在動脈は発達が悪く,下腿上部の皮膚に分布する.(ヒト)

1984.04.17

Euthyroid Graves’ Disease : A Case Report

Graves病の眼症状を呈しながら甲状腺機能は正常範囲にある症例は,“EuthyroidGraves’Disease”あるいは“Ophthalmic Graves’Disease”と呼ばれ,多くの報告がなされている.しかしながら,その病態は多様性を示しいまだに明確ではない.今回我々は,両上眼瞼浮腫を主訴とした63歳,女性のEuthyroid Graves病を経験したので報告する.

1984.04.16

A Parathyroid Cyst with Polycystic Disease : Report of a Case with Etiologic References

Polycystic diseaseに合併した上皮小体嚢胞の一例を経験した.症例は63歳,女性,前頸部の腫瘤を知人に指摘されるまでは,前頸部の痛み,圧迫感などの腫瘤による局所症状は認めなかった.腫瘤は,超音波検査と穿刺吸引液中の検査で,術前にparathyroidcystと診断された.術前の腹部超音波検査で,多嚢胞腎,多重胞肝,いわゆるpolycysticdiseaseの合併が認められた.一般検査所見では,軽度の肝機能,腎機能障害を示したほかは,血清ミネラル,甲状腺機能検査を含む,血清生化学検査は正常範囲内であった.この症例を報告し, parathyroid cystの原因的考察と, polycystic diseaseとの関係を中心に考察を加えた.

1984.04.15

Two Cases of Intestinal Behcet’s Disease

右下腹部痛を主訴とする腸管型ベーチェット病の2例を報告した.共に眼症状を欠く不全型のベーチェット病であった.消化管X線検査で多発性の回盲部潰瘍を認めた.第1例は61歳男性で多発性潰癌を外科的に,第2例は51歳女性で内科的に治療した.共にステロイド投与がなされていたが,回盲部潰瘍は組織学的にあるいは文献的にステロイド潰瘍ではないと推論した.腸管型ベーチェット病の治療として穿孔例では緊急手術が第一次的である.内科的治療としてはコルヒチン,サラゾスルファピリジンなどが有効であるとされているが,ステロイド投与の可否については賛否両論がある.腸管型ベーチェット病は生命予後の点で重要である.

1984.04.14

A Clinical Trial of Hepatitis B Vaccine at Kawasaki Hospital

川崎医科大学附属川崎病院の職員を中心に18名(男性16名,女性2名)のハイリスクグループに,HBs抗原蛋白として20μgのB型肝炎ワクチンを,初回, 4週間後, 24週後の3回接種した. 3回接種後のHBs抗体陽転率は,RIA法では疑陽性も含めると,88.9% (16名/18名)で, HBワクチンの有効性が確かめられた. 6名のlow responderのうち,初回ワクチン接種38週後にHBs抗体を検索し得た2名は抗体価の低下がみられ,早期の追加接種が必要と考えられた.Low responderとnen-responderは全員男性で,男性はワクチンに対する抗体反応が弱いという既報に一致した. PHA法では,抗体陽転率は55.5% (10名/18名)で,RIA法でgood responderであったもののみ陽性であった.副作用は局所痛4件(7.4%),軽度倦怠感3件(5.3%)のみで,初回接種時に多くみられた.重篤なものはなく,安全性に問題はなかった.

1984.04.13

Five Cases of Squamous Cell Carcinoma Induced by Irradiation

放射線照射によって生じた皮膚扁平上皮癌の5例を経験した.そのうち3例はいずれも良性皮膚疾患に対して,放射線治療が行われたもので,足白癬,ビタール苔癬,頭部乳頭状皮膚炎,各々1例ずつであった.他の2例は医師で,職業性の慢性放射性皮膚炎が進行したものである.

1984.04.12

A Case of Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome

著者らは既にBlue rubber bleb nevus症候群の1例について報告したが,最近,さらに1例を経験したので報告する.症例は67歳男性で, 1984年2月15日に,皮膚,口腔内血管腫を主訴とし検査目的にて当科入院となった.理学所見では,口腔内に8個の血管腫を認め(Fig. 1),陰茎を含む全身には47個の青色の柔らかい血管腫を認めた(Fig. 2).消化管造影にては,食道に4個の隆起性病変を認め(Fig. 3),内視鏡検査にて血管腫と診断された(Figs. 4~6).また,胃内にも血管腫を認めた(Fig. 7).血液検査にては軽度の鉄欠乏性貧血を認めた.皮膚血管腫の組織像は海綿状血管腫であった(Fig. 8).消化管の他の部位,腹腔内臓器には血管腫を認めなかった.また,血管腫の家族歴もない.本邦においては, 30例の報告がある.食道血管腫は内視鏡検査にて診断されたが,本症候群における食道血管腫の合併はまれである.

1984.04.11

A Study of 1, 468 Patients Admitted to the Department of Family Practice, Kawasaki Medical School Hospital

1981年4月15日から1983年12月31日までに川崎医科大学総合診療部に1,468例の入院患者があり,そのうち男は871例,女は597例で, 15歳未満の小児例は330例, 15歳以上の成人例は1138例で,年齢は生後0日から94歳までみられ平均年齢は38.5歳であった.330例の小児例については(1)主病名を国際疾病分類に従って分類すると消化器疾患が200例(60.6%),先天性疾患が80例(24.2%)にみられ, (2)病名では鼠径ヘルニアが最も多く156例(47.3%)にみられ,臍ヘルニア43例(13.0%),虫垂炎38例(ll.5%)が上位を占め, (3)手術は280例(84.8%)に行われ,鼠径ヘルニアまたは臍ヘルニアが165例(58.9%)で過半数を占め, (4)平均入院日数は14.7日であった.1,138例の成人例については(1)消化器疾患が244例(21.4%)で最も多く,呼吸器疾患200例(17.6%),循環器疾患187例(16.4%)がこれに続き, (2)病名では高血圧症が最も多く147例(12.9%)にみられ,糖尿病107例(9.4%),悪性新生物92例(8.1%),気管支喘息86例(7.6%),消化性潰瘍72例が(6.3%)これに続き,(3)上位10疾患のうち少なくとも1つを持っている患者は全体の54%を占めており,これらの患者は10位以下の疾患を持つ患者に比べて男に多く,平均年齢が高く,合併疾患を多く持っており,(4)手術は108例(9.5%)に行われ,虫垂炎が37例(34.3%),鼠径ヘルニアまたは腹壁ヘルニアが33例(30.6%),軟部腫瘤が25例(23.1%)にみられ, (5)平均入院日数は23.8日であった.総合診療部の医師は鼠径ヘルニア,悪性新生物,気管支喘息,高血圧症,糖尿病などの一般的な疾患の知識を持ち,それらに合併した疾患に対しても総合的な医療を行うことが要求される.

1984.04.10

Clinical Experience in Family Practice at Kurashiki Station Clinic, Kawasaki Medical School

川崎医科大学総合診療部では昭和58年1月,附属病院から6km離れた百貨店6階に外来診療所を開設した.ここでは特定の診療科名を標榜せず乳幼児から老人まで年齢を問わず外科,内科,小児科,整形外科,皮膚科の区別なく全科の診療を行っている.そして乳幼児を含む上気道感染症,上部消化管造影などを必要とする消化器疾患,腰痛・肩こりを含む整形外科疾患,アトピー性皮膚炎・湿疹を含む皮膚科疾患,外傷の処置,高血圧症・糖尿病などの食事療法を含む生活指導を主とするコントロールおよび小児から成人までの心身症の診療ができる医師が必要であることがわかった.しかもcommon diseaseをもって来院した患者について地域・家庭の中での個人の健康管理と疾病の予防に力を注ぐ必要があり,従来の外科医,内科医,小児科医などといわれる医師では十分でなく総合診療医が必要であることが明らかとなった.

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