1985.01.19
Brunner’s Gland Adenoma of the Duodenum Associated with Multiple Early Gastric Cancer and Atypical Epithelial Lesion: A Case Report
多発性早期胃癌,異型上皮巣を合併した十二指腸ブルンネル腺腫の1例を報告し,本邦における十二指腸ブルンネル腺腫と胃癌合併例についての文献的考察を行った.症例は69歳男性,胃集団検診で十二指腸ポリープを指摘され精査目的で当院外科に入院した.術前に,早期胃癌(IIc+IIb),異型上皮巣を合併した十二指腸粘膜下腫瘤と診断した.切除標本では,十二指腸球部前壁に2.2×1.8cmの山田IV型の隆起病変,前庭部には0.8×1.2cm の扁平隆起病変が認められたが,胃体中部後壁の病変は,わずかに浅い陥凹を示すのみで肉眼的に病変の正確な局在を指摘することはできなかった.病理組織所見は,十二指腸ブルンネル腺腫,多発性胃癌(lIc + IIb, IIb, moderately differenciated tubular adenocarcinoma), ATPであった.
1985.01.18
Extraadrenal Pheochromocytoma ― A Case Report and Review of the Literature ―
67歳,女性の異所性褐色細胞腫を経験したので報告する.術前のCT scan および,血管撮影にて,腫瘤が腹部大動脈左側に在ることが判った. Prazocinにて良好な血圧が保たれ,容易に腫瘤を摘出できた.術後血圧は,140/70mmHgと正常化し,現在患者は,日常生活をおくっている.
1985.01.17
A Case of Carcinoma of the External Auditory Meatus
外耳道癌の1症例を報告した.症例は79歳男性で左血性耳漏を主訴に来院.肉眼的に腫瘤は左外耳道後壁を中心として存在し,表面不規則で易出血性であった.組織は扁平上皮癌であった.放射線,化学,免疫療法を併用し腫瘤は肉眼的に消失した.慢性中耳炎や耳として治療している中に外耳道癌が含まれている可能性がある.
1985.01.16
Subacute Necrotizing1 Lymphadenitis with Fever of Unknown Origin
症例は20歳の女性.入院45日前より,38~39゜Cの発熱が出没していた.近医に受診するも原因不明で,不明熱の精査目的のため当科へ入院となった.入院時より全身状態は良好で,左頸部に直径1~2cmのリンパ節を数個触知したが,その他の理学検査に異常はなかった.検査成績では,白血球数2200, ESR 47 mm/h, CRP 2.2 mg/dl 以外に特記すべき異常を認めなかった.入院後も発熱が持続するため,悪性リンパ腫との鑑別の目的でリンパ節生検を施行した.組織像では,好中球の浸潤を伴わない壊死病巣を認め,診断は亜急性壊死性リンパ節炎(SANL)と確定できた.その他に,リンパ節生検による確定診断こそできなかったが,不明熱の精査で入院し,原因がSANLと考えられる2例を経験している. SANLは,不明熱の原因のひとつとして比較的多く存在するのではないかと考える.
1985.01.15
Responses and Protective Proliferation of Stromal Collagen against Cancer in Double Xenografts Due to Highly Concentrated SSM (100 times: Special Substance, Maruyama)
T-細胞を欠除したヌードマウスヘヒト癌細胞を移植して長期間SSM注射をおこなうと癌間質に由来するcollagen増殖が促進され著しい癌増殖の抑制がみられる.本実験では同一個体にそれぞれ母細胞を異にしたヒト癌細胞HGC,HLCやマウス由来のNB41A3細胞を移植しdouble graftsを作製して,腫瘍細胞に反応する担癌体のcollagen反応と増殖を比較した.その結果, collagen反応様式の基本は個体の免疫基盤に左右されるよりも癌細胞自身に依存していることをさらに明らかにすることができた.今回使用したSSMは従来ヒトの治験に使用されているSSM-A (2μg/ml多糖体)のほかに100倍高濃度液(200μg/ml多糖体)を使用した.その結果, collagen増殖はさらに促進されSSM-Aでは著効の見られなかったHLC xenograftでも著しいcollagen増殖がおこり,癌細胞の封じ込めも著しかった. 濃度のほかにSSM注射時期も重要で,早期使用ほど有効であった.また,高濃度液といえども全く副作用はみられなかった.なお,肺癌移植の場合,高濃度注射により一部の腺癌は扁平上皮細胞への化生がみられた.以上の所見からヒト型結核菌体多糖体の抗癌への作用機序は腫瘍間質からのcollagen増殖促進が本質的なもので癌の母細胞の種類によって異なるが,腫瘍間質の少ない腫瘍では効が少なかった.このSSMとcollagen増殖との因果関係については,結核菌体多糖体が直接collagenの生合成に利用されるのか,副作用なく長期間使用可能なために,担癌個体の低下した免疫能を正常に復する結果,修復機転の回復促進が起こるのか,また,癌細胞が放出するImmunosuppressor acidic protein等の減少を起こすことによって担癌体の免疫基盤の正常化により,癌破壊組織の修復が促進されるかなど, collagen増殖がSSMの間接的作用によるのか今後の癌治療への重要な課題を提供した.既報の乳癌第II症例(50歳)は昭和54年43歳の時骨盤内転移を発見し,長年腰椎転移を認めているが,現在(昭和60年4月)生存加療中で,昭和58年1月に膣部の転移巣の脱落を認め生検組織で,癌転移組織は線維化消失を起こしながら増殖していた.
1985.01.14
Studies on the Platelet Saponin Test
連続平均容積測定装置を用いて,血小板容積(Initial mean particle volume ; I-MPV),サポニン添加後の膨張率(expansion ratio ; ER),低張溶液中での縮小率(Shrinkageratio ; SR)を測定した.血小板容積の測定には3.13%クエン酸ソーダを用いた方がEDTA-3Kよりも再現性がよかった.健康成人(20-35歳,男15人,女15人)のI-MPVは8.1±0.7μ3, ER は1.41±0.07, そしてSRは24±4であった.健康成人30人を含む100例, 112回の測定では血小板数とI-MPV,血小板数とSRそしてI-MPVとERは負の相関があり(p<0.001),血小板数とER, I-MPVとSRの間には正の相関(p<0.05)がみられた.急性期脳血管障害患者では,血小板容積は大で,脳出血例のSR(凝集能)は高値であった.熱傷患者の血小板容積は血小板数の動的変化に伴い変動し,ERとSRも同様に変化した.以上より,血小板容積を測定することは血小板数の測定により各種疾患の病態を把握するのと同様の意義があると思われた.
1985.01.13
Hemoglobinopathy in Japan (II) ―Survey in Hyogo Prefecture―
1980年から1981年にかけて兵庫県における集団検診受診者の等電点電気泳動法によるヘモグロビンのマススクリーニングを行った. 12,391名のうち4名の異常ヘモグロビン保因者(Hb G Waimanalo, Hb Ube-2, Hb J Norfolk, Hb Ankara)と1名のβ-サラセミア症を発見した.4名の異常ヘモグロビン保因者は何ら臨床症状を示していなかったが,β-サラセミア症の例は,軽度の貧血を呈していた.
1985.01.12
Polalization Microscopic Investigation of Amyloidosis of the Heart Using H-E Stained Specimens
全身性アミロイドーシスでアミロイド陽性の104例の心臓を病理組織学的に検索中に,興味のある現象を見出した. Congo-red染色標本のほかにH-E染色標本の71例(68.27%)が,偏光顕微鏡でみると緑色または黄緑色の複屈折を示したのである.心筋梗塞,疣贅性心内膜炎,動脈硬化症,肝硬変症,キャンディダ症その他23疾患の心臓のH-E染色標本30例を対照として調べたところ,上記のような現象は全く認められなかった.そこで,われわれは,保存されてあるH-E染色標本を偏光顕微鏡で検索することは,アミロイドーシスのスクリーニングに有用であると考えた.
1985.01.11
Rehabilitation after Radical Mastectomy ― With Referrence to Manual Muscle Testing and Activity of Daily Living ―
1.術後の患側肩関節機能障害は a.可動域障害:頻度では側方挙上,水平位外転が100%,前方掌上98.6%,水平位内転87.0%,後方掌上81.2%と高率,内旋は低率(34.8%).障害度は水平位外転が86.0%の程度に著しく,側方掌上51.7%,前方挙上40.0%で,内旋は9.0%と軽度. b.筋力障害:全例障害され,障害度は,外旋,側方挙上,水平位内転,前方挙上の順に軽度で,後方挙上が最も軽度. c.日常生活動作(ADL):全例障害.障害度は,“ふとんの上げ下げ”が83.6%と著しく,“棚の上のものの上げ下げ”と“洗濯物を干す”が62.3%の順にみられた. 2.術式別の肩関節機能障害は a.可動域障害:縮小手術では内旋が,頻度および程度とも低い.定型的根治術は拡大根治術と類似するが,後方挙上,内旋,外旋の障害が軽い. b. 徒手筋力テスト(MMT)からは,縮小手術が全項目についてGrade 3 が少ない(軽度).定型的根治術と拡大根治術は側方挙上,外旋障害を除き,他は拡大根治術の障害が著しい. c.ADLは縮小手術が“ふとんの上げ下げ”を除き,障害は最も軽度で,次いで定型的根治術,拡大根治術と順に障害の頻度・程度は高く,著しい. 3.リハビリテーションによる回復訓練の十分な61例の回復期間は a.可動域:5ヵ月以内に87%の回復がみられる.縮小手術は2ヵ月,続いて定型的根治術は3ヵ月にピークを示し,完全回復は5ヵ月であった.拡大根治術は3ヵ月から始めて回復し,7ヵ月の間に分布し,遅延した. b.筋力:70%以上が2ヵ月で,縮小手術と定型的根治術は全例が4ヵ月,拡大根治術は6ヵ月を要した. c.ADL :86.8%が3ヵ月まで,縮小手術は1ヵ月以内から回復し,次いで定型的根治術,拡大根治術の順に遅延した. 4.回復の最も遅延する運動は,a.肩関節可動域:側方挙上,前方挙上,水平位外転,b. MMT:水平位内転であった. 5.指椎間距離テストは肩関節可動域回復のよい指標となる.
1985.01.10
The Significance of the Immune Cell Response after Alloantigen Stimulation in the Renal Interstitial Tissue of Mice ― I. Monoclonal Antibody Study ―
同種腎抗原によるマウス自己免疫性IC腎炎において,多核白血球,Tリンパ球の部位別,経時的変動をABC法により組織切片上で観察した.抗原刺激後,多核白血球は14日目を中心に一過性の変動を示したが,Tリンパ球は7日目にまず髄質部で増加し,以後持続した.皮質部では,14日目に軽度の増加を認めた.14日目の多核白血球変動とTリンパ球変動の間に解離を認め,このことより細胞性免疫反応の不全型,あるいは局所における免疫自己制禦機構の関与する可能性が示唆された.