1985.02.10
A Case Considered to be Rhinoscleroma Occurring on the Cheek
頬部の無痛性腫脹を主訴に来院し,病理組織学的にrhinoscleromaと考えられた1例を報告した.症例は51歳,男性で8年前に出現した右頬部の腫脹が徐々に増大し,来院時約5×4cmの弾性硬の腫瘤を認めた.X線診査では右上顎洞前壁の一部骨吸収と洞周囲骨壁の肥厚像を呈した.臨床的に良性腫瘍を疑って切除したところ,病理組織学的には形質細胞の浸潤を中心とする肉芽腫性病変で, Mikulicz細胞, Russell小体が散在してみられる定型的なrhinoscleromaの組織像を示した.
1985.02.09
A Case of Herpetiform Pemphigus
63歳男のherpetiform pemphigus の1例を報告した.9ヵ月前より紅色丘疹出現.痛痒著明.最近環状の紅斑および小水疱を混じるようになる.病理組織学的に表皮内水疱, eosinophilic spongiosis を認め,蛍光抗体直接法にて表皮細胞間にlgG,A,C3の沈着を認め,IC抗体価128倍. DDS著効を呈した.
1985.02.08
Chromosome Testing Carried Out at Kawasaki Medical School Hospital between July and December, 1984
川崎医科大学中央検査部では,昭和59年7月より染色体の検査を開始し,同年の12月末までに31例の症例を調べた.その結果,染色体異常は8症例にみられ,その内訳は7例が血液疾患に由来し他の1例は46, XX/47, XYYのモザイクを示した症例であった.染色体異常の正しい診断は,臨床側の詳細な観察と検査側の正確な分析とが合致して初めて可能である.川崎医科大学における染色体検査の今後の発展のために,昭和59年度の検査結果をまとめ考察した.
1985.02.07
A Case of Medullary Carcinoma of the Thyroid with Hyperprostaglandinemia
発病後20年の緩慢な経過をとり,頸部所属リンパ節転移,多発性骨転移,肝転移を来し,古典的症状と言われる頑固な慢性水様性下痢を主訴としたamyloid struma を伴う甲状腺髄様癌の一症例を経験した.本症例ではサイロカルシトニン以外にプロスタグランディンが高値を示した.腫瘍が分泌するプロスタグランディンに下痢症状の原因を求め,プロスタグランディン合成阻害剤にて症状を認めた.
1985.02.06
Histopathological Studies of Cultured Dorsal Root Ganglia in Acute Arsenical Neuropathy
マウス後根神経節の培養を行い,三酸化砒素(As2O3)の影響を位相差顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて,病理組織学的に検討した.成熟培養組織に10-7Mから10-3 M 濃度の三酸化砒素を投与し,3日間継時的に観察を行った.10-6 M 以上の濃度で,形態学的な変化を認めた.神経細胞では,初期変化としてGolgi装置の膨化と小空胞の出現が顕著であった.その後,小胞体の配列の乱れと膨化がおこり,大空胞が形成された.神経細胞と比較して,衛星細胞は侵襲をうけにくかった.軸索と髄鞘では,最初に神経細線維の走行の乱れと神経微小管の消失が認められ,続いて,髄鞘の解離が生じた.変性が進行すると, myelin ovoid, myelin debris がSchwann細胞の細胞質内に観察された.以上より,三酸化砒素による急性中毒の末梢神経障害は,軸索変性が主体であることが示唆された.