h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1985.01.06

Detection of Precursor to μ-protein in Adenovirus Type 2 and the Biological Significance of the Precursor

ヒト型アデノウイルス2型のクロマチンを構成する4種類の蛋白の1つ,μ蛋白の前駆体の存在について調べた.感染後期のKB細胞よりoligo (dT)セルロースカラムクロマトグラフィーによりpoly(A+)mRNAを精製し, rabbit reticulocyte lysate やwheat germ extractの無細胞アミノ酸導入系に35S-メチオニン,3H-アルギニンを用い同定を試みた.得られた標識蛋白質の解析からμ蛋白前駆体は,分子量約8,000 Daltonであり該当するmRNA画分はおよそ10Sであった.その存在意義をウイルスの増殖・成熟の過程から考えると,ウイルスクロマチンのsupersolenoid構造の形成と維持またウイルス粒子前駆体であるempty shellへのDNA充填の促進であると考えている.

1985.01.05

Effects of a Ca-antagonist on Myocardial Ischemia Part 2 : Experimental Study

著者は, diltiazemが労作狭心症に対しても有効である事を報告したが,その作用機序については不明な点も多い.そこで今回,冠狭窄犬を用い臨床常用量と同程度の血中濃度のdiltiazem投与下で労作狭心症に準じた心筋酸素需要量を上昇させる負荷を加える方法で, diltiazemの心血行動態,局所心筋壁運動,心筋代謝ならびに局所心筋血流量に及ぼす影響について検討した.i)冠狭窄・安静時:diltiazem投与により,血圧,心拍数は有意に低下減少した.冠狭窄部冠血流量は有意ではないが減少傾向を示した.虚血領域壁運動および乳酸代謝は有意に改善した.虚血部心筋血流量は減少傾向を示したが内層の血流低下は認めなかった。ii)冠狭窄・負荷時:収縮期血圧・心拍数をdiltiazem投与前後で一定に上昇させた負荷では, diltiazem投与により血行動態は著変を示さなかったが,虚血領域壁運動および乳酸代謝は軽度改善した.また,虚血部心筋血流量は有意差を認めなかったが,非虚血部および境界部での心筋血流量は主に外層での増しにより増加した.以上の成績から, diltiazemは虚血心筋を保護する作用を有する事が認められた.その作用機序としては,①血圧・心拍数の低下減少による心筋酸素需要側の抑制,②血圧・心拍数を上昇させた負荷条件下で虚血心筋血流量の増加を認めず虚血心筋の改善を示した事は, diltiazemの虚血心筋自体に対する直接的保護作用の存在が示唆された.

1985.01.04

Evaluation of Bone and Liver Scans in Patients with Breast Cancer ―Diagnostic Accuracy and Follow up Study―

1.乳癌237例(再発29例)における骨・肝転移のRI診断確診率は,RI診断基準をA(転移),B(疑転移),C(転移なし)に分けると,骨ではAが62.5%, Bは7.0%,肝ではAは75%,Bは18.9%であった.またRI病巣集積(肝はSOL)数の多い程確診率が高い.2.肋骨のRI集積頻度は高いが転移は低い.一方頭蓋骨,大腿骨では高く部位によって異なる.3.肝の単発SOL転移診断は解剖学的要因が多くをしめ困難である.4.骨転移における診断AはRIがX線像より先行する症例がある.Bでは追跡により診断Aを経て転移を確認しえる症例があり,肝転移では診断Bの予後はAよりも良好で,早期発見の意義があった.5.術後の追跡間隔は診断Aを2ヵ月毎,Bを3ヵ月毎,Cを6ヵ月毎とした場合の追跡ではRI診断Bは約30%と低率であり,さらに短縮の必要がある. A, Bの追跡間隔は適正であった.

1985.01.03

Immunochemical Analyses of Normal Human Thyroid Gland ―Thyroid Albumin―

正常ヒト甲状腺中のヨード蛋白を,等電点分画と免疫化学的,免疫組織化学的,物理化学的手技を用いて分析した.その結果,次のような結論を得た.1)甲状腺中のalbumin様蛋白の等電点(pl)値は4.80から5.21であった.この値はserum albumin (SA)の4.85から6.16と比べ異なっていた.また甲状腺可溶性分画中のT3の等電点はalbumin様蛋白と一致した.2)免疫拡散実験の結果,T3とalbumin様蛋白は結合しているという知見を得,いわゆるthyroid albumin (TA)と呼ばれているものであると判明した.3)これら両albuminのアミノ酸分析を行い,明らかな差を認めた.4)freeのT3のpl値については,直接測定は困難なのでRIAを用いて算出したところ,約5.32でありTAのそれとは異なっていた.5)thyroglobulin(TG)は現在までいわれているpl値約4.5より幅広い等電点値をとる事がわかった(p1 4.40から5.82).6)免疫組織化学的分析ではTA, T3, TGは甲状腺濾胞上皮に限局しており,コロイドには陰性であった.

1985.01.02

Immunohistochemical Analysis of T cell Subsets and Langerhans Cells in Various Dermatoses

発症要因として免疫学的因子の関与が考えられる疾患を主体とした数種の皮膚疾患のT細胞サブセットおよびLangerhans細胞についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的解析を行った.全身性エリテマトーデスの浸潤単核球の大部分はOKT 3, OKIa l, およびOKT 8 陽性の活性化されたsuppressor/cytotoxic T細胞であったが一方,円板状エリテマトーデス,菌状息肉症(浸潤期),環状肉芽腫症(限局型)および円形脱毛症においてはOKT3, OKIa l,OKT 4 陽性の活性化helper/inducer T細胞が優位であった.深在性エリテマトーデスのT細胞サブセットに関しては一致した所見が得られなかったが同症患者の真皮にみられたリンパ泗胞様構造は免疫組織化学的に正常ヒトリンパ組織と同様の細胞構築を示した.OKT 6 陽性の樹枝状細胞(Langerhans細胞)は,一部の全身性エリテマトーデス患者の表皮内,菌状息肉症の表皮内および真皮内,更にprogressive stage の円形脱毛症の毛包内に多数認められた.このような皮膚組織におけるT細胞サブセットおよびLangerhans細胞の変化は細胞性免疫機構の表現の一つであり,病態解析のみならず臨床上重要な意義を持つものと考える.

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