h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1983.01.01

Study of Arterial Patterns in the Hand of Primates – Three Dimensional Analysis of Arteriograph in the Hand of Macaca Fuscata-

ニホンザルの手の血管造影を行い,立体的解析により詳細な観察結果を,系統発生学的観点より検討した. 1)背側中手動脈は4本存在し,第1,第2,第3は橈骨動脈に第4は尺骨動脈に由来した. 2)第2背側中手動脈は,第2中手骨間で,近位および遠位貫通枝を分枝し,深掌動脈弓(鎖)形成の主幹であった. 3)背側手根網は,橈骨,尺骨動脈そして前骨間動脈より形成され,各背側中手動脈への血行関与は認められなかった. 4)近位貫通枝は,近位掌側動脈鎖と深掌弓,遠位貫通枝は,遠位掌側動脈鎖の計3本の深掌動脈弓(鎖)を形成し,形態的変化は3型に分類された. 5)深掌弓と遠位掌側動脈鎖との間に掌側中手動脈を,近位および遠位掌側動脈鎖の間に中手骨間動脈を形成する一定の規則性を有していた. 6)尺骨神経深枝は, 3本の深掌動脈弓(鎖)の内,深掌弓の走行に一致していた. 7)母指掌側には第1総指動脈,背側には第1背側中手動脈に由来する背側尺側,背側橈側動脈が走行していた. 8)ヒトの手で,サルでみられる太い第2背側中手動脈が残存し,かつ,近位貫通枝を有し,第1背側中手動脈が,深掌動脈弓形成の主管となるようなヒトとサルの形態を有する移行型を認めた.

1982.04.13

A Case of Chronic Obstructive Pulmonary Disease with Typical ” Saber-Sheath ” Trachea

典型的Saber Sheath Tracheaを伴う慢性閉塞性肺疾患の一例を報告した.症例は66歳,男性,呼吸困難,喘鳴,意識障害を主訴に入院した.毎日20本, 50年間の喫煙歴があり,喘息の既往がある.胸部Ⅹ線像では胸廓内気管左右径の著明な狭窄像をみとめた. CT像,気管支鏡も同様に著明な胸廓内気管左右径の短縮と前後径の延長をみとめた.本症例のTracheal Indexは0.33と重症型のSaber Sheath Tracheaであった.肺機能検査では慢性閉塞性肺疾患を支持し,喘息発作に対するステロイドとテオフィリンの治療は呼吸困難を軽減させ, Tracheal Indexの改善をもたらした.

1982.04.12

A Case of Localized Malignant Mesothelioma of the Pleura

63歳男性の限局性悪性胸膜中皮腫の症例を報告した.患者は自覚症状なく検診時の胸部Ⅹ線写真にて腫瘤を指摘され,急速な増大および気管支との関係が明らかでないことより肺肉腫の診断を受け摘出された.組織学的には混合型の悪性中皮腫で,摘出後再発し,浸潤性の局所症状と多発性遠隔転移を来たした.限局性悪性胸膜中皮腫の本邦報告例は1903年より1977年の間に17例あり,完全に腫瘤摘出を受けたもの以外は予後不良であった.

1982.04.11

Treatment of Maxillary Arch Collapse in an Unoperated Adult Bilateral Cleft Palate

文化の進んだ国では今や成人口蓋裂未治療例はまれである.私達は, 16歳男子口蓋裂未治療例を治療する機会を得た.症例は,両側完全唇顎口蓋裂であって,幼少時に唇裂手術がおこなわれたが,その後口蓋裂は未治療のまま放置されていたものである.治療経過を報告し,成人口蓋裂未治療例の治療における問題に関し,若干の考察を加えた.

1982.04.10

Anomalies of the Middle Cerebral Artery

過去7年間に施行した795回の脳血管撮影を検討して4症例に中大脳動脈の走行異常(accessory middle cerebral artery 2, duplication of the middle cerebral artery 2)を見出し考察を行った.血管写の検討および発生学的な立場から,両者は本質的には同じ中大脳動脈の分枝であり, Padget (1948)の胎生Stage 3に生じたものであろうと考える.脳動脈瘤併存例では血行動態や動脈瘤周辺のmicroanatomyを知るために脳血管の走行異常に対する認識が必要である.

1982.04.09

Intrasellar Dermoid Cyst-Case Report

56歳男性のトルコ鞍部のdermoid cystの症例を呈示した.術前診断は嫌色素性腺腫であったが,経蝶形骨洞手術で得られた内容は白色粘液様であり,扁平上皮塊がみられた. 5カ月後急速に視交叉症候群が出現したため,右前頭開頭による再手術を行った.厚い壁をもつ嚢腫が両側視神経を圧迫,穿刺吸引した内容は前回と同様であった.嚢腫壁は汗腺類似の構造を含む扁平上皮と結合織からなり, dermoid cystと診断された.患者は術後3日目痙攣重積と間脳・下垂体機能不全のため不幸な転帰をとった.以上の症例をあげ, トルコ鞍近傍の嚢腫性病変の鑑別診断について述べ,病理発生学的な見地からcraniopharyngiomaおよび,Rathke’s cleft cystとトルコ鞍部のdermoid cystは,胎生期にRathke’s pouchによりもたらされた原始口腔由来の上皮を共通の基盤として発生している可能性があることを指摘した.

1982.04.08

The Effects on Pulmonary Function by Inhalation of Bronchodilator, Especially the Changes of Blood Gases

気管支拡張剤吸入の肺機能に及ぼす影響,特に動脈血ガスに及ぼす効果について検討した.対象は,気管支喘息患者18名,肺気腫患者17名である.硫酸サルブタモール0.5ml吸入前後に,flow-volume curve,呼吸抵抗,肺拡散能力,動脈血ガスの測定を行った.その結果,気管支拡張剤に最も反応する指標は, 1秒量,最大中間呼気速度,V50であった.また,動脈血O2分圧の改善は,気管支喘息患者18名中11名,肺気腫患者17名中6名に認められた.動脈血O2分圧の変化は,肺胞気―動脈血O2分圧較差の変化と最も相関した.

1982.04.07

Clinicopathological Study on Gastrointestinal Complications in Autopsy Cases of Diabetes Mellitus ; with Special Reference to the Complication Attributable to Secondary Diabetes Mellitus

我々は,糖尿病の臨床診断をもつ剖検例について,特に2次性糖尿病の原因となりうる消化器合併症を中心に,臨床病理学的な検索を加えた.また糖尿病と肝硬変および慢性膵炎の同時合併がかなり高頻度であったことより,糖尿病非合併例を含めた全肝硬変剖検例において膵線維化に関する組織学的検索を行い,糖尿病との相関について検討した. 糖尿病86剖検例における消化器合併症の主なものは,胆石症(27.9%),肝硬変症(19.8%),胃十二指腸潰瘍(17.4%),慢性膵炎(9.3%),膵癌(8.1%),などであり,これらは対照すなわち非糖尿病剖検例におけるものに比べ,それぞれ有意に高率であった.非糖尿病剖検例におけるこれら疾患の発生率は,胆石症7.0%,肝硬変症5.7%,胃十二指腸潰瘍9.3%,慢性膵炎1.4%,膵癌2.7%,などであった. このような糖尿病を合併した肝硬変症においては, 17剖検例中14例(82%)に膵線維化を認め,また全肝硬変症剖検例における膵組織の検索により,線維化の高度な例に糖尿病の合併率が高い傾向が明瞭なことから,肝硬変と糖尿病の合併には,その間に膵線維化が関連するものが多く,真の肝性糖尿病は少ないであろうと考えた. 慢性膵炎および膵癌合併群では,糖尿病の診断が先行するものが多く,後者においては全例で糖尿病発現後1.5年以内に膵癌が発見された.また糖尿病合併膵癌は膝を広範囲に侵すものが多かった.

1982.04.06

Urinary Tract Infections

1974年から1981年までに川崎医科大学附属病院泌尿器科と小児科で扱った尿路感染症 患者について統計的観察と臨床的検討を加え以下に述べる成績を得た. 1.膿球10/HPF以上,細菌尿104ml以上の2条件を満たす症例の割合は急性腎孟腎炎で5.9%,急性膀胱炎で77.7%であった. 残りの症例の多数は膿尿を認めるも,細菌尿はなかった.この成績は治癒期に来院したためと考えた. 2.尿路におけるブドウ糖非慢酵菌の病原性を臨床面より検討したが,菌数105/ml以上分離されても膿尿を約半数で伴わず,自然消失を認めた症例もあり,病原性は低いと考えられ,尿路より分離されても積極的化学療法は不要ではないかと思う. 3.尿路感染症の局所診断は,症状,基礎疾患の存在部位と種類より判定し,多数の症例で可能であるが,基礎疾患のない少数例では,局所診断不能であるが,かかる症例では単純性感染症で通常尿路感染症の治療に使用されている抗生物質を投与すればよく,患者に負担のかかる方法での局在診断は不要と考えられる. 4.尿路感染症の基礎疾患としてVURが高率にみられ,その検出率は小児例(23例)で44.4%,成人例(37例)で40.5%であった. 5.腎孟腎炎の診断で加療するも解熱しなかったリ,腎孟腎炎を繰り返す症例に対し排泄性尿路造影を実施し腎孟腎杯系に変化を認める症例に対し積極的に超音波検査 CT,腎動脈造影を行い,腎孟腎炎特殊型の診断に有意義であった. 6.腎孟腎炎の診断,経過観察,治癒判定のparameterとして発熱,膿尿,細菌尿,ESR, CRPと末梢白血球数を使い病態の把握に役立った, 7.発熱を主訴に入院し,発熱の原因が尿路性器感染症以外であった11症例を示した. 発熱を主訴に来院した患者では尿路性器感染症にとらわれることなく,発熱を伴うすべての疾患を考慮して検査をすすめる必要性を感じた.

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