h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2016.08.09

A Case of Pneumatosis Cystoides Intestinalis Suspected Accounting for Degos’ Disease

症例は70歳代男性.既往に脳梗塞,パーキンソン病があり抗凝固薬を内服していた.デイサービス利用中に倦怠感および血圧低下を認め近医を受診し入院加療となった.入院2日目に40℃の熱発があり,腹部造影CT を施行したところfree air を認め外科的治療目的に当院へ救急搬送された.造影CT では肝彎曲部から脾彎曲部にかけての横行結腸に腸間膜気腫および腸管壁内ガスを認めた.明らかな腸間膜虚血および壊死を示唆する所見はなかった.消化管穿孔または腸管気腫症が考えられ緊急手術が検討されたが,腹部症状に乏しく液体成分など腸管内容の流出を示唆する所見がないことから一旦保存的加療を行った.また,体幹部を中心に小豆大までの皮膚潰瘍が多発していた.皮膚病理所見,既往および今回の病態からDegos 病と診断された.入院6日目に注腸造影および腹部CT を施行したところ,free air はほぼ消失しており,造影剤の腸管外漏出は認めず8日目に退院となった.Degos 病は皮膚の萎縮性丘疹を呈し,消化管の多発性潰瘍や穿孔,中枢神経系の出血や梗塞を特徴とし,病態としては末梢の血栓性血管炎が主体と考えられている.今回我々は,Degos病の関連が疑われた腸管気腫症の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する.doi:10.11482/KMJ-J42(2)79 (平成28年6月6日受理)

2016.07.14

Clinical features of alcohol use disorder patients comorbid attention deficit hyperactivity disorder

精神科臨床において,他の精神疾患に注意欠如多動症(Attention Deficit HyperactivityDisorder ; ADHD)が併存することで,治療が困難になりやすいことが近年注目されている.アルコール使用障害患者において,ADHD の併存が多いことは報告されているが,その臨床特徴が再飲酒にどのように影響するかについての研究はこれまでなく,本研究ではそれらを検討した. DSM-5によってアルコール使用障害と診断された20歳以上の患者33名を対象とし,ADHD 群と非ADHD群に分け,アルコール再飲酒リスク評価尺度(ARRS:Alcohol Relapse Risk Scale),コナーズ成人ADHD 評価スケール日本語版(CAARS:Conners’ Adult ADHD Rating Scale),ベックうつ病評価尺度(BDI-Ⅱ:Beck Depression Inventory-Second Edition),自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J:Autism Spectrum Quotient-Japanese Version)を用いて症状を評価した. 結果は,ADHD 群でARRS 総得点が有意に高く,下位項目でも「刺激脆弱性」「感情面の問題」「ポジティブ期待」が有意に高かった.また,BDI-ⅡにおいてもADHD 群が有意に高かった. アルコール使用障害患者は,ADHD を伴うと再飲酒リスクが有意に上がり,自覚的な抑うつ症状も有意に高いことが示された.これらに留意して診療を行うことで,再飲酒を防ぐ可能性があることが示唆された.doi:10.11482/KMJ-J42(2)69 (平成28年5月18日受理)

2016.07.14

A case report: a giant Brunner’s gland hyperplasia of the duodenum that could be diagnosed by transabdominal ultrasonography.

Brunner 腺過形成は十二指腸腫瘍性病変で,大きさが40mm を超えるものは10% 未満と稀である.医学中央雑誌で「腹部超音波」「Brunner 腺過形成」のキーワードで検索すると,関連した報告はない.体外式超音波検査(US)が診断に有用であったBrunner 腺過形成の一例を報告する.症例は50歳代,女性.食欲不振,心窩部痛とタール便を主訴に近医受診.貧血を認め,出血源検索目的に行った上部消化管内視鏡検査(EGD)で胃内に約 45 mm の腫瘤性病変を認め精査目的に当院紹介となった.血液生化学検査ではHb 9.1 g/dl,MCV 89.1 fl,MCH 30.0 pg と正球性正色素性貧血を認め,BUN/CRE 比は43.1と上昇していた.当院でのEGD では十二指腸球部に内腔をほぼ閉塞する45×40 mm の腫瘤性病変を認めた.腫瘤表面の異型性は目立たないが,oozing bleeding を伴ったびらん形成を認めた.粘膜下腫瘍を疑い生検も行われたが確定診断には至らなかった.単純造影CT では十二指腸球部に 45 mm 程度の腫瘤性病変を認め,辺縁は遷延性に造影された.内部は低吸収域が認められ,嚢胞変性や壊死が疑われた.周囲臓器への浸潤や転移を示唆する所見は認めず,粘膜下腫瘍が疑われたが癌は否定できなかった.US では十二指腸球部後壁の第2層から第3層に存在する約55 mm の粘膜下腫瘍が認められた.固有筋層は正常で,内部は大半が多房性嚢胞からなり,嚢胞間に充実成分がみられた.血流は比較的豊富であるが血管径や形状に明らかな不整は認めなかった.以上より十二指腸Brunner 腺過形成が疑われた.外科的切除の方針となり,開腹で十二指腸粘膜下層剥離術を行った.術材の組織診断はBrunner 腺過形成で超音波診断と矛盾しない所見であった.十二指腸粘膜下腫瘍の鑑別には超音波内視鏡が有用であるが,大きな病変では全体の描出が困難などの欠点もある.一方でUS は内視鏡侵襲なく,比較的大きな病変も描出可能で,特に本症例の様に前庭部付近は良好な観察が期待できるため,上部消化管の精査に応用できる.doi:10.11482/KMJ-J42(2)57 (平成28年5月9日受理)

2016.07.14

Different outcome of two sever Glyphosate-surfactant herbicide poisoning patients

グリホサート含有除草剤は比較的安全性の高い除草剤として知られているが,大量に内服した場合には死亡例も報告されている.特に腎機能障害を合併した症例は重症とされ血液透析も検討されるが,現在のところその導入基準及び有効性は明らかとなっていない.今回,腎機能障害を呈した重症中毒症例を2例経験したが,大きく異なる経過をとったため,血中グリホサート濃度の推移を踏まえ,透析の有用性について考察した. 症例1は40歳代男性.自殺目的でグリホサートイソプロピルアミン塩を250 ml 飲用した後,嘔吐・下痢の症状を認め当院へ搬送された.来院時,意識は清明でバイタルサインは安定していたが,入院後,呼吸不全,腸閉塞,無尿を来したため,人工呼吸管理,イレウス管挿入を施行した.輸液負荷にて再度尿の流出が得られたため血液透析は施行しなかった.その後,腎機能障害は改善し,呼吸状態も安定.第16病日に抜管し第26病日に軽快退院した. 症例2は70歳代男性.自殺目的でグリホサートカリウム塩を約250 ml 飲用し,当院へ救急搬送された.意識は清明でバイタルサインは安定していたが,来院時より無尿の状態であった.輸液負荷・利尿剤の持続投与に反応がないため,透析を施行した.透析後より自尿が得られ,第6病日に退院した.これは,同様に腎機能障害を合併した症例1と比較し,入院期間は約1/4と短期間である.血液透析を施行する前後で,グリホサートの血中濃度が低下しており,グリホサートを血液中から除去することで,症状の軽減,及び早期退院に結びついた可能性がある. グリホサート含有除草剤の中毒を2症例経験した.血液透析施行例で非施行例と比べ入院期間が短かったことから,血液透析が有効である可能性が示唆された.有用性の証明には,今後さらなる症例の蓄積が必要であるが,腎機能障害を合併したグリホサート含有除草剤中毒の症例に対し,血液透析を検討する価値があると思われた.doi:10.11482/KMJ-J42(2)51 (平成28年4月28日受理)

2016.06.30

Various urinary findings proved useful for diagnosis of a rapidly progressive glomerulonephritis form of IgA nephropathy

IgA 腎症は,世界でよく見られる糸球体腎炎である.臨床症候は,蛋白尿や血症であり,40%が20年で末期腎不全に至る.今回の症例で,以下の2点が示された..半月体形成を伴うIgA 腎症によりRPGN の経過をとること,.一部にRPGN としての経過を取るIgA 腎症の発見に尿所見が有用であること,の2点である.doi:10.11482/KMJ-J42(1)47 (平成28年5月23日受理)

2016.04.11

Laparoscopic Percutaneus Extraperitoneal Closure (LPEC) for children in Kawasaki medical school hospital

嵩原らが開発した新しい小児鼠径ヘルニアの術式,Laparoscopic Percutaneus ExtraperitonealClosure(LPEC 法)が2003年に報告され,標準術式として採用する施設が増えている.鼠径管構造を破壊することなくヘルニア門を閉鎖でき,従来法にはない有用性が報告されている.また,LPEC 法は小児精系水瘤や直接ヘルニアなど,その他の疾患にも応用される.当科では2005年からLPEC 法を導入し,2015年までの10年間で733例を経験した.今回,外鼠径ヘルニア,精系水瘤の疫学的特徴,卵巣ヘルニアと精系水瘤の内鼠径輪所見,対側腹膜鞘状突起の開存率,術中術後合併症について診療録から集計し,後方視的に検討した.また再発,対側発症例について,初回手術時と再手術時の所見から,原因を検討した.直接ヘルニアについて,内鼠径輪の形態を評価し,臨床的特徴を検討した.外鼠径ヘルニアは612例,精系水瘤は112例,直接ヘルニアが9例であった.外鼠径ヘルニア再発で従来法を行った症例が1例,精系水瘤で腹膜鞘状突起の開存がなく従来法に移行した症例が1例あり,その他の症例はLPEC 法を施行した.直接ヘルニアに対し,経過観察3例,LPEC 法1例,LPEC 法+後壁補強4例,鼠径部切開による後壁補強1例が行われた.術中術後の合併症は認めなかった.卵巣ヘルニアの子宮円索が対側に比し短く,精系水瘤の腹膜鞘状突起がほぼ全て開存していた.外鼠径ヘルニアの再発率は3例(0.49%)で,精系水瘤において再発は認めなかった.対側発症は3例(0.49%)に認めた.LPEC 法により,内鼠径輪所見の詳細な所見が明らかとなり,外鼠径ヘルニアのみならず,精系水瘤,直接ヘルニアにおいても応用が可能で,合併症,再発率についても良好な成績であった.doi:10.11482/KMJ-J42(1)33 (平成28年2月9日受理)

2016.02.29

Two cases of Pneumoparotis

耳下腺腫脹は臨床でしばしば遭遇する症状であり,原因となる病態は様々あるが,稀な疾患として耳下腺気腫がある.耳下腺気腫とは口腔内圧上昇によりステノン管から逆行性に空気が迷入し耳下腺腫大をきたす病態である.今回我々は耳下腺気腫の2症例を経験したので報告する. 1症例目は6才男児で左耳下部の疼痛,腫脹を反復したため小児科から紹介.左耳下腺の圧迫でステノン管開口部から泡沫状唾液の流出があり,CT 検査でステノン管内に空気像を認め,左耳下腺気腫と診断された.経過中に頬を膨らませる習癖が確認され,習癖の禁止と抗菌薬処方で保存的に改善した.2症例目は43歳女性で左耳下部の腫脹と疼痛を主訴に当科を紹介受診.画像検査にて迷入した空気によるステノン管拡張と耳下腺内の空気像を認めたため,左耳下腺気腫と診断された.明らかな誘因は確認できず,抗菌薬処方で保存的に改善した. 耳下腺腫脹には様々な原因が挙げられ,日常診療でも散見される症状である.急性発症で感染が疑われる場合には,抗菌薬投与で経過観察され軽快している症例も多数存在すると思われる.上述の経過観察とされる症例中にも耳下腺気腫である症例がいくつか含まれている可能性が示唆された.doi:10.11482/KMJ-J42(1)25 (平成28年1月4日受理)

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