2018.02.02
A case with another cerebral aneurysm ruptured after 12 days from the initial aneurysmal subarachnoid hemorrhage
67歳女性.以前より左中大脳動脈・脳底動脈本幹・左海綿静脈洞部内頚動脈に未破裂脳動脈瘤を指摘されていた.突然に激しい頭痛・嘔気が出現し,その5日後に他院でsubarachnoid hemorrhage(SAH)を指摘されたため,当院紹介となった.CT で左シルビウス裂・左大脳半球脳溝を中心にSAH を認めるも,脳幹周囲には認めなかった.緊急DSA では,左中大脳動脈瘤は4.9mm でbleb を伴っていたが,脳底動脈瘤は6.5mm,左内頚動脈瘤は2.9mm で,いずれもblebはなかった.左中大脳動脈瘤の破裂と考え,緊急で同部位にコイル塞栓術を施行し,ほぼ完全閉塞された.しかし,第12病日に突然昏睡状態となり,CT で橋腹側を中心に新たなSAH を認めた.脳底動脈瘤の破裂と診断し,緊急コイル塞栓術を行った.術後意識状態は改善し,NPH に対しVP シャントを追加し,mRS1で自宅退院となった.短期間で2個の動脈瘤が破裂した比較的稀な症例と考えられ,報告する.
2018.02.01
The role of indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO) in epididymitis
Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)は,必須アミノ酸であるトリプトファンのキヌレニン代謝経路における律速酵素であり,免疫反応への関連性が示唆されている.これまでに我々は,IDO が精巣上体頭部に高く発現すると報告している.しかし,その役割について明らかにされていない.今回,我々は精巣上体炎におけるIDO の役割について検討した. 実験動物は12週齢,雄性,C57BL/6マウス,野生型マウス(Ido+ /+)およびIDO ノックアウトマウス(Ido- /-)を用いた.精管側から精巣上体へlipopolysaccharide(LPS)を投与することで,精巣上体炎モデルを作成し,LPS 投与後に精巣上体を摘出した.精巣上体におけるIDO の経時的な発現についてIDO 定量検査(ELISA 法)を用いて解析した.また,精巣上体における炎症性変化について,網羅的サイトカイン/ ケモカイン定量検査により代表マーカーを選出し,免疫染色を行うことで,精巣上体炎におけるIDO の働きについて生化学的および免疫組織学的に検討した. HE 染色では,Ido- /- はIdo+ /+ と比較して,リンパ球優位の炎症細胞浸潤および精巣上体内の腺管構造破壊が抑制されていた.IDO 定量検査(ELISA 法)では,Ido+ /+ はIdo+ /+ sham と比較して,LPS 投与後1日目,3日目において,精巣上体内におけるIDO 発現の有意な上昇を認めた.Ido- /- では全ての観察期間においてIDO の発現を認めなかった.網羅的サイトカイン/ ケモカイン定量検査では,Ido- /- においてIdo+ /+ と比較して,炎症促進性サイトカイン(IL-1α,IL-6)およびケモカイン(CCL3,CXCL1)の発現が抑制され,炎症抑制性サイトカイン(IL-4,IL-10)の発現が促進されていた.各種マーカーを用いた免疫染色においても同様に,炎症促進性サイトカイン(IL-1α,IL-6)およびケモカイン(CCL3,CXCL1)の発現が抑制され,炎症抑制性サイトカイン(IL-4,IL-10)の発現が促進されていた. 精巣上体では,IDO を介したサイトカイン/ケモカインの調節が行われている可能性がある.IDO を阻害することにより,精巣上体炎に対して精巣上体内の組織保護作用を有すると推測され,抗菌薬に加えてIDO 阻害薬が新規治療薬となる可能性があると考えられる.
2017.12.09
Home visits provide a better understanding of the psychopathology of a case of eating disorder
2017.12.08
Development of a novel analgesic for cancer pain targeting brain-derived neurotrophic factor
2017.12.06
Case study of akathisia and dyskinesia following treatment of depression and alcoholism
症例は60歳代男性,15年前より当科にてうつ病,アルコール依存症として治療していた.2年前より町内会の仕事で多大なストレスを感じ,1年前より身体不調から仕事を退職した.その後,過剰な飲酒が始まり,精神科病院に入院しアルコール依存症の治療が行われ,その際にオランザピンが投与された.その後は断酒ができていたが,町内会での大きな役割が回ってくる不安感からイライラ感が強くなり,オランザピンの増量,クロルプロマジンへの変更などを行ったが精神症状は改善せず,薬剤変更1ヶ月後より終日じっとしていられないアカシジア様症状と,舌が勝手に動く口舌ジスキネジア様症状,首下がり症状が出現した.抗精神病薬を中止したが症状改善せず,次第に食事摂取困難となり体重が減少,状態悪化のため当科入院となった.入院後,薬剤調整による抗うつ治療を行ったが改善なく,希死念慮の増悪を認めたため修正型電気けいれん療法(modified-electroconvulsive therapy: m-ECT)の適応と考えられ,全13回のm-ECT を施行した.m-ECT 施行により精神症状,アカシジア,ジスキネジア,首下がりが徐々に改善し,最終的には病状が著明に改善した.本症例のジスキネジアは薬剤性としては発現が急であり,また首下がりの症状を伴っていたため,パーキンソン病の存在が疑われた.頭部MRI,ドパミントランスポーターシンチグラフィでは異常はなかったが,MIBG 心筋シンチグラフィではFDG 集積の低下を認めた.入院時軽度の左右差のあるパーキンソニズムがあり,筋電図にて頸部伸展筋ミオパチーと診断された.以上から身体症状の原因は,臨床症状発現前のパーキンソン病を背景とする抗精神病薬の副作用であると考えられた.アカシジア,ジスキネジアは薬剤性に起因するものが多数であるが,その他の疾病の有無を注意深く観察することが必要であると考えられた.
2017.11.29
A case of FGF23-mediated hypophosphatemic osteomalasia induced by prolonged administration of Saccharated Ferric Acid in patient with Crohn’s disease
症例は50歳代,男性.クローン病で2年前に右半結腸切除術,小腸部分切除を施行.術後に他院にてアダリムマブを導入され,クローン病は臨床的寛解の状態であった.4か月前より下肢を中心とした疼痛が出現した.アダリムマブによる薬剤起因性ループスあるいは腸炎性関節炎を疑い,2か月前よりアダリムマブ投与を中止し,プレドニゾロンの内服を開始するも改善を認めなかった.血液検査にて,低リン血症と高アルカリフォスファターゼ血症を認め,精査治療目的で当院に紹介入院となった.骨塩定量検査にて骨密度の低下を,骨シンチグラフィーで疼痛を認める骨への多発取り込みを認め,骨軟化症と診断した.血清のfibroblast growth factor 23(FGF23)が175pg/ml と高値であり,入院前まで定期的に使用されていた含糖酸化鉄注射液による,FGF23関連低リン血症性骨軟化症と診断した.含糖酸化鉄注射液投与を中止し,リン製剤とビタミンD 製剤の投与を開始したところ,徐々に低リン血症と高アルカリフォスファターゼ血症の改善を認めた.その後の経過は良好で,FGF23値は徐々に低下を示し,下肢を中心とした疼痛は軽快し,退院した.長期的に含糖酸化鉄注射液を投与する場合は,FGF23関連低リン血症の早期発見のため,血中リン濃度を定期的に測定する必要がある.
2017.11.29
Development of a new mouse model of nasal hypersensitivity
アレルギー性鼻炎は臨床における検討だけでなく,in vitro やin vivo においても様々な方法で病態解析が行われている.マウスを用いた様々なアレルギー性鼻炎解析モデルの中で代表的なものとして,抗原として卵白アルブミンを用いて感作後に鼻腔局所に抗原を投与するモデルがある.これは抗原とAlum adjuvant を腹腔内投与することによって感作を成立させてアレルギー性炎症を誘導する.このモデルは病態解析だけでなく,薬剤の治療効果判定としても用いられ,新たな治療薬の検討や臨床応用につながっている.アレルギー性鼻炎は抗原特異的IgE 抗体を介した獲得型アレルギーが重要であり,早期相の誘導にはIgE とマスト細胞を介して局所に放出されるヒスタミンなどの炎症性物質が症状を起こすきっかけとなる.今回我々は,抗原特異的IgE を静脈注射して受動感作を成立させ,抗原抗体反応を介したマスト細胞からの脱顆粒で誘導されるアレルギー性炎症を中心に解析する実験モデルを考案したので,文献的考察を踏まえて報告する.
2017.11.22
Four cases of type A gastritis in our hospital
A 型胃炎は稀な疾患で,悪性貧血や胃癌,胃NET の発生母地として知られている.抗胃壁細胞抗体陽性,高ガストリン血症,さらに胃体部を中心とした萎縮性胃炎が診断基準とされている.今回,過去1年に4例のA 型胃炎を診断した.全例で自覚症状は見られなかったが,内視鏡検査での逆萎縮所見からA 型胃炎を疑い,胃生検の病理所見と血液検査で確診した.A 型胃炎が他の自己免疫性疾患に合併することが多いとされているが,本症例にも高齢発症のBasedow 病が1例あり,A 型胃炎は日本でも決してまれな疾患ではないと考えられた.診断には内視鏡所見からA 型胃炎を疑うことが重要で,胃生検や血清ガストリンと抗胃壁細胞抗体の測定を行うことにより確診できる.
2017.11.09
Acquired hepatocerebral degeneration caused by a large splenorenal shunt with hyperintense signal changes in the bilateral pyramidal tract on T2-weighted magnetic resonance imaging
患者は68歳女性.5か月前より徐々に動作緩慢や歩行障害が出現し当科を受診した.神経学的所見では,軽度の意識障害とasterixis を認め,左右差のない無動,痙固縮,下肢腱反射亢進,足クローヌスおよびバビンスキー徴候があった.頭部MRI 検査では,半卵円中心から内包後脚,および大脳脚にかけて拡散強調画像,T2強調画像,FLAIR 画像で高信号,T1強調画像で低信号の病変を認めた.採血ではアンモニア値が155 μg/dL と高値で,血清銅やセルロプラスミンは正常範囲内であった.脳波検査で基礎律動はθ波であったが,三相波は認められなかった.腹部造影CT 検査では,巨大な脾静脈-左腎静脈シャントを認め,Acquired hepatocerebral degenerationと診断した.蛋白制限食とラクツロース製剤内服を開始し,意識障害やパーキンソニズムなどの神経症状は改善し,アンモニア値は34 μg/dL と正常化したが,頭部MRI 病変の改善は認められなかった.本例は巨大脾腎シャントによるAcquired hepatocerebral degeneration(AHD)と考えられた.頭部MRIT2強調画像で両側錐体路に高信号病変を認めるAHD が散見され,文献的考察を含めて報告する.




