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Online edition:ISSN 2758-089X

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2002.01.07

A case of primary hepatic lymphoma complicated by chronic hepatitis C *

 要旨:症例は49歳,男性.C型慢性肝炎で経過観察中に腹部超音波検査で肝臓のS2, S6に境界明瞭な低エコー性腫瘤を指摘され入院した.腫瘤は造影CT検査で造影効果を認めず, MRI検査のT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示した.血液学的検査ではAFP, PIVKA Ⅱ, CEA, CA19-9の上昇を認めず,超音波ガイド下針生検を施行した.その結果,腫瘤は組織学的にnon-Hodgkin lymphoma (以下NHL) (diffuse large B cell type)と診断した. Ga,骨シンチなどの各種画像診断および骨髄検査では病変を認めず,C型慢性肝炎に合併した肝原発悪性リンパ腫と診断した. 近年,C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染は肝癌のみならず,リンパ系腫瘍の発生にも関わる可能性が指摘されており貴重な症例と考えられたので報告する.                              (平成14年1月22日受理)

2002.01.06

Perctaneous arterial embolization for renal rupture in a long term dialysis patient *

 長期透析患者の多嚢胞性萎縮腎(Aquired Cystic Disease of Kidney : 以下ACDK)に合併した後腹膜出血に対し,経カテーテル的動脈塞栓術(Transcatheter Arterial Embolization :TAE)を行い良好な結果が得られた症例を経験した.一般に腎出血のTAEは,機能温存のために出血部位のみを選択的に塞栓することが多い.しかし本症は透析腎であり,既に著しい腎の萎縮と腎機能の低下を認めており厳密な腎機能温存を考慮する必要性は低いと思われたため,腎動脈本幹からの簡易TAEを行った.透析腎からの出血に対しての簡易動脈TAEは短時間かつ低侵襲で行える有効な治療法であると思われる.                               (平成13年11月19日受理)

2002.01.05

Long-term exposure to nicotine induces up-regulation of L-type voltage-dependent calcium channels in mouse cerebrocortical neurons *

 神経細胞への低濃度nicotine長期曝露(0.1μM, 72時間)による電位依存性Ca2+ チャンネル(VDCC)および中枢性nicotinic acetylcholine (nnACh)受容体の機能変化について初代培養マウス大脳皮質神経細胞(神経細胞)を用いて検討した. 30 mM KCI 刺激に伴う神経細胞内への[45 Ca 2+]流入は,神経細胞へのnicotineの曝露時間および濃度依存性に増加した.また,この[45 Ca 2+]流入量はnicotine曝露開始24時間後に最大増加を示し,その後72時間まで継続した. 0.1μ.M nicotine の72時間曝露による神経細胞内への[45 Ca 2+]流入増加は, nnACh受容体阻害薬であるmecamylamineの共存下において完全に抑制された.同様に,L型VDCC阻害薬であるnifedipineの共存下でも抑制されたが,N型およびP/Q型VDCC阻害薬では抑制されなかった.このnicotine処理により[3H]verapamil結合は増加し,しかもこめ結合増加はBmax値([3H]verapamil結合部位数)の増加に起因するものであり,一方,Kd値([3H]verapamilに対する親和性)には変化がなかった. Western blotおよびNothern blot法ではL型VDCC α C, αD, αFおよびα2/б1 subunitの発現が増加したが,それぞれP/Q型およびN型VDCC,α1Aおよびα1B subunit については変化が認められなかった.またL型VDCCβ4 mRNAの発現変化も認められなかった. 神経細胞へのnicotine曝露により[3H]nicotine結合の増加が生じ,この増加は[3H]nicotine結合のBmax値のみの増加によるものであり,Kd値には変化が認められなかった.さらにWestern blot法による検討からこのnnACh受容体subunitであるα4およびβ2 subunit の増加が観察された. nnACh受容体の変化については, Western blot法において,a4およびβ2 subunitの発現が増加したが, α3 subunit については変化が認められなかった. 以上の結果から,神経細胞への低濃度nicotine長期曝露によりnnACh受容体のup-regulationとともにL型VDCCのup-regulationが生じ,これにより神経細胞内への[45 Ca 2+]流入増加が起こると考えられる.          (平成14年2月26日受理)

2002.01.04

Analysis of gene expression in the programmed cell death of mouse limb buds *

 胎生期の肢芽形成時におけるプログラム細胞死の分子機構について,ゲノム解析が進んでいるマウスの胎子を用いて研究を行った.まずマウス肢芽指間の細胞死の時期をNileblue染色,HE染色, TUNEL法を用いて検討した.指間の細胞死は妊娠11.5日目から始まり, 13.5日目にそのピークがみられた.次に11.5日目および13.5日目に後肢の指間組織をメスで切り出しRNAを抽出した後, DNA Expression Arraysを用いて1176種類の既知遺伝子の発現パターンを解析した.その結果13.5日目に5種類の遺伝子発現の上昇を認めた.また,これらのうちホメオボックス遺伝子であるMsx2やinsulin-like growth factorbinding protein 2 (IGFBP2)及びapolipoprotein E (apoE)が13.5日目に上昇していることをRT-PCR法で確認した.さらにこれらの遺伝子の空間的な発現パターンを解析するために, whole mount in situ hybridizationを行ったところ, Msx2とIGFBP2は既報通り指間部位に一様にその発現を認めたが, apoEの発現パターンはそれらとは異なり, Nileblue染色と極めて似た顆粒状の染色パターンを示した.このことは, apoEがNile blue 陽性の死細胞中に発現しているか,あるいは死細胞を貪食したマクロファージ系細胞に発現しているかを示唆している.そこでTUNEL法で調べたところ,その発現は死細胞にではなくマクロファージ様細胞に認められた.また5-bromo-2′ -deoxyuridine(BrdU)処理で細胞死を抑制したマウスの肢芽ではNile Blue陽性細胞が減少するとともにapoEの発現も減少した.この結果からapoEがマクロファージ様細胞に発現され,それが死細胞の増加によって誘導されることが示唆される.すなわちapoEの貪食過程への関与が考えられた.                                  (平成13年12月25日受理)

2002.01.03

Effects of hypoxia on human seminoma cell lines *

 腫瘍細胞の低酸素状態は血管新生因子等を介して細胞の悪性形質獲得に重要な役割を担っていることが判明している.今回,ヒト精巣セミノーマ細胞株を用い,血管新生因子を中心に,低酸素培養の影響を検討した.実験に供した細胞株には当教室で樹立したヒト精巣セミノーマ細胞株(JKT-1)とその高転移株(JKT-HM)を用い,低酸素培養(1 %02)での増殖曲線・形態・vascular endothelial growth factor-A (VEGF-A)産生・血管新生因子を含む種々の遺伝子発現・アポトーシス・細胞周期について常酸素培養(21% 02)と比較した.両株ともに,低酸素培養下では増殖が抑制され細胞は大型の紡錘形となった.培地中へのVEGF-A産生は低酸素培養下24時間で増加,遺伝子発現では, VEGF-A, -Bならびに-Dが2日目までやや発現の亢進が見られ,その後減弱を示したが, VEGF-Cは発現の亢進が持続した。hypoxia inducible factor-1 (HIF-1)はメッセージレベルでは変化を認めなかった.また解糖系酵素と共にストレス蛋白であるHeat shock protein (HSP) 70,HSP90, cyclin-dependent kinase inhibitorsであるp21, p27, p15,接着因子のCD44,vimentinの発現亢進を認めた.細胞周期のFACSによる解析ではG1期への集積を示していたが,アポトーシスは認めなかった.結果として他臓器細胞株と同様に,ヒト精巣セミノーマ細胞株においても低酸素培養において血管新生因子の発現亢進が認められ,なかでも培養早期のVEGF-Cの発現亢進は特徴的であり,本因子が,近年リンパ性転移に深く関わる因子として注目されている点を考慮すると,臨床的にセミノーマに多く認められるリンパ性転移誘導における低酸素状況の検討が今後必要であると思われた.                               (平成13年12月20日受理)

2002.01.02

Preventice effects of an angiotensin converting enzyme inhibitor and a calcium antagonist on the development of spontaneous pancreatitis in salt-loaded Dahl salt-sensitive and salt-resistant rats *

 Dahl食塩感受性高血圧ラット(DS-S)に自然発症する慢性膵炎が降圧剤投与により抑制されるか否かを検討した.5週齢雄性DS-SおよびDahl食塩抵抗性ラット(DS-R)に8%高食塩食の投与を開始し11週齢の実験終了まで投与を続けた無治療群(DS-S ; n =20, DS-R ; n =8)および同時に降圧剤を11週齢の実験終了まで投与するAngiotensin-Convertizing-Enzyme (ACE)阻害剤(Trandolapril)投与群(DS-S ; n =20, DS-R ; n =8)とCalcium (Ca)拮抗剤(Verapamil)投与群(DS-S ; n =20, DS-R ; n =8)の6群(DS-S ; 60匹, DS-R ; 24匹の計84匹)をそれぞれ作製し経時的に体重,血圧,膵血流量測定,膵病理組織学的検索およびアポトーシスの検索を行った.結果は11週齢のDS-Sにおいて無治療群では著明な高血圧を認め,病理組織学的に膵内血管の内膜肥厚による内腔狭小化と著明な膵実質の線維化と炎症性変化が観察された.しかし同週齢のACE阻害剤投与群では高血圧は発症せず膵実質病変の発症が抑制された.さらに同週齢のCa拮抗剤投与群でも高血圧は発症せず膵実質病変は観察されなかった. DS-Sにおける膵血流量測定では11週齢におけるACE阻害剤投与群は無治療群およびCa拮抗剤投与群に比べて血流量の増加がみられた.またDS-Sの11週齢における無治療群では慢性膵炎の膵内線維化部分および線維化周辺にTUNEL陽性細胞はみられず線維化の機序にアポトーシスは直接的な関与はしていないものと推測された.一方,11週齢のDS-Rにおける無治療群,ACE阻害剤投与群およびCa拮抗剤投与群の治療群ではいずれも高血圧は示さず,また膵内血管の肥厚や膵炎の発症などの病理組織学的変化は観察されなかった。DS-Rにおける膵血流量測定では各群間でそれぞれ有意差はみられなかった.以上より降圧剤を投与したDS-Sの治療群では高血圧の発症を認めず,また膵内血管および膵実質の病変が抑制されることが判明した.即ち高血圧を予防することにより膵炎の発症を抑制した事が示された.                               (平成13年12月18日受理)

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