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Online edition:ISSN 2758-089X

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2002.02.05

A case of small solid-pseudopapillary tumor of the pancreas complicated by lymph node metastasis *

 症例は27才,女性.心窩部痛を訴え当院を受診,尿中アミラーゼの軽度上昇を認めたため急性膵炎の診断で入院した.入院後,腹部超音波, CT, MRI検査を施行し膵体尾部に石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認め,その尾側膵管に拡張を認めた.嚢胞性膵腫瘍と診断し,膵体尾部および脾合併切除を施行した.その結果,心窩部痛は消失した.腫瘤は肉眼的に3.2×2.2×2.0 cmの嚢胞性部分と充実性部分の混在する腫瘍で病理学的に膵solidpseudopapillary tumor と診断した.本腫瘍は低悪性度の膵腫瘍とされているが本例はリンパ節転移を認め意義ある1例と考えられ報告する.       (平成14年4月9日受理)

2002.02.04

Gait training for lower leg edema in patients experiencing sclerotherapy or operative procedures for leg varicose veins *

 一次性下肢静脈瘤の治療法として硬化療法と伏在静脈高位結紮術を併用した場合,しばしば頑固な下腿浮腫を認める.そこで,我々は下腿浮腫の予防的アプローチとして弾力包帯による圧迫療法,歩行訓練の有効性を検討した. 当院で行った一次性下肢静脈瘤, 956人1417肢の内,特に頑固な下腿浮腫を来たす可能性のある症例,すなわち手術療法として大および小伏在静脈結紮術,不全交通枝結紮術さらに広範囲な静脈瘤切除術を施行した症例24例を対象とし,下肢静脈瘤治療後に発生する下腿浮腫について歩行訓練の有効性を検討した. 歩行訓練としては,手術翌日より,1)足底静脈のフットポンプ機能を活性化させる目的で床歩行を20分間,1日3回,2)下腿膝部から足関節部までの静脈一筋肉ポンプを活性化する目的で階段昇降(100 step)を1日3回行わせた. さらに併用療法として,3)足背から大腿中央部まで弾力包帯および弾力ストッキングで圧迫した. 術後早期の圧迫療法と歩行訓練の併用は足底部の静脈によるフットポンプおよび静脈 (静脈弁)一筋ポンプ作用を有効に働かせるのに有効で下腿浮腫の軽減に効果的であると考えられた.                          (平成14年6月28日受理)

2002.02.03

Myocardial contrast echocardiography employing transesophageal echocardiography *

 心コントラストエコー法は,心エコー図検査の際に超音波用の造影剤を使用する画像診断法である.近年の心コントラストエコー法の技術的進歩は,経胸壁心エコー図法による局所心筋潅流の定量評価を可能にした.しかし,経食道超音波法(TEE : transesophagealechocardiography)による心筋コントラストエコー法についての報告は1報告のみで,特に第二世代経静脈性超音波造影剤や,セカンドハーモニック法を使用した経食道心筋コントラストエコー法についての報告は無い.本研究では第二世代経静脈性超音波造影剤(FS069)と,セカンドハーモニック法を使用して, TEEによる心筋コントラストエコー法の可否を確認するとともに,心筋局所血流濯流の定量化が可能であるかどうかを検討し,以下の結論を得た.1)セカンドハーモニック法と第二世代経静脈性超音波造影剤(OPTISON(R))を用いることにより,探触子に近い左室下壁領域においてTEEによる心筋コントラストエコー法が可能である.2)この方法により,左室下壁領域の冠血流予備能の定量化が可能である.                   (平成14年4月22日受理)

2002.02.02

Expression and localization of Na+/H+ exchanger (NHE) isoforms in nasal mucosa *

 Na+/H+Exchanger (NHE)は細胞内外のNa+イオンの濃度勾配を駆動力として用いてNa+イオンとH+イオンを1:1で交換輸送することで細胞内pH調節やNa+イオン,水分輸送を行う重要な膜蛋白である.現在までNHE1~7のアイソフォームが同定されている.気道においては生理学的手法で気道上皮細胞および気道粘膜表面の粘液層airwaysurface liquid (ASL)のpH調節にNHEが関与していると報告されている.しかし,気道,特に鼻粘膜におけるNHEのアイソフォームの同定および局在は知られていない.そこで今回ヒトおよびモルモットの鼻粘膜を用いてNHE1~4のアイソフォームの同定および発現の局在について検討した.まずアイソフォームの同定のためモルモット鼻粘膜のRT-PCRを施行し, NHE 1 , 3のmRNAを検出したがNHE2, 4は検出されなかった.つぎに局在を調べるためヒトおよびモルモットの鼻粘膜のin situハイブリダイゼーションを行った.ハウスキーピングであるNHE 1は鼻粘膜上皮細胞にのみ認めた. NHE 3はNHE1に比べて発現量は少ないが,鼻粘膜上皮細胞に発現していた. NHE 3は鼻粘膜上皮細胞だけでなく粘膜固有層にも発現を認めたが,腺細胞にはなかった.以上の結果からハウスキーピングであるNHE1は,鼻粘膜上皮細胞に特に多く発現していることが明らかとなった.上皮細胞およびASLにおけるイオン輸送, pH,浸透圧調節に,上皮細胞の基底膜側のNHE 1と,管腔側のNHE 3の両方が関与していると考えられた.                                (平成14年2月26日受理)

2002.02.01

Ankyrin gene mutations in Japanese patients with hereditary spherocytosis *

 日本人における遺伝性球状赤血球症(HS)の病因解析のため, genomic DNA を用いたankyrin-1 (ANK-1)の遺伝子解析をおこなった.本研究では, HS 63家系,67例を対象とした.このうち20家系20例において,HSの病因と推定される19種のANK-1遺伝子異常(frameshift mutation 9種, nonsense mutation 4 種, splicing異常6種)が検出された.これらの遺伝子変異はいずれも,欧米諸国では既報がなく,わが国固有のものと考えられた.日本人のHSにおけるANK-1遺伝子異常は全体の30-50%を占めていると推察された.これらANK-1遺伝子異常を有する症例における赤血球膜蛋白分析の成績では,ankyrin蛋白欠損型を呈した症例はなく,一方でprotein 4.2 (P 4.2)単独部分欠損を呈した症例が17例(85%)認められた.よって,日本人に特徴的とされるP 4.2単独部分欠損を伴うHSでは,その多くがankyrin遺伝子異常を有しており, ankyrinがP 4.2の安定性に関与している可能性が示唆された.           (平成14年2月26日受理)

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