h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1998.01.04

Analysis of the responses to acetylcholine in isolated supporting cells from the guinea-pig cochlea*

 哺乳類のコルチ器は,音刺激によって振動する基底板上に位置し,内有毛細胞(inner hair cell, IHC)および外有毛細胞(outer hair cell, 0HC)の2種類の感覚毛と,これらを周囲から支える支持細胞群により構成されている. 音受容機構は,その全容は未だ完全に解明されておらず,現在も広範囲にわたり研究されている.その中で,音受容には, IHC及びOHCの関与が重要であるが,支持細胞もIHC及びOHCの構造上の支持だけでなく,音受容に関与している可能性が示唆されている. 本研究では,モルモット蝸牛のコルチ器支持細胞群,特にダイテルス細胞(Deiters’cell,以下DCs)及びベンゼン細胞(Hensen’s cell, 以下HEs)のアセチルコリン(Ach)応答性をパッチクランプ法のconventional whole cell mode を用いて,膜電流の変化として調べた.その結果,次の諸点が明らかになった.(1)DCsにおいてAch応答が認められたが,HEsにおいては認められなかった.(2)DCsにおいて認められたAch応答は濃度依存性であり,0HCのAch応答と同様で  あった.(3) DCsにおけるAch応答に対応するAchレセプター(AchR)は,0HCのAchRと同様  にムスカリン様,二コチン様両者の性質を併せ持っている新しいタイプの受容体であ  る可能性が示唆された. 以上の結果から, DCsはOHCの解剖学的な支持だけでなく, OHCとDCsの間に電気生理学的な関連があり,音受容に対するDCsの何らかの関与を示唆するものと考える.                               (平成10年6月15日受理)

1998.01.03

Effects of inverse ratio ventilation on intracranial pressure in dogs*

 陽圧換気では,頭蓋内圧(lntracranial pressure, ICP)は吸気時に上昇し呼気時に下降する.そこで,吸気時間を延長させ呼気時間を短縮し吸気呼気相比(inspiratory/expiratory ratio, I :E)が逆転する人工呼吸法Inverse Ratio Ventilation (IRV)が,ICPにどのような影響を与えるかを雑種成犬を用いて実験した.I:Eは1:2から1.7:1 , 2.3:1,4:1まで吸気時間を延長させ,吸気流速波形は矩形波(矩形波群,n=10)と漸増波(漸増波群,n=10)の二種類を用い,流速波形の影響も検討した. ICP.最高気道内圧,平均気道内圧,平均動脈圧,平均肺動脈圧,中心静脈圧,心拍出量をI:E変更30分後に測定した.ICPの変化は,I:E=1 :2, 1.7:1 , 2.3:1,4:1でそれぞれ矩形波群が12.7±3.1, 12.4±4.6, 12.3±3.3, 14.4±3. 5 cmH20 (mean±SD),漸増波群が12.0±G. 6, 14.0±6.0, 12.0±6.3, 13.8±2.8cmH20であった.両群ともICPは各I:E間で有意差なく,また両流速波形群間でも有意差を認めなかった.次に,人工脳脊髄液の持続注入によりICPを上昇させたイヌ(頭蓋内圧亢進群, n =10)を用いて同様に検討した.ICPはI:E=1 :2, 1.7:1 , 2.3:1,4:1でそれぞれ29.4±7.0, 28.6±7.0, 28.1±7.1, 27.0±6.2cmH20と有意の変化を認めず,吸気時間の延長はICPに影響を及ぼさなかった.また,3群とも平均気道内圧は全てのIRVで有意に(p<0.05)上昇したが,最高気道内圧および血行動態は有意な変化を認めなかった. IRVでは最高気道内圧が上昇しないので,頭蓋内血行動態への影響が少なくICPは上昇しない.この結果は, IRVは頭蓋内圧亢進患者の人工呼吸法として有用であることを示唆した.                               (平成10年4月30月受理)

1998.01.02

Histological observations on cell death in the developing kidneys of the fetal and newborn mice, with special reference to differentiation of nephron-forming cells in the renal cortex*

 腎臓の発達時に出現する細胞死について,ネフロン形成との関連を明らかにすることを目的として,胎生後期から出生直後のマウス腎臓を光学顕微鏡で観察した.胎生18日,生後0日および生後2日で摘出した腎臓から1μm厚の水溶性樹脂準超薄連続切片を作成し,また一部はパラフィン切片を作りTUNEL法で観察した.胎生18日~生後2日の腎臓皮質と髄質には多数の核分裂像にまじって,核が濃縮・凝集して断片化する細胞が出現する.死細胞の単位面積当たりの数は出生後増加する傾向があり,とくに髄質で胎生18日から生後2日の間に約3倍に増加する.細胞死はネフロン形成細胞群と間質細胞群のどちらにも出現し,皮質では被膜の直下に,髄質では腎乳頭の先端部付近に多く認められる.この死に至る細胞はTUNEL法で陽性であり,アポトーシスの過程で死に至ると判定される. 皮質におけるネフロンの形成過程は,はじめ2分枝した尿管芽の先端部付近に間葉細胞が集まって造腎帽子となり,次いでカンマ型腎胞,そしてS字型腎胞へと発達する.S字型腎胞期に毛細血管が腎胞内に進入し,腎胞先端部の細胞から糸球体包が形成される.皮質ネフロン構成細胞群における細胞死は,とくにS字型腎胞期で多く認められ,腎胞先端部の部位に局在して,尿細管に分化する前駆細胞中には少ない.細胞死はS字型腎胞期から未熟な腎小体中に出現する.プログラム細胞死と皮質におけるネフロン形成細胞の分化との関連を考察した.(平成10年4月30日受理)

1998.01.01

Out-patient cardiology*

 本稿では,まず,「外来心臓病学」の概念にはじまり,外来心臓病学に関する現況と著者の意見を述べ,次いで本院循環器内科における外来診療の実態を明らかにし,さらに心臓専門医を対象に著者が行ったアンケート結果に関して検討している. その結果,外来心臓病診療に関する現況は,単に循環器分野のそれに限らず大学附属病院や大病院とも共通で,日本の医療体系の縮図を見るような感を抱いた. このように,外来心臓病学は数限りない項目と問題点を包含しているが,これらをどのようなかたちで学問形態に乗せてゆくかは今後の重要な課題である.                               (平成10年7月17日受理)

1997.04.07

A case of subarachnoid hemorrhage associated with reversible midsystolic click sound *

 クモ膜下出血発症後に広範な左室asynergyを呈し,急性期に聴取された収縮中期クリックが,asynergyの改善とともにに消失した症例を経験した.心エコー図の経時的変化から,クリックの音源は乳頭筋不全によるmitral complexの異常によるものと推測した.虚血性心疾患によらない乳頭筋レベルの心筋障害によっても収縮中期クリックが出現する可能性あり,またクリックの成因を考える上で興味ある症例と考えられた.                               (平成10年3月25日受理)

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