h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1998.02.03

Differential display analysis of RNA in liver tissues of chronic hepatitis C patients *

 本研究の目的はC型慢性肝炎において肝機能の正常な群(asymptomatic carrier : ASC)とALTの変動のみられる群(chronic active hepatitis : CAH)の遺伝子発現の違いを明らかにすることで,慢性肝炎の進展過程にどのような遺伝子が関与しているかを明らかにすることである.2群間の遺伝子発現の違いはdifferential display reverse transcriptase polymerase chain reaction (DDRT-PCR)法を用いて比較検討した.4種類のアンカープライマーと12種類任意のプライマーを用いて行ったDDRT-PCRによりえられたcDNA産物は, 100組であった.これらのcDNAの中から,gene specific RT-PCRで最終的に5個のcDNAが候補として選ばれた. BLAST analysis で検索した結果, ASC群に共通して過剰発現されたものはhuman STS WI-8782 であった.また, CAH群に共通して過剰発現されたものはhuman mitochondrion, human beta 2 gene for beta-tubulin, human retinoic acid-induced gene G (RIG-G),human STS WI-8930 の4種類であった. 候補として選ばれたcDNAの1つであるRIG-Gは細胞分化に重要な役割を演じている可能性が報告されており,肝障害の進展に関与している可能性が示唆された.                                 (平成10年8月31日受理)

1998.02.02

Evaluation of bronchial artery embolization for hemoptysis *

 喀血を来した非腫瘍性肺疾患12例に対して気管支動脈塞栓術(BAE)を施行した.塞栓物質はGelfoamや各種coilを使用した.再出血例は12例中3例に認められ,それらの再出血の原因について検討したところ,1例はmicro catheter がなかったため,目的とする部位までカテーテルの挿入が困難であり,1例はGelfoamにcoilを併用したにもかかわらず,責任動脈が再開通したために十分な塞栓効果が得られず,もう1例は気管支動脈のみでなく肋間動脈や鎖骨下動脈など多数の動脈が関与していたことが考えられた,塞栓物質の種類により塞栓効果に差はあるが,病変部位の血管増生やシャントの状態および関与する血管の走行が再出血の原因となることがあるため,術前の血管造影所見を十分に把握し,それに適した塞栓物質を選択することが再出血の予防に重要であると考えた.                               (平成10年8月27日受理)

1998.02.01

Clinical features and significance of bifascicular block progressed to complete atrioventricular block *

 2枝ブロック(完全右脚ブロック十左脚前枝ブロック)から完全房室ブロックに進展した4症例を経験した.患者は全例男性で高血圧の既往があり,2例で心不全歴を有していた.失神発作で入院した際の心電図や心電図モニターで全例に完全房室ブロックが確認された.2枝ブロックの時期に記録された12誘導心電図では,全例でPQ間隔は正常で,突然完全房室ブロックに移行したものであった.種々の臨床像から,ブロックの原因として脚線維症が推測された.2例にDDD, 2例にvvlペースメーカーの植込みがなされた. 一般に2枝ブロックから完全房室ブロックに進展する頻度は少なく,また徐脈性不整脈による死亡率も低いとされている.しかし,基礎心疾患と関連した死亡率の増加が危惧されるため,基礎疾患の管理を含めた厳重な経過観察が重要と考えられたので,本症の臨床像とその意義について考察を加え報告する.           (平成10年8月17日受理)

1998.01.07

A case of undifferentiated carcinoma of the maxillary sinus – case report -*

 今回我々は88歳男性で,左上顎洞に原発し肝細胞癌との重複例で,手術と放射線療法にて治療を行った未分化癌の症例を経験した.初発症状は左鼻閉感と左鼻出血で,左鼻腔内の腫瘤に気付き,近医耳鼻科を受診し生検にて腺癌と診断され,当科紹介受診し左上顎洞癌の疑いにて入院となった.術前組織診断では,低分化癌であったが,術後組織診断は未分化癌であった.手術と放射線療法で治療を行い経過良好にて退院したが,退院後1ヶ月目のCTで腫瘍の再発と頸部リンパ節転移を認め再入院となった.年齢を考慮し,家族とも相談の上,疼痛の除去を目的とした対症療法を行った.鼻・副鼻腔に原発する癌腫の大部分は,上顎洞に発生し病理組織学的には扁平上皮癌が多い.未分化癌は,きわめて稀であり局所制御が困難で遠隔転移が高率に生ずる組織型である.上顎洞扁平上皮癌に比べ,極端に余後不良な上顎洞未分化癌の標準的な治療法の確立が望まれる.  (平成10年5月22日受理)

1998.01.06

Sensitivity of Anisakis Larvae to alcoholic and cooling beverages in vitro*

 In vitro(37℃)において,生鮮サバから採取したアニサキスI型幼虫(線虫類:回虫目)の数種アルコール飲料および清涼飲料に対する感受性について検討した.その結果,幼虫はアルコール分14~25%含有の飲料中では平均5.6時間,アルコール分2.5~10%含有の飲料中では約5日間(114時間),アルコールを含まない清涼飲料中では約9日間(225時間)生存した.すなわち,幼虫に対する致死効果について,アルコール飲料中では含まれるアルコールの濃度に比例したが,アルコールを含まない清涼飲料中では致死的効果が認められなかった.特に焼酎(アルコール分25%)と梅酒(アルコール分10%)中で致死効果が高く,すべての幼虫が80分以内に運動を停止し,死滅した.梅にはアニサキス幼虫に対する致死効果因子の含まれる可能性が示唆された.        (平成10年7月8日受理)

1998.01.05

Immunohistochemical study of lung metastasis of hepatocellular carcinoma – comparison of metastatic and non-metastatic groups in autopsy cases -*

 針生検診断時に,原発性肝細胞癌(以下, HCC)の肺転移性を予測する細胞学的諸因子について検討した. 139例のHCC剖検例を対象として,肺転移を伴う群と伴わない群につき,臨床病理学的検討と,同68例を対象として,E-カドヘリン,ラミニン, CD34,P21/CIPI/Waf1,P27/KIPIの各マーカーの免疫染色による比較検討を行い,肺転移に関わる諸因子を検索した. HCC剖検肝では,臨床病理的事項のうち,脈管侵襲以外に病悩期間,AFP高値,リンパ節転移,核分裂指数(MI)高値,および癌細胞の分化度の低下が,染色マーカーについては,E-カドヘリンの発現の低下が肺転移予測の指標になりうると考えられた.                                 (平成10年7月8日受理)

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