h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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2021.11.02

A case of encapsulated papillary carcinoma of the thyroid

甲状腺被包型乳頭癌は比較的まれであり,非被包型乳頭癌と比べて再発,癌死もほとんどなく予後は良好であるとされている.また,線維性被膜を有することから超音波検査では濾胞性腫瘍との鑑別は困難な場合がある.症例は38歳の女性.前医の超音波検査で甲状腺左葉に2.2 cm 大の充実性腫瘤が認められた.穿刺吸引細胞診で濾胞性腫瘍の疑いと診断され,当院に手術目的で紹介された.超音波検査で甲状腺左葉から峡部にかけて2.5 × 2.1 × 1.6 cm 大の境界部低エコー帯を一部に伴う充実性腫瘤を認めた.濾胞性腫瘍の疑いで甲状腺左葉峡部切除術を施行した.病理組織学的に線維性被膜及び乳頭癌の核所見として矛盾しない腫瘍細胞が乳頭状構造をとる部分が認められたことにより,被包型乳頭癌と診断した.超音波検査で明らかな頸部リンパ節腫大は指摘できなかったため再手術は行わずTSH 抑制療法を行いながらで経過観察中である.

2021.10.18

Looking back on the efforts for prevention from COVID-19 infections in Kawasaki Medical School Hospital

2020年1月より,「新型肺炎」と呼ばれ,急激にニュース等でも注目されるようになったCOVID-19.川崎医科大学附属病院ではこの稀有な感染症に対峙すべく,2020年2月より,附属病院新型コロナ感染対策委員会を設立いたしました.3月,岡山県内でも新型コロナ感染者が確認されるようになり,入院患者の面会制限を開始し,救急外来特設診察室を使用した「帰国者・接触者外来」(現在の「新型コロナ外来」)を立ち上げました.4月になると,日本全国に「緊急事態宣言」が発令されました.それに伴い院内でのPCR 法(real-time PCR)やLAMP 法検査の開始,新型コロナ専用病棟を設置しました.この時期,医科大学をはじめとした当院における臨床実習も中止になりましたが,5月の宣言解除に伴い,感染対策を徹底させながら,現在まで継続しています. 7月に入り流行の「第2波」が押し寄せ,再度の感染者の急激な増加が岡山県でも見られるようになり,当院にも新型コロナウイルス感染症の入院患者が収容されました.9月からは,軽症・中等症の新型コロナウイルス感染症患者のための専用病棟の運用も開始され,この運用開始に伴い,軽症・中等症患者を内科診療チーム,重症例を救急科チームが診療する体制が確立しました. やがて2020年の12月には,さらに大きな「第3波」が押し寄せ,附属病院新型コロナ感染対策委員会のほぼ毎週の開催,院内にLAMP 法に代わる新たなPCR 法の機器の導入も行いました.このような中,とうとう翌2021年2月には新型コロナワクチンが日本国内でも承認されました.3月よりまずは新型コロナ患者と直接接触する機会の多い当院病院職員から接種が開始されました. 本稿ではその他,2020年1月から現在までに,川崎医科大学附属病院でCOVID-19に対しどのように取り組んできたのかを振り返ります.

2021.09.17

A case of bilateral chylothorax after surgery for papillary thyroid cancer

甲状腺癌術後の乳糜漏は比較的稀な合併症であるが,乳糜胸となる症例はさらに稀である.今回,甲状腺癌術後に両側乳糜胸となり保存的治療で改善した症例を経験したので報告する.症例は73歳女性.甲状腺乳頭癌Stage Ⅳ B の診断となり,甲状腺全摘,頸部リンパ節郭清が施行された.一過性の術後副甲状腺機能低下以外は問題なく経過し,翌日から通常食を開始した.術後3日目に頚部ドレーン排液の減少を確認し抜去した.術後4日目に呼吸苦が出現した.造影CT で両側に胸水貯留を認め,右胸腔ドレナージを施行した.排液は黄白色であり,乳糜胸を疑い絶食管理を開始した.術後9日目に食事再開したがその後も増悪所見なく術後12日目に胸腔ドレーン抜去し,術後16日目に退院となった.甲状腺癌の外側頸部リンパ節郭清術後に呼吸困難を来した場合は乳糜胸も鑑別として考えるべきである.

2021.09.06

A case of pneumonia with asymptomatic reversible splenial lesion

熱性疾患罹患中に,異常言動・行動,意識障害,痙攣などの神経症状を呈し,可逆性脳梁膨大部病変を認める病態は,可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(clinically mild encephalitis / encephalopathy with a reversible splenial lesion;MERS)として知られている.我々は,肺炎罹患中に,神経症候を認めない可逆性脳梁膨大部病変を呈した症例を経験したので報告する.患者は37歳,男性.肺炎発症前に,交通事故による脳震盪のエピソードがあった.その後,発熱と湿性咳嗽を生じた.脳震盪のフォローアップ目的で頭部MRI を施行し,脳梁膨大部病変を認めた.神経学的所見は異常を認めなかった.胸部Ⅹ線および胸部CT では,左肺下葉に肺炎像を認めた.肺炎に対して,抗菌薬投与を行い,改善を認めた.第35病日の頭部MRI では脳梁膨大部病変が消失しており,可逆性の脳梁膨大部病変と診断した.神経症候を認めない熱性疾患例の中に,本症例のような可逆性脳梁膨大部病変を呈する例が潜んでいる可能性があると考える.

2021.09.06

Therapeutic effect of lenvatinib and predictive factor of objective response in patients with unresectable large hepatocellular carcinoma

肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応とされてきた肝細胞癌の一部(最大腫瘍径(cm)と腫瘍個数の和が7を超える[up-to-seven out])はTACE 不応であることが明らかにされている.そこで最大腫瘍径 > 6cm の切除不能大型肝細胞癌に対するレンバチニブ(チロシンキナーゼ阻害薬)の治療成績を検討し,治療奏効予測因子を解析した.対象は2018年4月から2020年10月までの間にレンバチニブを導入した122例の肝細胞癌症例のうち,治療効果判定が可能で最大腫瘍径 >6cm であった45例である.mRECIST による最良治療効果はCR/PR/SD/PD が0/23/13/9例で,奏効率は51.1%,腫瘍制御率は80%であった.奏効群(23例)は治療開始早期(1か月以内)のΔCRP(治療開始後最大CRP 値−治療前CRP 値)が非奏効群(22例)にくらべて有意に大きく( P < 0.001),独立した治療効果予測因子であった(オッズ比:1.39,95% CI:1.08-1.78,P = 0.01).一方,全生存期間中央値は12.3か月,無増悪生存期間中央値は4.9か月であり,生存期間予測因子は総ビリルビン値(ハザード比:2.74,95% CI:1.35-5.55,P = 0.005),腫瘍制御率(ハザード比:0.33,95% CI:0.12-0.94,P = 0.038),後治療有り(ハザード比:0.33,95% CI:0.13-0.70,P = 0.013)が有意な因子として抽出された.G3以上の有害事象では,ALT・AST 上昇が8例(17.8%)と最も高頻度であった.以上より,腫瘍径 > 6cm の切除不能大型肝細胞癌に対するレンバチニブの治療成績は良好で,レンバチニブ治療開始早期のΔCRP は治療奏効の予測因子であるとともに,レンバチニブ中断後も可能な限り後治療を行うことが生存期間を延ばすうえで重要であると考えられた.

2021.09.06

Differential diagnosis of intracranial tumors using 201Tl SPECT

タリウム-201単光子放射断層撮影法(201Tl SPECT)は頭蓋内腫瘤の評価目的で,CT やMRI,18F-FDG PET/CT とともに現在も用いられるが,その鑑別診断における有用性の報告は限られている.今回我々は,2014年4月1日から2019年3月31日の間に,自施設で頭蓋内腫瘤の鑑別診断を目的として201Tl SPECT が施行され,視覚的に有意な集積を認め,かつ臨床的に最終診断に至った39例(男性25例,女性14例,平均64歳)を対象として後方視的に解析し,その有用性を再評価した. 病理検査,臨床経過(良性の場合は1年以上)または治療的診断によって,39例のうち26例は悪性腫瘍,13例は良性病変と最終診断されていた.201Tl SPECT 画像からは,早期相における腫瘍(Tumor)と正常脳(Normal)との集積比(早期T/N 比),および後期T/N 比と早期T/N 比の比であるRetention Index(R.I.)を算出し,腫瘤の良悪性や組織型によって比較した. 早期T/N 比は,髄膜腫で11.91 ± 9.45と非常に高く,悪性病変では5.77 ± 4.60と中程度で,髄膜腫以外の良性病変では2.44 ± 0.91と低い傾向を認めた.R.I. は,悪性病変では1.03 ± 0.54と高く,髄膜腫では0.63 ± 0.31と低い傾向を認めたが,髄膜腫以外の良性病変では0.93 ± 0.25と比較的高値を示した.R.I. のカットオフ値を0.7以上とした場合の悪性腫瘍の感度は69.2%,特異度は38.5%,正診率は59.0%であった. 早期T/N 比やR.I. は腫瘤の良悪性や組織型によって異なる傾向が見られており,これらを組み合わせることで診断の一助になり得た.ただし,早期T/N 比やR.I. は病変のサイズや内部の性状にも影響を及ぼされるため,鑑別に際してはこれらの点を考慮しながら判断する必要があると考えられた.

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