2022.01.19
Dementia and Car Driving – Looking back on the five years since the establishment of the driver’s license outpatient clinic, consider the future prospects –
認知症の重症度とともに運転事故の危険性は高まることから,中等度以上の認知症では運転すべきでないという点についての世界的コンセンサスは得られているが,専門学会ごとに認知症の運転中止基準は異なる.当院では2017年4月よりものわすれ外来とは別に運転免許外来を新設し,時間をかけた丁寧な診療と告知,指導,運転免許返納後の生活確保・支援ができるよう,多職種で受診者に対応してきた.2021年7月までの当外来受診者は64人(のべ117人)で,ほとんどが免許更新時の第1分類該当や交通違反のための受診であった.当外来にて施行した神経心理検査の平均点は,MMSE-J 21.3/30,DASC-21 28.4,CDR 0.6と全般的認知機能低下が比較的軽度な者が多かったが,FAB 10.9/18,TMT-A 102.4s,TMT-B 261s と注意,前頭葉機能,視覚情報処理や遂行機能の低下は明らかであった.当外来を受診した患者には上記の検査結果を踏まえて全例に運転免許返納を推奨したが,全患者が運転継続を強く希望し,運転中止に至った例は20例のみで,残りのうち更に20例は半年毎に当院を再診し現在も運転継続している.この20例は,MMSE-J 22.3/30,DASC-21 26.2,CDR 0.5とやはり全般的認知機能は比較的保たれており,19例(95%)を軽度認知障害と診断している.全般的認知機能が比較的保たれている軽度認知障害の患者は現実的に運転できていることから,都市部と異なりインフラ整備が十分には整っていない地域での運転の重要性を鑑みると,社会インフラの整備,限定免許や安全運転技術などのサポート体制の強化など高齢者の運転継続の可能性についても模索すべきであると考えられる.
2022.01.19
A mouse model of glottal closure for the treatment of breathlessness and hoarseness
嗄声は,炎症や腫瘍性病変以外にも老化や筋疾患に伴う声帯筋萎縮や反回神経麻痺などによって発症する.うまく発声できないことはコミュニケーション能力の極端な低下を意味し,Quality of life(QOL)を著しく低下させる.その病態は疾患によって異なるが,声門閉鎖不全により発声時に生じる声門間隙の残存があると気息性嗄声を生じる.気息性嗄声の治療は,保存的治療から外科治療まで様々なものが存在するが専門性が高く限られた施設のみで治療される現状で,治療を受けられる患者が限定される問題がある.そのためさらに低侵襲で復元性の高い治療や汎用性の高い治療が望まれる.再生医療をふくめた新規治療の開発を進めるためには,まず声門閉鎖不全を生ずるマウスモデルの確立が必要である. 本研究では,C57BL/6マウスを用いて神経原性の声門閉鎖不全モデルとしての反回神経麻痺モデルと,加齢性の声門閉鎖不全モデルの2つのモデル動物を作成し,内喉頭筋を含む声帯の評価を行うことでマウスにおける声門閉鎖不全のメカニズムがヒトと同一であるかどうかを解明することを目的とした.また筋肉の過形成を抑制する分子であるMyostatin(以下,Mstn)を標的とし,変異Mstn を過剰発現することで全身性に筋過形成を来すマウス(以下,変異Mstn tg マウス)を用いて内喉頭筋を含む声帯の評価を行い,Mstn 阻害の臨床応用の可能性についても検討した. 反回神経麻痺モデルマウスについては,健側と比較して麻痺側では有意に甲状披裂筋萎縮が認められ,声門閉鎖不全のメカニズムはヒトと同一でありモデルとして有効であると考えられた.加齢マウスを用いた検討では,内視鏡で,声帯萎縮と弓状変化を確認出来た.甲状披裂筋萎縮はみられず声帯粘膜の萎縮とコラーゲン線維の増加が確認され,加齢に伴うヒト声帯の萎縮と同様の形態学的所見を呈することから加齢に伴う声門閉鎖不全のモデルとして有用であると考えた.変異Mstn tg マウスの内喉頭筋においては有意な筋肉量・筋線維の増大はなかったが,傍声帯間隙の脂肪が減少しており,喉頭内においても脂肪代謝に影響があることが明らかになった.
2022.01.19
Retrospective study evaluating myeloablative conditioning containing total body irradiation of 12 Gy/4 fractions/4 days for acute lymphoblastic leukemia
目的は急性リンパ性白血病に対し,12Gy/4分割/4日の全身放射線照射(total-body irradiation: TBI)を用い骨髄破壊的前処置を行った造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation: HSCT)の成績を明らかにすることである.2007年5月から2016年11月に上記の移植前処置を用いてHSCT を行った16~50歳の患者14例を対象に,移植成績と放射線肺臓炎を含む晩期有害事象について後方視的に検討した.観察期間中央値は73ヵ月,好中球生着率85.7%,5年無病生存率64.3%であった.14例中6例が移植関連の有害事象で死亡,8例は生存中である.リニアックの円滑利用やスタッフの負担軽減を目的とした12Gy/4分割/4日でのTBI を用いたHSCT の移植成績は,我が国で頻用される12Gy/6分割/3日の既報と同等であり,寡分割照射にも関わらず放射線肺臓炎の合併はなく,他の晩期有害事象の合併も少なく,安全に行えていた.
2022.01.06