h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1989.01.03

M Cell Transport of Streptococcus Pyogenes and Streptococcus Preparation OK-432 from Intestinal Lumen into Rabbit Peyer’s Patches *

従来より経口的に投与された溶連菌製剤OK-432が小腸やPeyer板近傍の腸管から吸収され, Peyer板リンパ濾胞,腸間膜リンパ節に出現し,消化管付属リンパ組織を介して生物学的修飾物質として生体の免疫能を賦活するという報告がなされている.しかしながら腸管のいかなる細胞から菌体が摂取されるかについての研究はなされていない.そこで,著者ぱウサギ小腸を用い, Streptococcus pyogenes A群su株, ATCC 2106, 溶連菌製剤OK-432の小腸内投与実験を行い,これら菌体が小腸のいかなる細胞から摂取されるかについて電顕的検索を行った.その結果,これら菌体は投与後1時間でPeyer板上のM細胞に付着し,5時間後にはM細胞の細胞質内に取りこまれ,またM細胞に相接し,内包されているマクロファージ,リンパ球の細胞質内に転送されている像を確認した.他のリンパ濾胞被蓋上皮細胞,絨毛吸収細胞,吸収上皮細胞間のリンパ球にはかかる像は認められなかった.生物学的反応修飾物質として経口投与される溶連菌製剤OK-432はM細胞より取りこまれ,リンパ球,マクロファージに転送されることを証明した.(昭和63年10月18日採用)

1989.01.02

Methacarn Fixation for Histological and Immunohistochemical Studies of Rat Lymphoid Tissues *

リンパ球表面抗原の多くはホルマリン固定パラフィン包埋材料では失活することが多く,凍結切片材料を使用せざるを得ないとされている.しかし,凍結切片法では組織,細胞の形態の保存性が悪いなど欠点も多い.パラフィン包埋材料でリンパ球表面抗原の組織化学的検索と形態学的観察が同時にしかも満足いく程度にできる固定法を見つけだす目的で,今回我々はマウス抗ラットリンパ球抗体(MRC 0X6, W 3/13, W3/25, MRC OX8)を使用し, Methacarn法とAMeX法を凍結切片法と比較し検討してみた.その結果,いずれの方法でも抗原性は保存されるが,組織,細胞の形態の保存性が最も優れていたのはMethacarn法であることがわかった.また,用いる抗体によって,固定法を選択しなければならないことも明らかとなった.(昭和63年10月4日採用)

1989.01.01

An Experimental Trial for Immune Complex Arteritis *

ゲラチンスポンジ塞栓下で家兎耳介動脈を用いてimmune complex arteritis惹起を試みた. horseradish peroxidase (HRP)で感作した家兎耳介動脈にゲラチンスポンジ10 mg, HRP 10 mg, phosphate buffered saline (PBS) 0.5 mlの懸濁液を経皮的に動注し,末梢塞栓部を経時的に観察,生検した.動注後24時間,72時間で動脈壁上にジアミノベンチジン陽性沈着物と,lgG,C3を同時に微細顆粒状に認めた.抗原,抗体及び補体の微細顆粒状沈着は動脈壁上でのimmune complex 形成を示唆している.(昭和63年10月1日採用)

1988.04.23

Serous Cystadenoma of the Pancreas ―A Case Report― *

膵嚢胞性疾患はまれな疾患で,そのほとんどを,仮性嚢胞が占め,膵嚢胞腺腫は非常にまれな疾患である.膵嚢胞腺腫は,一般に漿液性嚢胞腺腫,粘液性嚢胞腺腫の二型に分類され,前者は, malignant potential のない真性嚢胞で,後者は,悪性化の傾向があるとされている.我々は,膵漿液性嚢胞腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は,77歳 女性.約10ヵ月前に腹部腫瘤に気付き,約1ヵ月前より黄疸に気付き,1987年2月12日入院した.右の上腹部に鷲卵大,弾性硬,球形の腫瘤を触知した.CTでは膵頭部に,造影剤で濃染する明らかな被膜を有する,多房性の嚢胞性腫瘤を認めた.上腸間膜動脈造影では,腫瘍濃染像を認めたが,明らかな血管侵食像は認められなかった.経皮経肝胆管ドレナージによる減黄後,幽門温存膵頭十二指腸切除術, Child法による再建術を行った.摘出標本の腫瘍部は,肉眼的に,厚い被膜を有するスポンジ状の腫瘍で,正常膵とは,明瞭に境界され,病理学的には悪性所見はなく膵漿液性嚢胞腺腫と診断した.(昭和63年9月20日採用)

1988.04.22

A Case Report of Inferior Vena Caval Patch Angioplasty for Renal Cell Carcinoma in an Infant *

11歳男児の腎癌に対して右腎切除と腎静脈分岐部より末梢側の下大静脈パッチ形成術を施行した.この症例は転移性リンパ節により浸潤された下大静脈の代用血管による血行再建後,その開存が確認された最初の臨床報告と思われる.(昭和63年9月2日採用)

1988.04.21

A Dramatic Effect of Postoperative Radiation Therapy for Craniopharyngioma ―Case Report― *

craniopharyngiomaに放射線治療が有効であるとの意見が多いが,それは主に腫瘍の増大を阻止する効果があるというもので,腫瘍を縮小させたとの報告は非常に少ない.放射線治療後7年間の経過のうちに腫瘍の著明な縮小を認め,その過程をCTにて追跡しえたcraniopharyngioma成人例を報告した.症例は37歳男性.4ヵ月前から頭痛,視力低下,性欲減退を自覚し当科を受診した.視神経萎縮と両耳側半盲を認めCTにてトルコ鞍上部腫瘍と診断し, 1980年11月開頭手術を行った.腫瘍は視交叉部の後方に存在し充実性で硬く易出血性で更に視交叉部,視床下部に強く癒着していたため部分切除にとどまった.組織診断はcraniopharyngiomaであった.術後のCTにて直径24 mmの残存腫瘍を認め,60Co照射を56日間で計3050 rads 行った.6ヵ月後の1981年7月のCTで腫瘍は直径1 6 mm に縮小し,視力も正常に復していた.その後も腫瘍の縮小は進み,6年後の1987月3月には直径11 mm までに縮小し,7年後の1988月7月現在まで再発を認めていない.以上の結果から放射線治療にはcraniopharyngioma組織を破壊する力があると考えられ,全摘手術が困難な場合,無理な手術操作は避けて術後放射線治療を行うべきであると考えられた.(昭和63年7月29日採用)

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