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Online edition:ISSN 2758-089X

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1989.01.10

Mast Cells in Skin Lesions Systemic and Discoid Lupus Erythematosus *

全身性エリテマトーデスはT細胞機能異常とB細胞異常活性を特徴とする自己免疫疾患である.一方,肥満細胞はT細胞由来リンフォカインにより活性,調節されている細胞である.SLE 31例, DLE 20例の皮疹部肥満細胞をアストラブルー染色で観察した. SLE, DLEともに肥満細胞数は増加していた.リンパ球100個に対する肥満細胞数はSLEでDLEに比し高い傾向が認められたが,はっきりした統計学的有意差はなかった.(昭和63年10月31日採用)

1989.01.09

Clinical Survey on Adverse Reactions to Iodinated Contrast Media ―Ionic Contrast Media and Non-Ionic Contrast Media― *

川崎医科大学附属病院では1986年8月より血管造影検査・排泄性尿路造影検査・CT造影検査には,非イオン性低浸透圧水溶性有機ヨード造影剤の使用を開始している.それ以前より使用していたイオン性(高浸透圧)造影剤とこの非イオン性造影剤とを,副作用の発生頻度を中心にその安全性について検討した.副作用の発生頻度はイオン性造影剤では1776例中16.50%で,非イオン性造影剤では1588例中2.20%であり,約1/7と著明な減少をみている.全国集計でもほほ同様の傾向が得られている.しかし,非イオン性低浸透圧造影剤も水溶性有機ヨード造影剤であるという本質には変わりなく,他の一般薬剤に比して高頻度の副作用の発生をみているので,使用に際しては,その検査の必要性を十分検討するとともに,使用量を最小限度におさえ,副作用発生時に対する対応を十分整えた上で細心の注意で使用するべきである.(昭和63年10月27日採用)

1989.01.08

Microvascular Architecture of Ethylnitrosourea-Induced Brain Tumors in Rats: Scanning Electron Microscopic Study of Vascular Corrosion Casts *

脳腫瘍の微小血管は腫瘍の循環代謝や頭蓋内に発生する複雑な病態とも密接に関連する重要な因子である.本研究では, ethylnitrosourea経胎盤投与により誘発した実験脳腫瘍の微小血管構築および腫瘍血管の形成過程について血管鋳型走査電顕法を用いて立体的に検討した.長径が2mm未満の微小腫瘍では腫瘍血管の形成は認められず,むしろ微小血管の乏しい部分として観察されたが,長径が2mm以上の腫瘍になると正常脳には存在しない特徴的な形態を有する腫瘍血管が形成され,血管鋳型標本から腫瘍の存在を確認することができた.これら腫瘍の各部位における微小血管構築について詳細に検討し,腫瘍の血管新生およびその形成過程や形成された腫瘍血管の2次的変化を示すと考えられる種々の形態学的所見を明らかにした.(昭和63年10月26日採用)

1989.01.07

Efficacy of Intra-Arterial Chemotherapy Using Cis-Diamminedichloroplatinum (H) on Rat Bladder Tumors Induced by N-butyl-N~(4-hydroxybutyl)-Nitrosamine *

N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-Nitrosamine (BBN)誘発ラット膀胱癌に対しCDDP動注療法を行い,その有用性について検討した. 0.05% BBN溶液を自由飲水として摂取させ,A; control 群(n=7),B; CDDP 4 mg/kg 静注群(n=7),C; CDDP 4mg/kg動注群(n=9)およびD; Angiotensin Ⅱ (1.0μg/kg/min)併用CDDP 4mg/kg 動注群(n=13)に分け治療を行い以下のような結果を得た.なお,動注方法は大動脈より,大動脈および両大腿動脈をクランプ後行った.1 . control 群では全例移行上皮癌, grade 2の発癌が認められ, stageはpTa,1 6頭,pT3 1 頭であった.2.加療後7日目の体重の推移をみると,各治療群に差はなく, CDDP 4mg/kg 投与での副作用は各療法間に特に差を認めなかった.3.切除した膀胱重量はA, B, C, D群それぞれ0.62土0.45, 0.38土0.12, 0.17土0.04, 0. 1 9±0.05gであり,これよりC,D群はA,B群それぞれに比し有意に低値であった.4.切除膀胱の総platinum濃度をみると,B群; 2.60土0.94, C群; 4.93土2.37,D群; 6.18±1.77μg platinum/g wet tissue と,C,D群はB群に比し有意に高値であった.以上より, CDDP動注群は静注群に比し有効な抗腫瘍効果を示すことがわかった.(昭和63年10月25日採用)

1989.01.06

Persistency of Antigen and Antibody Activity in the Passive Arthus Reaction with Special Reference to Immune Complex Formation *

抗原と抗体の免疫学的活性の持続時間を, passive Arthus reactionによるモルモットの皮膚組織内でのimmune complex (IC)形成の有無を観察することによって検討した.passive Arthus reaction は,皮膚内の抗原と血中の抗体によって惹起され,その結果,真皮の毛細血管や細静脈の血管壁およびdermo-epidermal junction(D-EJ)への抗原・抗体・補体の顆粒状の沈着物としてICの形成が認められる.抗原はhorseradishperoxidase (HRP)とbovine serum albumin (BSA)を,抗体は抗HRPウサギIgGと抗BSAウサギIgGを用いた.抗原であるHRPの沈着は, Graham-Karnovsky法によるdiaminobenzidine発色反応で,抗体であるウサギIgGと,補体であるモルモットC3の沈着は螢光抗体法により証明した.第1の実験の目的は,皮膚組織内における抗原の免疫学的活性の持続性を調べることである. 100μgの抗原を足底部皮内に投与した後,一定の時間間隔(15分間,1時間,2時間,4時間,6時間)をおいて5mgの抗体を静注した.この静注により反応を惹起した1時間後に,抗原を皮内注射した部位の皮膚を採取し,ICの形成の有無を調べた.ICが形成されていれば,抗体が静注された時点に,この抗体と反応してICを形成することのできる抗原が皮膚に存在していたことを示している.第2の実験の目的は,血中における抗体の免疫学的活性の持続性を調べることである.5mgの抗体を静注した後,一定の時間間隔(15分間,1時間,2時間,4時間)をおいて100μgの抗原を皮内注射した.反応を惹起した抗原の皮内注射の各1時間後に,皮膚生検を行った.ICが形成されていれば,抗原を投与した時点に,この抗原と反応してICを形成できる抗体が血中に存在していたことを示している.第1の実験の結果で, 100 μg のHRPを皮内注射した後,2時間後に5mgの抗体を投与すればICの形成が観察されたが,4時間後に抗体を投与した場合にはICはほとんど認められなかった.これに対して, BSAを抗原とした場合には, 100μgの抗原を皮内注射した後,6時間後に5mgの抗体を静注した場合でもICの形成が観察された.第2の実験の結果,静注された5mgの抗HRPウサギIgGと抗BSAウサギIgGは,いずれも2時間後に投与された抗原(HRPまたはBSA)とは反応してICを形成することができたが,4時間後ではICは形成されず,持続時間に差はなかった.以前の実験結果より,5mgの抗体を投与する場合, 100μgか25μgの抗原(HRPまたはBSA)を投与すれば確実にICが形成され,5μgでは多くの場合,1μgではときにICの形成が観察されることがわかっている.したがって,今回の実験で皮内に投与された100μgの抗原は, HRPの場合は,2~4時間後に5~1μgあるいはそれ以下に減少し,BSAの場合は6時間後でも5μg以上残存していたと考えられる.すなわち, BSAはHRPより長く皮膚内で抗原として作用することができると考えられた.今回のHRPの持続性についての実験結果は,益田らにより125I標識耳HRPを用いて計測されたHRPの皮膚内存続時間の結果とは差があった.この差は,放射活性により示されるHRPの存在が,ICを形成することのできる抗原として活性のあるHRPの存在と一致しないことを示していると考えた.すなわち125I標識HRPによる計測では,抗原活性の有無には関係なく,物質としてのHRPの存在する時間を計測することになるが,貪食や分解等によって不活性化されたHRPは抗原となることはできない.また,このことより, HRPとBSAの持続時間の差も,これらが活性を失う速度の違いによる可能性があると思われた.したがって,ICの形成に対する影響を考える場合,抗原や抗体が存在することはもちろんであるが,抗原・抗体としての活性をもっていることが必要であり,これらの活性の持続性が重要であると思われる.(昭和63年10月24日採用)

1989.01.05

Grafting of Cultured Autologous Epidermis on Burn Wounds *

近年,ヒト培養表皮の移植が熱傷創などの広範囲な皮膚欠損創の画期的な治療法として注目されつつある.私たちも臨床への利用を目標として表皮細胞の培養を行っており,今回,熱傷潰瘍の肉芽面に培養表皮を移植する機会を得,その生着をみた.この症例の経過を移植後約7ヵ月間観察し,良好な結果を得ているので報告する.(昭和63年10月21日採用)

1989.01.04

Immunohistochemical Studies of Microfold Cell (M Cell) and Lymphocytes Enfolded by M Cells *

Peyer板被蓋上皮に存在するM細胞は,消化管内腔より抗原物質を取り込み内包するリンパ球,マクロファージに伝達している.このM細胞に内包されるリンパ球のサブセットは明らかにされておらず,著者は抗マウスmonoclonal抗体(Thy-1. 2, Lyt-1, Lyt-2, L3T4, I-Ad)を用い酵素抗体間接法, biotin-streptoavidin system を使用し光顕および電顕的に観察した.光顕的には上皮細胞間にはLyt-2陽性細胞(suppressor/cytotoxic T cell)がL3T4 (helper T cell)より優位にみられ, I-Ad陽性細胞も認められた.上皮下ではL3T4陽性細胞が優位であった.免疫電顕観察では,M細胞に内包されたリンパ球のサブセットは上皮細胞間リンパ球の光顕観察とほほ同様であり,M細胞周辺にはI-Ad陽性細胞が多数認められた.M細胞のlateral membraneにはI-Ad陽性像を認めla抗原の表出が確認され,M細胞の抗原提示細胞として機能の重要性が示唆された.(昭和63年10月19日採用)

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