h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1989.01.20

Torsades de Pointes in a Patient with Hypertensive Intracerebral Bleeding *

症例は脳出血で入院した52歳の女性である.入院時心電図では,陰性T波と著明なQT延長がみられ,モニターではTorsades de pointes 型心室頻拍が多発した.本症に対してリドカインを静注したところ心室不整脈は全く消失し順調な経過をとった.急性期の脳出血患者に対しては,心電図モニターを施行し重篤な心室不整脈の管理にあたることが重要と思われた.(昭和63年10月26日採用)

1989.01.19

A Case of Flail Aortic Valve with an Echocardiographic Manifestation Similar to Cord-like Vegetation *

症例は67歳女性.大動脈弁閉鎖不全を伴う感染性心内膜炎で入院.術前に行われた心エコー図検査では有茎性の大動脈弁細菌性疣贅が疑われたが,手術では弁穿孔によるflail aortic valve の像であった.flail aortic valve と細菌性疣贅は類似のMモードエコー所見を呈するが,超音波断層法を併用することにより両者の鑑別が可能とされている.しかし,本例ではそれが困難であった.したがって,心エコー図上細菌性疣贅と考えられる所見が得られても,重症の大動脈弁閉鎖不全を有する場合はflail aortic valve の存在を考慮することが臨床上必要であると考えられた.(昭和63年10月4日採用)

1989.01.18

An Effective Treatment of Severe Oral Candidiasis by Topical Clotrimazole Therapy *

難治性の口腔カンジダ症にclotrimazole発泡錠が著効した症例を経験した.患者は23歳,男性.約4年間舌炎に罹患していた.舌から口腔粘膜全体に及ぶ病変で,約1年半amphotericin B含嗽薬にて治療したが軽快せず, clotrimazole発泡錠を使用したところ著効し,2週間後には略治した.また,舌中央部に深い潰瘍を生じており,これはカンジダ性舌炎によるものでなく外的刺激による,いわゆるBednar’s aphta と考えた.(昭和63年10月3日採用)

1989.01.17

Investigation on Purification Method for Applying- to Various RNA Phages and Its Application *

RNAファージ粒子の大量培養,精製を行うための方法を検討した.ポリエチレングリコール‐デキストラン硫酸を用いる方法が有効であることがわかった.さらにこの方法を4種のRNAファージの精製に適用して精製した結果を示した.(昭和63年12月27日採用)

1989.01.16

One Variation of the Right Accessory Hepatic Artery *

右副肝動脈は,約10%の頻度で出現する過剰枝で,通常上腸間膜動脈から分岐して門脈の背側をとおり胆嚢・肝臓右葉に分布する. 1988年度川崎医科大学解剖学実習において,総肝動脈が欠如して,右副肝動脈だけが肝臓全体に分布し,さらに左副胃動脈をも分枝する1例が見つかった.これは, Adachiの分類によれば,第VI型第25群に属する変異で,これまでにも10数例の報告がある.しかし,本例は,胃十二指腸動脈が右副肝動脈の2叉した左肝動脈から分岐する点でこれまでの報告例と異なっている.このことは,その分岐部が本来の総肝動脈であることを示唆する.また,左肝動脈が門脈の腹側に出てくるのは,総肝動脈の枝としての特徴を保っているからであろう.すなわち,本例のような変異は,右副肝動脈が総肝動脈の分布を代償したというより,総肝動脈の基部が消失して右副肝動脈に吻合したものと解釈できる.これに基づいて,発生学的な模式図を示した.(昭和63年12月23日採用)

1989.01.15

Mediastinal Tumor in Our Clinic *

昭和48年12月より昭和63年11月までに川崎医科大学呼吸器内科へ入院した縦隔腫瘍30例の臨床病理学的検討を行い,以下の成績を得た.1.組織型別症例頻度は,胸腺腫が14例(46.7%)と最も多く,ついで奇形腫5例(16.7%),神経性腫瘍3例(10.0%),リンパ性腫瘍3例(10.0%)の順であった.2.発見年齢は,40歳以上が全体の2/3を占めていた.しかし,奇形腫では全例39歳以下であった.3.リンパ性腫瘍は100.0%,胸腺腫は71.4%,奇形腫では60.0%が悪性であった.4.発見動機は,集検発見40.0%,症状発見60.0%であった.5. 89.7%が好発部位に発生していた.6.治療は,良性例は全例摘出術が行われた.悪性例では,手術が行われた症例は43.8%であり,悪性例の31.3%が1年未満に死亡した.(昭和63年12月21日採用)

1989.01.14

Unreasonable Validity of the Problem in the Examination by the Discriminating- Index of Phi-Coefficient *

医師国家試験・歯科医師国家試験などの国家試験では各問題の良否をφ係数を使って,次のように判定している.各問題について成績上位者と下位者をとりだし,成績上位者が多く正答し,下位者が多く誤答した問題を「良い問題」と判定し,逆に上位,下位で正答した人数が変わらないか,あるいは下位のほうがよくできた問題を「悪い問題」として採点から除外する.φ係数はこの問題良否の判定基準として使用されている.しかしながら,問題の良否(問題の質)を1回限りのテストの成績上位者・下位者の正答人数,誤答人数(データ)で評価することが果たして妥当であろうか.我々はこれを確率モデルを使って,コンピュータ・シミュレーションによって検討した.確率モデルを用いた解析の結果,φ値は大きな変動幅をもって分布することが示された.また320問からなるテストでφ値のコンピュータ・シミュレーションを行ったところ,54問が0.20以下の「悪問」と判定された.以上の結果から,問題の良否の判定をφ係数の数値のみによって判定することはきわめて危険であることが示された.(昭和63年12月12日採用)

1989.01.13

Structural Analysis of Abnormal Hemoglobin with Restriction Endonuclease *

DNAの制限酵素分析はAbn Hb の構造解析に有効な手段となっており,Hb Takamatsu[β120(GH3)Lys→Gln], Hb Riyadh[β120(GH3)Lys→Asn]とHb DLos Angeles [β121 (GH 4) Glu→Gln]の3種のAbn Hb の構造解析が試みられた.Hb Takamatsu の保因者のDNAを制限酵素Bal Ⅰ で消化し,32P-ラベルしたβIVS 2probeとhybridizeすると,正常人にみられる2.1 kb のfragment band のほかに,1. 5 kb の新しいfragment band が現れた.これはこのAbn Hbのアミノ酸置換β120Lys→Glnによるアミノ酸コドンのAAA(Lys)からCAA(Gln)への変換の結果,Bal Ⅰ の切断部位(5′-TGG↓CCA-3’)が新生したことを示すものであった.しかし,同位置のアミノ酸置換をもつHb Riyadh ではLys→Asnの置換のためBal Ⅰの切断部位の新生はみられず,正常と同じDNA fragment pattern を示した.Hb D Los Angeles 保因者からのDNAのEcoRI/βIVS2の処理では,正常な5.2kbのfragment bandのほかに8.8kbの大きなfragment band が現れた.アミノ酸置換はEco RI の作用部位の消失を起こす領域での塩基置換によるものであった.(昭和63年12月6日採用)

1989.01.12

Morphological Studies of Urinary Red Blood Cells in Renal and Urinary Tract Disorders (II) Use of Wright’s Stain in Differential Diagnosis between Renal and Urinary Tract Disorders *

血尿の由来の鑑別を容易ならしめる目的でWright染色法と位相差顕微鏡法を用いて糸球体疾患30例,非糸球体疾患25例の尿沈渣赤血球形態を観察した.位相差顕微鏡法においては赤血球ghostと菲薄化赤血球の判別が困難な場合が多かったが, Wright染色法では赤血球内のhemoglobinを染めることにより両者の判別は明確であった.糸球体性血尿において菲薄化赤血球が全例で認められるのに対して,非糸球体性血尿ではごくまれにしか認められなかった.また,糸球体性血尿では菲薄化赤血球が30%以上に認められ,非糸球体性血尿では菲薄化赤血球は14%以下であり,両者の鑑別は極めて容易である.(昭和63年10月31日採用)

1989.01.11

Morphological Studies of Urinary Red Blood Cells in Renal and Urinary Tract Disorders (I) Studies of Morphological Changes in Urinary Red Blood Cells by Scanning Electron Microscopy *

血尿の発現機構を探り,その病態を明らかにする目的で糸球体疾患5例,非糸球体疾患5例の尿沈渣赤血球形態を走査型電子顕微鏡で詳しく観察した.また浸透圧,pHの変化の赤血球形態に与える影響を検討した.尿中赤血球には有棘赤血球,扁平な不整円形赤血球,球状赤血球,菲薄化赤血球等が認められた.菲薄化赤血球は糸球体疾患例全例に認められたが,非糸球体疾患例には認められなかったことから糸球体性血尿に特徴的な変形形態であると考えられた.また糸球体性血尿にみられる尿中赤血球変形の成因は尿細管における浸透圧およびpHの変化以外の未知の因子が主体であると考えられた.(昭和63年10月31日採用)

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