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Online edition:ISSN 2758-089X

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1988.04.20

Giant Cell Tumor of the Tendon Sheath ―Report of Two Cases― *

腱鞘巨細胞腫の2例を報告した.症例1は37歳男性で,左足第1趾外側のクルミ大,暗紫紅色調を呈した弾性硬の腫瘤.症例2は71歳女性で,過去に2回切除術を受けたが再発.左手第3指DIP関節周囲に数個に分葉化し,連続性のある腫瘤あり.2例とも腫瘤は,小型の組織球様細胞で構成され破骨細胞様巨細胞,ヘモジデリンや脂質を貪食した細胞も認められた.(昭和63年6月29日採用)

1988.04.19

Two Cases of Acute Monocytic Leukemia with Nodules of Leukemia Cutis *

皮膚腫瘤を初発症状とした急性単球性白血病の2例を報告した.症例1 (58歳,男)では,顔,体幹,上肢に,症例2 (79歳,男)では,全身に,無痛性の毋指頭大までの浸潤を伴う紅色結節が多数認められた.2例ともに皮膚結節の生検組織に,真皮全層から皮下脂肪組織におよぶ稠密な単球様腫瘍細胞の浸潤増殖が認められた. FAB分類では,2例ともにM5-b (単球性,分化型)であった.したがって本病の発見に,皮膚結節が重要な手掛かりとなることを報告した.(昭和63年6月20日採用)

1988.04.18

The Usefulness of Bone Scintigraphy in Diagnosis of Polymyositis *

99mTc標識リン酸化合物による骨シンチグラフィは悪性腫瘍の骨転移の検出に広く用いられている.また,99mTC標識リン酸化合物は筋肉疾患にも応用され,その筋肉への集積は炎症性筋疾患の病勢を反映するといわれている.今回我々は多発性筋炎の6例について99mTC標識リン酸化合物による骨シンチグラフィを施行した.未治療の2例および治療に抵抗性の1例では軟部組織への著明な集積が認められた.一方,治療に反応している2例およびすでに寛解状態にある1例では軟部組織への集積はごく軽度ないし全く認められなかった.以上,多発性筋炎における骨シンチグラフィは罹患筋の診断や治療効果判定に有用な手段と考えられた.(昭和63年6月15日採用)

1988.04.17

A Case of Asymptomatic Early Cancer of the Papilla of Yater Revealed Unexpectedly by Esophagogastroduodenoscopy in a Patient with Colonic Polyps *

72歳の男性が,陳旧性心筋梗塞と気管支喘息の精査希望にて1987年1月,川崎医科大学附属病院を受診した.加えて,患者は時に下腹部痛があった. 1987年6月当科入院時は下腹部痛は軽度で,理学所見も著変なかった.一般検査成績は,血清 γ-GTPの軽度の上昇以外は異常なかった.大腸内視鏡では,直腸と横行結腸に5個のポリープがあった.そのうち4個はポリペクトミー施行し,組織学的には腺管状腺腫であった.次に食道胃十二指腸内視鏡検査が行われ,表面に発赤とびらんを伴い10mm大に腫大したVater乳頭を認めた.乳頭開口部は軽度開大し,開口部の生検組織は腺癌であった。ERC,腹部超音波検査,腹部CTには異常は認められなかった.一期的に膵頭十二指腸切除術が施行され,切除標本から早期十二指腸乳頭部癌(Ac,潰瘍型, stage l)と診断された.以上の臨床経験から,食道胃十二指腸内視鐃検査は,無黄疸の早期十二指腸乳頭部癌のスクリーニング検査として非常に有用である.(昭和63年6月7日採用)

1988.04.16

Clinical Study of Lung Abscess in the Last Two Years *

肺膿瘍は,重篤な細菌感染症のーつである.当科で最近2年間に経験した13例の肺膿瘍 症例の臨床像について検討した.全例何らかの基礎疾患を有していた.悪臭を伴う喀痰が 2例で認められ嫌気性菌の感染を示唆する重要な所見となった.2例で発熱を認めなかっ た.白血球数は3例のみでしか増多がなく,特に肺腫瘍に合併した閉塞性肺炎では全例増 多を認めず肺膿瘍としては非定型的と考えられた.原因菌としては嫌気性菌が最も多いと 推測されたが,分離率は低く今後分離率向上のための努力を要すると考えられた.病変は 約半数で右上葉に存在した.肺腫瘍による閉塞性肺炎に続発する膿瘍例があり,病変中枢 部の注意深い読影に加え,より詳細な画像検査,気管支鏡検査を行う必要があると考えら れた.適切な抗菌剤の投与,喀血や膿胸に対する外科的処置の併用により,基礎疾患であ る肺癌が増悪した2例を除いて死亡例はなかった.(昭和63年5月25日採用)

1988.04.15

A Case of Pseudomyxoma Peritonei Originating from the Vermiform Appendix Found Incidentally at Operation on a Right Inguinal Hernia *

右鼠径ヘルニアの手術時に,虫垂原発腹膜偽粘液腫の併存を発見し,同時に治療したまれな症例を報告する.53歳男性.右鼠径部腫瘤を主訴に来院した.右外鼠径ヘルニアの手術時,内鼠径輪部の腹膜を開放したところ,黄色ゼリー状物質が認められ,腹膜偽粘液腫の併存と診断した.Bassini変法にてヘルニア根治術を施行した後,新たに右傍腹直筋切開にて開腹した.虫垂原発腹膜偽粘液腫が存在し,虫垂切除術およびゼリー状物質除去を行い閉腹した.術後の検索で虫垂に腺癌が認められた.術後OK-432の腹腔内注入(1回20 KE 5回,総計100KE)を行い,その後UFTの内服療法にて経過を観察している.術後2年半の現在,再発の徴候はない.(昭和63年5月23日採用)

1988.04.14

Studies of the Skeletal Pathophysiology of Renal Osteodystrophy Using Nucleomedical Procedures *

長期透析中(平均5.5年)の慢性腎不全患者160例について99mTc一標識リン酸化合物による骨シンチグラフィを施行し,全身骨へのRI集積の特徴からRODの病型分類を試み,正常に近い型(C型)のほか,骨への集積が相対的に低下し軟部組織への集積が亢進した型(A型),肋軟骨結合部への強い集積を示す骨軟化症型(D型),頭蓋骨や下顎骨への強い集積を示す副甲状腺機能亢進症型(F型)および異所性石灰化を呈するもの(G型)に分類された.血液生化学検査では、F型は血中アルカリフォスファターゼ(ALP)値の高値だけでなく,N端,C端,中間部アッセイのいずれにおいても血中副甲状腺ホルモン(PTH)の高値が観察された.D型では血中リン値の低値が特徴的であり,A型は血中ALP値および血中PTH値はともに低値を示した.全身骨へのRI集積の程度は,骨形成の指標であり,F型は骨代謝の亢進を,A型はその低下を示すものと考えられた.D型,F型およびA型の亜型であるB型の各1例に,腸骨生検を施行し得た.D型は類骨の増加を示す骨軟化症の像を示し,F型は高回転性の線維性骨炎の像を示し,B型では骨形成の指標であるテトラサイクリン沈着の全くみられないaplastic bone の像が得られた.いまだ少数例の検索ではあるが,組織像と骨シンチグラムとの対応の可能性が示唆された.骨シンチグラフィは,全身骨の骨代謝活性を知ることができ,さらにRI摂取比の算出により局所の骨代謝をも定量化し得る.そのため、RODのごとく,全身骨に不均等に病変の生じる疾患では,総合的な情報が入手できるものと思われた.これらの病型は繰り返しの検査を行うと比較的短期間に相互に移行し得るものであった.単一光子吸収法による橈骨の骨塩量測定と定量的CT法による腰椎海綿骨の骨塩定量の結果,皮質骨主体の橈骨では骨塩量の低下傾向が示された.一方,腰椎海綿骨量は透析期間の延長とともに低下するものから,むしろ増加するものまで幅広く分布し,皮質骨と海綿骨は異なる病変を呈するものと思われた.したがってRODのごとく,全身骨に不均等に生じる疾患では,骨脱灰の評価に皮質骨と海綿骨の両者の測定が必要と考えられた.(昭和63年9月26日採用)

1988.04.13

Clinical Significance of Plasma Endotoxin in Various Liver Diseases *

各種肝疾患166例について血中エンドトキシンを合成発色基質を用いた定量的リムルステストにて測定し,その臨床的意義について検討した.急性肝炎では全例血中エンドトキシンは陰性であったが,劇症肝炎では高率かつ高度のエンドトキシン血症を認めた.慢性肝疾患においては非代償性肝硬変および肝細胞癌に有意の血中エンドトキシンの上昇を認め予後を左右する因子であろうと思われた.また血中エンドトキシンと細網内皮系機能および一般肝機能との関係を検討した結果,肝疾患でのエンドトキシン血症の成因には細網内皮系機能の低下や肝血流量の低下のほかに,肝実質細胞のエンドトキシン処理能の低下も関与していると考えられた.以上より,血中エンドトキシンの測定により肝疾患の進展度や予後予測が可能であろうと思われた.(昭和63年9月22日採用)

1988.04.12

Immune Complex Formation and Its Distribution in Skin Undergoing the Passive Arthus Reaction *

passive Arthus reaction のimmune complex (IC)の形成と分布に及ぼす,抗原・ 抗体の量の影響について2種類の抗原で検討した. passive Arthus reactionはモルモッ トの皮膚で,抗原を皮内注射し,抗体を静注することにより惹起された.抗原はhorseradish peroxidase (HRP. MW 40,000)とbovine serum albumin (BSA. MW 67,000) を,抗体はそれぞれ抗HRPウサギlgGと抗BSAウサギlgGを用いた. passive Arthus reactionの惹起1時間後に,抗原を皮内注射した足底皮膚を生検し,凍結連続切片 を作製した.抗原であるHRPはGraham-Karnovsky法のdiaminobenzidine反応 (DAB反応)で,抗体と補体は螢光抗体法で証明した.これら抗原・抗体・補体はICを 形成すると顆粒状の沈着物として認められる.顆粒状の沈着物は,真皮の毛細血管や細 静脈の血管壁とdermo-epidermal junction (D-EJ)に認められた.5 mg, 3 mg, 1 mg の3段階の抗体量で, 100μg, 25μg,5μg,1μgの4段階の抗原量について検討した.そ の結果,抗原がHRPでもBSAでも,抗体量が5mgで,抗原量が100μgか25μgで あれば常にICの形成が観察された.抗原量や抗体量を減量していくと,ICの沈着は減少 し, DE Jには認められなくなった.分子量のより小さいHRPは, BSAよりも少ない抗 体量でもICの形成がみられた.抗原・抗体・補体はICを形成していても,必ずしも同時 には検出されなかった. passive Arthus reaction の反応惹起1時間後,肉眼的にはほ とんど変化が認められなくても,顕微鏡的にICの存在が確認された.また,ICの沈着 と炎症についてhematoxylin-eosin (H-E)染色を行って検討したが,ICの沈着とICに よる炎症の程度に相関は認められなかった.(昭和63年9月8日採用)

1988.04.11

Efficacy of Transcatheter Arterial Embolization in Spontaneous Rupture of Liver Cancer *

肝腫瘍自然破裂による腹腔内出血の誘因,ならびに緊急肝動脈塞栓術(transcatheterarterial embolization: TAE)療法の有用性について検討した.対象は,肝腫瘍破裂TAE療法群9例,肝腫瘍破裂TAE非療法群14例,肝腫瘍非破裂TAE施行群61例である.肝腫瘍破裂群は非破裂群に比ぺ,腫瘍占拠率でE3以上,門脈浸潤で一次分子以上の塞栓例,腫瘍形態では塊状型が多かった.以上より腫瘍の血管浸潤の有無が腫瘍破裂を来す重要な因子であることが明らかになった.しかし,各種肝機能検査においては、有意差が認められなかった.一方,肝腫瘍破裂症例の生存日数においてはTAE非施行群では平均16.4±20.5日に対し, TAE施行群では平均111±96.2日と有意な延命効果を認め,肝癌破裂に対するTAE療法の有用性が示唆された.(昭和63年9月3日採用)

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