h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1988.04.10

Effects of Lead Acetate on Matured and Developing Cultures of Mouse Dorsal Root Ganglia *

酢酸鉛の末梢神経に及ぼす影響を調べる目的で,マウス脊髄後根神経節の組織培養を行い, 10 -4M, 10 -5M 濃度の酢酸鉛が髄鞘形成が完成した成熟培養組織に及ぼす影響と培養末梢神経の発達に及ぼす影響を検討した.髄鞘形成が完成した成熟培養組織では,10-4M酢酸鉛投与後1か月に至るまで変化は認められなかった.培養末梢神経の発達に及ぼす影響において,髄鞘の発達に関しては,10-4M酢酸鉛投与下で髄鞘形成開始の遅延と髄鞘形成率の抑制が認められた.酢酸鉛投与下で形成された有髄神経では対照群と比べてその数は少ないが,形態的に差はなかった.髄鞘層板数は統計学的に対照群との有意差は認められなかった.位相差顕微鏡下で培養約1週間後から,Schwann細胞または線維芽細胞が変性したと考えられる空胞変性細胞が観察された.また,組織片周辺部のSchwann細胞は少なく,20日以後もSchwann細胞に囲まれていない軸索が存在した.10-5M酢酸鉛投与群では,髄鞘形成率と形態観察で対照群と差は認められなかった.神経細胞と軸索の発達に関しては,10-4M,10-5M酢酸鉛投与群で形態的な変化は観察されず,形態計測的にも軸索の面積,長径,短径では対照群と差は認められなかった.以上より.組織培養実験において成熟組織では酢酸鉛の影響がないこと,成長段階の組織では髄鞘の発達抑制はあるが,神経細胞と軸索の発達抑制はないことが示唆された.(昭和63年8月24日採用)

1988.04.09

Evaluation of US-Guided Percutaneous Ethanol Injection to Liver Cancer *

肝癌10例に対して超音波誘導下に腫瘍内エタノール局注を行い,注入前後でのNK活性やリンパ球サブセットの変動を検討した.局注前28.6±14.1 %であったNK活性は1日後15.7±9.8%と有意の低下を示し,1週後には28.2±18.2%と回復した.リンパ球サブセットは0KT4が1日後に増加, OKT 8は減少し, 4/8比は局注前1.8±0.8から2.4±0.9と有意に増加し,1週後も2.2±1.1と増加したままであった.局注後組織学的検討を加えた症例を呈示し,現在までに報告された局注の治療効果について若干の文献的考察を加えた.(昭和63年8月19日採用)

1988.04.08

Evaluation of Radiotherapy for Brain Metastases of Lung Adenocarcinoma by Computed Tomography *

1981年から1987年までに,23例の肺癌(腺癌)脳転移症例に対し放射線治療を施行し,その治療効果とCT所見について検討した.すべての症例に造影CTが施行され,それによる脳病巣の造影パターンと病巣周囲浮腫の検討も行った.(1)放射線治療による腫瘍縮小効果(奏効率)および神経症状改善効果は,それぞれ82%, 65%であった.また,腫瘍縮小率と神経症状改善度との間には,相関を認めた.しかしこれら良好な治療効果も予後に影響することはなかった.このことより,肺癌(腺癌)脳転移症例に対する放射線治療は,有効な対症療法であると思われた.(2)脳転移巣のCTでの造影パターンと腫瘍縮小効果および神経症状改善度との間には,相関を認めなかった.(3)治療前後における脳転移巣周囲浮腫の改善度は,腫瘍縮小効果および神経症状改善度に関係しなかった.(4) 23症例の平均生存期間は, 4.1ヵ月であった.原発巣の制御が困難な場合,特に,今回の肺癌のなかでも腺癌の場合,脳転移への放射線治療は,全身疾患に対する局所療法にすぎないことを理解すべきである.(昭和63年8月13日採用)

1988.04.07

Clinical Study of Syringomyelia ―Relation of Neurological Symptoms and Imaging- Diagnosis― *

川崎医科大学神経内科学教室へ過去5年間に入院した脊髄空洞症,計6例の臨床症候と画像診断における空洞の局在との関連を検討した.症候学的には,6例全例で上部頸髄,胸髄レベルの障害を認め,そのうち5例では左右差があった.delayed metrizamide CT (以下D-CTと略す),核磁気共鳴映像(以下MRIと略す)では,空洞が全例検出され,症候学的に左右差を認めた5例では空洞は偏在し,偏在側と症候学的に障害の強い側は一致していた.偏在箇所は,主に後角部にあり症状発現に後角の関与が示唆された.矢状断における空洞の上下方向の広がりに関して,症候学的診断とMRI上での診断を比較すると,両者の吻側への広がりは全例一致したが尾側への広がりは1例のみ一致したにすぎず,臨床症候がより広範囲の垂直方向への伸展を示した.このことは,脊髄空洞症に合併する側彎症のため画像上十分に空洞が描出できない可能性や小さな部分の空洞まで描出できない可能性のためと思われた,近年画像診断の進歩により本疾患が症候学すなわち典型的宙吊り型知覚解離に基づいて診断されていた時代から画像所見を加味して診断する傾向に変わりつつあり,自験例でも3例の非典型例を認めた.今後画像診断の発達によりこのような非典型的空洞症が増加する,とともに脊髄空洞症の概念が変わっていくと思われた.(昭和63年8月9日採用)

1988.04.06

Effects of Metoclopramide on Growth Hormone Releasing Factor (GRF)-Mediated Growth Hormone (GH) Response to GRF in Normal Subjects *

dopamine antagonist であるmetoclopramideがGRFを介するGHの分泌に及ぼす影響をみる目的で, GRF単独投与,およびGRFとmetoclopramideの同時投与時のGHの反応について健常人を対象として検討した. GRF (100μgiv)単独刺激によるGH頂値17.1±5.6ng/mlは, metoclopramide併用投与により28.4±6.5 ng/ml (metoclopramide 1 0 mg 経口投与した場合),もしくは23.7±8.2ng/ml (metoclopramide 5 mg/hr点滴静注投与した場合)に増加した.すなわちmetoclopramideによってGRFを介するGHの反応は増強を示す結果を得た.この機序として, metoclopramideは内因性dopamineによる視床下部からのsomatostatine分泌を阻害する可能性と,下垂体に直接作用してGH分泌を抑制する内因性dopamineを阻害する可能性とが考えられた.(昭和63年7月21日採用)

1988.04.05

Five Survival Cases of Neonatal Intraventricular Hemorrhage ―Prevention of Post-Hemorrhag-ic Hydrocephalus by Treatment with Serial Lumbar Punctures― *

新生児集中治療(neonatal intensive care)の発達により,従来救命し得なかった重症新生児や低出生体重児が救命され,さらにintact survival においても著しい改善がみられるようになった.一方,周生期に起因する合併症は児の予後に大きな影響をおよぼし,とりわけ,頭蓋内出血は特に死亡率が高く,救命できても高度の障害を残すとされている.1), 2)近年,CTスキャン,頭部超音波断層法(以下USとする)などの出現により,頭蓋内出血,特に脳室内出血の診断が容易となり,早期治療が積極的に試みられている.著者らは脳室内出血の5症例に反復腰椎穿刺による髄液排除を試み,比較的良好な結果を得たので報告する.(昭和63年6月6日採用)

← newer entries older entries →