h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1987.02.05

Senile Amyloid Deposition in Human Intervertebral Disc ―Relationship to Aging- and Type of Disc Herniation―

摘出手術より得たヒト椎間板組織を使って老化アミロイド沈着の有無を調べ,椎間板変性と椎間板ヘルニアの突出度との関係を検討しさらに,そのアミロイド前駆物質について検討し以下の結果を得た.1) 88椎間中45椎間(51.1%)でアミロイド沈着を認めた.アミロイド沈着は加齢にしたがって高率に認められ,50歳以上の症例では,それ以下の年齢群に比べ有意にアミロイド沈着が高かった.性差は認められなかった.2)後縦靭帯が保たれていた膨隆型(protrusion type)と後縦靭帯を破って突出していた脱出型(prolapse type)のアミロイド沈着率では有意差は認められなかったが,脱出型のうちfree fragment を認める脱出遊離型では高率にアミロイド沈着を認めた.また,頸椎と腰椎によるアミロイド沈着率の差は認められなかった.3)沈着アミロイドは,過マンガン酸カリウム処理に抵抗性であり非アミロイドA蛋白であった.PAP法を使った主要アミロイド前駆物質とも反応がなく,今までに解っているアミロイド蛋白のいずれでもない新しいタイプのものであった.このアミロイドの産生の機序は不明であるが,軟骨細胞の関与が示唆された.

1987.02.04

Structural Study of the Distal Airways of Normal Lungs I. Tridimensional Observation Using Thick Tissue Sections

肺の構造を機能の面からみると,気道系と気腔系の2つに大きく分けることができる.両者の接点となる呼吸細気管支や肺胞管はその移行帯と呼ばれ注目されているが,詳細な立体的構築については充分に明らかにされていない.剖検例の中からほほ正常とみなされる肺を各年齢層から選び,それぞれ40μmの厚切り組織切片標本を作製して,この領域の立体構築を明らかにすることを試みた.この方法では,1枚の組織切片で,末梢気道壁から肺胞壁に至るまでの組織構築を連続的に観察することが可能である.ヘマトキシリン・エオジン染色による観察では,末梢気道壁の構築保持には厚い結合線維束が骨格を形成し,加齢とともにこれらは太さを増していた.肺胞管壁にも同様の線維束が存在し,肺胞壁に向かって連続的に細い線維束が放出され,網の目状構造を作り,肺胞の構造を定めていた.また,肺胞壁は膜状物として透見観察され,通常切片ではみられない構造がその周囲の像と共によく理解された.

1987.02.03

Determination of Mg-+i Concentration by 31P Nuclear Magnetic Resonance of ATP

Mg++の濃度測定のための検量線がATP(アデノシン三リン酸)の31Pのフーリエ変換核磁気共鳴(FT-NMR)に基づくケミカルシフト(δαβ)およびカップリング定数(Jαβ)から求められた.ATPの31PのケミカルシフトはMg++の濃度がO~5. OmMの範囲で濃度依存性を示し,使用可能なほほ直線的な検量線を与えた。αPのカップリング定数は1.0~5.0mMの範囲で濃度依存性を示したがl.OmM以下では不定であり有効な検量線が描けなかった. Mg++とCa++が共存する場合,Jは全く不規則な値を示して一定せず,検量線作製に無効であったが,δαβは一定の関数になり,一方の濃度あるいは全イオン量が明らかな場合使用可能であった。

1987.02.02

Effect of Chronic Lithium Administration on Noradrenaline-Sensitive Adenylate Cyclase

ノルアドレナリン受容体に連関したアデニル酸シクラーゼの感受性に及ぼすリチウム慢性投与の効果を若年ラットの前頭皮質と海馬の組織スライスを用いて検討した.その結果,前頭皮質ではリチウム慢性投与によってノルアドレナリン刺激による組織スライスのcyclic AMP 増加量は有意に抑制された(p<0.001).なお,血清リチウム濃度は0.54 mEq/1であった.したがって,リチウムの抗うつメカニズムはノルアドレナリン感受性アデニル酸シクラーゼの感受性阻害作用と何らかの関連性があるものと推察できる.

1987.02.01

Experience of Bone Marrow Transplantation in Two Cases with Hematological Malignancies: Present Status and Its Limitation

同種骨髄移植は,造血器悪性腫瘍,再生不良性貧血などの疾患に対する根治療法として,最近10余年にわたり著しくその成績を向上させてきた。しかし,いま解決されねばならない問題点も多く,ここに白血病の2症例を提示し,その実際と問題点について述べる。症例1は急性単球性白血病の12歳の女性。分割放射線全身照射とhigh-dose Ara-Cにて前処置を行い, HLAの一致した姉より骨髄移植を施行した。移植後の回復は順調であり,合併症もほぼ認められなかった。症例2は慢性骨髄性白血病急性転化の25歳の女性.high-dose busulfan とcyclophosphamideにて前処置を行い, HLAの一致した弟より,移植を施行した。移植後,血液学的回復は良好であった. GVHDは軽度でIPは認められなかったが, day 30以降に重度の肝内胆汁うっ滞型肝細胞障害を呈した。その後全身状態は改善していったが, day 90の骨髄染色体検査にて再発を認めた。前処置の選択,GYHD, IP,種々の感染症の予防等の問題点は,基礎的,臨床的な研究の成果により,かなり改善が認められてきている。しかし,急性白血病再発例や,慢性骨髄性白血病急性転化例に対する対策や再発予防といった点が,今後の課題となる。

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