1987.02.12
Effect of Partial Splenic Embolization on Hypersplenism
著明な脾機能亢進症を認めた肝硬変症7例(肝癌合併5例)に対し部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行しPSE前後の末梢血液所見(血小板数,白血球数),肝機能,脾容積について検討した.血小板数は術後全例増加し2週目に最高値(術前値の平均3.8倍)に達した.うち2例において1年以上10×104/μl以上を維持できた.脾容積は術後平均約30%の縮小を認めた. PSEによる副作用は一過性の左側腹部痛,発熱,胸腹水がみられたがいずれも対症的治療で軽快した.以上の結果より脾機能亢進症を伴った肝硬変症,肝癌合併肝硬変症に対しPSEは血小板増加作用により出血傾向の改善に有用であると考えられた.
1987.02.11
Posterior Fusion for Atlanto-Axial Subluxation in Rheumatoid Arthritis
慢性関節リウマチにおける環軸椎亜脱臼はまれなものではなく,またその多くは保存的治療によって対処すべきものである.しかし頸髄損傷,椎骨動脈圧迫による突然死の可能性もあるため,神経学的症状がある場合には手術的治療の対象となる.その場合には,臨床症状を把握したうえで安全でかつ確実な手術方法を検討しなければならない.今回われわれは,慢性関節リウマチによる環軸椎亜脱臼に対してMcGraw-Rusch法による環軸椎後方固定術とHalo-jacketによる外固定を併用し,良好な経過をとった73歳女性の症例を経験したので,環軸椎亜脱臼の頻度,神経学的合併症と手術適応について検討を加え報告する.
1987.02.10
A Case of Chronic Active Hepatitis (Type B Carrier) with High Serum AFP
αフェトプロテイン(以下AFP)が肝細胞癌患者血中に増加することは広く知られた事実である。また,その他の良性肝疾患においてもAFP値が上昇し,一部では,かなりの高値を示すこともよく知られたことである。われわれはAFP値が1000 ng/mlと,肝細胞癌にも匹敵する高値を示したB型肝炎ウイルスキャリアーより発症した慢性活動性肝炎の1例を経験した。そこで本症例も含めて,今まで本邦で報告された主なAFP高値を示す良性肝疾患症例の病因と,それらのAFP最高値について文献的に考察し,同時に,AFP上昇の機序についても考案したので報告する。
1987.02.09
Gastric Anisakiasis and Ascariasis Removed under an Endoscopic Procedure ― Report of 7 Cases ―
川崎医科大学附属病院開設以来12年間に7例の胃内寄生虫を経験した.6例はアニサキスで,穿刺部位は胃体部大彎でびらんを伴っていた.全員鯖を摂取しており11月に多発していた.内視鏡的に虫体を摘出した.1例は回虫で,胃体部大彎で観察され,内視鏡的に摘出した.胃内で回虫を観察することはまれである.
1987.02.09
Immunochemical Characterization of the Fatty Acid Elongation System II of Mycobacterium smegmatis
1987.02.08
A Case of Congenital Esophageal Stenosis Treated with Balloon Catheter Dilatation
症例は,70歳女性で嚥下障害を主訴として当科に入院した.食道造影では,食道入口部に高度の狭窄を認めた.内視鐃検査では,狭窄部の内腔は平滑であったが,肛門側へ挿入できなかった.先天的食道狭窄と診断し,バルーンカテーテルによる拡張術を施行したところ著しい症状の改善を認めた.バルーンカテーテルを用いた拡張療法は,食道狭窄に対し有用であり安全に施行できる.
1987.02.08
Mucinous Adenocarcinoma of the Prostate
1987.02.07
Immunohistological Study of Blood Group Antigens in Carcinomas and Precancerous Lesions of the Gallbladder
胆嚢癌および胆嚢前癌性病変における血液型物質の消長を知る目的で,胆嚢粘膜癌11例,進行癌23例,腺腫9例,異型上皮5例および胆石症13例を用い,免疫組織学的に血液型物質の組織内局在を検討した.その結果,胆石症では血液型物質は胆嚢固有上皮および新生粘液腺にみられ,化生性杯細胞では陽性から陰性まで種々であった.腺腫および異型上皮の大部分は血液型物質陽性であった.また粘膜癌(すべて高分化腺癌)や高分化型進行癌では血液型物質が比較的よく残存していたが,低分化型進行癌では完全に消失したものが多く,組織型との関連性がつよくみられた.なお化生性変化が癌巣内にみられた粘膜癌では,全例血液型物質が残存していた.また血液型物質と粘液組成との関連を知る目的でhigh iron diamine-Alcianblue染色を重染色すると,血液型物質が消失した部にはnon-sulfated acid mucinが多く出現していた.血液型物質の検索は,良悪境界病変の鑑別や胆嚢癌の組織発生の解明に有用と思われ,その意義につき若干の考察を加えた.
1987.02.07
Epithelial Membrane Antigen in Normal Lung Tissue ―A Tool for Identifying Alveolar Epithelial Lining
1987.02.06
Studies on Blood Chemical Profiling and Prognostic Prediction in Patients with Acute Myocardial Infarction through the Laboratory Data Analysis
臨床化学検査を中心とする診察作法のひとつとしてCALD (computer-assisted laboratorydiagnosis)が開発され,患者の全身状態および重要臓器の障害の指摘,そしてしばしば病名の推定さえ行われるようになった.ことに, CALDは肝・胆道疾患の診断にはすぐれた成績をあげている.本研究では,0xleyらの診断基準に合致しかつ急性期に諸検査が経時的に行われた急性心筋梗塞(AMI) 71例(軽快51,死亡20)を研究対象とした.対象例に本学附属病院中央検査部のCALDを適用したところ, 52.1% (71例中37例)の診断率を得た.この数値を見るかぎりでは,残念ながら,現在稼働中のCALDは, AMIの診断に満足できる成績をあげていない.ところが,対象症例には,血清酵素アイソザイム検査が行われており,CK・MBの出現および(あるいは) LDH 1 >LDH 2 の異常所見の陽性率は94.4%であった.この事実に着目し, CALDの項目にアイソザイム検査を組み合わせることにより,臨床化学によるAMIの診断率は向上すると考えられた.ついで,臨床化学を中核にしてAMIの予後の推定を試みた.すなわち,CALDに採用されている血液化学成分19種に血液細胞成分3種(WBC, PIt, Lym)の検査項目を加えて,判別分析の手法で,軽快と死亡の転帰を予測するための判別式を誘導し,判別値を算出した.判別値Dが0を超える場合を死亡,0以下の例を軽快とみなし,予後予測を行ったところ,最終判定では,軽快群83.7%,死亡群100%の判別適中率をあげる良好な成績を得た.以上の結果より,現在実用化されているCALDの血液化学的成分(19種)に,心筋酵素アイソザイム検査(2種)を加えてAMIの診断を確実にし,またCALDの血液化学成分(19種)と血液細胞成分(3種)とを組み合わせて判別式を誘導し,それをAMIと診断された症例に適用すれば, AMIの予後予測に対し,有用な指標が得られることが期待される. AMIの診断については,これまで心電図および画像診断法が圧倒的に有用性を発揮していたが,血液化学中心の診察作法も,本研究のごとく工夫すれば日常診療に活用できると考えられた。