h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1987.03.05

Abnormal Arrangement of the γ-Globin Gene Found in a Normal Adult *

DNAを制限酵素, Xmn I やBgl II で消化後,γ IVS II probeとhybridizationを行ったとき正常人にみられるDNAバンドのほかに大きなバンドを伴っている成人に遭遇した.末梢血液の血液学的,また化学的検査では異常は認められず,全ヘモグロビン中のHbF(%)やHb A2(%)もまた正常範囲内にあった.異常なDNAバンドは酵素分析によって調べられ,Gγ-AγGγ-AγまたはGγ-Gγ-Aγ型の三連鎖構造の存在によるものであった.この三連鎖構造を含むβ-鎖様遺伝子群のハプロタイプ,ε-遺伝子の5’Hinc II部位,(Gγ-遺伝子の5’Xmn I 部位,GγとAγ-遺伝子内のHind III部位,ψβ1-遺伝子内と3’ Hinc II 部位,β-遺伝子内のAva II部位とβ-遺伝子の3’Bam HI 部位が調べられ,+--(-)----+と決定した(カッコ内の-の記号は三連鎖構造遺伝子の第二遺伝子のHind IIIポリモフィズムの不在を示す).このハプロタイプから日本人によくみられる同種のハプロタイプ,+------+,をもった染色体間の不均等交差によってγ-鎖異常配列をもった染色体が生成したものと考えられた.

1987.03.04

Structural Study of the Distal Airways in Normal Lungs II. Distribution of Reticulin Fibers *

肺内末梢気道域である移行帯から肺胞壁にかけての立体的構造,細網線維による組織構築形成の様式を把握する目的で,厚切り肺組織切片に鍍銀法を応用し,細網線維のとる態度を検討した.末梢細気管支壁や肺胞入口部では一連の厚い好銀線維束がほほ長軸に沿って存在し,これより気道自体や肺胞壁には細かい線維が分かれ出ていた.肺胞壁のものでは網目状構造を形成していた.気道,肺胞壁の組織構築をなす細網線維は,血管壁のものとは違った走行を示した.加齢によって気道,気腔系の線維は細く,あるいは粗になる傾向を示していた.機能面から考えると,これらの線維には組織を固定する中枢よりのものと,可動性を持った末梢の部分が存在することが示唆された.移行帯部分においては,気道系から気腔系への線維の分布に急激な変化も存在し,この領域に力学的ゆがみを生じやすい原因となると考えられた.また,鍍銀法の染色性,線維成分との関係についても考察した.

1987.03.03

Metaplastic Changes in Precancerous Lesions and Carcinomas of the Gallbladder *

胆嚢粘膜の腸上皮化生が胆嚢癌の組織発生にどのように関与しているかを探る目的で,胆嚢前癌性病変および胆嚢癌組織内にみられた化生性変化の種類と頻度を組織学的に検討した.対象として腺腫8例,異型上皮7例,過形成性ポリープ20例,粘膜癌11例および進行癌37例の計83例を用いた.その結果,異型上皮では杯細胞,粘液腺および内分泌細胞が60~80%の頻度でみられ,また過形成性ポリープでも粘液腺,杯細胞,内分泌細胞およびパネート細胞がおのおの10~100%の頻度で認められた.しかし腺腫では杯細胞のみが25%にみられたにすぎなかった.また粘膜癌では杯細胞と内分泌細胞が22~36%で,進行癌では同様の細胞が8~16%で認められた.以上より,胆嚢粘膜の腸上皮化生は,種々の化生性変化を高率に伴う異型上皮や過形成性ポリープから癌化する場合に重要な役割を演じ,化生性変化を伴うことが少ない腺腫からの癌化にはあまり関与しないものと推定した.

1987.03.02

Two Cases of Liver Cyst Treated with Ultrasound-Guided Puncture and Absolute Ethanol Injection *

肝嚢胞2例に対して純無水エタノール(99.5%以上)注入療法を行った.方法は以下のごとくである.超音波ガイド下に嚢胞を穿刺し,J型ガイドワイヤーを用いてカテーテルを留置する.そして嚢胞内容を吸引した後,造影剤を注入して嚢胞造影を行う.その造影剤を排液し,純エタノールを注入して10~15分後にエタノールも完全に排液する.本法で重篤な合併症は発生しなかった.われわれは現在のところ,肝嚢胞の治療として純エタノール注入は有効かつ副作用の少ない優れた方法と考えている.

1987.03.01

Ischemic Colitis ― Report of 10 Cases ― *

川崎医科大学附属病院開設以来12年10ヵ月間に経験した虚血性大腸炎について集計した.1)内視鏡検査あるいは注腸造影にて経過を追うことのできた例は10例あり,平均53歳で男性5例,女性5例であった.2)病変部位は,S状結腸,下行結腸に多く,注腸造影では拇指圧痕,小嚢形成が,内視鏡では縦走潰瘍が特徴的であった.3)診断のための検査は全例7日以内に施行され9例で診断可能であった.治癒までの期間は,平均29.9日であった.

1987.02.13

Two Cases of Malignant Pheochromocytoma

内分泌症状がなく,初診時すでに巨大でありながら,画像診断が困難であった悪性褐色細胞腫2例を経験した.症例は2例とも中年で,既往歴に高血圧はなかった. ComputedTomography (C. T.)にて1例は右副腎,もう1例は左副腎に一致して低濃度の腫瘤を認め,肝への転移による低濃度域を認めた.血管造影で2例ともあまりhypervascularではなかった.剖検にて2例とも悪性褐色細胞腫とその転移と診断された.副腎原発悪性腫瘍について,画像診断を中心に文献的考察を加えて報告する.

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