h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1987.03.11

Dose Distribution of Neutron Capture Therapy Using Spontaneously Occurring Melanoma in Pig Skin *

前臨床実験として自然発生黒色腫担癌豚に10B-BPA(10B-Para-boronophenylalanine)を用いた選択的熱中性子捕捉療法を施行し,その時の局所,全身の中性子およびγ線の線量分布を調べたので局所反応とともに報告する.熱中性子源として武蔵工業大学原子炉研究所の原子炉を用いた.10B-BPA 15.8 g (200 mg/kg)を経静脈的に投与し, 100 kw, 210分間の熱中性子照射を行った.腫瘍部以外を遮蔽するために, bismuth面より順にLiFシート, LiFタイル,鉛ブロックを配置した.上記collimation systemにより腫瘍周辺組織の熱中性子線量を腫瘍部の約1/100に減弱させることができ,また全身被曝線量軽減の意味からも効果を認めた.また,局所反応においても,ビラン,潰瘍等を伴わず治療傾向を示した.

1987.03.10

Localization of Fibronectin in Recanalization of Blood Vessels with Gelatin Sponge Embolization *

血管再疎通時におけるフィブロネクチンの局在について検討した.家兎耳介動脈にゲラチンスポンジを塞栓させ,塞栓部位を経時的に生検し,ヘマトキシリン・エオジン染色と,抗フィブロネクチン抗体による蛍光抗体間接法を施行した.ヘマトキシリン・エオジン標本ではいまだ内皮細胞が障害脱落している動注1週間後,蛍光抗体間接法では,動注直後より消失していた弾性板内側のフィブロネクチンが再び陽性となった.内皮細胞損傷後の血管修復のごく初期の段階では,まずフィブロネクチンなどが,動脈壁に接着し透過性亢進の阻止などの役割を負うと思われる.

1987.03.09

Analysis of Adrenal and Testicular Steroids by High Performance Liquid Chromatography ― A Preliminary Report of Determinations of A4-Steroids ― *

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて,副腎・精巣ステロイド分析の予備的検討を行った.使用したHPLCシステムはLC5A型(Shimazu)でUV detector とcosmosil packed column 5 C18 を接続した. progesterone, deoxycorticosterone,corticosterone, cortisol, testosteroneの5種類のステロイドは明瞭に分離可能であり,直線の検量線を得ることができた.しかし近似したretention time のステロイドの分離は困難であった.平均回収率は93.0%であり,このクロマトグラフィーシステムの限界感度はngオーダーであった.HPLCはヒト副腎および精巣ホモジネート組織,ならびにラット副腎細胞短期間培養浮遊液より抽出したステロイドの分離・同定・定量に有用であることが示唆された.

1987.03.08

Morphological Study of Benzidine Derivative Induced Rat Nephropathy *

糸球体基底膜の選択透過性異常の原因として,基底膜合成に関与していると考えられる糸球体上皮細胞の態度が注目される.一方,ラットにN, N’-Diacetylbenzidine (N, N’-DAB)を投与すると,蛋白尿と上皮細胞の特異な病理変化が出現することが知られている.著者は,この上皮細胞の病理変化と蛋白尿の関係を明らかにするためにN, N’-DABをラットの腹腔内に1回または2回投与し,観察した.投与後40日に蛋白尿が出現し始め,100日には多くの個体で蛋白尿が陽性化し, 200日にわたって300 mg/日以上の尿蛋白が持続増強した.形態的には糸球体上皮細胞に空胞状変化が出現し,蛋白尿の程度に伴って係蹄硬化性変化,硝子化巣が出現し,増悪した.推計学的には,上皮細胞の空胞状変化は,蛋白尿の出現に先行していた.このことは糸球体上皮細胞の空胞性病変のなかには,薬剤による原発性の細胞障害によって発現したものがある可能性を示す.

1987.03.07

Fundamental Studies on Cancer Chemotherapy Combined with CaJ+ Antagonist ― In Vitro and In Vivo Studies ― *

Ca2+拮抗剤Verapamilを制癌剤,主として5-FU (その他ADM, VCR, BLM)と併用し,その抗腫瘍効果に及ぼす影響を,まず培養細胞を用いin vitro で検索,ついでこの成績にもとづきin vivo の実験として,担癌マウスに5-FUとVerapamilを連日併用投与し,survivalに及ぼす影響をも検討した.I. In vitro1. Verapamilは単独でも高濃度では増殖抑制がみられたが,5μM以下の低濃度ではほとんど影響しなかった.2.増殖に影響のない濃度のVerapamilを5-FUと併用すると,制癌剤が低濃度であるほどより大きい効果増強が認められた.3. 14C-5-FUを用いた細胞内取り込み実験では,14C-5-FUは細胞内へ経時的に移行するが,これにVerapamil 5μMを併用すると,無添加の14C-5-FU単独群に比べて,5-FUの移行は有意に高値となった.II. In vivo1. Verapamil単独では,大量を負荷しても抗腫瘍効果はみられなかった.2. 5-FU 5mg/kg とVerapamil 20mg/kg を併用すると,投与期間に関係なく併用効果を認め, 5-FU単独群に比べ有意の生存期間の延長を得,低濃度で併用効果のあることが判った.3. 5-FUとVerapamil 40mg/kg との併用は,併用にもとづく副作用が出現し, 5-FU単独投与群に比べ生存期間はかえって短縮した.以上より,5-FUにおいてもVerapamilとの併用効果が示されたが,その機序についてはいまだ不明な点が多い. 5-FUとVerapamilの併用は,投与方法や投与量の決定にはなお慎重を要すとしても,癌化学療法における効果増強の新しい可能性として期待される.

1987.03.06

A Classification of Depression through Cluster Analysis *

ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)をもとにクラスター分析を用いてうつ病患者を分類した.そして以下の結果が得られた.1.うつ病を『るいそう型』,『軽症型』,『激越型』,『心気型』および『身体型』の5群に分類できた.2.『るいそう型』は体重減少で特徴づけられた.3.『軽症型』はHDRS得点が低く,特徴がなかった.4.『激越型』は不眠,不安,激越,身体症状で特徴づけられた.5.『心気型』は離人症,心気症,生殖器症状,身体症状で特徴づけられた.6.『身体型』は不眠,身体症状,体重減少,日内変動で特徴づけられた.7.躁病の既往があるものは『るいそう型』と『軽症型』に有意に偏った(p<0.05).

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