h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1986.01.09

α-Naphthyl Acetate Esterase Activities in Diseased Human Thyroid Glands ― Zymogram Analyses ―

甲状腺濾胞上皮細胞のagarose等電点分画泳動を行い, lysosomal enzyme のうちの一つとしてよく知られているα-naphthyl acetate esterase (ANA-esterase)の酵素電気泳動像(zymogram)から,ヒト正常および病的甲状腺組織を比較検討した.1.正常ならびに病的甲状腺のいずれにおいても,pI 5.5~8.0領域に11本のbandが検出され,pI 6.2以下の2 band を除く個々のbandの活性強度は各疾患により異なった.2.正常甲状腺および機能正常の腺腫様甲状腺腫のzymogramはdensitometric scanningにより釣鐘状のpatternをしめした.3.バセドウ病,過機能性腺腫様甲状腺腫および濾胞腺腫のzymogramはband III からXまで全体的に酵素活性が高く台形に近いpatternをしめした. 4.先天性甲状腺ホルモン合成障害および悪性リンパ腫では各bandがわずかに認められる程度の伏せ皿状のpatternをしめした.5.甲状腺癌および橋本病ではpI 7.4~7.8のband X の活性が特異的に高いpatternをしめした.癌では二次元電気泳動での分子量約190Kのspotがband X の活性を特異的に高くした原因と考えられ,組織型による差は認められなかった.

1986.01.08

Influence of External ATP on Proliferation and Membrane Permeability in Mice Tumor Cells ― In Vitro Study ―

癌細胞の増殖,膜透過性に及ぼす外因性ATPの影響,さらに本物質の癌化学療法への応用の可能性について,マウス培養細胞を用いて検討し以下の知見を得た. 1)ATPの添加により,Clone-M3細胞(マウス黒色腫)とEhrlich腹水癌細胞では,著明な細胞膜透過性の亢進, viabilityの低下がみられたのに対し,非癌化細胞である NIH 3T3 細胞,正常細胞である胎児線維芽細胞における変化は軽微で,この作用は癌細胞のみに特異的であった.2)ATPによるClone-M3細胞の膜透過性変化は,物質の流入,流出両機構に同時に起こった.3)Clone-M3細胞にみられた膜透過性変化はATPに特異的で,その代謝産物では起こらなかった.4)ATPにより, Clone-M3細胞の形態,接着性に変化が認められた.5)ATP処理後の癌細胞における各種抗癌剤の細胞増殖抑制効果は, 5-fluorouracil (5-FU), adriamycin (ADM), mitomycinC (MMC), nymustine hydrochloride (ACNU)では相加的, vincristine (VCR)では相剰的に増強した. これらの結果から, ATPを用いることにより,選択的癌化学療法が期待できるものと考えられた.

1986.01.07

Fibrous Disease of the Breast ― A Disease Entity Separable from a More Broad Category of Fibrocystic Disease ? ―

Fibrous disease of the breast が,広汎な概念を持ついわゆる乳腺症から独立させ得る疾患か否かを調べる目的で,当病院病理部で過去10年間に診断された乳腺症例98例を集めて検討した.98例中4例は,組織学的に,(1)線維化,硝子化した基質の増生, (2)小葉の萎縮がみられ, fibrous disease に一致する所見を呈していた.臨床病理学的に,これらの症例は, (1)比較的若い女性に多い, (2)左乳腺,しかも上内側に好発する, (3)妊娠や出産回数の少ない者に好発する,(4)病巣は比較的硬い腫瘤を形成する, (5)組織学的に 萎縮腺管周囲に慢性炎症細胞浸潤をみることから,いわゆる乳腺症とは異なっていた.これらの結果から, fibrous disease は,臨床的,病理学的に乳腺症から独立させ得る疾患であると推測された.ただ,最終的な結論をつけるためには,さらに症例を集めて検討する必要があろう.

1986.01.06

Autopsy Cases of Primary Lung Carcinoma in Kawasaki Medical School

1974年1月から1985年8月までの11.6年間に川崎医科大学病院病理部で扱った原発性肺癌の剖検例140例について臨床病理学的に調査した.特に,(1)年次推移, (2)死亡年齢 および性別, (3)組織型について,(4)転移,(5)原発部位,(6)その大きさ,(7)死亡原因,(8)喫煙歴,(9)重複癌,(10)潜伏癌および原発不明癌などの観点から検討を加えた. 本学ではここ数年,肺癌剖検例の増加をみない.腺癌が一番多い組織型であったが,他学,全国集計例にくらべ小細胞癌が多いのが目立った.

1986.01.05

Efficiency of Ultrasonography of the Head in Infancy

近年超音波診断学の進歩により,新生児,乳児では大泉門より頭部超音波断層法で頭蓋内病変の検索が容易となり,多数の有効性が報告されている.今回著者らは,5MHz セクター,スキャナを使用し,頭蓋内出血,水頭症,硬膜下水腫などの症例に頭部超音波断層法を行い,CTスキャンと比較検討しその有用性を報告する.

1986.01.04

US-guided Percutaneous Drainage of Hepatic Abscess ― Continuous Drainage by Double Duct Method ―

最近1年間に8例の肝膿瘍を経験し,うち5例に超音波ガイド下ドレナージを行った.我々が行ったドレナージ法は肝膿瘍に2方向からドレナージチューブを2本挿入し,洗浄と排膿を連続して同時になしうることができた.この方法により径5cm以上の膿瘍にお いていずれも1ヵ月以内に膿瘍の消失がみられた.この方法の利点は,洗浄と排膿を同時に行うため膿瘍内圧を一定に保ち膿汁の腹腔内への漏出を防ぐ点,および連続的に洗浄が可能となるため治療日数を短縮しうる点であると考えられる.

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