h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1986.02.02

Effects of Interferons on Production of Plasminogen Activator by Human Renal Cells

ヒト培養細胞のプラスミノーゲンアクチベーター(PA)の産生におよぼすインターフェロン(IFN)の影響を調べた.実験には主にヒト腎癌細胞株ACHNを用い,この細胞で得られた成績を確認するために,ヒト膀胱癌細胞株EJ,ヒト線維芽細胞を培養内でCo-60ガンマ線を照射して発癌させたKMST-6を用いた. IFNはβ-IFN, r-IFN を使用した.細胞の増殖期とPA産生との関係をみると,対数増殖期の細胞が定常期に達した細胞よりPAを多く産生した.したがって,この対数増殖期の細胞のPA産生に対するIFNの影響を調べた.細胞をIFNで48-72時間処理した後の,培地中および細胞中PAを測定した.その結果,β-IFNはPA産生を約1.5倍高めた.しかし, r-IFNは, PAの産生に影響を与えなかった.一方,このPA産生に及ぼす影響を調べた濃度のβ-およびr-IFNは,細胞の増殖を約40%抑制した.PA (urokinase type)は正常なヒト腎細胞で産生されている.このPA産生が腎細胞の一分化機能に関係したものであれば, IFNの作用のーつとして細胞の分化機能の発現を調節している可能性もある.

1986.02.01

Significance of Fibronectin in the Glomerular Damage ― (II) Fibronectin in the Development of Circumferential Mesangial Interposition―

家兎にMitomycin C (MMC)と抗腎血清を併用注射してcircumferential mesangial interpositionを作成し,その成因について検討した. MMC注射と抗腎血清注射併用にて,各々単独注射よりも高頻度に広汎な係蹄壁の2重化を認めた.電顕にてこの2重化は circumferential mesangial interpositionであることを確認した.蛍光抗体法による Fibronectin (FN)分布は係蹄壁に沿って帯状に増加していた. MMC単独注射では糸球体は電顕的に内皮細胞下腔の拡大がみられ,FNは線状に係蹄壁に沿って増加していた.これらのことより, circumferential mesangial interposition の成因機序として,①内皮下腔の拡大,②FNの係蹄壁に沿った増加,の関与が推測された.

1986.01.14

Chromosome Testing Carried Out at Kawasaki Medical School Hospital During 1985

本年度は85例の染色体検査を行った.その結果,異常染色体を示した症例は15例(全体の17.6%)であった.この15例の中で,8例は先天的染色体異常であった.その内訳は,クラインフェルター症候群3例,その他の性染色体異常を示したものが4例,ダウン症候群が1例であった.また,その他の7例は血液系悪性疾患によるもので,細胞の悪性化に伴う後天的染色体異常を示した.

1986.01.13

Clinical Studies of External Nasal Injuries

1978年4月から1983年3月までの5ヵ年間に経験した外鼻外傷40例について臨床的に検討を加えた.スポーツ外傷が最も一般的な原因であった.X線検査では40症例中30例に鼻骨骨折が認められ,このうち22例に外鼻の変形が存在した.22例中10例に非観血的整復術が施行されたが,12例は治療を希望しなかった.これらをもとにして当科の鼻骨骨折の治療方針を述べた.

1986.01.12

Nonsurgical Treatment of Subdural Empyema ― Case Report ―

保存的治療により治癒せしめた右前頭部硬膜下膿瘍の1例を報告した.症例は29歳女性. 右前頭部痛,嘔吐,発熱が3週間にわたって続き,近医にて急性上気道炎の診断のもとに治療を受けたが軽快しないため,第25病日に当院へ転院した.入院時,体温は37.3゜C,意識は清明で神経学的に全く異常を認めず,また全身状態も良好であった.赤沈は1時間値 57mmと亢進していた.頭蓋単純写で前頭洞にび漫性の陰影を認めた. CT scanで右前頭部に高吸収域に縁取りされた低吸収領野を認め,またこの低吸収領野に接する前頭洞後壁の骨破壊像が認められ,前頭洞炎から波及した硬謨下膿瘍と考えた.入院翌日にCT scanを再検すると硬膜下貯留液は減少していた.入院後5日目に抗生剤投与を開始し,セファゾリンを2gずつ12時間毎に静脈内投与し,15日間連続投与した.頭痛,嘔気は速やかに消失し, CT scan再検で硬膜下膿瘍の完全な消失を認めた.以後6ヵ月間の追跡では,臨床症状, CT scanともに正常である.

1986.01.11

Significance of Fibronectin in Glomerular Damage ― (I) Fibronectin Distribution Related to Renal Damage Induced by Mitomycin C Injections―

Mitomycin C (MMC)投与による腎糸球体障害では内皮側障害が推測されるが,その病理発生機序には不明の点が多い.一方,糸球体基底膜と内皮細胞との接着にはfibronectin (FN)の関与が想定されている.そこでラットにMMCを投与しその腎糸球体障害の発現 におけるFNの分布について実験的に検討した.ラットにMMCを0.5mg/kgを3日間連続して尾静脈より注射し3日から5日後に屠殺した.腎組織は光顕ではほとんど変化を認めなかった.しかし,電顕においては糸球体内皮細胞の類壊死を認め,また内皮下腔は拡大しており電子密度の低い物質で充満していた.糸球体近傍の小血管内皮細胞にも同様の変化が観察された.FNは対照に較べ係蹄壁に増加していた.しかし, fibrinogenの沈着を伴ったFNの増加は50%のみに認めた. Polyethyleneimine 静注法による基底膜の陰性荷電物質は減少していなかった.これらのことより, MMC腎障害は全身の血管内皮障害の一部分現象であり,FNの係蹄壁への増加を伴っていた.増加したFNは内皮細胞の壊死の結果であると考えた.

1986.01.10

Influence of Hemolysis on the Insulin Receptor Assay of Human Erythrocytes

赤血球のインスリンリセプターアッセイは,糖尿病患者のインスリンのリセプターの臨床研究に広く用いられてきた.今回,インキュベーション中の部分的な溶血によるリセプターアッセイヘの影響を検討した.その結果, hemolysisは,赤血球の細胞内腔のradioactivityを増加させ,細胞壁に結合したradioactivityを減少させた.このことはインキュベーションの条件によっては,必ずしも赤血球のtotalとしてのradioactivityを増加させるとはかぎらなかった.10°Cでは, hemolysateの有無は赤血球全体のradioactivityに影響をおよぼさなかった.このことは,hemolysate(十)のグループでは, 細胞内腔のradioactivityの増加が細胞膜のradioactivityの減少を補っており,見か け上hemolysate (-)のグループのradioactivityと差がみられなかった.37°Cでは, hemolysate (十)グループは細胞内腔のradioactivityの増加が著明で, totalとしてもhemolysate (-)グループに比して著しく大であった.以上より,たとえ10°Cのインキュベーション条件下でも,インスリンリセプターアッセイの研究を行う時は,溶血の厳密な管理が重要である.

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