h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1986.02.08

Two Autopsy Cases of Inherited Aortic Coarctation

兄弟に発生した大動脈縮窄症の症例を経験した.1例目はisthmusにおける広範囲な狭窄があり,2例目は大動脈弓部と動脈管直上部の両方の狭窄を有していた.2ヵ所の狭窄をきたした例は本邦では希で,また家族性に発生した縮窄症も文献的には少ないため,それらについて文献的考察を加えて報告した.

1986.02.07

An Autopsy Case of Extrahepatically Growing Hepatocellular Carcinoma with Spontaneous Rupture

肝外発育型肝細胞癌は比較的まれな疾患とされているが,著者らは,剖検で確認した1例を経験したので,その臨床病理学的な特徴を中心に報告した.症例は74歳の男性で,食欲不振および肝機能障害があり,肝精査目的で入院した. AFPは28 ng/ml であったが,肝シンチグラムおよびCTで肝細胞癌と診断した.経過中腹腔内出血をおこし死亡した.剖検で,肝左葉下面から突出するEdmondson II 型の肝細胞癌が存在した.肝外発育型肝細胞癌は早期治療により良好な予後が期待できるため,その早期診断の重要性について考察を加えた.

1986.02.06

Clinical Application of Single Photon Absorptiometry: Measurement of Bone Mineral Content in the Radius in Patients with Post-operative Breast Cancer

術後早期から術側の肩関節の機能訓練が開始された術後乳癌患者107例(右側乳癌55例,左側乳癌51例,両側乳癌1例)について,左橈骨の骨塩量(骨塩量を骨幅で除したindex(g/cm2)として表現)をsingle photon absorptiometry (線源として125Iにより測定した. 骨塩量は健常者で観察されるのと同様に加齢とともに低下し,特に50歳以降でその低下は著明であった.健常者と術後乳癌患者の間には,左橈骨の骨塩量に関して有意の差を認めなかった. さらに.術側の如何にかかわらず,骨塩量に差はなく,また術後の経過期間の長短にも無関係であった. 以上のように,乳癌術後患者では術側の左橈骨の骨塩量の低下は観察されず,術側上肢のdisuse osteoatrophy の存在は否定的であった.

1986.02.05

Detection of IgA in Sera of Patients with Urogenital Infection of C. trachomatis

Chlamydia trachomatis (C. trachomatis)が確認された非淋菌性尿道炎患者62例から採取した血清86検体をMFAによるIgG, IgM検出結果に基づいて3群に分けた.すなわちI群:lgG陽性lgM陽性群,II群:lgG陽性lgM陰性群, III群:lgG陰性 lgM陰性群である.これらの抗C. trachomatis IgA およびlgGを間接ペルオキシダーゼ抗体法(IPA)を原理とするIpazyme Chlamydia キットで測定して,lgAとlgGおよびlgMの関係を検討して,以下の結果を得た,1)lgA検出率はI群で65.4%, II群で27.6%, III群で9.7%を示し,I群が他の二群より高い検出率を示した.2) Ipazyme Chlamydia によるlgG検出感度はMFAと同程度であった.

1986.02.04

Clinicopathological Study of Perforated Gastric Cancer

昭和50年より10年間に経験した10例(9手術+1剖検)の穿孔性胃癌(穿孔癌)につき,主に同期間の非穿孔性胃癌(非穿孔癌)と各種の臨床病理学的な比較・検討を行い,以下の成績を得た.(1)穿孔癌が胃癌手術例中に占める率は1.8%で,同期間の胃・十二指腸潰瘍穿孔率(同潰瘍の全入院患者中6.9%)に比し低率であったが,胃潰瘍穿孔率(全胃潰瘍入院患者中2.1%)とは,有意差がなかった. (2) 6例で穿孔誘因(4例胃レ線・カメラ検査)が指摘された. (3)過半数が胃潰瘍穿孔と術前診断された.(4)穿孔部位は体部(M:8)・前庭部(A:2)の前壁で.AM前壁のBorrmann 2,3型とIIc+III型の全胃癌中11%余りの穿孔率であった.(5)肉眼型はBorrmann 3(4), 2(3), 4(1)とIIc+III(2)型であったが,非穿孔癌の比率と同様であった.大きさは, Borrmann 2,3型の穿孔癌の平均径は非穿孔癌のそれより大きく(p<0.05),IIc+III型も同傾向があった. (6)深達度はse(6),ss(2),m(2)で,組織型,癌間質量の特徴はなかった.(7)穿孔形態の西分類は,IIc+III型をはじめ適用できない症例が多く,予後はむしろ胃癌stageに関係するようであった.(8)Borrmann 2,3型の非穿孔癌の癌性潰瘍は,その深さと広さの比,深さと癌深達度の比の計測から,それがとくに前壁で深くなる傾向はなかった.

1986.02.03

Nutritional Availability of Milk Formulae with Different Protein Composition in Low Birthweight Infants ―Plasma and Urinary Amino Acid Concentrations in Low Birthweight Infants Fed Different Six Milk Formulae and Frozen Breast Milk―

乳汁蛋白質の質や量の違いが低出生体重児の血漿および尿中の遊離アミノ酸にいかなる影響を及ぼすかについて検討する目的で,6種類の人工乳(A乳:蛋白質1.60 g/dl, ホエー蛋白質0.35 g/dl, カゼイン1.25 g/dl ; B 乳:1.60 g/dl, 0.96 g/dl, 0. 64 g/dl ; C 乳:1.85 g/dl, 0.41 g/dl, 1.44 g/dl ; D 乳:1.85 g/dl, 1.11 g/dl, 0.74 g/dl ; E 乳:2.19 g/dl, 0 .61 g/dl, 1. 58 g/dl ; F乳:2.19 g/dl, 1.31 g/ dl, 0.88 g/dl)と凍結人乳で低出生体重児56名(各群8名ずつ)を哺育し,血漿遊離アミノ酸濃度および尿中排泄遊離アミノ酸量を比較測定し,次の結果をえた.1) Thrは血漿濃度と尿中排泄量いずれも高ホエー蛋白質乳哺育のB, D, F 3群がそれぞれ対応する高カゼイン乳哺育のA, C, E 3群より有意に高値であった.これはThr摂取量の反映であると解した.2) Lys, Phe, Tyrの血漿濃度はC,E両群がD,F両群より高値であったが,この差はLysのE,F両群聞においてのみ有意であった.これは低出生体重児ではこれらアミノ酸代謝が高カゼイン乳哺育において高ホエー蛋白質乳哺育より円滑に進まないことにあるが,本研究は体重が成熟児に近い2,500 g 前後であったので,代謝がある程度成熟し,有意差がみられなくなったのであろう.3) Tauは血漿濃度と尿中排泄量のどちらも凍結人乳哺育のG群がC, D, E 3群より有意に高値であったが,F群との間では差がなかった.人工乳群間の血漿濃度は, D,F両群が対応のC,E両群より高値を示し,高ホエー蛋白質乳哺育では含硫アミノ酸代謝の円滑な進行が示唆された.4)人工乳哺育群では上記以外のアミノ酸はほとんどが血漿濃度と尿中排泄量のどちらもアミノ酸代謝の違いというより,むしろ,摂取アミノ酸量を反映するように思われた.5)G群ではほとんどの必須アミノ酸とCys,Tyrの血漿濃度が人工乳哺育群より低値であった.6)尿中排泄量はほとんどのアミノ酸が血漿濃度を反映した.以上,低出生体重児の人工栄養ではアミノ酸代謝の面でも高ホエー蛋白質乳のほうが優れており,また, 1,600 g 以上の対象児の限りでは凍結人乳による哺育も可能であった.

← newer entries older entries →