h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1986.01.03

Immunohistological Studies of Meningiomas with Malignant Clinical Courses Examined Chiefly by Various Kinds of Tissue-Markers

髄膜腫の多くは良性腫瘍であるが,まれに悪性の臨床経過をとるものがあり,かかる悪性型のものを通常の良性型のものと鑑別する組織学的およびその他の方法が未だ見出されていない.そこで本研究は,臨床的に悪性経過をとる髄膜腫を良性型から組織学的および 組織化学的に鑑別することを目的として,組織学的検索と酵素抗体法による各種組織マーカー検索の組合せにより検討した. 検索した臨床的な悪性髄膜腫症例(以下,悪性群)は完全切除後の局所再発(7例),局所再発+頭蓋外侵襲(2例),局所再発+遠隔転移(2例)および術前の頭蓋外侵襲(2例)の計13例で,良性髄膜腫症例(以下,良性群)としては術後5年間以上再発・転移のない13例を用いた. 組織型別にみると,悪性群には組織学的malignant type 2例と悪性傾向が強いとされるangioblastic type 2例を含むが,他は全て良性群のものと同一であった.しかし,Mitotic index(/10 HPF, 以下MI)は悪性群は平均17.7に対し,良性群は平均0.7と有意差(p<0.01)がみられた.PAP法・ABC法による組織マーカーの検索はkeratin, S-100 protein, desmin, fibro nectin, actin, GFAP, Vimentinの存在と9種類のレクチン(Con-A,DBA,LCA,PHA,PNA, SBA, SJA, UEA-I, WGA)の結合性について行ったが,両群とも髄膜腫細胞自体はpeanut agglutinin(PNA)とsoybean agglutinin(SBA)のみが陽性で,また腫瘍間質内小血管の内皮細胞がulex europaeus agglutinin l (UEA-I)のみで陽性であった. PNA・SBA結合性は両群症例間で陽性率に有意差はなかったが, MI10未満とMI10 以上の二群に分けて陽性症例率を比較すると,前者で48%・25%に対し,後者はそれぞれO%であった. UEA-I陽性の間質血管の出現率は,良性群平均56.5%に比し悪性群では平均7.9%と有意(ρ<0.05)に低下していた. neuraminidase前処理にて,悪性群症例の23%のみで腫瘍細胞のPNA結合率の増加がみられた.以上の結果より,M1 10以上でPNA ・ SBA・UEA-I のレクチン結合率が低く,またneuraminidase前処理にて細胞のPNA結合率が増加する髄膜腫は,臨床的に悪性経過をとる傾向があると推定した.

1986.01.02

Transcatheter Arterial Embolization ― Experience of 50 Cases ―

当科においては, 1982年1月から1985年11月までに,血管造影を176回施行した。この内,肝動脈塞栓術(TAE)を,肝癌50例に対して施行し,その累積生存率は,1年で 44%, 2年で42%と,著明な延命効果を認めた. TAE施行肝癌例の予後と有意に関係がある要因は, Child分類, GOT/GPT比, GOT, LDH, ICG, Alb, Bil (T), CRP, AFP, ChE,被膜形成の有無,癌占拠率,門脈腫瘍塞栓であった.

1986.01.01

Scanning Electron Microscopic Study of Liver Using the Chemical Digestion Method ― Observation of Cirrhotic Liver ―

肝被膜を剥離し化学的に消化する方法と,短時間固定後化学的に消化する方法を利用して硬変肝を走査電顕で観察し,以下の結論をえた.1.肝被膜下の増生した細胆管を非自由表面から立体的に観察することができた.その走向は一部では直線状であったが,大部分が不規則に分枝しながら屈曲蛇行しており,一度細くなった後,球状にふくらんで盲端に終っていた.2.再生結節の表面を立体的に観察することができ,増生した扁平な細胆管網が再生結 節を被っている所があった.細胆管や小胆管の非自由表面を詳細に観察することができ,それらの断面も観察された.3.血管系は,今回,間質に存在する毛細血管と動脈枝のみしか観察されなかったが, 肝内血管を非自由表面から三次元的に観察できる本法は,肝硬変の重要な病態の1つである肝循環障害の病態生理を形態学の面から解明するのに役立つものと考えられた.

1985.04.10

Three Cases of Depressive Pseudodementia in the Elderly

高齢者に出現した認識障害にうつ病性仮性痴呆が関与したと考えられた3症例を検討して報告した.これら3例の認識障害はうつ病と脳の老化性変化や認識障害等の器質性脳障害が相互に関連して出現したものであると推察された.高齢者のうつ病性仮性痴呆は多様な病態構造を有し得ると考えられ,認識障害を呈する高齢患者の診断と治療に際しては,うつ病性仮性痴呆の存在の可能性を考慮に入れるべきであると考えられた.

1985.04.09

A Case of Idiopathic Hemochromatosis

特発性ヘモクロマトーシスの一例を報告した.患者は72歳,女性で,皮膚の色素沈着を主訴に来院した.顔面および手背は強い色素沈着がみられ青灰褐色であった.血清鉄は213μg/dl, TIBCは245μg/dlトランスフェリン飽和率87%であった.血清フェリチンも2100 ng/ml と増加がみられた.肝CTにてびまん性の高吸収域を示しCT値は65 H.u.であった.患者は2年7ヵ月の経過後,黄疸の出現,αフェトプロティン5100 ng/ml と増加,血糖の増加等がみられ,肝不全にて死亡した.死後穿針により,肝実質細胞の著明な鉄沈着と肝硬変症が証明された.

1985.04.08

Evaluation of PULSES, Hasegawa’s Scale and ADL of Geriatric Hospital

私はさきにリハ医療における評価法としてのMoskowitzのPULSES法の得点と独自に作成した歩行評価点との比較検討を統計学的に行い, PULSESが歩行の実用性の評価に適用できることを発表した.今回はそのPULSESの得点と長谷川スケール及びADL(上肢を中心として)について検討した.対象と方法については次の通りである.昭和58年6月末,リハ治療を行っていた症例121名のうち無作為に抽出した40名を対象とした.長谷川スケールは22点以上(境界,正常), 21.5点以下(準痴呆,痴呆)の2グループに分けた. PULSES’について:そのアルファベットはP:全身状態,U:上肢,L: 下肢,S:知覚,E:排尿,排便,S’精神,感情を示し,これら6項目を異常無しから重度異常の四段階に分けた. ADLは厚生省特定疾患調査研究班のテストの手引きを用いた. PULSES’のE,テストのトイレ動作は症例のランク付けが困難で除外した.解析の対象とした項目は,分割表での2項目間の相関分析,χ2及びYatesの修正χ2値検定で,対象とした項目はPULSES’(5項目)と長谷川スケール(2項目),ADL(5大17小項目)で,データー数は40であった.結果について,各項目間の相関については次の通りである. PULSES’(Eを除く)と長谷川スケールではPULSS’の5項目に関連を認めた. PULSES’とADLでは,すべてにUの関与を考えたが,14小項目にS’, sに7,Pに5,Lに1小項目の関連が認められ,χ2及びYatesの修正χ2値検定10%有意水準ではS’に5,Pに4,Sに2,Lに1各小項目の関連を認め,S’の持つ意義が大であることが認められた.以上からMoskowitzのPULSES法がリハ効果の評価にさらにADL評価に十分適用できることが示された.

1985.04.07

A Study of Control Mechanisms on Ventilation in Central Nervous Diseases

中枢性疾患における呼吸調節機能を知るためにPaCO2の連続測定を中心に検討し,以下の結果を得た.1. PaC02連続測定のためのPC02センサーについて本研究に用いたPC02センサーについて検討し,これがPaCO2の連続測定において十分信頼性のあることを確認した.2. PaCO2連続測定による検討1)中枢性疾患においてPaC02は低値を示し,しかもその値は周期的に変動しており,その変動の大きさは意識障害の程度と相関していた.2)くも膜下出血と脳挫傷との比較では,くも膜下出血例により大きなPaCO2の変動が見られた.3)意識障害の程度と異常呼吸型の間には,特別な関係は認められなかった.4)異常呼吸と換気量, PaC02の関係においては時間的ずれが認められ,特にCheyneStokes呼吸において特異的であった.5)生存例と死亡例の動脈血ガス分析による検討では, PaC02の変動において差が見られた.3. C02応答曲線による検討C02応答曲線による検討では,中枢性疾患においてその低下が認められたが,意識障害の程度とは関係がなかった.

← newer entries older entries →