h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2004.01.03

A case report of a patient with Hb Peterborough [β111 (G13) Val → Phe] causing a mild hemolytic anemia *

 軽度の溶血性貧血と診断された52歳の女性,岡山県出身,の溶血液について等電点電気泳動法で異常Hbの検索を行った所,Hb Fバンド付近に異常分画を検出した.単離した異常Hb分画から調製したトリプシン消化ペプチドの逆相HPLCとアミノ酸組成分析による解析から,βTp-12aペプチド(β105-112:Leu-Leu-Gly-Asn-Val-Leu-Val-Cys)にアミノ酸置換(Val→Phe)の存在が推測された.DNAのPCR産物の直接シーケンシングにより,β111コドンGTCの第1塩基GのTへの置換が明らかになった.これはβ111Val→Pheの変異を示しており,これによる酸素親和性低下と不安定性をもつHb異常症,Hb Peterborough[β111(G13)Val→Phe]と同定された.一方で,Hb合成試験はβ/α=0.72-0.79と軽度のβ鎖グロビンの合成抑制を示し,不安定β鎖グロビン異常Hbによるためと考えられた.実弟もこのHbの保因者であり,軽度の溶血と,β/α値の軽度低下を示した.
 この異常Hbの発見は,本邦第2例目であるが,第1例目の大阪の家系との関連は明らかになっていない.
(平成16年6月15日受理)

2004.01.02

Development of the olfactory glands in fetal and early postnatal mice – A histometrical study – *

 胎生14日から生後60日までのICRマウスの嗅粘膜で,特に嗅腺に注目し,胎子ならびに新生子における嗅腺の発達を計量組織学的に観察した.胎生14日の鼻腔においては,嗅粘膜と呼吸粘膜の区別は可能だが,嗅腺を観察することはできない.胎生17日では鼻腔下部の呼吸粘膜には良く発達した鼻腺が観察できる.しかし嗅粘膜に嗅腺はごくわずかしか観察されず,その形態は少数の短く管状を呈する腺構造として固有層内に認められる.嗅腺は出生後急速にその数が増加するとともに,分泌部が固有層内で長く伸展する.分泌部は基本的に管状構造を呈するが,生後日数とともに長くなり固有層内の血管や神経線維束に圧迫されるようになる.計量組織学的に観察すると嗅腺細胞数は胎生19日と生後0日の間で急速に増加する(P<0.01).嗅腺は胎生17日では天蓋・鼻中隔域および甲介域にのみ出現し,外側域には見られない.生後においても外側域に少なく,その分布に明らかな部位差が認められ(P<0.01),その発達には呼吸の開始が密接に関連する可能性がある.
(平成16年5月25日受理)

2004.01.01

Evaluation of MRI findings in detection of early stage cervical carcinoma of the uterus *

 組織学的に子宮頚部上皮内癌(90例),子宮頸癌Ia期(19例)およびIb1期(19例)と診断された128例を対象として,MRI所見と病理所見を比較検討した.MRIは1.0Tまたは1.5Tの装置を用い,術前に撮影されたT2強調画像(T2WI)とDynamic Contrast Enhanced MRI(Dynamic MRI)の読影を行った後,手術により摘出された頸部病巣の病理所見との比較により病変を検出する感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率および精度について検討した.これらについては婦人科医と放射線科専門医との間でも比較検討を行ったが,両者の診断精度に明らかな差はみられなかった.また1.0Tと1.5Tの装置間での診断精度に差はみられなかった.浸潤癌と非浸潤癌とを鑑別する診断精度は,T2WIで0.742,Dynamic MRIでは0.823であった.一方3mmを超える浸潤癌と3mm以下の病変を鑑別した場合の診断精度は,T2WIで0.875,Dynamic MRIでは0.947で,さらに5mmを超える病変を鑑別する診断精度は,T2WIで0.953,Dynamic MRIでは0.976となり良好な結果となった.次にT2WIおよびDynamic MRI所見を併せて診断した場合,両者で5mmを超える浸潤癌と診断した全例で実際に5mmを超える浸潤癌を認めており(11/11),逆に両者ともに浸潤なしと診断されたものに5mmを超える浸潤癌はなかった(0/73).またT2WIでは5mmを超える病変を認めていないが,Dynamic MRIで5mmを超える浸潤癌と診断された3例中2例は,実際に5mmを超える浸潤癌であり,Dynamic MRIがT2WIの偽陰性例を補正する可能性が示唆された.またT2WIで5mm以下の微小浸潤癌と診断した26例中17例が非浸潤癌であったが,そのうち12例はDynamic MRIで非浸潤癌と診断されており, 微小浸潤癌ではDynamic MRIがT2WIの偽陽性を補正する可能性が示唆された.以上よりT2WIとDynamic MRIの併用は早期子宮頸癌の非観血的な診断方法として有用であることが示された.
(平成16年3月10日受理)

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