h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2004.02.04

Renoprotective effects of azelnidipine by improvements of renal microcircuration *

 虚血による尿細管間質障害は,腎障害の重要な進展因子となる.尿細管間質の虚血は傍尿細管毛細血管(PTC)の血流低下によって惹起される.すなわち,腎障害の進展抑制には,PTC血流を保持することが重要と考えられる.新規に開発された長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(Calcium Channel Blocker:CCB)であるアゼルニジピンは進行性腎障害に対して有効であることが報告されている.しかし,その腎保護機序の詳細は明らかになっていない.本研究はPTC血流保持の観点から,新規CCBアゼルニジピンの腎保護効果について検討を行ったものである.まず急性期実験としてWKYラットにアンギオテンシンII(AII)30nM/分 10分間経静脈的に投与し,投与後の糸球体及びPTC血流をCCDビデオマイクロスコープを用いて観察し血流速度等を計測した.さらにアゼルニジピン投与の効果を検討した.AII(30nM/分.iv.)投与により血圧の上昇と,輸入・輸出細動脈の収縮及びPTCの血流低下を認めた.アゼルニジピン(0.1mg/kg)投与により,輸入細動脈の拡張のみならず,輸出細動脈の拡張を認めた.さらにAIIにより低下したPTC血流の回復を認めた.次に長期実験としてAII(500ng/kg/分)を14日間持続皮下投与し腎障害モデルを作成した.アゼルニジピン(30mg/kg/日)による腎保護効果を検討した.AII 2週間後,組織虚血マーカーpimonidazole陽性面積は増加し腎皮質部の広範な虚血が示された.PTC内腔面積を計測したところ,AII投与によりその減少を認めた.組織学的には皮質部尿細管の萎縮と間質繊維化を主体とする尿細管間質病変を認めた.アゼルニジピン投与により,腎皮質の虚血改善,PTC面積保持,尿細管間質障害の抑制を認めた.以上の結果よりアゼルニジピンは,輸入・輸出細動脈を拡張しPTC血流を保持することでAIIによる尿細管間質障害の進行を抑制することが明らかとなった.
(平成16年10月19日受理)

2004.02.03

Control of serum cytokines and IL-1β, IL-10 mRNA in the pancreas with an acute pancreatitis model in rats. – effect of FR167653 – *

 ラット重症急性膵炎モデルを作成し,IL-1及びTNF合成阻害剤(FR167653)の投与による血清中のサイトカインの変化と膵臓でのmRNAの発現を検討した.Wister系ラットを使用し次の3群を作成.1)sham群,2)CDL(closed duodenal loop)群:十二指腸内にポリ塩化ビニルチューブを結紮固定して作製した急性膵炎群,3)CDL+FR群:急性膵炎群作製後よりFR1676531.5mg/kgを生理食塩水0.2mlに溶解させ15分毎に4回皮下投与した群.1群6匹とし,2,4,6時間後にそれぞれ犠牲死させ血液,膵を採取し,IL-1β,IL-6,IL-10の血清濃度と膵臓でのIL-1βmRNA,IL-10mRNAの発現を検討した.1)血清アミラーゼ及びリパーゼ濃度はCDL+FR群でCDL群に比し2,4hでやや低値を示した.しかし,その効果は6hで消失した.2)血清IL-1β濃度はCDL群で上昇を認めた.CDL+FR群では上昇が抑制された.3)血清IL-6濃度はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めたが,CDL+FR群ではCDL群に比し有意に低値を示した.4)血清IL-10濃度はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.CDL+FR群ではやや低値を示した.5)膵臓でのIL-1βmRNAの発現はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.時間経過と共に低下傾向を示したがCDL+FR群がより著明であった.6)膵臓でのIL-10mRNAの発現はCDL群,CDL+FR群共に上昇を認めた.2h値はCDL+FR群で高く,両群とも時間経過と共に低下傾向を示したがCDL+FR群がより著明であった.7)組織学的にはCDL+FR群で膵障害が軽度であった.
 FR167653の投与により膵でのIL-1βmRNAは抑制される傾向にあり,血中IL-1βの産生が抑制された.IL-10はmRNAの抑制が血清濃度を低下させることに直結しなかった.しかしながら,FR167653の投与による炎症性サイトカインの抑制により膵組織障害は軽減され,膵炎治療に応用できる可能性が示唆された.(平成16年10月12日受理)

2004.02.02

Analysis of the microvasculature of rat transplanted tumors using the synchrotron radiation microangiography system: Effects of tumor microvasculature and microcirculation of radiotherapy and angiogenesis-related factors *

 腫瘍血管の形態を,放射光微細血管造影法を用い観察可能とする生体実験系を作成する.また,血管新生関与因子の投与や放射線照射を行い,その形態変化や腫瘍循環動態を定量的に評価する.
 ラットの下腹壁にラット乳腺腺癌を移植し,大型放射光施設SPring-8で発生される単色X線を用いた腫瘍微細血管造影を行い,同時に撮像した100μmのタングステン線をもとに最小描出血管径を同定した.また,移植2週後のラットを無処置群,放射線(RT)照射群,抗VEGFR中和抗体(AI)投与群,b-FGF(AP)投与群の4つのグループ(各n=5)にわけ,移植4週後の腫瘍微細血管構築の変化を放射光で観察した.
 腫瘍血管の定量的評価法には,腫瘍血管に特徴的な所見でスコア化し評価する手法と,microvessel density(MVD)につき,画像解析ソフトを用い2値化処理にて解析を行う手法を用いた.さらに,2値化で得られたMVDと組織学的検討で得たMVDとを対比し,統計学的な解析を試みた.腫瘍循環動態の評価は,血管造影ダイナミック・スタディーで得た各群のtime-density curveをパターン化し,それらを分類した.
 放射光微細血管造影法による最小描出血管径は,20~30μmであった.AP群は無処置群と比較し,腫瘍血管のスコア合計は高値を示し,MVDも高値を示した.AI群は無処置群と比較してスコア合計は低く,MVDも低値を示した.RT群ではスコア合計は高く,MVDは低値を示した.無処置群における2値化で得たMVDと組織像より得たMVDとの間に,統計学的に有意な相関関係を認めた.AP群の微細血管造影法によるtime-
density curveのパターンは漸減型を示し,AIとRT群では漸増型を示す傾向にあった.
 今回の実験結果より,従来の血管造影法では観察不可能であった20~30μmの腫瘍微細血管を生体下に,観察することができた.また,腫瘍微細血管新生の観察や処置前後の形態変化を定量的に評価することが可能であった.(平成16年9月27日受理)

2004.02.01

Three dimensional images of microsurgical anatomy for a transpetrosal approach *

 経錐体到達法は,斜台部や脳幹前外側面などの頭蓋底部へ最短距離で到達できること,広い術野が得られること,脳圧排が少ないこと等の特徴を有する優れた手術到達法である.しかし,重要構造物が密集する錐体骨の骨削除を要するため,脳神経外科手術の中でも特に難易度の高い手術とされている.
 解剖用屍体10体の頭部を手術用顕微鏡下に解剖し,骨削除を安全に行うための問題点について検討した.その結果,従来用いられてきた解剖学的指標は,その個体差によって必ずしも信頼できる指標とはなり得なかった.
 そこで,手術に必要な錐体骨内部の重要構造物である顔面神経,三半規管,蝸牛,前庭水管,耳小骨,内頸動脈,S状静脈洞,頸静脈球のみを選択した3次元画像を作成し,その有用性と精度について検討した.錐体骨3次元画像は,錐体骨内部構造を立体的に理解する際に有用であり,十分な精度を有していた.術前の手術シミュレーションを行う際においても,任意の侵入角度から観察した錐体骨内部構造を描出することができた.
 また,この3次元画像をnavigation systemに応用して骨削除を行ったところ,錐体骨内部の重要構造物を確実に温存しつつ,かつ速やかに骨削除を行うことが可能であった.(平成16年9月21日受理)

2004.01.09

 

2004.01.08

 

2004.01.07

 

2004.01.06

Lichen planopilaris associated with oral lichen planus *

 63歳女性.頭部の瘢痕性脱毛と紅斑を主訴に皮膚科を受診した.これ以外に口腔内の扁平苔癬を合併していた.頭部の紅斑の組織標本では顆粒層の肥厚,表皮基底層の液状変性,真皮上層のリンパ球浸潤とCivatte小体が認められた.毛包では角栓と毛包壁へのリンパ球浸潤が認められた.免疫蛍光法直接法ではCivatte小体へのIgMの沈着と表皮真皮境界部へのフィブリノーゲンの沈着が認められた.以上の臨床像と組織学的所見から毛孔性扁平苔癬と診断した.プロピオン酸クロベタゾール液の塗布により頭部の紅斑は消失し脱毛の進行は停止した.(平成16年8月10日受理)

2004.01.05

Rubella in adults *

 26歳女性.38℃以上の発熱と全身倦怠感を伴い顔面・体幹に紅斑を生じたため当院皮膚科に入院した.初診時顔面・体幹に5mm径までの淡紅色斑が多数見られ,耳後部と頚部にリンパ節腫脹が認められた.臨床的に風疹と診断し,入院3日後に症状は消失した.初診時に行った風疹特異的IgM抗体検査は陽性で診断が確認された.2003年1月から8月の間に18歳以上の風疹患者20名が当科を受診し,成人例の増加が推測された.この20例の集計では関節炎,白血球減少,血小板減少,軽度の肝機能障害が一部の患者に認められた.
(平成16年8月6日受理)

2004.01.04

Sweet’s syndrome presenting with mild skin eruption *

 15歳女性.咽頭痛と39℃以上の発熱があり当院救急部に入院した.白血球数は11,100/mm3で好中球が87%を占めていた.CRPは15.2mg/dlと高値であった.以上の所見から細菌感染が疑われた.しかし,抗生物質の全身投与により症状は改善しなかった.入院2日後の診察時に顔面と胸部に1cm径の有痛性局面が認められた.その生検組織では真皮にリンパ球と多数の好中球の浸潤が認められた.これらの臨床症状,一般検査所見および病理組織学的所見からSweet病と診断した.プレドニゾロン1日量60mgの点滴静注により諸症状は速やかに改善した.高熱,好中球増加,CRP高値といった臨床症状と検査所見からは一般的には細菌感染症が最も疑われるが,鑑別疾患としてSweet病も考慮すべきと考えられた.(平成16年7月20日受理)

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