h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1997.03.05

A study of regional cerebral blood flow (rCBF), distribution of benzodiazepine receptor and nueronal density and alteration after transient forebrain ischemia in the mongolian gerbil *

 脳内に存在する多くの受容体が虚血性の侵襲に対してどのような反応を示すかはあまり知られていない.また局所脳血流量(regional cerebral blood flow : rCBF),抑制性の神経伝達物質受容体であるベンゾジアゼピン受容体(benzodiazepine receptor : BZR),神経細胞などの分布について比較検討した報告も少ない.さらに,一過性前脳虚血後のrCBF,BZRの分布を経時的に比較した報告もほとんどない. rCBF,BZRと神経細胞の分布密度の関係,また一過性前脳虚血後の変化を理解するために,まず正常成熟砂ネズミのrCBF, BZRと神経細胞の分布の相関関係について核医学的方法を用いて,さらには組織学的方法も用いて検討した.核医学的方法としては放射性リガンドN-isopropyl-p-〔123 Ⅰ 〕iodoamphetamine(123 Ⅰ-IMP)と125 Ⅰ -iomazenil (125Ⅰ-IMZ)を用いてautoradiography(ARG)法によりrCBFとBZRを半定量的に小脳に対する比率として求めた.組織学的方法としてはHematoxylin-Eosin染色(HE染色)を行い, ARGと同じ領域の神経細胞数を計測した.虚血実験では一過性前脳虚血モデルを作製し,遅発性神経細胞死を生じる海馬CA1領域と神経細胞に変化のみられない領域について比較検討を行った. その結果,rCBFは視床と海馬歯状回以外の細胞密度の高い領域で高値を示したが,一定の関係を認めなかった. BZRへの集積率と神経細胞密度の間にも一定の関係は認めず,それぞれの領域の神経細胞ごとに, BZRの分布に差があることが示唆された.また海馬のCA1領域にrCBFの一過性の上昇と錐体細胞の脱落がみられたが,BZRの分布に明らかな減少を認めなかった.このことは,急性期におけるBZRへの放射性リガンドの集積像は,必ずしも神経細胞の生存を反映するものではないと思われた.    (平成9年10月31日受理)

1997.03.04

A videofluorographic and impedance curve study of swallowing *

 嚥下機能の評価法としては,誤嚥の評価が出来る点で嚥下ビデオレントゲン検査(Videofluoroscopy以下VF検査と略す)が現在最も有効な方法だが,欠点として放射線被曝が挙げられる.著者は嚥下評価の方法として危険性が少なく簡便な頸部インピーダンス検査に着目した.その実用性を調査するために,本研究ではVF検査を同時に測定して嚥下機能の評価を試みた. 舌,喉頭の動きなど随意運動が及ぼす影響,食塊の量,性状の影響,また嚥下障害のない60歳以上の高齢者と健康若年者を対象とした加齢による影響を検討した,VF検査は座位で行い,液体及び半固形物としてゼリーを嚥下させた.インピーダンス測定器は独自に製作したものを使用し,嚥下前にインピーダンスレベルを測定した.嚥下時のインピーダンス波形とVF画像を8mmビデオで同時に記録し,後に咽頭期の波形を中心に解析した. 咽頭期のインピーダンス波形は,舌運動に影響されないのに対して,喉頭の動きを反映していた.VF検査での咽頭通過時間は高齢者群で有意に延長していた.若年者で咽頭期のインピーダンス波形の相は1~2相だが,高齢者では多相性となる傾向にあった. 頸部電気インピーダンス測定法は,嚥下時の咽喉頭領域の運動を大まかに把握できる点で意味があり,また測定が容易で非侵襲的である.これらの特性を活かし,嚥下の臨床評価の実用性をさらに検討したい.               (平成9年10月28日受理)

1997.03.03

effect of kanamycin on potassium currents in isolated supporting cells from the guinea-pig cochlea *

 哺乳類のコルチ器は音刺激によって振動する基底板上に位置し,内,外有毛細胞(IHC,0HC)の2種類の感覚細胞群と,これらを周囲から支える支持細胞群により構成されている.音受容機構は,その全容は未だ解明されておらず,現在も広範囲に研究されている.その中で,支持細胞も構造的支持機能だけでなく,音受容に関与している可能性が示唆されている.本研究の目的はコルチ器支持細胞群,特にダイテルス細胞(DCs)及びベンゼン細胞(HEs)の膜興奮性Kチャンネルの電気生理学的特性を明らかにし,併せて,0HCに対し重篤な障害を引き起こす事が臨床的に良く知られているアミノ配糖体系抗生物質であるカナマイシン(KM)の支持細胞に対する作用から,支持細胞とOHCの共通性及び相違性を見い出す事である. モルモットの蝸牛からDCs及びHEsを単離し, conventional whole cell パッチクランプ法を用いて,膜電流の変化を調べた.その結果,次の諸点が明らかになった.(1) DCs,HEs共に,膜電流の8O%は電位依存性外向きK電流であった.(2)細胞外からKMを投与すると,この電位依存性外向きK電流は, DCsにおいてのみ急速に増加した.(3)この電流は,細胞外Caイオンに,対する依存性は示さなかった.(4)一方,HEsの電位依存性外向きK電流は,KMの影響を全く受けなかった. 以上の結果から, OHCの膜電位依存性Caチャンネル,メカノセンサーチャンネルの抑制を引き起こすことが知られているKMは,DCsの電位依存性外向きK電流を著明に増幅させることが示された.これは,DCsのKチャンネルの開口が,KMによって著明に増幅されることを示す.同様の現象は,OHCでは,報告されておらず,DCsの特異的現象と考えられる.                           (平成9年10月28日受理)

1997.03.02

the relationship between nurse’s job perception and burnout syndrome *

 【背景】看護職者の仕事上の情緒的ストレスにどのような職務要因が関連するのかについては未だ十分解明されていない.そこで,看護職者の仕事に対する意識と個人的心理的背景の両面における種々の因子がメンタルヘルスや燃えつきにどのようにかかわり合っているのかについて調べた. 【方法】1994年の10月~11月の1ヵ月間に病院に勤務する看護職者1,190名に対して無記名式質問表を郵送した.調査内容は性,年齢,勤務場所,勤務体制等,仕事に対する意識(23項目),Maslach Burnout Inventory, 個人的心理的背景,およびメンタルヘルスの状態である. 【結果】有効回答者1,002名(84.2%)について分析したところ,看護職者の仕事の繁忙さや仕事上での疎外感は情緒的疲弊と関連があった.また,仕事への適合性や成功体験は年齢とともに上昇し,仕事の熟練度の高い者は燃えつきになることが少なく,24歳以下の構成割合が30%以上を占める大規模な施設でBurnout得点が高かった.精神面の不健康群は仕事に対する意識が否定的であった.心理的背景を知るために用いたエゴグラムでは看護職者の適性として求められる自我得点が不健康群で低かった. 【結論】今回のデータから次のことが言える.年齢の上昇とともに看護職者の仕事に対する意識は前向きになり,看護職者の仕事の熟練度の高さは燃えつきを防ぐ,大規模な施設の24歳以下の看護職者の燃えつきは高い.仕事の繁忙さや仕事上での疎外感は燃えつきの初期の要因になる.精神的に健康な看護職者は仕事に対する意識や適性が高くなり,燃えつきを起こしにくいと考える.                (平成9年10月28日受理)

1997.03.01

effect of nirtric oxide on collagen synthesis in cultured human dermal fibroblasts *

 一般に神経伝達物質または血管拡張因子として知られる一酸化窒素(NO)は,創傷局所においてマクロファージや好中球により産生され,創傷治癒機転に関与する可能性がある.本研究で著者は,NOのヒト皮膚由来線維芽細胞に対するコラーゲン代謝に関する検討を行った.ヒト皮膚由来線維芽細胞をNO産生物質で刺激し,α1(I)およびα1(Ⅲ)コラーゲン,コラゲナーゼの発現をタンパク,酵素活性,メッセンジャーRNA(mRNA)の各レベルで検討した.その結果,NOが転写レベルからのコラーゲン合成,コラゲナーゼを含むプロテアーゼの活性の亢進に作用することが認められた.これらの結果は,NOが炎症部位においても,細胞間メディエーターとして機能し,それを受容した皮膚線維芽細胞のコラーゲン代謝を亢進させることにより,創傷治癒過程に関与することを示唆している.                               (平成9年10月20日受理)

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