h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1996.03.04

Images of Naikan Therapy ―Principal Component Analysis― *

本研究の目的は内観未経験者に対して内観について説明する際の注意点を提起することにある.そこで,まずSD法により以下のコンセプトー内観,精神分析療法,森田療法,認知療法,行動療法,芸術療法,支持的精神療法,母,父,仏教,神道,自然崇拝,キリスト教一についてのイメージを調査した.すなわち,各コンセプトについて20の形容詞対の得点をそれぞれ0から7点で評点した.そして,平均得点をもとに主成分分析を行った.その結果,寄与率は第1主成分が51.8 %,第2主成分が28.1 %,第3主成分が7.3 %であった.また,各コンセプトの主成分得点(第1主成分,第2主成分)は,内観(-2.438,2.796),精神分析療法(-3.037, 3.686),森田療法(-3.105, -1.854),認知療法(-0.829, -1.805),行動療法(-2.211, -1.901),芸術療法(5.033, -3.342),支持的精神療法(-1.096, -3.327),母(8.057, 1.985),父(2.088,2.537),仏教(-1.131 , 2.375),神道(-1.659, 0.583),自然崇拝(-1.309, -1.615),キリスト教(1.636, -0.049)であった.なお,因子付加量から第1主成分は「母性」の因子であり,第2主成分は「重大さ」の因子と考えられた.「母性」を横軸とし「重大さ」を縱軸として各コンセプトを2次元上に配置し,内観のイメージについて検討した結果,内観の治療構造には父性的側面と母性的側面の両者が共存しているにもかかわらず,内観未経験者にとっては内観は母性的な療法としてのイメージが希薄である.また,内観はその方法は極めて簡単であるにもかかわらず,内観未経験者にとっては重大なイメージで受け取られすぎている.このような内観の実際とイメージの解離を防止するために,治療者は内観未経験者に対してはこれらの点をふまえて慎重に説明しなければならない.       (平成8年10月1日採用)

1996.03.03

Sternocleidomastoid Muscular Atrophy after Modified Neck Dissection ―A Anatomical Study― *

保存的頸部郭清術(Modified neck dissection ; MND)後の胸鎖乳突筋の萎縮を防止するため,遺体を用いてMNDを想定した解剖を行い,同筋の支配神経と栄養動脈を同定し,術中に損傷する可能性を調査し,筋萎縮の予防法を検討した.胸鎖乳突筋の支配神経は,副神経と頸神経(C2,C3)からの枝であり,その筋進入状態は,副神経が筋を貫通し分布する群(38.5%)と副神経本幹が胸鎖乳突筋枝と僧帽筋枝に分枝して筋に分布する群(61.5%)に2分された.支配神経の筋進入の高さは,総頸動脈分岐部の高さも含めて,90.8%の例がその頭側であった.副神経と頸神経の分布様式は,副神経が筋を貫通する群では2型に,貫通しない群では4型に亜分類された.胸鎖乳突筋の栄養動脈については,筋を上下に2分して検討した.筋頭側1/2の主動脈は,後頭動脈(75%)か外頸動脈(25%)からの分枝であり,副神経に並走しながら下行して筋を栄養した.分布領域の面積比率は後頭動脈の分枝が36.5%で,外頸動脈の分枝は35.8%であった.補助動脈は後耳介動脈の分枝(85%)で,その分布領域の面積比率は9.8%であった.筋尾側1/2の主動脈は,上甲状腺動脈の分枝(95%)で,分布領域の面積比率は37.2%であった.補助動脈は鎖骨下動脈の枝,分布領域の面積比率は10.3%であった.主動脈の分布領域の面積比率の平均は36.2%で,補助動脈のそれは10.1%であった.支配神経や栄養動脈付近に,かなりの数のリンパ節が存在した.術後の筋萎縮を防止するために術中に注意する点は1)予防的郭清においては,上内深頸リンパ節の郭清上限を総頸動脈の内外分岐部までとする.2)副神経と頸神経の分布様式を充分理解し,同定温存しながらその周囲のリンパ節を慎重に郭清する.3)筋を授動,牽引する際は愛護的に扱い,筋肉内を走行する神経線維の損傷を避ける.4)筋の横切断は避けて,上甲状腺動脈および鎖骨下動脈の分枝を温存する.     (平成8年10月1日採用)

1996.03.02

Coronary Revascularization Surgery for Ischemic Heart Disease *

1975年から1995年までに虚血性心疾患407例に冠動脈バイパス術を行った.男331,女76例,男は50歳代,女は60歳にピークを有し,女性に高齢者手術例が多くみられた.心筋梗塞の既往は35.1%にみられ,手術時に安定狭心症であったものが334例,不安定狭心症が61例,急性心筋梗塞は12例で,不安定狭心症および急性心筋梗塞例のうち30例に緊急手術が行われた.冠動脈病変は1983年以降左主幹部,3枝病変が過半数を占め,1枝病変は10%以下であった.バイパス数は5枝5,4枝2,3枝114, 2枝177, 1枝85例で一人平均2.24本であった. 1987年から動脈グラフトを使用し,過去5年間では80%以上の例に動脈グラフトが用いられた.総死亡率は9.6%, 7日以内の手術死亡率5.4%,その後の病院死は4.2 %であった.手術死亡率は安定狭心症の2.4%に対して不安定狭心症では14.8%,急性心筋梗塞では41.7%と高率であった.再手術は26例で原因は静脈グラフトの閉塞が多く,とくに前下行枝に動脈グラフトの使用は遠隔期再手術の防止に有効と考えられた.(平成8年10月15日採用)

1996.03.01

Significance of Laminin Expression in Colon Cancer at its Primary Site *

癌の浸潤・転移という過程には,癌細胞と基底膜との間の複雑な絡み合いが存在している.大腸癌の癌細胞が作る基底膜が癌の浸潤程度や転移とどのような関係にあるかを明らかにする目的で,197例の大腸癌切除材料を用い,ラミニンの発現を免疫組織学的に調べた.大腸腺癌のラミニンによる基底膜形成能は高分化型で高く,低分化型で低い傾向にあるが明らかな有意差はなかった.また深達度やリンパ節転移の有無,肝転移の有無と基底膜形成能との関係も検討した.前二者との間には有意な関連性がみられたが,肝転移に関しては有意な関連を認めなかった.                 (平成8年10月23日採用)

1996.02.08

Two Cases of Familiar Hypercholesterolemia Detected by Assaying LDL-receptor Activity *

最近,未梢血リンパ球を用いたLDL-レセプター(LDL-R)活性の新しい測定法が開発された.この方法を用いて診断した家族性高コレステロール血症(FH)の2例を報告する.症例1 (21才,男)は1995年5月,高コレステロール血症のため当院に紹介された.アキレス腱の軽度の肥厚以外,身体所見にはFHに特徴的なものはなかった.血清総コレステロール(TC),LDL-コレステロール(LDL-C),HDL-コレステロール(HDL-C)は,それぞれ360, 287, 50mg/dl,高脂血症の型はIla型であった.本例のLDL-R活性は健常コントロールの47%であった.症例2 (73才,男)は,約20年前高コレステロール血症を指摘され,投薬加療を受けてきた.身体所見では,両アキレス腱の明瞭な肥大がある.血清TC, LDL-C, HDL―Cはそれぞれ347, 288, 45mg/dl,高脂血症の型はIla型, LDL-R活性は34%であった.著者らの2例はLDL-R活性が著しく低く,このことはFHの診断を強く示唆する(服部浩明ら, Lab Clin Prac, 13 : 45-49, 1995). FHのLDL-R遺伝子変異は多様なものがある.症例1ではE119k変異が証明できたが,症例2はこれ以外の変異と考えられた.(平成8年8月5日採用)

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