h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1995.02.04

Detection of EB Virus in Pathology Specimens Using EB Virus-Encoded RNA in Situ Hybridization and Its Pathological Significance *

Epstein-Barr (EB)ウイルス感染が, Burkittリンパ腫や鼻咽頭癌のみならず,免疫抑制状態における日和見B細胞リンパ腫,末梢性T細胞リンパ腫あるいは胃癌など多数の疾患と関連していることが知られてきている.今回私たちは,各種悪性リンパ腫を含む病理材料40例におけるEBウイルス感染の有無を, EB virus-encoded RNAに対するアンチセンスプローブを用いたin situ hybridization ( EBER-ISH )法によって検索した.EBER-ISHは固定液を選ばず,脱灰した剖検骨髄標本においても応用可能で,組織学的にも陽性細胞の同定が容易である.今回の検索では,脳原発B細胞リンパ腫,ホジキン病,橋本病を基盤として発生した甲状腺原発B細胞リンパ腫,蚊アレルギーに続発したT細胞リンパ腫,腎移植後に肝臓に発生した平滑筋肉腫で腫瘍細胞が強陽性となり,これら疾患の発生におけるEBウイルス感染の関与が疑われた.       (平成7年7月6日採用)

1995.02.03

Cell Death of Mature Neutrophils in the Neonatal Liver of the Mouse : A Histological Study *

生後早期のICRマウスを用いて,肝臓造血終末期の顆粒球系細胞の運命を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡で観察した.出生直後の肝臓は多数の赤血球系や顆粒球系の造血細胞を含むが,生後3日以降その数は急速に減少する.生後早期の肝臓では,顆粒球系白血球の多くは肝臓被膜下ならびに小葉間結合組織中に集積し,成熟好中球が主体で,生後5日以降細胞死の兆候を呈する好中球が増加する.細胞死の兆候は特に核に顕著で,染色質が濃縮し,核内膜へ高度に半月状に凝集して,アポトーシスに特徴的な核形態を呈する.細胞質では周辺が断片化し,濃縮した細胞質内でライソゾーム顆粒が腫大する.細胞死の兆候を呈する好中球はマクロファージに取り込まれ消化分解される.新生児期の肝臓における好中球のプログラム細胞死が肝臓造血の終末期を特徴づけると考えた.(平成7年7月6日採用)

1995.02.02

Effects of 2,4-Dinitrophenol and Cyanide on the Electrical Activities of the Cultured Chick Embryonic Heart Cells *

ニワトリ胚(12日~14日齢)より得た心室筋を3日~12日間培養し,心室筋細胞の電気的活動に対する代謝阻害剤の作用を検討した.培養心筋細胞は,直径50~300μmの集団を作って自発拍動を繰り返しており,自発性と電気的性質との両面に対する代謝阻害の影響を明らかにすることが可能である. dinitrophenolおよびcyanideは,自発性活動の頻度を増加する.しかし,正常Tyrode液において高い頻度の自発性活動を持つ細胞に対しては,反対に自発性活動の頻度を減少する.自発活動の頻度が増加するとき,拡張期の細胞内電位は約20mV減少し,ペースメーカ電位の勾配が急峻になる.活動電位の立ち上がり速度は減少し,オーバーシュートは低下し,特に,その持続時間が短縮する.プラトー相は低下し遂には消失する.これらの変化をもたらす原因としては,代謝阻害剤によってNa+-K+能動輸送が抑制され,細胞内のK+の喪失およびNa+の蓄積によること, Ca2+能動輸送の抑制による細胞内Ca2+濃度の上昇が関与していること,また,細胞内ATP濃度の減少することなどが考察された.                   (平成7年9月28日採用)

1995.02.01

Clinical Observations of Hypoglycemia Unawareness *

無自覚性低血糖症(HU)は重症低血糖症の主要な危険因子である.本研究ではHUの臨床像を明らかにすることを試みた.インスリン加療糖尿病患者250例中2例(0.8%)の急性HUと5例(2.8%)の慢性HUが認められた.慢性HUは全例IDDMで,やせ型,高齢者,低血糖の頻度の高い人に関連してみられ,糖尿病罹病期間の長い人や血糖コントロールが良い人に必ずしも多いという訳ではなかった.HUの主な原因として,先行するインスリン低血糖があげられている.細心の注意を払ってこれを避けることによりHUは回復するとされており,HUにおける重症低血糖症を防止するには,血糖コントロールの目標は正常よりやや高いレベルに設定すべきである.       
(平成7年7月6日採用)

1995.01.07

A Sudden Death Case After Subtotal Thyroidectomy for Graves’ Disease *

15歳女性でバセドウ病治療のため甲状腺亜全摘術施行後7日目にトイレット内で呼吸ならびに心停止状態で発見された.蘇生処置により正常な心拍動および自発呼吸は回復したが,意識は回復しないまま術後23日目に心不全で死亡した1例を報告し,死因について考察した.                            (平成7年2月17日採用)

1995.01.06

An Unusual Case of Intermittent Left Bunble-Branch Block with Transitional QRS Changes *

間歇性脚ブロックは通常,ある一定のcritical rate を境に脚ブロック波形が出没するが,われわれは数拍をへて徐々に,かつ段階的に移行する間歇性左脚ブロックの1例を経験した.58歳女,農業.主訴は胸痛. 1974年初診時は洞調律, PR 0.18秒,QRS幅0.08秒,左室高電位でQRS軸は+10°.その後不完全左脚ブロック, PR 0.17秒, QRS幅0.11秒, QRS軸は+10°であった.経過中,数拍をへて移行する特異な頻脈依存性間歇性左脚ブロックを認めた.左脚ブロックはQRS幅0.16秒,QRS軸-35°の左軸偏位を伴う完全左脚ブロックであった. QRS波形が数拍をへて移行する際,PRは0.17秒で一定であることから,非発作性心室頻拍の等頻度房室解離や間歇性WPWとは容易に鑑別された.その機序として,左右脚の伝導速度の差によって左室・右室脱分極の同期が微妙に変化するためと考えられた.例えばH-RBが50 msec として, H-LBが60 msec であれば部分的に左右心室の脱分極は同期して不完全左脚ブロックとなるが, H-LBが100 msec となれば同期しなくなり完全左脚ブロックとなる.H-LBが頻脈依存性に65, 70, 80, 90, 100 msecと徐々に伝導遅延を生じれば本例のような段階的な間歇性左脚ブロックが生じると解釈された.以上,特異な波形の間歇性左脚ブロックの1症例を報告し,その発生機序について考察した.                                (平成7年4月21日採用)

1995.01.05

Histologic Response to Intracutaneous Injectable Collagen in the Rat *

皮膚軟部組織の浅い陥凹性瘢痕や変形,しわに対して軟部組織増量の目的で使用される注入用牛アテロコラーゲン,ザイダームコラーゲン注入剤(ZCI),コーケンアテロコラーゲンインプラント(KAI)の2種類に関してラット皮内注入後の経時的変化を組織学的に観察,比較した.ともにH-E染色で真皮から真皮下に好酸性の無構造な部分として認められた. ZCIは周囲組織と境界明瞭な塊状で,経時的にも著変を認めず,コラーゲン内部への線維芽細胞の浸潤を認めた. KAIは周囲組織と一部不明瞭な細かいウェーブ状の境界をもち,濃淡が大きくびまん性に広がっていた.徐々に表層より細かく分散し真皮との混在が顕著で,線維芽細胞の内部への浸潤は少なかった. ZCIが線維性, KAIが非線維性という性状によるコラゲナーゼ分解性の差が2剤の組織像の違いに関与すると考えられた.また真皮内へ注入されたコラーゲンが,真皮下に注入された場合より宿主コラーゲンによる置換が早い.このため,真皮内への注入コラーゲンの混在程度が,両者の経時的な残存に影響していると考えられた.              (平成7年3月24日採用)

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