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Online edition:ISSN 2758-089X

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1995.03.05

A Study of the Localization and Appearance of Tenascin in Human Hypertrophic Scars and Keloids *

肥厚性瘢痕やケロイドの組織内では線維芽細胞が増加し,同時にコラーゲンなどの細胞外マトリックスも増加しており,これらが肥厚性瘢痕やケロイドの形成に関与しているといわれているが詳細は明らかではない.著者は,肥厚性瘢痕やケロイドを形成する創傷治癒過程にテネイシンも関与しているのではないかと考え,本研究では創傷治癒過程での種々の状態である肥厚性瘢痕,ケロイド,成熟瘢痕および正常皮膚におけるテネイシンの発現と局在について,また肥厚性瘢痕由来の線維芽細胞と正常皮膚由来の線維芽細胞の単層培養下におけるテネイシンの発現の有無について免疫組織学的に検討した.その結果は,1)肥厚性瘢痕では真皮においてテネイシンの発現が増加し,またケロイドでも同様に真皮で発現が認められた.2)肥厚性瘢痕とケロイドでは発現の状態からは,両者を鑑別するほどの明らかな差異は認められなかった.3)成熟瘢痕では正常皮膚の真皮と同様にテネイシンの発現は認められなかった.しかし受傷後の経過が短いものでは一部に発現が認められるものもあった.4)肥厚性瘢痕由来線維芽細胞および正常皮膚由来線維芽細胞の培養下では,両方にテネイシンの発現が認められた.以上の結果から,肥厚性瘢痕やケロイドのように線維芽細胞が増加している状態ではテネイシンの産生が増加し,また成熟瘢痕になるとテネイシンの産生が漸次低下すると考えられた.一方,培養下で線維芽細胞を増殖させると,組織中では産生しなかった細胞でもテネイシンを産生することが明らかになった.これらのことから線維芽細胞は活発に増殖する状況下でテネイシンを産生すると考えられ,肥厚性瘢痕やケロイドの形成にテネイシンが関与していることが示唆された.              (平成7年10月13日採用)

1995.03.04

A Histological Analysis of Osteochondral Allografts After incubated by in Vitro Organ Culture *

1)器官培養法を用いて保存したウサギ骨軟骨の同種移植を行い,組織学的に検討した.2)新鮮移植群を対照群とした移植群においては,全体的に24週目に最も安定した結果となった.以降は生着安定していくか,もしくは吸収される結果となった.3)同種移植を行う場合,器官培養による保存を4週以上行った群に好結果が得られた.
(平成7年10月2日採用)

1995.03.03

Cerebral Complications of IVR of the Head and Neck Disease *

平成4年より放射線科では耳鼻咽喉科と共同で頭頸部領域癌に対してIVRを施行し,好成績をあげている.しかしながら,合併症として脳梗塞を経験した.その原因として,造影剤の化学毒性,カテーテルなどによるアテローム塞栓,カテーテル留置による血流低下などが考えられた.頭頸部領域IVRは脳合併症が起こり得る部位での手技であり,他のIVRよりもより慎重性が必要とされる.              (平成7年9月28日採用)

1995.03.02

Clinical Diagnosis of Neuromuscular Diseases Using Fat/Water Suppression Magnetic Resonance Imaging *

神経筋疾患のMRIによる臨床診断法の確立を目的として,骨格筋の脂肪/水分離画像スキャンによる客観的計測を行った.対象は,臨床症状ならびに電気診断によって,神経筋疾患と診断し得た症例15名および転換型ヒステリー症3名である.健康成人33名を比較の対照とした.緩和時間計算画像スキャンならびにDixon法による脂肪/水分離画像スキャンを用いて,両側大腿部骨格筋のMRI冠状断像を撮影した.筋ジストロフィー症では,水画像のpixel値(PV1)の著明な減少と脂肪画像のpixel値(PV2)の著明な増加が認められた. PV 2の増加の程度がPV1の減少の程度を相対的に上回ったことに基づいて,T1緩和時間(T1値)の著明な短縮とT2緩和時間(T2値)の軽度延長の所見が得られたものと推察される.多発性筋炎では, PV 1が増加する点が筋ジストロフィー症と異なる所見であった.疾患の重症度に応じてPV2が増加し,それに準じてT1値が変動した.T2値の延長はPV1の増加に起因するものと考えられる.筋緊張性ジストロフィー症や神経原性疾患では, PV1およびPV2の軽度増加が認められた.神経原性疾患のうち,多発性根神経炎ではT1値およびT2値が延長し,運動ニューロン疾患ではT1値が軽度短縮する傾向が認められた.転換型ヒステリー症は,概ね正常所見を呈した. MRIによる客観的指標の計測は,神経筋疾患の臨床診断において有用であると示唆された.                            
(平成7年9月2日採用)

1995.03.01

Electrophysiological Investigation of the Bulbocavernosus Reflex (BCR) in Rabbits ―BCR of Normal Rabbits and Spinal Cord-Injured Rabbits― *

球海綿体筋反射(Bulbocavernosus reflex, BCR)は末梢神経障害や脊髄損傷時の各種指標として臨床的に用いられている.しかし,動物モデルを対象とした電気生理学的研究についての報告は数少ない.この研究では23羽の健常家兎を用いてBCRの誘発筋電図の記録を試みた.さらに,このうち22羽の家兎では第12胸椎レベルでの脊髄損傷を作製し, BCRに及ぼす影響について検討した.健常家兎のBCRには潜時の異なる2種類の波形を認めることができた. 8.4~19.4 msecの潜時を持つ短潜時波形(SLW)は,仙髄を介した多シナプス性反射であり, 50.0~94.0msecの潜時を持つ長潜時波形(LLW)も脊髄損傷後に残存することより損傷部以下に存在する反射回路からの放電と考えられた.核上性脊髄損傷後早期よりBCRは出現し,誘発筋電図で明らかな脊髄ショックの時期を認めることができなかった. SLWは脊髄損傷後2週間,4週間で潜時,持続時間,振幅に有意な変化は認めなかった.LLWは健常家兎に比べ脊髄損傷後4週間で潜時が短縮し持続時間が延長する傾向が認められた(p<0.1).損傷部以下の後肢筋には著明な痙縮と筋萎縮を生じたが,陰部神経支配筋群には明らかな変化は認められなかった.家兎のBCRは上位中枢の影響を受けにくい反射と考えられた.          (平成7年9月26日採用)

1995.02.09

Early MALT Lymphoma of the Stomach : Report of a Case *

症例は62歳男性.上腹部痛を訴え近医を受診し,胃内視鏡施行したところ異常を指摘され, 1994年1月精査加療目的にて入院となった.上部消化管造影では,胃角部大弯やや後壁寄りに約10 mm大の陥凹性病変を認めた.内視鏡検査では,病変部は周囲に軽度の盛り上がりを伴う発赤した陥凹として観察され,伸展は良好であった. II c型早期胃癌と鑑別を要したが,生検にてMALTリンパ腫と診断された.治療は外科的切除が施行された.切除標本の病理学的検索では,病変は22×15 mmの範囲に限局し,深達度は大部分mで一部smに浸潤していた.本例は,小範囲に限局した早期のMALTリンパ腫で比較的稀な症例と考えられた.(平成7年8月23日採用)

1995.02.08

Electrocardiographic Diagnosis of Acute Myocardial Infarction Complicated with WPW Syndrome ―Its Serial Changes and That of Paroxysmal Supraventricular Tachycardia― *

WPW型心電図は,そのinitial vector の異常によりQRS波初期成分にデルタ波を生じるため異常Q波がmaskされる.従って, WPW型心電図に心筋梗塞を合併しても心電図診断は容易でない.今回我々は,A型,B型WPW症候群に急性前壁梗塞を合併した2例の心電図変化を検討した.その結果,以下のことが確認された.①急性心筋梗塞は12誘導心電図の経時的変化から診断が可能.②超急性期ではT波の増高(hyperacute T-wave),急性期ではST上昇,冠性T波などの変化が重要.③房室結節を順行伝導するいわゆるorthodromicな発作性上室頻拍(PSVT)時には,急性期のみならず,陳旧期でも異常Q波の出現によりその診断が可能.以上,心筋梗塞の心電図診断は, WPW型心電図においても経時的なST-T変化の観察や順行性房室回帰性頻拍時の波形(特にQSパターン)に注意すれば可能であると思われた.(平成7年9月28日採用)

1995.02.07

Breast Cancer and Breast Reconstruction *

本邦では乳癌罹患率が経年的に上昇しており,やがて胃癌や子宮癌を抜いて第一位になるといわれている.乳房は女性の大切な象徴であり,生活価値観および社会情勢の変化にともない,乳房再建を希望する患者が増加している.現在は,有茎筋皮弁を使用した乳房再建が主流であり,定型的乳房切除術後で胸壁の変形が著しい症例では有茎あるいは遊離腹直筋皮弁が,また,非定型的乳房切除術後で胸筋群が比較的残存している症例では広背筋皮弁が用いられている.しかしながら乳房温存療法も次第に普及しつつあり,今後は各術式に対応した様々な再建術式の開発が望まれる.乳房再建が乳癌治療の一貫として一般化する可能性は高く,安全かつ確実な乳癌治療をすするためには形成外科医と外科医が専門分野を超えて乳癌に精通することが大切であると考えられる. (平成7年8月23日採用)

1995.02.06

A Case of Ulcerative Colitis Associated with Primary Sclerosing Cholangitis ―In Special Reference to the Effectiveness of Cyclosporin― *

症例は17歳男性.潰瘍性大腸炎にて当院で観察中に肝胆道系酵素の上昇をきたしたため内視鏡的逆行性胆管造影を行い,原発性硬化性胆管炎と診断した.両疾患の合併は本邦では少なく,これまでに46例を数えるに過ぎない.自験例と合わせ,その臨床像の特徴について述べた.さらに本症例は難治性の潰瘍性大腸炎症例であり, cyclosporinの投与によって症状の改善を認めた.                  (平成7年6月20日採用)

1995.02.05

Analysis of Collagenase Gene Expression by Cultured Fibroblasts in Hypertrophic Scars *

肥厚性瘢痕病変部の病理組織学的特徴は線維化であり,真皮に過剰なコラーゲンの沈着を認める.本研究の目的は,ヒト肥厚性瘢痕由来真皮線維芽細胞におけるコラーゲン発現の増加およびその特異的分解酵素であるコラゲナーゼ発現の減少の有無を検討することである.著者は肥厚性瘢痕の中心部,辺縁部,病変外部より採取し初代培養した真皮線維芽細胞のα1(I)及びα1(III)コラーゲン,コラゲナーゼ, TIMP (Tissue inhibitor of metalloproteinase)のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現量を正常皮膚由来線維芽細胞のそれを対照として比較検討した.αl(I),α1(III)コラーゲンmRNAの量は病変の辺縁部,病変外部由来線維芽細胞で増加し,中心部では対照と差を認めなかった.一方コラゲナーゼmRNAの量は肥厚性瘢痕線維芽細胞では全体的に減少しており,その割合は中心部(対照の25%) >辺縁部(同43%) >病変外部(同84%)の順に著明であった.コラゲナーゼmRNA量の結果は,コラゲナーゼ活性量(FITCでラベルしたI型コラーゲンの分解率で測定したコラゲナーゼ活性)とよく相関していた.以上の結果は肥厚性瘢痕由来線維芽細胞におけるコラゲナーゼ遺伝子発現の減少がその病変部における,過剰なコラーゲンの沈着を引き起こしている原因の一つであることを示唆している.(平成7年8月12日採用)

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