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Online edition:ISSN 2758-089X

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1995.04.05

Esophageal Granular Cell Tumor Removed by Endoscopic Mucosal Resection : Report of a Case *

症例は39歳,男性.心窩部痛の精査のため施行された上部消化管内視鏡検査で,中部食道に隆起性病変を指摘された.主病巣は黄白色調を呈する粘膜下腫瘍として認められ,可動性が良好なため内視鏡的に粘膜切除した.摘出標本は最大4mmの正常粘膜に覆われた腫瘤で,組織学的には細胞質にPAS染色陽性の好酸性顆粒を有する多辺形ないし紡錘形細胞よりなり,顆粒細胞腫と診断された.切除断端には腫瘍細胞を認めず,免疫組織学的にS-100蛋白陽性であること,電子顕微鏡的には顆粒にミエリン様構造がみられることから神経原性と推測された.また,食道顆粒細胞腫の診断,治療には内視鏡的粘膜切除が有用と考えられた.                         
(平成8年1月12日採用)

1995.04.04

Simultaneous Occurrences of Insulin Dependent Diabetes Mellitus (IDDM) and Hyperthyroidism (Graves’ Disease) during the Postpartum Period in 2 8-Year-Old Woman ―A Case Report― *

出産後にインスリン依存型糖尿病(IDDM)とGraves病を同時に発症した一例を経験した.症例は28才女性で,出産半年後にIDDMとGraves病を発症したが,それ以前に両疾患の既往はなかった.入院時,ケトアシドーシスの状態で,直ちに輸液,インスリン,ヨード療法,抗甲状腺剤などの投与を開始した.最終的に糖尿病は,持続皮下インスリン注入療法, Graves病は131 I療法により治療した.本症例は,出産後で免疫機構が不安定な時期にIDDMとGraves病を同時に発症しており,その文献的考察と当科での糖尿病と自己免疫性甲状腺疾患の合併例について合わせて報告した.     (平成7年12月15日採用)

1995.04.03

Selection of Biological Dressings *

創傷被覆材は熱傷,外傷,褥瘡や遊離植皮術後の採皮部の創傷治癒を側面から援助するのに有用な治療材である.日常私たちが用いている創傷被覆材は,生体組織から作られたもの,高分子化合物を応用したものおよびそれら2つを合わせもったものと,おおきく3つに区分できる.よく言われるごとく,一つの創傷被覆材ですべての創を治癒させることは困難である.それらの利点欠点を知り,創面に応じた創傷被覆材を選択する必要がある.ここでは創傷治癒に対する私たちの治療方針と創傷被覆材の適用につき述べる. (平成7年12月26日採用)

1995.04.02

Morphological Studies of Uptake and Transport of Mycobacterium Intracellulare by M Cells in Rabbit Peyer’s Patches *

腸管は有害な微生物や腸管内に存在する様々な抗原に対して防御機構を有しており,この中でパイエル板のリンパ被蓋上皮(follicle associated epithelium : FAE)内のM細胞は,抗原認識の侵入門戸として大きな役割を担っている.すなわち,M細胞は腸管から種々の抗原を取り込み,内包する免疫担当細胞にその情報を提示している.近年,エイズなどの,免疫不全或いは抑制状態の患者に, Mycobacterium avium intracellulare complex (MAC)が日和見感染症として,重篤な腹痛を伴う吸収不良に関係した腸管感染症として成立することが報告されている.そこで,筆者は, MACの腸管内での動態を検討する目的で,ウサギを用いて腸管内に投与されたMycobacterium intracellulare (JCM6384株)と腸管,特にパイエル板を中心に光顕・電顕レベルで観察を行った.その結果,投与後5時間には,光顕レベルではパイエル板のリンパ被蓋上皮,及びその基底膜下のみにチール・ニールセン染色で赤紫色に染色される菌体を認めた.電顕的には,M細胞にのみ取り込まれ,その細胞質内から内包するリンパ球やマクロファージにまで輸送される一連の像を確認した.同時に,ホルマリン処理を行った死菌を同様な手技で観察したが,生菌の場合と差異を認めず,このことはMACのワクチンの作製が可能であることを示唆しているものと考えられた.以上の成績より,日和見感染症としてのMACの腸管感染の成立に,抗原の認識機構の門戸であるM細胞が関与している可能性が示唆された.     (平成7年10月25日採用)

1995.04.01

Effects of Hyperthyroidism and Thyroid Hormone Administration on Renin-Angiotensin System *

甲状腺機能亢進症の血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性とレニンーアンジオテンシン系に対する影響を検討した.未治療甲状腺機能亢進症例において血清ACE活性は健常者や既治療者に比べ有意(p<0.01)に増加した.また,血清ACE活性は血清Free T3(FT3)と有意(p<0.001)な正の相関を示した.その機序を解明するために健常者18名に甲状腺ホルモンを投与した.血清FT3は甲状腺ホルモン剤の投与で有意に増加した.血清ACE活性は投与前3.42±0.32 nmol/ml/min (平均±SE),投与1時間後から増加し,4時間後4.66±0.72 nmol/ml/min と有意(p< 0.05)に増加した.血漿レニン活性. AI,AIIは投与前に比べ,投与4時間後にいずれも有意な上昇を示し,同様の亢進を示した.以上の結果より,甲状腺機能亢進症におけるACE活性の上昇とレニンーアンジオテンシン系の亢進は甲状腺ホルモンの刺激によるものが考えられた.    (平成7年11月13日採用)

1995.03.10

A Morphological Study in the Gerbil Hippocampus following Transient Ischemia with Special Reference to the Role of the Astrocyte *

一過性脳虚血後の神経細胞の変化については多くの報告がなされているが,アストロサイトについての検討は少ない.本研究では,砂ねずみの一過性前脳虚血後の海馬CA1,CA3領域のアストロサイトの組織学的変化を, Hematoxylin Eosin染色(HE染色), Grial Fibrillary Acidic Proteinに対する免疫組織化学染色(GFAP染色), Nicotinamide Adenine Dinucleotide Phosphate diaphoraseに対する酵素組織化学染色(NADPH-d染色)等を行い,経時的に観察し比較検討した.その結果HE染色では, CA1領域において虚血後3日目に錐体細胞が虚血性変化を起こし,5日目以降にアストロサイトやマクロファージなどの非錐体細胞が増加することを認めた.一方, CA3領域では錐体細胞の虚血性変化は認められず,非錐体細胞の増加も認められなかった. GFAP染色では,虚血後2日目にCA1,CA3領域において足突起および胞体が増大した反応性アストロサイトが出現した.これらGFAP陽性部位を画像処理し定量評価すると, CA1領域では4日目にその総面積が最大になり,5日目以降も反応性は持続する傾向にあったが, CA3領域では反応性アストロサイトは出現するもののその数は増加せず,6日目以降は反応性は低下する傾向にあった.NADPH-d染色では,対象群の海馬においてNitoric Oxide Synthase(NOS)含有神経細胞がわずかに認められるのみで虚血による変化は認めなかった.このように,虚血後2日目よりCA1およびCA3領域に反応性アストロサイトが出現し,CA1領域で反応が持続しCA3領域で低下したことは,虚血後の神経細胞に対して反応性アストロサイトが積極的に関与していると考えられた.またNADPH-d染色における結果により,虚血後のグリアの機能としてのNOの関与は否定的となったが,今後さらに検討を必要とするものと考える.                      (平成8年1月11日採用)

1995.03.09

Alteration of Glomerulus Due to Aging in a Strain of Wistar Rats *

腎糸球体構成細胞のうち糸球体上皮細胞は他の細胞に比べて分裂能がないことと,糸球体上皮細胞の基底膜からの脱落が契機となり,基底膜とボーマン嚢上皮の癒着がおこり,糸球体硬化病変が形成されていくことを,我々はWistar系ratを用いて証明してきた.分裂能を有さない糸球体上皮細胞を経時的に観察することによって,加齢による糸球体上皮細胞の変化を捉え,糸球体上皮細胞脱落をもたらす因子を解明することができると考え,生後1週から100週までの正常Wistar系ratを用いて,血管極と尿管極を通る面での糸球体基底膜長と,一糸球体あたりの糸球体上皮細胞数を計測し,同細胞の超微形態学的観察を行った.加齢の結果,糸球体基底膜長,糸球体体積は統計学的に有意差を持って増大したが,一糸球体あたりの糸球体上皮細胞数はその生涯を通じて170前後で不変であった.被覆すべき基底膜面積の増大した高齢ラットの糸球体において,糸球体上皮細胞の細胞内構造に変化を認めた.高齢ラットでは糸球体上皮細胞の剥離,係蹄とボーマン嚢上皮の癒着,硬化病変を認めた.Wistar系ratにおいては,糸球体基底膜が生涯にわたって延び続けるにもかかわらず,糸球体上皮細胞はその数が生涯一定であるため,その物理的なギャップによって上皮細胞の老化,変性,脱落がおこりやすく不可逆的糸球体硬化を形成することが考えられる.
(平成7年10月25日採用)

1995.03.08

Studies of Rat Colonic Lymphoid Follicle Structure and Uptake of Horseradish Peroxidase by Colon M Cells *

ラットを用いて,大腸リンパ濾胞,特にM細胞の形態学的観察を行い,さらにその機能面を検討する目的で,経肛門的にHRPを投与し,大腸M細胞からの取り込みを電子顕微鏡的に観察した.形態学的には,濾胞被覆上皮の管腔面への露出面が非常に小さい点を除けば,M細胞を含め大腸リンパ濾胞は小腸のそれと構造に差異を認めなかった.一方, HRPの取り込みについては,M細胞のみに取り込みから内包するリンパ球へ提示する一連の像が確認できたが,小腸に比べて長時間を要し,観察されるHRPも非常に少なかった.以上より,大腸M細胞は形態学的には小腸M細胞と差異はなく,抗原捕捉細胞として機能していると考えられたが, HRPの取り込みから提示に至るまでの過程には長時間を要し,その量も非常に少なく,M細胞自体に多種・多量に存在する抗原物質に対する防御機構が存在するものと思われた.                   (平成7年10月24日採用)

1995.03.07

Apoptosis as the Mechanism of Microvascular Rarefaction During Involution of the Foreign-Body Granuloma *

炎症,とくに慢性炎症に伴い形成された肉芽組織を構成する血管網は,いったん治癒機転が進行すると,今度は消退の過程をたどる.この消退の機序を明らかにするため,ラット背部皮下にコラーゲンスポンジを移植して異物肉芽腫を作成し,コラーゲンの分解吸収による異物肉芽腫の退縮に伴う血管網の消失を組織学的かつ微細構造的に観察した.試料として移植したコラーゲンスポンジを2日目より135日目まで計17回採取し,各日とも,血管内へ墨汁注入後のH-E染色標本,およびエポン包埋による電顕標本を作成し観察を行った.移植したスポンジの空隙は,約30日で肉芽組織により充填された.肉芽組織の単位面積(1 mm2)あたりの血管数は,60日前後より緩やかに減少し,90日を経過すると急激な減少傾向を示した.電顕的観察によって,肉芽組織を構成する血管網の毛細血管,細動静脈において,内皮細胞,周皮細胞そして血管平滑筋細胞の各々の細胞に核クロマチンの濃縮と辺縁化を伴うアポトーチック変化の出現が見られた.このようなアポトーチック細胞の出現は,スポンジ構築が消失する120日目で最多を示した.異物肉芽腫の退縮に伴う血管の消退は,内皮細胞,周皮細胞そして血管平滑筋細胞のアポトーシスによる細胞死と密接な関係がある.                         (平成7年10月9日採用)

1995.03.06

Epidemiology of Metastatic Lung Tumors in Kawasaki Medical School Kawasaki Hospital *

川崎医科大学附属川崎病院における転移性肺腫瘍の疫学を検討したところ,以下の結果を得た.1.剖検例a.肺転移頻度悪性腫瘍剖検399例中159例(39.8%)に肺転移を認めた.b.原発臓器癌別の肺転移頻度肺癌(58.8%),大腸癌(50.0%),白血病(50.0%),悪性リンパ腫(44.4%),腎癌(40.0%)に高い肺転移率をみた.2.臨床例:転移性肺腫瘍からみた原発臓器癌の頻度1975年~1984年では,肝癌,胃癌,乳癌,腎癌,大腸癌の順であり, 1985~1994年では,大腸癌,肝癌,肺癌,胃癌,乳癌の順であった.        (平成7年11月6日採用)

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