h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1996.01.04

Epidemiological Studies on Clonorchiasis in Okayama Prefecture. (IX) Inhabitance of the Snail Host (Parafossarulus manchouricus) and Environmental Factors in the Endemic Area *

岡山県南部の肝吸虫症流行地において1979年と1991年の夏期に5地区9地点(用水路5地点,水田4地点)で第1中間宿主マメタニシの生息の有無を,水質(水温, pH,溶存酸素,塩素量),用水路の構造および植生との観点から調査した.マメタニシは1979年には9地点中8地点で生息を認めたが, 1991年には1地点で確認できるのみになった.水温, pH,溶存酸素に関しては, 1979年と1991年の同一地点の測定値を比較してもほとんどの地点で有意な変化はみられなかったが,塩素量に関してはマメタニシの生息が認められなくなった7地点および生息数が激減した1地点の計8地点中4地点で平均値の範囲が53-99 ppm (1979年)から23-50 ppm(1991年)と有意に低下していた.マメタニシが生息しなくなった3地点の用水路はいずれも側壁や水底がコンクリート化されイネ科植物等の水生植物が消失していた.マメタニシの生息に関して物理的環境に依存する植生要因が水質要因より重要である事例が示された.                          (平成8年4月13日採用)

1996.01.03

Human Labial Salivary Glands and Plasma Cells ― A Histological and Histometrical Study *

形質細胞とヒト各種唾液腺との関連性を明らかにすることを目的として,主に光学顕微鏡を用い口唇腺と大唾液腺を計量組織学的に検討した.口唇腺は口唇の粘膜下組織にあり,排出導管に1ないし数葉が連続する幅約1~3mmの複合腺である.葉は複数の小葉と小葉間結合織からなる.分泌部は粘液腺細胞が主体で,隣接する腺房間には腺房周囲結合組織があり,結合組織には自由細胞特に形質細胞が多い.形質細胞は電顕レベルでよく発達した粗面小胞体をもっており,成熟像を呈するものが多い.形質細胞は口唇粘膜固有層や口唇腺小葉間結合組織にも含まれるがその数は少ない.腺房周囲,小葉間および粘膜固有層結合組織における単位面積当たりの形質細胞数は,腺房周囲結合組織486±180個,小葉間結合組織20±18個,粘膜固有層1個で,とくに腺房周囲に有意に多い(p<0.01).大唾液腺の腺房周囲結合組織単位面積当たりの形質細胞数は耳下腺58±32個,顎下腺143±42個,舌下腺496±176個で,舌下腺で口唇腺と同様の有意の高値をとる(p<0.01).ヒト大・小唾液腺の腺房周囲結合組織の形質細胞密度は,口唇腺≒舌下腺>顎下腺>耳下腺の順で,形質細胞はとくに粘液分泌腺と強い親和性が認められた.腺房周囲結合組織に分布する形質細胞と唾液に含まれるIgAとの関連について考察した.    (平成8年3月25日採用)

1996.01.02

A Study of the Factors Causing Increased Intraoperative Serum Potassium Values in Hemodialysis Patients with Chronic Renal Failure *

血液透析(HD)を受けている慢性腎不全患者の二次性上皮小体機能亢進症に対して上皮小体全摘出術,ならびに上皮小体一部自家移植術を受けた76症例の,周術期管理と術中血清カリウム(K)値上昇の因子について検討した.その結果術中K値上昇に関与する因子の寄与率は,最終HDから麻酔開始までのK値の変化率,最終HDから麻酔開始までの時間,過去HD施行期間,術前K値,術前動脈血pH値,麻酔導入直後のK値,術前動脈血重炭酸イオン濃度値,麻酔導入直後の動脈血重炭酸イオン濃度値の順に高いことが認められた.したがってこれらの因子を除去することが,安全な麻酔につながる.また術中にはK値の変動に注意し,上昇が認められた場合には術中HD施行も含めて対処しなければならない.                                  (平成8年7月13日採用)

1996.01.01

Analysis of the COL4A5 Gene by the PCR-SSCP Method ―Application to Gene Analysis of Alport Syndrome― *

アルポート症候群におけるⅣ型コラーゲンα5鎖遺伝子(COL4A5)をPCR-Single-stranded DNA conformation polymorphism (SSCP)法を用いて解析した.アルポート症候群患者60例と健常者50例の末梢血リンパ球から抽出したgenomic DNA を試料とし,COL4A5の全51個エクソンに対する合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて,各エクソンを遺伝子増幅した.得られたPCR産物を熱変性した後,非変性アクリルアミドゲル電気泳動を行った結果, SSCP法によって,22種類の遺伝子変異を検出した.それらは,塩基挿入1例,塩基欠損5例,1塩基置換13種類であることを直接塩基配列決定法によって確認した.1塩基置換のうち4種類は健常者および患者双方にそれぞれ等しく認められ,いわゆる遺伝子多型と考えられた.一次スクリーニング法としてPCR-SSCP法は迅速かつ容易でアルポート症候群の遺伝子解析には現在最良の方法であることが示された.(平成8年3月25日採用)

1995.04.07

Reform of Medical Education and Pathology Laboratory in the United States by Introduction of High Technology II. The Situation in Beth Israel Hospital and New York University Medical Center *

最近,アメリカのいくつかの大学や病院を見学し,コンピュータを使った医学生への自己学習教材や病院病理部の情報管理システムの実情をつぶさに観察する機会を得た.本稿では,ベス・イズラエル病院とニューヨーク大学付属病院の病理部におけるコンピュータによる情報管理システムの実情について詳しく報告するとともに,コンピュータ化への必然性をアメリカの医療制度や国民性の面から考察を加えた.   (平成8年1月27日採用)

1995.04.06

Reform of Medical Education and Pathology Laboratory in the United States by Introduction of High Technology I . The Situation in Georgetown University Medical Center *

最近,アメリカのいくつかの大学や病院を見学し,コンピュータを使った医学生への自己学習教材や病院病理部の情報管理システムの実情をつぶさに観察する機会を得た.本稿では,ジョージタウン大学医学部での学生教育とコンピュータによる情報管理システムおよびスミソニアン博物館でのコンピュータ展示物について報告するとともに,コンピュータ化への動機やそのネットワーク作りの過程についても考察を加えた.(平成8年1月27日採用)

← newer entries older entries →