h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1991.01.05

Controlled Release of Mitomycin C Embedded in a Silicone Elastomer as a Drug Delivery System *

2液混合常温硬化型silicone (ファイコン6600 FX- 8 )を用いてMitomycin C (以下MMCと略す)徐放化抗癌製剤を作製し,60日間にわたりin vitro におけるMMC放出と製剤表面積, MMC封入量, silicone基材の物理特性(硬度及び粘度)の関係を観察した.その結果,製剤表面積及びMMC封入量とMMC放出量は正の相関を示し,また,silicone基材の物理特性は,silicone 2液の混合比を調節することにより変え得るが,silicone基材の硬度が低下するほど,徐放製剤からの放出量は多くなり,硬度最低の製剤からは60日間に全封入量の約53%,硬度最高の製剤からは約0.7%が放出され,放出量比は最高100倍にも達することがわかった.以上の実験結果から,これら三つの因子を適宜調節することにより,抗癌剤放出制御が可能であることを実証した.                 (平成3年2月25日採用)

1991.01.04

Studies of Peripheral Red Cell Membrane Disorders in Association with Myelodysplastic Syndrome ―Special Reference to Abnormalities of Peripheral Red Cell Morphology― *

骨髄異形成症候群(myelody splast ic syndrome, MDS) 32例における赤血球膜病態の検索を末梢血赤血球形態を中心に検討した.MDS症例では,正常対照群に比して,形態異常を示す赤血球(abnormal red cells)が有意な増加を認めた(p<0.01).形態異常の分類は楕円赤血球型(elliptocytosis type),有口赤血球型(stomatocytosis type),奇形赤血球型(poikilocytosis type)の3種類に分類され,多くの症例はこの3者が混合して認められた.MDS 5病型間では, RARS (34.0±11.05%), RAEB (29.4±14.1%), RA (23.7±14.9%)にてabnormal red cellsの有意な増加を認めた(P<0.001).この赤血球形態異常と骨髄での赤芽球のdysplasia,末梢血赤血球数との間には各々有意な相関は認められなかった.赤血球膜病態を検索する上で赤血球膜輸送能,赤血球膜脂質,赤血球膜蛋白について検討した. Na-influx, Na-effluxはともに有意な亢進を示し(P<0.001),赤血球膜脂質に関しては, free cholesterolの増加(pく0.01),リン脂質分画ではphosphatidylethanolamineの低下(p< 0.01), lyso-phosphatidylcholineの低下(p< 0.001)を認めた.また, RAEB1症例にて赤血球膜蛋白band 4.1の部分欠損が認められた(38%欠損).この症例では,elliptocytosisが著明に認められた.MDSにおいては,末梢血赤血球形態異常が高頻度に認められ得ることが判明したが,その病因については,多くの因子が関与している可能性が示唆された.(平成3年2月28日採用)

1991.01.03

Immunochemical Studies on Expression of Spectrins and Integral Proteins in Human Erythroid Cells *

ヒト赤芽球におけるband 3やglycophorin A (GPA)を主体とするintegral proteinとspectrinとの発生の相互関係を明らかにする目的で,末梢血前駆細胞(BFU-E)由来の赤芽球系培養細胞(Wada, H ., et al. :Blood 75 : 505―51 1 , 1990)1)を用いて免疫化学的に検討した.蛍光抗体法では,培養第2相のday 3 ですでにspectrin陽性細胞を認め, integral protein はこれより遅れ,赤芽球成熟に伴ってday 5でGPA, day 7でband3が順次陽性を示した.さらにSDS-PAGE後のwestern blot法による解析では, spectrinはday 5, day 7ではα鎖優位の発現を示したが,より成熟赤芽球の細胞集団であるday9では,α鎖,β鎖が末梢血赤血球同様に等量発現していた.またこの段階の成熟赤芽球では細胞質分画,膜分画ともにα鎖,β鎖が等量に発現し, spectrinが細胞膜に結合,固定されていく様相が明らかとなった.             (平成3年2月25日採用)

1991.01.02

Clinical Evaluation of YAD Therapy for Multiple Myeloma *

治療抵抗性の多発性骨髄腫に有効性が報告されているVAD療法を,4例の骨髄腫初回治療例,4例の治療抵抗例に試みた.症例数は少数ながら,評価可能6例のうち, CR(complete response) 2例, PR (partial response) 3例の成績を得,奏効率は83.3%であった.また,M蛋白の半減もほぼ1コースで得られた.しかし, PS (performance status)の改善は全8例中4例に認められたのみであり,また転帰も早期死亡で評価不能となった2例を含め,4例の死亡例をみた.加えて,副作用はG-CSFや血小板輸血を必要とする程度の骨髄抑制が6例に生じ,それ以外にも間質性肺炎,糖尿病性昏睡,精神障害など可逆性ながら重篤なものが認められた.今回の経験よりVAD療法は,初回もしくは治療抵抗例の寛解導入療法に有効と考えられるが,副作用に対する厳重な注意と,本療法に固執することなく維持療法へ移行するような使い方が,現段階では適当と考えられた.(平成3年2月5日採用)

1991.01.01

Scanning Electron Microscopic Study of the Capsular Lymph Capillaries of Liver by the Chemical Digestion Method *

肝被膜を用手剥離した後に化学的消化法(HCl-collagenase法)を利用する被膜剥離後化学的消化法を用いて,肝表在の毛細リンパ管を走査電顕で観察し,次のような結果を得た.1.本法は肝表在毛細リンパ管の立体的構築とその非自由表面を観察するのに有用な方法であった.2.正常肝およびIPH肝の表在毛細リンパ管の立体的構築を明らかにした.すなわち前者は網目状に走行し,後者は不規則な吻合と分枝を行いながら走行していた.3.非自由表面の観察では,内皮細胞間隙以外に小孔と篩板状に集簇する小孔が観察された.これらの小孔の存在を肝表在毛細リンパ管について,はじめて明らかにすることができた. IPH肝ではこれらの小孔はより増加していた.4.上述のIPH肝の表在毛細リンパ管の形態学的変化は肝リンパがより増加していることによる反応と考えられた.                 (平成3年2月27日採用)

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