h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1991.01.12

Two Cases of Anaplastic Large-Cell Ki-1 Lymphoma *

未分化大細胞型Ki-1リンパ腫はKi-1 (CD30)に反応する胞体豊富な大型の腫瘍細胞が類洞,傍皮質領域を中心に増殖する組織像を特徴とする悪性リンパ腫の一群として, Steinらにより初めて報告された.1)我々も,最近本症の2例を経験したので報告する.症例1は,13歳,女性.平成2年8月下旬左腋窩腫瘤が出現.9月同部の自潰,排膿を認め近医受診.腋窩腫瘤の生検にて,未分化大細胞型Ki-1リンパ腫と診断され,当科入院となった.左腋窩の手拳大のリンパ節を最大とする,全身性のリンパ節腫脹を認めた.検査所見では,白血球,血小板増多,高ガンマグロブリン血症を認めた.臨床病期ⅢAと診断し, MACOP-B療法を行い,その終了時には寛解となった.しかし,皮膚病変,高LDH血症を伴って再発し,放射線療法, ESAP療法, V-MODE療法を順次行うも,治療抵抗性を示してきている.症例2は,60歳,女性.平成2年12月中旬より左頸部腫瘤に気付き,近医にてリンパ節生検を施行され,悪性リンパ腫疑いにて当科へ入院.左頸部にリンパ節を触知し,検査所見では,高LDH血症,高ガンマグロブリン血症を認めた.2月には左腋窩リンパ節腫脹,左頸部皮膚病変が出現し,左腋窩リンパ節生検を施行した.未分化大細胞型Ki-1リンパ腫,臨床病期IVAと診断し, VEPA-M療法を開始した.現在寛解状態を維持している.未分化細胞型Ki-1リンパ腫は,比較的新しい疾患概念のため,本邦でもまだ報告例が少なく,臨床像も明確でなく,治療法も確立されていない.そこで,若干の文献的考察を加え,我々の経験した2症例を報告する.            (平成3年3月31日採用)

1991.01.11

A Case of HTLV-I Associated Myelopathy (HAM) Induced by Mother-to-Child Transmission *

母子垂直感染により発症するHAMが最初に報告されて3年が経つが,輸血により発症するHAMに比し,副腎皮質ホルモンが有効でない症例が比較的多いといわれている.今回われわれは母子垂直感染により発症したと考えられるHAMで,副腎皮質ホルモンが有効であった1例を経験したので報告する.症例は22歳の男性,主訴は歩行障害.入院時両下肢の痙性麻痺,下肢腱反射の亢進と病的反射の出現をみた.抗HTLv-I抗体価は,血清1 : 16,384 (母親1 :8,192),髄液1:256 (PA法)で,血清および髄液中にATL様細胞を認めた.以上からHAMと診断し,副腎皮質ホルモンによる治療を行った結果,臨床症状,抗体価ともに改善傾向を示し副腎皮質ホルモンが有効であった.                  (平成3年4月3日採用)

1991.01.10

Anatomy and Development of Elastic Fibers in Human Pleurae *

ヒト肺の臓側胸膜の結合織における弾力繊維について,形態発育と解剖学的構造に関して検討を行い,次の結果を得た.|)胎児期(妊娠後期)から新生児期では,肺臓側胸膜中皮直下の弾力繊維は非常に未熟で,非連続的な1層の層板構造を呈するのみで,全く未発達な部分もまれでなかった.2~3歳になると,弾力繊維層は内層が新たに加わって,お互いに独立した内外2層に分かれ,以後90歳代の老年期にいたるまでこの2層構造が保たれた.2)抗αエラスチン抗体による免疫染色上,胎児期(妊娠後期)および新生児期では,弾力繊維中心部の無染色部分がほとんど識別されなかったが,3歳頃になると中心の無染色部分が明瞭になり,以後老年期にいたるまで同様であった.3)外層を構成する胸膜弾力繊維の直径は,胎児期で0.8±0.2μm,新生児期で0.7±0.3μm,乳児期から学童期で1.5±0.6μm, 10歳代で2.0±0.4μmと徐々に太くなるが,20歳代以後はあまり変化せず, 2.3±0.3μmであった.4)走査電子顕微鏡的観察上,ヒト肺の臓側胸膜における外層の弾力繊維層は明らかな有窓膜(fenestrated lamina)を形成し,この完成時期はほぼ3~4歳以降と考えられた.一方,内層の弾力繊維層は不規則な網目状のメッシュ構造を呈していた.(平成3年2月28日採用)

1991.01.09

Analysis of Fatty Acids in SD Rat Retina and Lens by Liquid Chromatography/Negative Ion Mass Spectrometry (LC/NIMS) *

最近,日下ら1)は液体クロマトグラフィー/負イオンマススペクトロメトリー(LC/NIMS)を用いて定性的,半定量的に遊離型脂肪酸を分析し得る迅速かつ単純な方法を見いだした.この方法によりラット網膜および水晶体の全脂肪酸を分析し検討した.その結果,網膜においては多量の極長鎖多不飽和脂肪酸を含むが,水晶体にはそれが認められず(ただし,C16:1’18 : 1などモノ不飽和脂肪酸は相対的に多い),また水晶体には奇数脂肪酸も有意な量で含むのに対して,網膜ではそのようなことはないということが明らかにされた.これらの結果は,網膜と水晶体における脂肪酸起源の異質性をうかがわせるものであり,これらの組織における各種眼疾患の病因の究明に資するものと思われる.(平成3年3月4日採用)

1991.01.09

Brief Note

1991.01.08

Mechanism of Anti-Interferon-# Action of VA RNA Synthesized Late in Adenovirus Infection *

インターフェロンーα(IFN-α)処理したKB細胞内にchloramphenicol acetyltransferase (CAT)遺伝子を導入して発現させるtransient expression assayを用いて,ヒト型アデノウイルス2型のコードするVA RNAの機能を検討した.CAT活性はVA RNA遺伝子及びCAT遺伝子を組み込んだそれぞれのクローンを共移入した細胞の抽出液を用いて測定した.正常細胞ではVAI RNAが対照(VA RNA なし)と比べCAT活性を67%促進し, IFN-α処理細胞では対照より約2倍の促進効果を示すことがわかった. VAII RNAは正常細胞でCAT活性を31%促進したが, IFN-α処理細胞では有意な促進効果がみられなかった. IFN-α処理によりCATのmRNA量は約1/30に低下するが,VA I RNAとVAII RNAの間にはCAT-mRNA量の差は認められない.したがって, VA RNAの効果は翻訳レベルのものであることが明らかとなった. VA I RNAはCAT遺伝子発現を翻訳レベルで促進し抗IFN-α作用を示す. VAⅡ RNA もまた翻訳促進効果を示すが,転写発現レベルがVA I RNAの1/30~1/50と非常に低いため,明瞭な抗IFN-α作用は認められなかった.今後,更に検討する必要がある.          (平成3年2月22日採用)

1991.01.07

Action of Dimethyl Sulfoxide to Endocochlear DC Potential *

蝸牛内直流電位(EP)に対するCaイオンの関与を検討するため, Ca-ATPase抑制作用を有するdimethyl sulfoxide (DMSO)を使用した. DMSO ( 2 % v/v以上)を含む人工外リンパを鼓室階から灌流するとき,EPは一過性に上昇した後低下した.最初のEP上昇は,前庭階から灌流するときは認め難いことから, DMSOがコルチ器に作用しその電気抵抗を増大することによると考えられた.後続のEP低下の程度はDMSOの濃度に依存しており, 20% v/v濃度では10分以内に0mVに低下した. DMSOがイオン電流を非特異的に抑制することから,EPの低下は血管条細胞へのCa2+流入減少による結果と考えられた.(平成3年2月26日採用)

1991.01.06

A Morphological and Biochemical Study of Elastin in the Human Posterior Longitudinal Ligament and the Spinal Dura Mater *

解剖屍体より採取した後縦靭帯,脊髄硬膜のelastinに関する形態学的,生化学的研究を行った.後縦靭帯は,頸椎部,上位胸椎部,下位胸椎部,腰椎部の4部位に分け,脊髄硬膜はさらに腹側と背側とで8部位に分けて透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った.またそれぞれの部位におけるelastin含有率を測定した.後縦靭帯のelastinは, microfibrilに取り囲まれた直径0.8~1.0μmの無構造物質として観察され,多くが頭尾方向にほぼ平行に近い配列を示していた.脊髄硬膜のelastinは,microfibrilに取り囲まれた直径0.5~1.0μmの無構造物質として観察され,後縦靭帯と比べやや小型のものが多く,多方向に配列する傾向が認められた.後縦靭帯のelastin含有率は平均7.6%,脊髄硬膜のelastin含有率は腹側で平均7.1%,背側で平均13.0%であった.部位別では,頸椎部でのelastin含有率が低く, collagen含有率が高い傾向にあり,また下位胸椎部ではelastin含有率が高かった.脊髄硬膜のelastin含有率については,いずれの部位でも背側が腹側に比し約1.5~2.0倍の値を示し, collagen含有率では背側で低値を示した.後縦靭帯,脊髄硬膜のelastinのアミノ酸組成は,黄色靭帯,項靭帯などの脊柱靭帯組織と類似していた.                       (平成3年2月25日採用)

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