h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1991.02.10

Electromyographic Study of Swallowing ―Part 1 : The Role of the Orbicularis Oris and Sternocleidomastoid Muscle in the Swallowing of Normal Subjects― *

主に脳血管障害に伴う嚥下障害に対して簡便な評価方法を検討するために,21名の正常者を対象として,嚥下運動における両側の口輪筋及び胸鎮乳突筋の表面筋電図を施行した.嚥下物には,口腔内唾液, 24.5°C室温ゼリー(5ml・10ml), 0°C冷却ゼリー(5ml・10ml)を用い,5分間ずつの間隔をおき,この順序で嚥下運動を施行した.その結果,次に述べる興味ある結論が得られた.(1)口輪筋の収縮持続時間は,平均1,444.04±438.59 msec (口腔内唾液)から1,944.04±667.78 msec (室温ゼリー10ml)まで分布し,冷刺激により持続時間が短縮する性質が認められた.(2)胸鎖乳突筋の収縮持続時間は,平均1,286.90±330.21msec (口腔内唾液)から1,663.09±710.30msec(冷却ゼリー10ml)まで分布した.室温ゼリー10ml及び冷却ゼリー5 mlで持続時間が短縮する性質が認められ,口輪筋とは異なっていた.(3)胸鎖乳突筋の収縮開始時間は,口輪筋を基準にすると遅延する傾向にあり,その全人数に対する割合は, 57.1% (口腔内唾液)から95.2% (冷却ゼリー5 ml)であった.時間は平均147.61±213.73msec (口腔内唾液)から382.14±372.16msec (室温ゼリー10ml)まで分布した.さらに,冷刺激により開始時間が早くなる傾向が認められた.(4)嚥下に要した時間に対する各筋の収縮時間の割合では,口輪筋が80%以上の収縮を示した人数の比率は85.7%(室温ゼリー5 ml)から100%(室温ゼリー10ml・冷却ゼリー5ml)を占めた.胸鎖乳突筋では52.4% (室温ゼリー10ml)から66.7% (口腔内唾液)であった.(5)嚥下運動の時期との関連では,口輪筋が口腔期・咽頭期の全期に関与し,胸鎖乳突筋は口腔期中期より咽頭期に関与し,特に咽頭期を主体に関与している可能性が強く示唆された.これらの結果より,この二つの筋はよく嚥下運動を反映しており,本研究による方法が実際の嚥下障害患者に応用できると考えられた.        (平成3年8月31日採用)

1991.02.09

Correlation of the Fatty Changes in the Liver Determined by Ultrasonographic Examination with the Level of Serum Lipids *

脂肪肝は臨床上健康な者に行った腹部超音波検査では,最も多くみられる所見のーつである.しかし,その診断的意義については明らかにされていない.我々は,脂肪肝と肥満や血清脂質との関連を調査するため,岡山県灘崎町の住民健診を受診した613名について検討した.脂肪肝の有無と有意に関連があったのは,年齢とHDL-コレステロール値であった.脂肪肝の出現頻度は50歳代に最も多かった.脂肪肝と高総コレステロール血症・低HDL-コレステロール血症との関連は,肥満のグループより肥満でないグループの方がより著明であった.                               (平成3年8月30日採用)

1991.02.08

Tissue Morphometric Analysis in Hypoechoic Hemangioma of the Liver *

肝血管腫は超音波画像上,典型例では腫瘍の境界が明瞭で,かつ内部が均質な高エコー像として描出される.しかしながら,一方では肝血管腫のうち,約10%前後が低エコー像を示すといわれ,原因のーつとして血管腫内血管腔の拡張が報告されている.しかし,その根拠の多くは形態観察所見や血管造影像の所見に基づいており,客観性に乏しい感がある.そこでわれわれはモルフォメトリー分析で数量化を試みたところ,低エコー例は高エコー例に比べ血管腔面積が拡大傾向にあることが確認された.この事実は従来の説を裏づける客観的な証拠と思われた.さらに低エコー例では血管腫隔壁面積の減少も認められたことから,これら両者の比率が肝血管腫の超音波像の差に影響を与えるー因になるものと推察された.                         (平成3年8月14日採用)

1991.02.07

Deep Fungal Infections in Autopsy Cases with Hematological Disorders at Kawasaki Medical School Hospital during The Last Two Years *

1988年4月から1990年4月までの2年間に当科で経験した造血器疾患剖検例20例の中から深在性真菌症と診断した8例を対象とし,その頻度,臨床像などから検討を加えた.深在性真菌症は全剖検例の40%の頻度でみられ,一部にはアスペルギルスとカンジダの重複感染例もみられた.基礎疾患別では急性白血病や悪性リンパ腫など,特に強力な化学療法を施行した例に多く合併する傾向がみられた.アスペルギルス,ムコールの感染巣は肺に限局していることから経気道的な感染経路が考えられ,一方,トリコスポロンでは経皮・経静脈的な感染経路が予測された.              (平成3年8月2日採用)

1991.02.06

Analysis of the Amino Acid Sequence in the C-Terminal Region of Peptides by Carboxypeptidase-A (CPase-A) *

タンパク質やペプチドのアミノ酸配列決定はN一末端から解析するEdman法やDABITC法がよく使用されているがC一末端からアミノ酸配列を決定するCarboxypeptidase (CPase)法も有益な方法と考え,β鎖グロビンのC一末端領域のアミノ酸配列決定に応用してみた.CPase-Aのβ鎖グロビンとの酵素反応モデルをMichaelis-Menten式(M-M式)を基にし,パソコンを用いて組み立てた.[S]=基質濃度,Km=ミカエリス定数,Vmax(μmol/min) =最大CPase-A活性値,C一末端アミノ酸によるCPase-A相対活性係数Kの4つをパラメーターとして使用した.このモデルを用い分析した各反応時間でのCPase-Aによるアミノ酸遊離量を予測値として算出した.正常βA鎖グロビンとCPase-Aとの反応によって遊離されるアミノ酸量と予測値の間にはよい一致がみられた.また,この方法を異常ヘモグロビンに応用した結果,C一末端領域のアミノ酸配列決定に有効な手段となることを示した.                                 (平成3年7月5日採用)

1991.02.05

Study on Contact Sensitivity in Athymic Nude Mice ―Function of Epidermal Langerhans Cells and Thy-1 Positive Dendritic Epidermal Cells― *

ヌードマウスBALB/c (nu/nu)の皮膚を通して2, 4-dinitrofluorobenzene (DNFB)の感作成立あるいは免疫学的不応(トレランス)の誘導が可能かどうかを検討した.BALB/c (nu/nu)の皮膚を正常マウスBALB/cに移植して同部にDNFBを塗布して感作するとDNFBに対する接触過敏症の感作は成立したが,植皮部に中波長紫外線(UVB)を照射した後DNFBを塗布する抑制処置を加えた場合, DNFBに対するトレランスは誘導されなかった.さらに, BALB/c (nu/nu)にDNFBを塗布して24時間後に採取した所属リンパ節細胞(DLNC)をBALB/cに移入すると,感作は成立した.しかし, UVBとDNFBで処置して24時間後のBALB/c (nu/nu)のDLNCの移入では, BALB/cにおいてトレランスの誘導は認められなかった.以上よりBALB/c (nu/nu)の皮膚は, DNFBに対して接触過敏症の感作を成立させることはできるが,トレランスを誘導する能力に欠けることが示唆され,この能力の欠陥はヌードマウスの皮膚におけるThy- 1 陽性樹枝状表皮細胞の機能不全によるものと考えられる.一方同マウスの表皮ランゲルハンス細胞の機能は十分保たれているものと思われる.                              (平成3年6月26日採用)

1991.02.04

High-Speed Cinematoradiographical Study of the Movement of the SJM Prosthetic Mitral Valve *

X線シネ撮影装置を用いて僧帽弁St. Jude Medical人工弁の撮影を行い,人工弁々葉の動態の解析を行った.対象を心房細動の有無と後尖側弁下組織を温存したか否かに分け,それぞれにおける人工弁開放,閉鎖時間,及び腹側,背側弁葉の動態を比較検討した.弁葉の開放は心調律と関係なく対称的な動きを示し,開放時間も一定であった.弁葉の閉鎖時間は,洞調律例では一定であったが,心房細動例では閉鎖時間の延長した心拍や腹側,背側弁葉の非対称的な動きをする心拍を認めた.閉鎖時間の延長した心拍は背側弁葉が拡張末期,R波に先行し閉鎖が開始するためで,これは心電図の先行R-R間隔が平均R-R間隔より延長した心拍に認められた.腹側弁葉の早期の非対称的な閉鎖の開始は,温存術式の心房細動例で高頻度に認められ,心電図のR波より平均14±6 msec 先行して閉鎖が開始していた.腹側弁葉の早期の閉鎖運動開始は左室拡張末期圧,肺動脈楔入圧,僧帽弁圧格差との間に関係はなく,弁下組織の機能により生じた血流変化により生じたものと推測された.                              (平成3年6月12日採用)

1991.02.03

Present Status of Psychiatric Consultation in Kawasaki Hospital ―Second Report― *

当院に1年以上勤務する一般科医に対して精神科コンサルテーションに関するアンケート調査を行い,52名の回答を得た.約半数の医師に精神科紹介への抵抗や逡巡があり,特定の医師から頻繁に紹介される傾向がみられた.紹介希望理由としては,不安やうつ状態などの精神症状,精神病症状,異常行動,自殺未遂,神経質,心理療法的対応の要請の順に挙げられた.内科系医師や若年の医師に精神科紹介への抵抗や逡巡が目立ち,外科系医師や高年齢の医師では紹介への抵抗は少なく,心理療法的対応の要請が高率に認められた.他科医師の多くはコンサルテーション・リエゾン精神医学活動の充実を願っているが,看護婦に比較すると疾患モデル中心に留まる場合が多いと考えられた.現状では主治医が独力で対応するか精神科医に任せきりになるかという段階に留まっており,精神科医側からの穏やかな接近が望まれていると考えられた.         (平成3年5月1日採用)

1991.02.02

Analysis of the MRI-Examination Data Obtained after One-Year’s Experience *

’90年4月より稼働を開始したMRI装置の1年間の利用データを,市販のデータベースソフトで作成した入力様式で蓄積し,装置の円滑利用と検査精度の向上を目的として分析した.1年間の検査件数は延べ1723件(1276人)月平均154件で,予約後検査までの平均待ち日数は入院1週間,外来1.5ヵ月であった.部位別に最も検査頻度の高かったのは脳で,疾患は脳梗塞であった.1件の平均検査時間は53分で,脳梗塞や脊椎関連疾患などで検査時間が短く,動脈瘤や下垂体腺腫などで長い傾向がみられた.さらに造影検査や緊急検査などについても分析した.                     (平成3年4月24日採用)

1991.02.01

Percutaneous Ethanol Injection Therapy (PEIT) for Hepatocellular Carcinoma―Usefulness of CT in Determining Necrosis Caused by PEIT ― *

24例の肝細胞癌に対しエタノール局注療法(PEIT)を施行し,壊死部分のCT像の分析を行った.壊死部は四つのパターンに分類され,類円形(45.8%),点状(29.2%),クローバ状(16.7%)および楔形(8.3%)に分けられた.点状および楔形はPEITによる壊死に特有であり,特異な壊死形態として注目される.さらにPEIT前にすでに低吸収域を示す腫瘍においては,自然壊死とPEITによる壊死の鑑別が困難であった.このような症例では,リピオドールをエタノールに混合し,局注することにより注入されたエタノールの拡散範囲がCTにより高濃度陰影として描出される.この方法により追加PEITがより有効になされることが示唆された.                   (平成3年4月11日採用)

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