h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1990.02.03

Experimental Study on Deep Frozen Allograft ― Systemic Administration of Growth Hormone and Drilled Deep Frozen Allograft― *

冷凍同種骨移植において全身的な成長ホルモン投与および皮質に穴を開けることが骨形成にどのような影響を与えるかを調べるために,家兎を用いて実験的研究を行った.成熟家兎の腸骨に1×0.7cm大の骨欠損を作製し,一方の腸骨には新鮮自家骨を,他方の腸骨には,冷凍同種骨を移植し,ヒト成長ホルモンを0.5I.U./kg/week筋肉注射した.コントロール群としては,ヒト成長ホルモンを投与せずその他の条件を同じにした移植群を用いた.術後4週目と8週目に家兎を屠殺し,X線学的,組織学的,およびテトラサイクリンを用いたラベリング像観察法にて骨形成を検討した. また皮質に穴を開けた冷凍同種骨とそのままの形状の冷凍同種骨を家兎の両側の腸骨に移植した.術後4週,8週,16週,24週目に屠殺し,X線学的,組織学的,およびテトラサイクリンを用いたラベリング像観察法を用いて,移植骨片内の骨形成を検討した. 成長ホルモン投与群では,コントロール群において認められた術後の骨粗鬆化は認められず,逆に移植骨片全体の骨硬化が認められた.また,毋床と移植骨の接合部において,幼弱な新生骨がラベリング像を伴って大量に認められた.皮質に穴を開けた冷凍骨移植群は,術後24週目の時点で移植骨全体が高度な骨粗鬆の状態となっていた.また,ラベリング観察法にて,まだら状のラベリング像が移植骨片内に術後16週目で認められた.                              (平成2年8月29日採用)

1990.02.02

Type C Hepatitis-Positive Rate of HCY Antibody in Outpatient ―Non-A, Non-B Liver Diseases and Prospect of Interferon Therapy― *

外来患者147名についてHCV抗体陽性率を検討した.慢性肝炎68例中43例(63.2%),肝硬変52例中39例(75.0%)にHCV抗体陽性を示したが,アルコール性肝障害や脂肪肝では全例陰性であった.輸血歴のある29例中21例(72.4 %)で陽性であったが,輸血歴の明らかでない110例中56例(50.9%)も陽性を示しており,散発性非A非B型肝炎でも半数はHCV抗体陽性であった. HCV抗体陽性慢性肝炎の平均年齢は53.1歳であった.肝硬変の平均年齢は61.3歳と高く,49歳以下の肝硬変は認めなかった.C型肝炎の治療法としてインターフェロン療法が注目されているが,現在までの報告を渉猟し,その有用性について検討した.インターフェロンによるGPT改善率はおおむね50%,組織学的改善率は30%にみられ,投与方法は週3回,投与期間は半年以上で,1日投与量は300万単位(3 MU)が望ましいと考えられた.                             (平成2年7月24日採用)

1990.02.01

Effect of Heart Rate on Cardiac Hemodynamics in Experimental Aortic Regurgitation ―Part 1― *

実験的大動脈弁閉鎖不全(AR)犬を用いて心拍数が心血行動態に及ぼす影響を検討した.雑種成犬18頭を対象に,バスケット型カテーテルを用いてARを作製した.それぞれコントロール時,軽症AR(平均逆流率:37.1%)時,重症AR(平均逆流率:68.0%)時に,右房ペーシングにて心拍数毎分90より段階的に増加(90 ・ 100 ・ 120 ・ 140 ・ 160 ・ 180)させ心血行動態諸指標を記録した.1)コントロール時:心拍数の増加とともに,心機能曲線は左上方に移動した.また,乳酸摂取率と冠静脈洞酸素飽和度は不変であった.2)軽症AR:逆流率は心拍数が増加しても不変であった.心機能曲線は毎分120までは亢進したが,それ以上では左下方に移動した.乳酸摂取率と冠静脈洞酸素飽和度は不変であった.3)重症AR:逆流率ならびに全末梢血管抵抗は,心拍数毎分140までは著明に改善したが,それ以上では悪化した.心機能曲線は,心拍数毎分140までは著明に改善したが,それ以上では右下方に移動し悪化した.左室拡張末期の圧・容積関連では,心拍数毎分160から180にかけて左上方に移動した.心拍数毎分160から180にかけて,乳酸摂取率と冠静脈洞酸素飽和度の有意な減少が認められた.以上の成績より,重症ARでは,心拍数毎分140までは逆流率が減少し,心血行動態の改善が得られた.しかしそれ以上では全末梢血管抵抗増大による逆流率の増加と心筋虚血の出現のため,心血行動態は悪化した.また,軽症ARでは心拍数の影響が少なかった.(平成2年8月2日採用)

1990.01.13

A Case of Pyloric Stenosis in Crohn’s Disease *

症例は20歳の男子大学生.昭和62年5月頃より心窩部痛を訴え近医で胃X線検査を受け,十二指腸潰瘍を指摘された.7月下旬より粘血便があり注腸造影検査,大腸内視鏡検査にて小腸クローン病と診断され, salazosulfapyridine (以下SASP)の投与を受けていた.8月下旬より嘔気,嘔吐が出現し,10月初旬の胃X線検査,胃内視鏡検査で,幽門前部の結節状,敷石像様病変による狭窄を認めた.胃生検では非乾酪性肉芽腫を見いだせなかったが,X線,内視鏡所見より胃十二指腸クローン病変と診断した.高カロリー輸液などの保存的治療を行ったが軽快せず,胃切除術(Billroth Ⅱ法)を施行した.文献的に胃十二指腸クーロン病変の本邦報告例は自験例を含め14例で,うち11例が外科的治療を受けていた.クローン病の胃十二指腸病変は小潰瘍,びらんなど微小なものが多く,本例のような高度の狭窄症状を来す例は極めてまれである.        (平成2年4月11日採用)

1990.01.12

Genetical Analysis of Abnormal Hemoglobins, Hb S, Hb C and Hb Machida, with Amino Acid Substitution at ^6 by the Polymerase Chain Reaction (PCR) *

異常血色素(HbS[β6 (A3) Glu→Val],HbC[β6 (A3) Glu→Lys]やHb Machida[β6 (A3) Glu→Gln])保因者の末梢血液中白血球層から調製されたDNAを1対のamplification primer と熱安定性Taqポリメラーゼによって増幅した.増幅DNAは2種の制限酵素(Sph Ⅰ とHindⅢ)で消化し,アガロースゲル電気泳動-DEAEセルロース抽出法によって精製後,同種制限酵素で処理されているM 13mp 19ベクターに組み込まれた.DNA sequencingはdideoxy法で行い,β6位コドンの塩基置換について調べた. Hb S,HbCやHb Machida の異常β遺伝子のβ6位コドンは,正常βA遺伝子でGAGであるのに対し,βs遺伝子ではGTG,βc遺伝子ではAAG,そしてβMachida遺伝子ではCAGであった.これらβ6コドンの変異はそれぞれの異常血色素の置換アミノ酸に相当するものであった.この方法は異常血色素,特に(超)不安定異常血色素の一次構造解析の有益な方法となると考えられる.                        (平成2年3月12日採用)

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