h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1990.01.11

The Arterial Baroreceptor-Lymph Heart Inhibitory Reflex and Its Pathway in the Bullfrog* Rana catesbeiana *

ウレタン麻酔,あるいは除脳したウシガエルの動脈圧受容器からリンパ心臓への反射について研究した.その結果は次のようである.1.頸動脈洞,大動脈および肺皮動脈を含む右側の動脈を伸展することにより,すべてのリンパ心臓の拍動が抑制された.この抑制反射は視葉の直尾側で脳幹を横断した後には発現しやすくなった.2.舌咽迷走神経の切断により,この抑制反射は消失したが,頸静脈神経節に入る交感神経を切断しても,この反射は残存した.3.この抑制反射は洞神経,あるいは喉頭神経の肺皮動脈枝の片方のみの切断によっては消失しなかったが,両神経を切断すると消失した.4.洞神経と喉頭神経の切断中枢端の電気刺激によって,リンパ心臓の拍動は抑制された.5.迷走神経の延髄への侵入部上縁の高さで延髄を横断しても,この反射は障害されなかった.閂の吻側1~3mmにわたり延髄正中線に沿う縦断を行うと,刺激とは反対側のリンパ心臓に対する抑制効果は消失した.閂の高さで延髄の半側を横切すると,切断側のリンパ心臓に対する抑制効果が消失した.以上の実験結果より,動脈圧受容器からの求心性活動は,洞神経と喉頭神経肺皮動脈枝,次いで舌咽迷走神経を通って延髄に入り,尾側延髄に存在する抑制性の神経要素を活動させると結論される.また,両側の反射中枢からの下行路は脊髄では交叉しない.                             (平成2年3月9日採用)

1990.01.10

Effects of Prostaglandins F2a and D2 on the Transepithelial Short-Circuit Current of the Isolated Rabbit Iris-Ciliary Body *

プロスタグランジンFαとD2は,房水産生の抑制あるいは房水流出の促進によって眼圧を下降させる.摘出家兎虹彩毛様体のshort-circuit current (SCC)を測定してプロスタグランジン群(PGs)の効果を調べた. Tyrode液を満たしたUssing型液槽に虹彩毛様体を装着した. Tyrode液は95 % O2+ 5 % CO2混合ガスにて通気され,液槽のまわりに温水を循環させて液温を一定に保った.測定には4本のカロメル電極を用い,そのうち2本は経上皮電位差を測定のために,他の2本は電位差を打ち消すために必要な電流を通じるために供した.1×10-5 M のouabainは実質側に与えられるとSCCを減少させるが,房水側に与えられるとSCCを増加した. DBcAMPは房水側実質側のいずれに与えられてもSCCを増加した.1×10-5 M PGF2αを房水側に投与するとSCCの約30%増加が認められたけれどもこの濃度は生理的レベルよりもはるかに高い.また,その変化の時間経過はouabainよりも緩徐で1時間以上もかかって安定した.一方, PGF2αを実質側に投与してもSCCの増加はわずかであった。PGD2を房水側に投与するとSCCを増加させたが,PGF2αに比して弱かった.PGD2を実質側に投与してもSCCに明らかな変化を認めなかった. PGF2αとPGD2のSCCに対する効果は特に房水側に投与したときは,両方とも効果的で,量的な違いによるものかもしれない。PGsは,細胞内cAMPを上昇させ細胞の機能を活性化させることが知られている. PGsを房水側に投与することによるSCCの増加は,房水側に面した無色素上皮層のcAMPを上昇させ,結果として,Na+-K+ポンプを抑制していると説明できる.しかしながら,実質側におけるPGsの効果は,単にNa+-K+ポンプだけの作用によるとは説明できない. PGsはNa+-HCO3-共輸送体あるいはCI-ポンプのようなanion transport を促進してSCCを増加させている可能性も残されている.                   (平成2年2月28日採用)

1990.01.09

Effect of Dichloroacetate on Brain and Cerebrospinal Fluid Acidosis after Total Cerebral Ischemia in the Dog* *

雑種成犬にAortic occlusion balloon catheter (A-O-B)法による全脳虚血(total cerebral ischemia : TCI)を作成し,血流再開後にみられる動脈血,脳,髄液(cerebrospinal fluid : CSF)のアシドーシスに対するジクロル酢酸(dichloroacetate : DCA)の効果を検討し,以下の結果を得た.1.動脈血ではTCIによりpHの低下, PaC02の上昇がみられたが,DCA投与によって動脈血中乳酸値は低値に維持され,pHも回復傾向を示したが120分間では虚血前値には戻らなかった.これはpHの低下に乳酸以外の代謝性因子も関与しているためと思われた.2.脳ではTCIによりでpHの低下, PC02の上昇が認められたが血流再開後はDCA投与群と非投与群に差を認めず,虚血前値に回復した.これは脳のpH, PC02の変化に対して脳血流が影響を及ぼしているためと考えられた.3.髄液もTCIによりpHの低下,PC02の上昇がみられた. DCA投与群では髄液中乳酸値も低値でpHも徐々に回復したが,非投与群ではpHの低値が持続した.血流再開後のPC02の変化は両群で差を認めなかった.以上の結果より, DCAはTCI後の血液,髄液の乳酸アシドーシスに対しては有効であることがわかった.今後はこれらの治療薬剤の中枢神経機能に与える影響についても検討する必要があると思われた.                   (平成2年2月28日採用)

1990.01.08

Present Status of Psychiatric Consultation in Kawasaki Hospital *

当院に勤務する看護婦288名に対して精神科コンサルテーションにかかわる諸問題についてアンケート調査を行った.看護婦の大多数は総合病院における精神科や精神科看護知識の必要性を認めているが,「精神科」という名称や精神科紹介に対する抵抗と精神科患者への気遣いが認められた.看護婦の75%以上が実際の紹介患者以外に紹介したいケースを経験しており,紹介希望理由としては,不安やうつ状態,異常行動,精神病症状とその既往,心理療法的対応,自殺未遂の順に挙げられた.治療者患者関係の問題を取り上げるものはきわめて少数であった.病棟看護婦の38.2%がより多くの助言を希望していた.精神科紹介に対する態度は勤務部署や年齢により差異がみられた.コンサルテーション・リエゾン精神医学についての看護婦の理解は現段階では十分とはいえないが,活動拡充への関心と期待は高まりつつあることが示唆された.今後の当院におけるコンサルテーション・リエゾン活動発展のための課題を検討した.           (平成2年3月30日採用)

1990.01.07

An Experimental Study on Ototoxicity and Its Reduction of Cis-diamminedichloroplatinum *

cis-diamminedichloroplatinum (cisplatin, CDDP)は,プラチナ原子を中心に塩素とアミンがシス位に相対している白金製剤で,泌尿器,産婦人科だけでなくすべての領域の悪性腫瘍に対し欠くことのできない抗癌剤として広く使用されている.CDDPの毒性は多彩で, dose limiting factor となる腎障害を始め,胃腸,骨髄,聴器等への副作用を有する.この報告では,ゴールデンハムスターとニホンザルを用いて, CDDPの聴器毒性の様式と程度について聴性脳幹反応(ABR)と走査電子顕微鏡(SEM)で検討した.聴力は,ABRにおいて闘値の上昇と潜時の延長が認められ,一過性の聴力低下を来すものもあった.形態的な障害は,外有毛細胞が中心であり,内有毛細胞に障害を認めなかった.外有毛細胞障害は,散在性で基底回転に強く,投与量,投与回数の増加にともない激しくなった.CDDPの毒性を軽減するものとしてsodium thiosulfate, fosfomycin等があるが,この報告では,次硝酸ビスマス(bismuth subnitrate : BSN)の投与によって誘導される金属結合蛋白質( metallo thionein : MT)が, CDDPの腎毒性を軽減するということから,MTの聴器毒性に対する効果をゴールデンハムスターを用いて検討した.また,肝,腎におけるMTをCadmium-Hemolysate法(簡易定量法)によりCdの値として,間接的に測定した.BSNの投与により, CDDPの聴器毒性が軽くなり,また肝,腎におけるMTの増加が認められた. CDDPの毒性は,MTにより軽減されたと考えられたが,聴器毒性の軽減が,MTの直接作用か,腎毒性の軽減により二次的に起こったものなのかさらに検討が必要と思われた.                         (平成2年2月26日採用)

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