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Online edition:ISSN 2758-089X

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1987.01.06

Metastatic Carcinoma of the Duodenum and Endoscopic Examination ― Report of 15 Cases ― *

転移性十二指腸悪性腫瘍について7年間の自験例に検討を加え,以下の結論を得た.1)転移性十二指腸悪性腫瘍は15例で,膵癌11例,胆嚢癌4例であった.2)いずれも粘膜下腫瘍の所見を有しているが,膵癌では,病変は下行部,水平部で内側を中心とし,胆嚢癌では下行部で全周性病変であることが特徴である.3)紫がかった色調変化は,転移性十二指腸悪性腫瘍の診断根拠のひとつと考えられた.

1987.01.05

Carcinoma of the Colon and Rectum and Colonofiberscopic Examination ―Clinical Studies for 12 Years in the Division of Gastroenterology― *

過去12年間に当科に入院した大腸癌患者を集計し,大腸癌の現状と内視鏡施行状況について検討を加え,以下の結論を得た.1.大腸癌患者は174名で,女性42.0%,男性58.0 %であり,年齢は17歳より84歳におよび平均年齢は60.1歳で50歳代,60歳代に多かった.2.多発例は8%に認められ,発生部位では,直腸・S状結腸の病変で過半数を占めていた.3.臨床症状は,下血,腹痛,下痢,便秘が多く認められた.4.形態は,限局潰瘍型・浸潤潰瘍型が多く,大きさは3cm以上の例が多く,深達度では, 201病変のうち47病変が早期癌であった.治療は,外科的治療が85.6%を占め,内視鏡的ポリペクトミーを受けた例は12例であった.5.内視鏡検査は140例に施行され,病変の存在診断は93.4%で可能であり,そのうち93.5%で癌と診断可能であった.大きさ1cm未満の病変では,内視鏡検査は注腸造影検査よりも診断能力が優れていた.

1987.01.04

Studies on Red Cell Membrane Disorders with Membrane Protein Abnormalities ―Special Reference to Hereditary Elliptocytosis― *

遺伝性楕円赤血球症25例(HE),遺伝性球状赤血球症5例(HS)および遺伝性有口赤血球症5例(H. St.)における溶血の病因について,それらのspectrinの生化学的性状,膜機能および細胞形態の立場から検討した.HE症例では,その細胞形態によって2群に分類された,第1はrod shape type(rod型細胞が15%以下の群),第2はnon-rod type (rod型細胞が5%以下の群)で,前者は16例,後者は9例であった.溶血型の多くはnon-rod typeであった.さらに典型的な溶血型では,その楕円赤血球にstomatocytic change が加わっていた.一方,膜機能Nainfluxから溶血型をみると9例中8例に, Na-influxの亢進が認められた.rod型細胞を遠心法により集め,そのrod型細胞のcell age とNa-influxについて検討した.結果はrod型細胞は, ovalocyteおよびdiscocyteよりさらにageingの進行した細胞と考えられた.また, Na-influxに関しては何ら正常赤血球と有意な差を示さなかった.しかし,このrod型細胞より作られたTriton shell では,明らかにmechanicalstabilityの低下が認められた.溶血型HE症例のうちで,膜蛋白band 4.2欠損例が発見され,この症例ではspectrinα-IV domainの等電点にも異常が検出された.その他のHE, HSおよびH.St.症例におけるspectrinの検討では,各domain, dimer-dimer association および耐熱安定性には異常を認めなかった.

1987.01.03

Studies of Erythrocyte Membrane Lipid Abnormalities ― Clinical and Experimental Studies to Elucidate the Relationship between Membrane Lipid Abnormality and Membrane Transport ― *

赤血球膜の主たる構成々分である脂質あるいは蛋白の先天的・後天的異常による溶血性貧血症例において,赤血球膜輸送能の異常がしばしば認められる.また赤血球膜異常症に膜脂質異常を伴う場合がある.本研究では主に赤血球膜異常症諸種疾患の膜脂質分析と膜輸送能の相関を検討し,あわせて実験的に作製した膜脂質異常赤血球を検索することにより,赤血球膜異常症の病態を検討した.赤血球膜脂質異常症では, hereditary high red cell membrane phosphatidylcholine hemolytic anemia (HPCHA)7例,congenital lecithin : cholesterolacytransferase (LCAT) deficiency l例, congenitalβ-lipoprotein (β-LP)deficiency4例.膜蛋白異常症では, hereditary spherocytosis (HS), hereditary elliptocytosis(HE),hereditary stomatocytosis (HSt),およびその他疾患.実験的にはphospholipase A2 (PLase A2)にて膜phosphatidyl choline (PC)に修飾を加えた膜脂質異常赤血球群を対象とした.先天性赤血球膜脂質異常症群では, HPCHA, LCAT欠損症で膜free cholesterol (FC)量・膜総phospholipids (PL)量共に著増,特にPC分画の著増が認められた. Na+influxでは, HPCHAの著明な亢進に対しLCAT欠損症ではむしろ低値であった.β-LP欠損症では赤血球膜脂質総量はほほ正常に維持されていたが,PC分画の減少とsphingomyelin分画の増加傾向が認められ, Na+ influx がほぼ正常であるのに対しCa2+ uptakeは他に類を見ないほど著明な亢進を示しており,本症での2者に著しい解離が注目された.赤血球膜蛋白異常症群においては,HSで摘脾前・後の変化が注目された.すなわち,摘脾前の膜FC量・膜総PL量・phosphatidyl ethanolamine 分画の減少が,摘脾後には正常化するが, Na+ influxの亢進は変化が認められず,病因の主体と考えられる膜蛋白の異常がNa+ influxの亢進に関与していると推定された.HEでは際立った異常は認められなかった. HStでは,膜脂質・膜輸送能とも各病型により異なる異常を呈するが両者間に相関は認められず,他の因子が関与しているものと推定された. PLase A2を用いる実験系では,無処理のcontrol群, PLase A2 処理により膜PC減少とlysoPC(L-PC)の増加を来した群,およびPLase A2 処理後さらにalbumin処理を加え増加したL-PCを除去し膜総PL量も減少した群,の3群について膜PLとNa+ influxおよびCa2+ uptakeを測定した.この結果,膜脂質の変化とNa+ influxあるいはCa2+uptakeの変化は明らかに相関を持つことが判明したが, PC ・ L-PC ・ 総PL量のどの因子が主に関与して,いるかの特定には至らなかった.また, PLase A2 処理赤血球のalbumin処理追加により,亢進したNa+ influxは変化を示さないのに比べ,Ca2+ uptakeでは更なる亢進を示し,NaとCaとではその輸送機構上に明らかな相違が存在することが判明した.

1987.01.02

A Study on Arterial System of the Lower Limb ―Three Dimensional Analysis of the Peculiar Arterial Patterns of Limbs in Lorisiformes― *

原猿類ロリス科(Prosimii, Lorisidae)四肢にみられる特異な動脈形態を示す動脈管束arterial bundle (血管網,または怪網rete mirabile)を動脈造影写真により立体的解析し系統発生学的観点より検討し,ヒトを含めた霊長類の四肢の動脈系の形態についての新しい系統発生学的知見が得られた.原猿類において前腕では尺骨動脈,下腿では伏在動脈が主幹動脈である.上肢では上腕動脈管束の大部分が橈骨動脈管束となり筋枝を出しながら末梢へ続くがその終枝は正中動脈で尺骨動脈と浅掌動脈弓を形成する.下肢では伏在動脈の存在により膝窩動脈由来の前脛骨動脈,後脛骨動脈,腓骨動脈の発達は悪い.ヒトの上肢において最も多くの浅上腕動脈の存在に関する破格の報告の大部分が前腕および手の橈側に認められ,その領域が原猿類の動脈管束に由来する部位に相当する.真猿類においても浅上腕動脈の消失,橈骨動脈の平行的に発達する相互関係より考え,原猿類にみられるrete mirabile が ヒトの上肢の破格と系統発生学的に密接な関係があるものと思われた.ヒトの下肢にみられる破格の報告のうち下腿および足における破格の例が比較的多い.これら破格は霊長類でみられる伏在動脈と膝窩動脈由来の動脈の発達の相互関係に起因するものと思われ,その発達の推移の過程は著者の先の報告によっても明らかである.

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