h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1984.02.12

A Three Dimensional Angiogram in a Cadaver in a Case of the Meandering Mesenteric Artery with Coarctation of the Abdominal Aorta

日本人女性73歳の遺体の腹部動脈造影で腹部大動脈狭窄に伴うmeandering mesenteric arteryが観察された. X線像では腎動脈と下腸間膜動脈の間に腹大動脈の陰影欠損が認められ,肉眼解剖で同部位の閉塞が観察され,中結腸動脈に続く中央吻合動脈の拡張したmeandering arteryが確認された.臨床例ではmeandering arteryの完全な写真は技術的に撮影が困難なため,解剖体における鮮明なⅩ線立体写真と肉眼解剖の所見の比較検討は,大動脈疾患に伴う吻合血管のⅩ線写真読影に際し有用であると考えられる.

1984.02.11

Incisional Hernia -A Retrospective Study of 29 Cases-

1)過去10年間で経験した腹壁瘢痕ヘルニアは29例である.男性13例,女性16例と女性が多かった.
2)初発例19例,再発例10例であり,再発例は女性に多かった.
3)原疾患手術時年令は,男性50.4±15.9歳,女性37.0±17.5歳であり, 30歳台が多かった.
4)原疾患手術後合併症として創部感染,咳嗽がみられた.
5)下腹部交差切開のヘルニアは,非還納性ヘルニアであることが多かった.
6)再発手術例4例を含む10例にテフロンメッシュを用いて補綴閉鎖を行い,良好な術後結果を得た.

1984.02.10

In Vitro Labeling- Efficiency and Stability of 99mTc-methylene Diphosphonate

骨スキャン剤である99mTc-MDPのin vitroにおける標識率と安定性およびそれらに影響する因子について,市販されている三種類のMDPキットを用いてペーパークロマトグラフィにより検討した.調製後15分における99mTc-MDPの標識率はいずれのMDPキットにおいても97%以上であり,調製後の経過時間(24時間まで),標識時にバイアルビン中に加えた99mTcO4-,溶出液の容量(10mlまで)や放射能の強さ(200~300mCi/vialまで)は標識率に影響しなかった.しかし,アスコルビン酸を含まない二種類のキットにおいては,99mTc-MDP溶液中への空気のbubblingによって標識率は低下し,free 99mTcO-4が生成された.このfree 99mTcO4-の生成は少量のアスコルビン酸の添加により効果的に防止できた.以上のことから,アスコルビン酸を含んだMDPキットのを使用するとin vitroにおけるfree 99mTcO4-の生成はほとんど無視でき,日常の骨の核医学検査,特に1本のバイアルビンで多人数の検査をする場合には便利であると考えられる.

1984.02.09

Clinical Efficacy and Limitation of Liver Scintigraphy

各種肝疾患222例につき,肝シンチグラフィーの有用性を検討し,超音波,CT,血管造影法との比較を行った.肝シンチグラフィーの有所見率は原発性肝癌で93.6 %,正診率は90.9%であり,他の画像診断法よりやや劣っていた.最小肝癌でも1例には肝シンチグラフィーでSOLを検出しえた.肝シンチグラフィーは小病変の検出や質的診断において一定の限界があるものの,病変の大きさ,位置,病変部周囲の肝組織の把握,肝硬変の程度の診断などにおいて他の画像診断法より優れている.

1984.02.08

An Immunohistochemical Observation of Skin Lesions in Melanosis Riehl

リール黒皮症6例の病変部皮膚における免疫グロブリン,C3, フィブリン,フィブリノーゲン,プラスミノーゲンの局在を螢光抗体法により観察し,症例の多くにフィブリンとプラスミノーゲンが主として真皮血管壁に沈着するという結果を得た.一方,免疫グロブリンの沈着は証明されなかった.本症の病変に凝固,線溶系が関与する可能性が推察された.

1984.02.07

Experimental Studies on the Mechanism of Allergic Contact Dermatitis : Formation and Recognition of Antigen

JY-l近交系モルモットの耳介に5% DNCBェタノール溶液を塗布し, 3時間後に採取した皮膚にトリプシンを作用させて得た浮遊表皮細胞(DNP-EC)に抗DNP抗体を用いた蛍光抗体法を施行した結果,平均91.7%の細胞にDNP基が証明され,DNP基が分布する細胞の1部はIaを有する細胞(ランゲルハンス細胞)であった.角化細胞ではDNP基は細胞表面にビマン性に分布することが免疫走査電顕法,酵素抗体法により観察された. DNP-ECを正常JY-1モルモットの耳介に5×10 6コ以上皮内注射するとDNCBに対するアレルギー性接触皮膚炎の感作が成立し,DNP-ECを超音波で破壊しても感作能力は変わらなかった.更にそれを56℃ 30分間加熱しても感作は変わらず成立したが,凍結・融解を繰り返すと感作率は著しく低下した. DNP-ECの投与の前後3日以内に注射部位の皮膚をtape strippingすると感作率は著しく低下したが, tape strippingと同時にDNP-ECを注射する際,正常表皮細胞(EC)を1×10 7コ以上あるいは腹腔マクロファージ5×10 6コを加えることにより, tapestrippingの影響は消失し感作の成立は回復した.またtape strippingにより感作が成立しなかった動物にDNCBを塗布して再感作を試みたが免疫学的不応(トレランス)の状態になっていた.トレランスの誘導はDNP-ECにECを3×10 6コ加えると抑制された. 以上の成績から,皮膚に接触したハプテンは角化細胞,ランゲルハンス細胞の主として細胞膜成分に結合し,このようにして形成された抗原を表皮ランゲルハンス細胞が貪食,消化,提示し,これを免疫担当細胞が認識することによりアレルギー性接触皮膚炎の感作は成立する.ランゲルハンス細胞の関与がない場合には.トレランスが誘導されると考えられる.

1984.02.06

The Effects of Angiotensin II on the Blood Clearance and Tissue Distribution of Liposomes

癌化学療法の効果を増強するために,制癌剤封入liposomeとangiotensin IIを併用し, angiotensin IIの腫瘍,ならびに正常組織の血流に与える変化,およびliposome血中クリアランス,組織分布に対する影響について実験的に検討し,以下の結果を得た.1) Angiotensin II投与により,血圧は著明に上昇したが,心拍数,心抽出量に変化は認められなかった.2)腫瘍組織血流量は, angiotensin II 2/μg/min/kg持続投与により,約60%増加した.3) Liposomeとliposomal 5-FUの血中クリアランスは, angiotensin IIにより高く推移した.4) Empty liposomeの分布では, angiotensin II併用により,肝で5.61%/gから4.49%/gに減少し,腫瘍では0.30%/gから0.80%/gに増加した.5) Liposomal 5-FUの分布では, angiotensin II併用により,腎で6.79%/gから3.79%/gに減少し,腫瘍では1.09%/gから1.87% /gに増加した.6) 5-FU封入liposomeとangiotensin IIを併用することにより,他の群に比し高いT/N比が得られた.以上の結果から,制癌剤封入liposomeとangiotesnin IIの併用により,制癌剤を腫瘍組織へ選択的に到達させることが可能であると考えられた.

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